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11章 身を隠す
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マデルが王室魔法使いだとジランチェニシスに知られるのは拙い。知られたらヤツを王都に連れて行くのが難しくなる。一気に警戒され、下手をすると行方をくらませてしまうかもしれない。だからジランチェニシスには、屋敷に忍び込んで人々を解放したのはクルテだと言った。
マデルとカッチーも承知、だが問題もあった。クルテも一緒に食事を摂るのにいつの間にって事だ。実際には姿を消すことでどうにもでもなるが、マデルとカッチーには『調理してるとこが見たい』と厨房に行って裏口から出たことにすると言った。
「ヤツ、怒らなかった?」
サンドイッチを摘まんでマデルが言った。ジョインズに特別に作って貰ったサンドイッチだ。食事を終わらせたのはピエッチェだけ、なにか料理を持ち帰りたいと頼んだら紙箱に入れて持たせてくれた。三人前だ。
マデルが言うヤツとはジランチェニシスを示す。
「なんだか知らないけど、アイツ、クルテのことをえらく気に入っててね。好きにしなさいって、ニコニコしてた」
ピエッチェが苦々しげに答える。
厨房に行くと言って中座したクルテ、戻ってきて『街人を解放した』と言った時のジランチェニシスの反応をマデルが訊いた。仲間を騙す作り話に胸が痛むが、その痛みがいい感じにピエッチェの表情を曇らせる。
「クルテさん、モテますねぇ」
サンドイッチをパクつきながらカッチーが茶化した。
「モテたわけじゃない――クルテの魔法に興味があるだけさ」
詰まらなさそうな顔でお茶を啜るピエッチェをクルテが見上げた。サンドイッチの検品は終わったようだ。
「なんでピエッチェはお茶だけ?」
「さっき、ジョインズの店で食ったからな。おまえは厨房に行っててロクに食ってない。だから今、ちゃんと食え」
本当は姿をバンクルに変えていたクルテは一切食べてない。だけどマデルとカッチーにバンクルに化けていたなんて言えやしない。
「ふぅん……」
クルテは不満そうだ。
「ジランチェニシスも言ってた。一人で食べるより誰かと食べたほうが美味しい」
「その誰かがマデルとカッチーじゃ不満なのか?」
「さらにピエッチェが居たらもっと美味しい」
クルテがニッコリ微笑む。見ている二人はニヤニヤしている。この、くそっ!
「判ったよ。それで? どれを食えばいいんだ?」
イヤそうな顔でクルテを見るが、実はそんなに嫌でもない。だってきっと、クルテは
「んっとね、この赤っぽいのが挟んであるヤツ」
嬉しそうにニンマリする。その顔が見られるならイヤなはずがない。
「これか……ハムだな。嫌いだったっけ? ウインナーと大差ないぞ?」
嫌いなものを寄こしたんだってのは判ってる。でなきゃ理解できないものだ。
「ウインナーは好き。でも沢山は食べられない。他はキュウリ、トマト、チーズ、リンゴ、たまご……どれも大好き」
なるほど、検品しながら取捨選択したか。
ピエッチェがハムサンドを取ると、クルテもサンドイッチを食べ始めた。これで暫く温和しい。
「それで、だ……」
ピエッチェが打ち合わせを再開した。
「ジランチェニシスのほかに、もう一人同行者がいる。ザジリレン王カテロヘブだ」
「えっ……?」
蒼褪めるマデルに顔色一つ変えずピエッチェが続ける。
「が、ソイツは偽者だ――ザジリレンの民ならカテロヘブの顔を知っている。つまりヤツはザジリレンの民ではない」
「ローシェッタ国民だってこと?」
「そこまでは判らない。囚われた人々を目覚めさせに行った時、開けるなと言った部屋が三部屋あっただろう? その中の一部屋に幽閉されてた。他の人たちと同じで夢見の魔法を掛けられている」
「他の二部屋には誰が居るんですか?」
これはカッチー、
「ただの空き部屋、少しでも手間を減らそうと思ったんだよ」
ピエッチェの答えに少しがっかりしたようだ。
「そいつは夢を見させたまま王都に連れて行こうと考えている。明日、清風の丘・ジランチェニシスの屋敷で合流する手はずになっている」
「偽者を王都に連れて行って何をするつもり?」
マデルがニヤリと笑う。ピエッチェがニヤリと笑い返す。
「カテロヘブを連れてきたと言って、ローシェッタ国王との目通りを願い出る」
途端にマデルの顔から笑みが消えた。
「あんた……わたしとの約束は? フレヴァンスさまはどうするのよ?」
震える声で訴えるマデル、フレヴァンスを救出したらローシェッタ国王に会いたい、そんな約束だ。二人を見て、カッチーがオドオドしている。
うん、とピエッチェが頷いた。
「安心しろ。フレヴァンスも王宮に連れて行く」
「えっ?」
「だけど、まだ会わせてあげられない」
「どういうこと?」
さて、どう話せばいいか?
