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66 ラスト・ワン
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日米初の空母決戦となったミッドウェー海戦において、日本空母部隊と合衆国空母部隊最後の激突は、ウィルマー・E・ガラハー大尉率いるエンタープライズ攻撃隊から始まった。
彼の操るSBDドーントレスが一航艦の残存空母を発見したのは、一四一五時(現地時間:一七一五時)のことである。
母艦を飛び立ってから一時間十五分。
友永隊が飛龍を発進してから、三十分ほどが過ぎた時刻であった。記録によれば、ガラハーの針路が若干、北側にずれていたらしく(恐らくは太陽を背にするために日本艦隊の西側に回り込もうとした結果だろう)、日米最後の攻撃隊は互いに視認することなく入れ違いとなったのである。
西日によって、ガラハーたちの進む海面は金色に輝いていた。
その煌めく海の三〇浬前方に、ガラハーは探し求めていたジャップのラスト・ワンを発見したのである。
航跡から見て、ジャップ艦隊は西に向かっているようであった。つまり、自分たちの母艦であるエンタープライズから一旦、距離を取ろうとしているわけだ。
ジャップも、こちらのラスト・ワンたるエンタープライズを随分と警戒しているらしい。ガラハーはそう思った。こちらも向こうも、空母は残すところあと一隻。これは、ラスト・ワン同士の戦いだ。
ガラハーはジャップの見張り員に気付かれるのを警戒し、一旦、北側に編隊を導いた。そのまま断雲などを利用してジャップ艦隊と距離を取りつつ、同じく西に進んでいく。
大きく傾きつつある太陽を背にして攻撃を行うことで、少しでも奇襲効果を高めようとしたのである。
何せ、ガラハー隊には護衛の戦闘機は存在していない。とにかく、攻撃を成功させて生還する確率を高めなければならなかった。
しばらく、ジャップ艦隊に視認されないように距離を取りつつ西へと進み続ける。こちらは航空機、向こうは船。速度差は歴然としており、十五分も飛べば完全にジャップ艦隊の前方に出る。
この時、ガラハー隊は高度四〇〇〇メートルで進撃してきており、西に進む間にさらに高度を五八〇〇メートルにまで上げていた。
そうして太陽を背にしてジャップ艦隊に接近しつつ、その中にいるだろう空母を探す。そこで、ガラハーは思わず衝撃の呻きを上げることになった。
「何てこった!?」
夕日に照らされた眼下の海上を航行しているジャップ空母が、二隻見える。
「くそっ、ラスト・ワンが“ラスト・ツー”になっていやがる!」
エンタープライズ索敵機の報告時点では、確かにジャップ空母は残り一隻だったはずだ。そこから自分たちがジャップ艦隊上空に辿り着く間に、午前中の攻撃で被弾した空母の内、損傷の少なかった一隻が戦列に復帰したということだろうか。
だが、今はそのようなことを考えている場合ではなかった。
ジャップの空母が残り二隻である。この情報が持つ重要性を、ガラハーは正確に理解していた。
「おい、ホーネットのステビンズ隊の姿は見えないか?」
後部座席の偵察員に向かい、ガラハーは尋ねる。
ミッドウェーを発進したホーネット艦爆隊もまた、ジャップ空母を仕留めるためにこの空域に向かっているはずであった。
二つの艦爆隊でそれぞれ一隻ずつ爆撃すれば、この海戦は何とか引き分けに持ち込める。
「いえ、見えません」
だが、現実はそう上手くは運ばないようであった。ジャップ艦隊の上空に達しつつあるのは、自分たちだけのようだ。
「やむを得ん。我々は左の奴をやる。ショート大尉の第五爆撃隊は右に見える奴をやってくれ」
ガラハー隊は、エンタープライズ艦爆隊とヨークタウン艦爆隊の混成である。自分たち第六爆撃隊と、ウォレス・C・ショート大尉の第五爆撃隊で、それぞれ一隻を仕留める肚であった。
