51 / 105
51 第四次攻撃隊の準備
しおりを挟む
五航戦から第三次攻撃隊が発進して少し経った頃、第一次攻撃隊の帰還が始まった。時刻は〇九〇〇時(現地時間:一二〇〇時)を回ろうとしている頃であった。
飛行甲板が健在な空母は、飛龍、翔鶴、瑞鶴のみであった。
攻撃隊の帰還直前、三空母は燃料の欠乏しかけていた直掩機を収容し、さらに新たな直掩機を発艦させていたため、整備員たちは大わらわであった。何せ、上空の零戦には母艦に着艦出来なくなった赤城、加賀、蒼龍の零戦隊も存在していたのである。
それら直掩機を収容し、際どいところで新たな直掩機を上空に上げることが出来た。ひとまず、攻撃隊の収容中に上空が無防備となるという状況は避けられたわけである。
しかし、第一次攻撃隊の収容は想像以上の難事であった。
何せ、被弾して覚束ない飛行を続けている機体が無数に見えたからである。米艦隊の対空砲火の凄まじさを、山口らはこの時、初めて自覚したのであった。
そして、被弾から一時間半あまり。加賀飛行甲板の三分の二がようやく使用可能となった。
加賀は前部エレベーター前方に爆弾が命中したため、艦橋脇の遮風柵より後ろの飛行甲板は無傷であった。めくれ上がった前部エレベーターによって飛行甲板上の気流が乱れていることが予測されたが、この際、やむを得なかった。
山口は損傷が少なく、燃料に余裕のある機体は北方の五航戦に向かうように信号を出し、機体の損傷や搭乗員の負傷などで余裕のない機体から飛龍と加賀に着艦するよう命じた。
飛行甲板上には、整備員の他に手空きの乗員も待機させていた。損傷して修理不能と整備員が判断した機体を、即座に海中に投棄するためである。
第一次攻撃隊の収容後には、第二次攻撃隊の帰還も控えている。着艦後の作業は迅速に行わねばならなかった。
着艦した機体で無事なものは、即座にエレベーターを使って格納庫に下ろしていく。前部エレベーターを使用出来ない加賀も、中央部のエレベーターを使って機体を格納庫に収容していった。
一航戦の六空母の中で最も格納庫へ収容する作業の練度が高いと言われている飛龍では、江草隆繁少佐の九九艦爆を始め、他空母の所属機を多数、収容することに成功していた。
五航戦の二隻についても、この両艦はもともと艦載機の定数を満たしていなかったこともあり、格納庫内には若干の余裕があった。そこに、無事な機体を次々と下ろしていく。
残りの加賀も、前部三分の一が使用不能となった飛行甲板で攻撃隊の収容を行っていた。ただ、やはり気流の乱れから、三機ほどが着艦時に事故を起こしていた。
幸いにして艦橋に激突して加賀の指揮そのものを不能とするような重大事故は発生しなかったが、飛行甲板から転落しかけた機体によって、機銃座で配置に付いていた機銃員の数名が下敷きとなって死傷し、さらに高角砲の一基も事故機に激突されて一時、旋回不能となるなどの被害を受けている。
それでも、第二次攻撃隊が帰還する時刻には、四空母とも何とか飛行甲板を空けることには成功した。
一〇〇〇時過ぎには、やはり乱れた編隊のまま帰投した第二次攻撃隊の収容作業が始まった。
もともと搭載していた機体が出払っていたため、四空母の格納庫にはまだ少しの余裕があった。
特に攻撃隊の被害が予想以上に多かったため、山口は第三次攻撃隊として放った五航戦攻撃隊も大きな損害を受けると予測。戦力の維持のため、出来るだけ他艦の所属機も海中に投棄せず、格納庫に収容するように命じた。
主要な攻撃隊隊長の内、蒼龍の江草隆繁少佐は飛龍に収容され、赤城の村田重治少佐は翔鶴に収容された。飛龍所属の友永丈市大尉は、そのまま母艦である飛龍に着艦している。
しかし一方で、加賀の楠美正少佐など一部の隊長は未帰還となっていた。
それだけに、激しい戦闘であったことが窺えた。
第一次、第二次攻撃隊の収容が完了した頃には、時刻は一一〇〇時(現地時間:一四〇〇時)を回っていた。
山口は攻撃隊の収容が完了すると同時に、飛龍に対し第四次攻撃隊の発進準備を命じた。五航戦については、この後第三次攻撃隊の収容を控えているので時間的に厳しいだろうという判断であった。
もちろん、整備員たちに休む暇はない。
被弾時の火災に備えて乗員は長袖長ズボンの服を着ているべきであったが、密閉された灼熱の格納庫で作業を続ける者たちに、そのような理屈は通用しなかった。誰もが袖や裾の短い防暑服を汗まみれにしながら、第四次攻撃隊の発進準備に取りかかった。
この時、山口はなるべく早く第四次攻撃隊の発進準備を完了させるため、調定に時間のかかる魚雷の搭載は後回しにして、とにかく艦爆隊だけでも出せるようにすることを命じていた。
最低限、米空母の飛行甲板さえ破壊出来れば、こちらが空襲に晒される確率を下げることが出来る。
川口益飛行長からの報告によれば、飛龍に着艦した九九艦爆の内、整備や修理が短時間で済む機体は十二機のみであるという。護衛の零戦については、九機が用意出来るとのこと。
第四次攻撃隊の発進準備完了時刻は、一二四五時(現地時間:一五四五時)頃の予定であった。
飛行甲板が健在な空母は、飛龍、翔鶴、瑞鶴のみであった。
攻撃隊の帰還直前、三空母は燃料の欠乏しかけていた直掩機を収容し、さらに新たな直掩機を発艦させていたため、整備員たちは大わらわであった。何せ、上空の零戦には母艦に着艦出来なくなった赤城、加賀、蒼龍の零戦隊も存在していたのである。
それら直掩機を収容し、際どいところで新たな直掩機を上空に上げることが出来た。ひとまず、攻撃隊の収容中に上空が無防備となるという状況は避けられたわけである。
しかし、第一次攻撃隊の収容は想像以上の難事であった。