絵のこともマデルとカッチーにはまだ話していない。絵の中からフレヴァンスを助け出す見通しがついてから話したいと思っていた。そうしなければ、マデルはきっとさらに疲弊する。責任を感じて、ラクティメシッスとの話もなかったことにしてしまいそうだ。
「俺を信用してくれないか? 王女の居所は判っている。必ず王宮に、元気な姿で連れて帰る。約束だ」
でももし、絵からフレヴァンスを出す方法が見つからなかったら?
(大丈夫、なんとかなる)
頭の中でクルテの声、いつもだったら食事中は周囲に無関心のくせに?
(なんともなりそうもないから困ってるんじゃないか)
(魔法封じを試していない)
(あの絵の魔法はきっとザジリレンの魔法封じが通用しない。ぬいぐるみの魔物を封じた時、あの近さなら何か影響が出るはずなのに何もなかった)
(決めつけるな。物は試しと言うじゃないか――まぁ、試すのはララティスチャングに着いてからってのは変更しないでいい)
王女を庶民の馬車に乗せるわけにはいかない。庶民の馬車に乗る王女を誰かに見られるわけにもいかない。だから絵はあのまま運ぶことにしている。
(なにしろ、自分だけでなんとかしようとするな。王宮にはラクティメシッスがいる。たまには他人の力も信じろ。カティの知らない何かがあるかもしれないぞ)
(確かにラクティメシッスは優れた魔法使いだ。だけど、魔法解除に於いてザジリレンの魔法封じ以上のものはない)
(ふん! ザジリレンを誇りに思うのはいい。でも拘泥するのはよくない)
クルテがぱくりとたまごのサンドイッチに嚙り付いた。きっともう、ピエッチェが心で話しかけても返事はないだろう。
クルテとの脳内会話の間もマデルを見つめ続けた。信用してくれと言う自分の言葉は誤魔化しだと、痛いほど判っている。それでも信じさせたい。だからこそ、視線を逸らせられない。
マデルもピエッチェを見詰めていた。睨んでいると言ってもいい。マデルの視線から刺々しいものが消えたのはクルテが食べかけのサンドイッチを皿に置き、なぜかピエッチェに撓垂れかかった時だった。
マデルの口が動き何か言おうとする。が、何も言わずに閉じて替わりに溜息をついた。
「ピエッチェは間違えない、か」
呟くようにマデルが言った。
「ピエッチェはいつも正しい。そうクルテに言われてジランチェニシスと同行するのを承知したわ」
再び自分に向けられたマデルの視線にピエッチェが身動ぐ。マデルは何が言いたいんだろう?
「いいわ、今さらよ――ジランチェニシスと偽カテロヘブ、二人と同行しようじゃないの。もちろん、王都についてからもきっちり計画してるのよね?」
ニヤリとするマデル、
「あぁ、もちろんだ」
ピエッチェが頷いた。
ピエッチェの計画を聞いてマデルが考え込む。
「なるほどね……でも、それだと王宮内部にも協力者が欲しいわね。街の噂が本当ならザジリレンとは険悪なはずだもの。まして政治的手続きを踏んでない隣国王に会う気になるかな?」
「行方不明のザジリレン王を連れてきたんだ。興味を持つんじゃないか?」
「そうかもしれないけど……」
「マデルなら、何か伝手がありそうだけど?」
「そうね……兄が健康を取り戻していたらなんとかしてくれると思う。だけど父はきっとダメ、そんな怪しいヤツを王宮に入れるなって怒る」
「マデルさんの父上と兄上は王宮に影響力を持ってるんですか?」
横からカッチーが口を挟む。それには、
「まぁ、それなりにね」
王室魔法使いの総取締だなどとは言わず、お茶を濁すマデルだ。
「美味しかった……」
やっと食べ終わったクルテが溜息をつく。
「食べ過ぎたかも。ピエッチェが一切れしか食べてくれなかったから」
なんで俺のせいにするんだよ? それなら他も食べてくれって言えばいいだろうが?