エンタープライズ攻撃隊が二手に分かれつつ、それぞれの目標へと接近しようとしたその瞬間であった。
「太陽の中に零戦!」
その叫びと共に、SBDの一機が爆散した。
彼の操るSBDドーントレスが一航艦の残存空母を発見したのは、一四一五時(現地時間:一七一五時)のことである。
母艦を飛び立ってから一時間十五分。
友永隊が飛龍を発進してから、三十分ほどが過ぎた時刻であった。記録によれば、ガラハーの針路が若干、北側にずれていたらしく(恐らくは太陽を背にするために日本艦隊の西側に回り込もうとした結果だろう)、日米最後の攻撃隊は互いに視認することなく入れ違いとなったのである。
西日によって、ガラハーたちの進む海面は金色に輝いていた。
その煌めく海の三〇浬前方に、ガラハーは探し求めていたジャップのラスト・ワンを発見したのである。
航跡から見て、ジャップ艦隊は西に向かっているようであった。つまり、自分たちの母艦であるエンタープライズから一旦、距離を取ろうとしているわけだ。
ジャップも、こちらのラスト・ワンたるエンタープライズを随分と警戒しているらしい。ガラハーはそう思った。こちらも向こうも、空母は残すところあと一隻。これは、ラスト・ワン同士の戦いだ。
ガラハーはジャップの見張り員に気付かれるのを警戒し、一旦、北側に編隊を導いた。そのまま断雲などを利用してジャップ艦隊と距離を取りつつ、同じく西に進んでいく。
大きく傾きつつある太陽を背にして攻撃を行うことで、少しでも奇襲効果を高めようとしたのである。
何せ、ガラハー隊には護衛の戦闘機は存在していない。とにかく、攻撃を成功させて生還する確率を高めなければならなかった。
しばらく、ジャップ艦隊に視認されないように距離を取りつつ西へと進み続ける。こちらは航空機、向こうは船。速度差は歴然としており、十五分も飛べば完全にジャップ艦隊の前方に出る。
この時、ガラハー隊は高度四〇〇〇メートルで進撃してきており、西に進む間にさらに高度を五八〇〇メートルにまで上げていた。
そうして太陽を背にしてジャップ艦隊に接近しつつ、その中にいるだろう空母を探す。そこで、ガラハーは思わず衝撃の呻きを上げることになった。
「何てこった!?」
夕日に照らされた眼下の海上を航行しているジャップ空母が、二隻見える。
「くそっ、ラスト・ワンが“ラスト・ツー”になっていやがる!」
エンタープライズ索敵機の報告時点では、確かにジャップ空母は残り一隻だったはずだ。そこから自分たちがジャップ艦隊上空に辿り着く間に、午前中の攻撃で被弾した空母の内、損傷の少なかった一隻が戦列に復帰したということだろうか。
だが、今はそのようなことを考えている場合ではなかった。
ジャップの空母が残り二隻である。この情報が持つ重要性を、ガラハーは正確に理解していた。
「おい、ホーネットのステビンズ隊の姿は見えないか?」
後部座席の偵察員に向かい、ガラハーは尋ねる。
ミッドウェーを発進したホーネット艦爆隊もまた、ジャップ空母を仕留めるためにこの空域に向かっているはずであった。
二つの艦爆隊でそれぞれ一隻ずつ爆撃すれば、この海戦は何とか引き分けに持ち込める。
「いえ、見えません」
だが、現実はそう上手くは運ばないようであった。ジャップ艦隊の上空に達しつつあるのは、自分たちだけのようだ。
「やむを得ん。我々は左の奴をやる。ショート大尉の第五爆撃隊は右に見える奴をやってくれ」
ガラハー隊は、エンタープライズ艦爆隊とヨークタウン艦爆隊の混成である。自分たち第六爆撃隊と、ウォレス・C・ショート大尉の第五爆撃隊で、それぞれ一隻を仕留める肚であった。
エンタープライズ攻撃隊が二手に分かれつつ、それぞれの目標へと接近しようとしたその瞬間であった。
「太陽の中に零戦!」
その叫びと共に、SBDの一機が爆散した。
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