暁のミッドウェー

三笠 陣

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51 第四次攻撃隊の準備

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 五航戦から第三次攻撃隊が発進して少し経った頃、第一次攻撃隊の帰還が始まった。時刻は〇九〇〇時(現地時間:一二〇〇時)を回ろうとしている頃であった。
 飛行甲板が健在な空母は、飛龍、翔鶴、瑞鶴のみであった。
 攻撃隊の帰還直前、三空母は燃料の欠乏しかけていた直掩機を収容し、さらに新たな直掩機を発艦させていたため、整備員たちは大わらわであった。何せ、上空の零戦には母艦に着艦出来なくなった赤城、加賀、蒼龍の零戦隊も存在していたのである。
 それら直掩機を収容し、際どいところで新たな直掩機を上空に上げることが出来た。ひとまず、攻撃隊の収容中に上空が無防備となるという状況は避けられたわけである。
 しかし、第一次攻撃隊の収容は想像以上の難事であった。
 何せ、被弾して覚束ない飛行を続けている機体が無数に見えたからである。米艦隊の対空砲火の凄まじさを、山口らはこの時、初めて自覚したのであった。
 そして、被弾から一時間半あまり。加賀飛行甲板の三分の二がようやく使用可能となった。
 加賀は前部エレベーター前方に爆弾が命中したため、艦橋脇の遮風柵より後ろの飛行甲板は無傷であった。めくれ上がった前部エレベーターによって飛行甲板上の気流が乱れていることが予測されたが、この際、やむを得なかった。
 山口は損傷が少なく、燃料に余裕のある機体は北方の五航戦に向かうように信号を出し、機体の損傷や搭乗員の負傷などで余裕のない機体から飛龍と加賀に着艦するよう命じた。
 飛行甲板上には、整備員の他に手空きの乗員も待機させていた。損傷して修理不能と整備員が判断した機体を、即座に海中に投棄するためである。
 第一次攻撃隊の収容後には、第二次攻撃隊の帰還も控えている。着艦後の作業は迅速に行わねばならなかった。
 着艦した機体で無事なものは、即座にエレベーターを使って格納庫に下ろしていく。前部エレベーターを使用出来ない加賀も、中央部のエレベーターを使って機体を格納庫に収容していった。
 一航戦の六空母の中で最も格納庫へ収容する作業の練度が高いと言われている飛龍では、江草隆繁少佐の九九艦爆を始め、他空母の所属機を多数、収容することに成功していた。
 五航戦の二隻についても、この両艦はもともと艦載機の定数を満たしていなかったこともあり、格納庫内には若干の余裕があった。そこに、無事な機体を次々と下ろしていく。
 残りの加賀も、前部三分の一が使用不能となった飛行甲板で攻撃隊の収容を行っていた。ただ、やはり気流の乱れから、三機ほどが着艦時に事故を起こしていた。
 幸いにして艦橋に激突して加賀の指揮そのものを不能とするような重大事故は発生しなかったが、飛行甲板から転落しかけた機体によって、機銃座で配置に付いていた機銃員の数名が下敷きとなって死傷し、さらに高角砲の一基も事故機に激突されて一時、旋回不能となるなどの被害を受けている。
 それでも、第二次攻撃隊が帰還する時刻には、四空母とも何とか飛行甲板を空けることには成功した。
 一〇〇〇時過ぎには、やはり乱れた編隊のまま帰投した第二次攻撃隊の収容作業が始まった。
 もともと搭載していた機体が出払っていたため、四空母の格納庫にはまだ少しの余裕があった。
 特に攻撃隊の被害が予想以上に多かったため、山口は第三次攻撃隊として放った五航戦攻撃隊も大きな損害を受けると予測。戦力の維持のため、出来るだけ他艦の所属機も海中に投棄せず、格納庫に収容するように命じた。
 主要な攻撃隊隊長の内、蒼龍の江草隆繁少佐は飛龍に収容され、赤城の村田重治少佐は翔鶴に収容された。飛龍所属の友永丈市大尉は、そのまま母艦である飛龍に着艦している。
 しかし一方で、加賀の楠美正少佐など一部の隊長は未帰還となっていた。
 それだけに、激しい戦闘であったことが窺えた。
 第一次、第二次攻撃隊の収容が完了した頃には、時刻は一一〇〇時(現地時間:一四〇〇時)を回っていた。
 山口は攻撃隊の収容が完了すると同時に、飛龍に対し第四次攻撃隊の発進準備を命じた。五航戦については、この後第三次攻撃隊の収容を控えているので時間的に厳しいだろうという判断であった。
 もちろん、整備員たちに休む暇はない。
 被弾時の火災に備えて乗員は長袖長ズボンの服を着ているべきであったが、密閉された灼熱の格納庫で作業を続ける者たちに、そのような理屈は通用しなかった。誰もが袖や裾の短い防暑服を汗まみれにしながら、第四次攻撃隊の発進準備に取りかかった。
 この時、山口はなるべく早く第四次攻撃隊の発進準備を完了させるため、調定に時間のかかる魚雷の搭載は後回しにして、とにかく艦爆隊だけでも出せるようにすることを命じていた。
 最低限、米空母の飛行甲板さえ破壊出来れば、こちらが空襲に晒される確率を下げることが出来る。
 川口益飛行長からの報告によれば、飛龍に着艦した九九艦爆の内、整備や修理が短時間で済む機体は十二機のみであるという。護衛の零戦については、九機が用意出来るとのこと。
 第四次攻撃隊の発進準備完了時刻は、一二四五時(現地時間:一五四五時)頃の予定であった。
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