何せ、被弾して覚束ない飛行を続けている機体が無数に見えたからである。米艦隊の対空砲火の凄まじさを、山口らはこの時、初めて自覚したのであった。
そして、被弾から一時間半あまり。加賀飛行甲板の三分の二がようやく使用可能となった。
加賀は前部エレベーター前方に爆弾が命中したため、艦橋脇の遮風柵より後ろの飛行甲板は無傷であった。めくれ上がった前部エレベーターによって飛行甲板上の気流が乱れていることが予測されたが、この際、やむを得なかった。
山口は損傷が少なく、燃料に余裕のある機体は北方の五航戦に向かうように信号を出し、機体の損傷や搭乗員の負傷などで余裕のない機体から飛龍と加賀に着艦するよう命じた。
飛行甲板上には、整備員の他に手空きの乗員も待機させていた。損傷して修理不能と整備員が判断した機体を、即座に海中に投棄するためである。
第一次攻撃隊の収容後には、第二次攻撃隊の帰還も控えている。着艦後の作業は迅速に行わねばならなかった。
着艦した機体で無事なものは、即座にエレベーターを使って格納庫に下ろしていく。前部エレベーターを使用出来ない加賀も、中央部のエレベーターを使って機体を格納庫に収容していった。
一航戦の六空母の中で最も格納庫へ収容する作業の練度が高いと言われている飛龍では、江草隆繁少佐の九九艦爆を始め、他空母の所属機を多数、収容することに成功していた。
五航戦の二隻についても、この両艦はもともと艦載機の定数を満たしていなかったこともあり、格納庫内には若干の余裕があった。そこに、無事な機体を次々と下ろしていく。
残りの加賀も、前部三分の一が使用不能となった飛行甲板で攻撃隊の収容を行っていた。ただ、やはり気流の乱れから、三機ほどが着艦時に事故を起こしていた。
幸いにして艦橋に激突して加賀の指揮そのものを不能とするような重大事故は発生しなかったが、飛行甲板から転落しかけた機体によって、機銃座で配置に付いていた機銃員の数名が下敷きとなって死傷し、さらに高角砲の一基も事故機に激突されて一時、旋回不能となるなどの被害を受けている。
それでも、第二次攻撃隊が帰還する時刻には、四空母とも何とか飛行甲板を空けることには成功した。
一〇〇〇時過ぎには、やはり乱れた編隊のまま帰投した第二次攻撃隊の収容作業が始まった。
もともと搭載していた機体が出払っていたため、四空母の格納庫にはまだ少しの余裕があった。
特に攻撃隊の被害が予想以上に多かったため、山口は第三次攻撃隊として放った五航戦攻撃隊も大きな損害を受けると予測。戦力の維持のため、出来るだけ他艦の所属機も海中に投棄せず、格納庫に収容するように命じた。
主要な攻撃隊隊長の内、蒼龍の江草隆繁少佐は飛龍に収容され、赤城の村田重治少佐は翔鶴に収容された。飛龍所属の友永丈市大尉は、そのまま母艦である飛龍に着艦している。
しかし一方で、加賀の楠美正少佐など一部の隊長は未帰還となっていた。
それだけに、激しい戦闘であったことが窺えた。
第一次、第二次攻撃隊の収容が完了した頃には、時刻は一一〇〇時(現地時間:一四〇〇時)を回っていた。
山口は攻撃隊の収容が完了すると同時に、飛龍に対し第四次攻撃隊の発進準備を命じた。五航戦については、この後第三次攻撃隊の収容を控えているので時間的に厳しいだろうという判断であった。
もちろん、整備員たちに休む暇はない。
被弾時の火災に備えて乗員は長袖長ズボンの服を着ているべきであったが、密閉された灼熱の格納庫で作業を続ける者たちに、そのような理屈は通用しなかった。誰もが袖や裾の短い防暑服を汗まみれにしながら、第四次攻撃隊の発進準備に取りかかった。
この時、山口はなるべく早く第四次攻撃隊の発進準備を完了させるため、調定に時間のかかる魚雷の搭載は後回しにして、とにかく艦爆隊だけでも出せるようにすることを命じていた。
最低限、米空母の飛行甲板さえ破壊出来れば、こちらが空襲に晒される確率を下げることが出来る。
川口益飛行長からの報告によれば、飛龍に着艦した九九艦爆の内、整備や修理が短時間で済む機体は十二機のみであるという。護衛の零戦については、九機が用意出来るとのこと。
第四次攻撃隊の発進準備完了時刻は、一二四五時(現地時間:一五四五時)頃の予定であった。
9
あなたにおすすめの小説
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。
克全
歴史・時代
西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。
幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。
北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。
清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。
色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。
一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。
印旛沼開拓は成功するのか?
蝦夷開拓は成功するのか?
オロシャとは戦争になるのか?
蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか?
それともオロシャになるのか?
西洋帆船は導入されるのか?
幕府は開国に踏み切れるのか?
アイヌとの関係はどうなるのか?
幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる