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92 戦艦ワシントンの焦燥
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戦艦ワシントンの船体に、二度目の敵十六インチ砲弾による衝撃が走る。
「ダメージ・リポート!」
「後部甲板に被弾! カタパルトおよびクレーン全壊!」
「第一煙突付近に被弾! 機関出力、低下します!」
「右舷対空方位盤、全壊!」
陸奥の第九射として放たれた八発の四十一センチ砲弾の内、命中したのは二発。
一発は後部飛行甲板に命中し、水偵用のカタパルトとクレーンを完全に破壊した。
もう一発は両用砲が並べられている艦中央部に命中、そこにあったMk37対空方位盤を破壊したまま第一煙突の煙路まで貫通、そこで信管を作動させて爆風を機関部に逆流させた。
この衝撃によって、合衆国海軍の誇る高温高圧缶八基の内、二基の出力が低下、速力を二十四ノットにまで低下させることになった。
「機関室、復旧急げ! 後続のノースカロライナにも警告を出せ!」
「アイ・サー!」
下手をすれば、速力の低下したワシントンにノースカロライナが衝突しかねない。ただちにTBSと信号でノースカロライナにワシントンの機関出力低下が知らされる。
「弾着、今!」
そして、被弾前に発射した第五射の弾着を知らせる時計員の声が響く。
「遠、遠、近! ただ今の射撃による命中弾なし!」
「急げ、ハーベイ!」
デイビスは焦燥を滲ませた声で砲術長を叱責した。レーダーによる測距を用いてなお、目標を夾叉するに至っていないのである。
もっとも、これには無理からぬ面も存在していた。
ノースカロライナ級に搭載されたMk6四十五口径十六インチ砲の砲口初速は、SHSを用いた場合、七〇一メートル毎秒。
一方の長門型戦艦の四十五口径三年式四十一センチ砲は、重量一〇二〇キログラムの九一式徹甲弾を砲口初速七九〇メートル毎秒で撃ち出すことが出来る。
ノースカロライナ級(と、その後継艦であるサウスダコタ級)の主砲は、遠距離砲戦における貫通力を強化した一方、初速の低下と砲弾重量の増加によって従来型の十六インチ砲よりも射撃精度を悪化させていたのである。
旧式のはずのナガト・クラスに、合衆国の最新鋭戦艦たるワシントンが圧倒されつつある。その現実は、デイビス艦長やウォルシュ砲術長の胸の内に確実に焦燥を呼び起こしていた。
「ダメージ・リポート!」
「後部甲板に被弾! カタパルトおよびクレーン全壊!」
「第一煙突付近に被弾! 機関出力、低下します!」
「右舷対空方位盤、全壊!」
陸奥の第九射として放たれた八発の四十一センチ砲弾の内、命中したのは二発。
一発は後部飛行甲板に命中し、水偵用のカタパルトとクレーンを完全に破壊した。
もう一発は両用砲が並べられている艦中央部に命中、そこにあったMk37対空方位盤を破壊したまま第一煙突の煙路まで貫通、そこで信管を作動させて爆風を機関部に逆流させた。
この衝撃によって、合衆国海軍の誇る高温高圧缶八基の内、二基の出力が低下、速力を二十四ノットにまで低下させることになった。
「機関室、復旧急げ! 後続のノースカロライナにも警告を出せ!」
「アイ・サー!」
下手をすれば、速力の低下したワシントンにノースカロライナが衝突しかねない。ただちにTBSと信号でノースカロライナにワシントンの機関出力低下が知らされる。
「弾着、今!」
そして、被弾前に発射した第五射の弾着を知らせる時計員の声が響く。
「遠、遠、近! ただ今の射撃による命中弾なし!」
「急げ、ハーベイ!」
デイビスは焦燥を滲ませた声で砲術長を叱責した。レーダーによる測距を用いてなお、目標を夾叉するに至っていないのである。
もっとも、これには無理からぬ面も存在していた。
ノースカロライナ級に搭載されたMk6四十五口径十六インチ砲の砲口初速は、SHSを用いた場合、七〇一メートル毎秒。
一方の長門型戦艦の四十五口径三年式四十一センチ砲は、重量一〇二〇キログラムの九一式徹甲弾を砲口初速七九〇メートル毎秒で撃ち出すことが出来る。
ノースカロライナ級(と、その後継艦であるサウスダコタ級)の主砲は、遠距離砲戦における貫通力を強化した一方、初速の低下と砲弾重量の増加によって従来型の十六インチ砲よりも射撃精度を悪化させていたのである。
旧式のはずのナガト・クラスに、合衆国の最新鋭戦艦たるワシントンが圧倒されつつある。その現実は、デイビス艦長やウォルシュ砲術長の胸の内に確実に焦燥を呼び起こしていた。
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