「でも、他のは自分で食べたかった。だからピエッチェのせいじゃない」
そしてニッコリ笑う。
「王宮にはきっと入れる。もし入れなくってもマデルのせいじゃない。気にしなくていい」
とマデルに言った。
「クルテ、あんた、取っ散らかってるけど、優しい子だよね」
「取っ散らかってるって何?――そんな事よりラクティメシッスは本当に王都に居るのかな?」
「優しいって言ったのを撤回してもいい?」
「しなくていいよ。別に連絡取れないのを責めたりしないし、それもマデルのせいじゃない。音沙汰なしのラクティメシッスが悪い」
「彼を悪く言わないで、忙しいのよ」
「マデルはラクティメシッスが大好き」
「もう! いいから話を元に戻そう。王宮のことは向こうに着いてから考えればいいよ」
「そしてラクティメシッスはマデルがだぁい好き」
「クルテったら!」
「だからね」
クルテがマデルを真面目な顔で見た。
「マデルが王都に帰ってきたと知って、ラクティメシッスが接触してこないはずはない――と、わたしは思う」
「あ……」
ポカンとクルテを見るマデルを、カッチーがこっそり笑った――
ギュリューから王都ララティスチャングへはモフッサ街道を行く。セレンヂュゲやモフッサ、そのほか小さな村をを経由して馬車でも四日がかりだ。あるいはグリュンパに一度出て、通称『王の道』と呼ばれるカテール街道を使う方法もある。コゲゼリテからなら三日で行けるが、ギュリューからならやはり四日かかる。
なぜ『王の道』と呼ばれるか? ザジリレン建国の王カテルクルストがローシェッタを去るにあたって、新王都ララティスチャングと旧王都ギュリューの往来の便を考えて建設した道だからだ。カテール街道の名はカテルクルストに由来する。
だが、ギュリューには通じていない。新たに建国する王子に膨大な費用を負担させるのに気が引けたのだとも、遷都する前のギュリューにカテルクルストの影響力を持ち込みたくなかったのだとも言われている。
「どっちも同じ日数、だったら『王の道』を行こう」
クルテが言えば、マデルやカッチーは異を唱えたりしない。ピエッチェだって反対する理由がない。でも……
クルテとカテルクルストの関係が気になっていた。
マデルとカッチーも承知、だが問題もあった。クルテも一緒に食事を摂るのにいつの間にって事だ。実際には姿を消すことでどうにもでもなるが、マデルとカッチーには『調理してるとこが見たい』と厨房に行って裏口から出たことにすると言った。
「ヤツ、怒らなかった?」
サンドイッチを摘まんでマデルが言った。ジョインズに特別に作って貰ったサンドイッチだ。食事を終わらせたのはピエッチェだけ、なにか料理を持ち帰りたいと頼んだら紙箱に入れて持たせてくれた。三人前だ。
マデルが言うヤツとはジランチェニシスを示す。
「なんだか知らないけど、アイツ、クルテのことをえらく気に入っててね。好きにしなさいって、ニコニコしてた」
ピエッチェが苦々しげに答える。
厨房に行くと言って中座したクルテ、戻ってきて『街人を解放した』と言った時のジランチェニシスの反応をマデルが訊いた。仲間を騙す作り話に胸が痛むが、その痛みがいい感じにピエッチェの表情を曇らせる。
「クルテさん、モテますねぇ」
サンドイッチをパクつきながらカッチーが茶化した。
「モテたわけじゃない――クルテの魔法に興味があるだけさ」
詰まらなさそうな顔でお茶を啜るピエッチェをクルテが見上げた。サンドイッチの検品は終わったようだ。
「なんでピエッチェはお茶だけ?」
「さっき、ジョインズの店で食ったからな。おまえは厨房に行っててロクに食ってない。だから今、ちゃんと食え」
本当は姿をバンクルに変えていたクルテは一切食べてない。だけどマデルとカッチーにバンクルに化けていたなんて言えやしない。
「ふぅん……」
クルテは不満そうだ。
「ジランチェニシスも言ってた。一人で食べるより誰かと食べたほうが美味しい」
「その誰かがマデルとカッチーじゃ不満なのか?」
「さらにピエッチェが居たらもっと美味しい」
クルテがニッコリ微笑む。見ている二人はニヤニヤしている。この、くそっ!
「判ったよ。それで? どれを食えばいいんだ?」
イヤそうな顔でクルテを見るが、実はそんなに嫌でもない。だってきっと、クルテは
「んっとね、この赤っぽいのが挟んであるヤツ」
嬉しそうにニンマリする。その顔が見られるならイヤなはずがない。
「これか……ハムだな。嫌いだったっけ? ウインナーと大差ないぞ?」
嫌いなものを寄こしたんだってのは判ってる。でなきゃ理解できないものだ。
「ウインナーは好き。でも沢山は食べられない。他はキュウリ、トマト、チーズ、リンゴ、たまご……どれも大好き」
なるほど、検品しながら取捨選択したか。
ピエッチェがハムサンドを取ると、クルテもサンドイッチを食べ始めた。これで暫く温和しい。
「それで、だ……」
ピエッチェが打ち合わせを再開した。
「ジランチェニシスのほかに、もう一人同行者がいる。ザジリレン王カテロヘブだ」
「えっ……?」
蒼褪めるマデルに顔色一つ変えずピエッチェが続ける。
「が、ソイツは偽者だ――ザジリレンの民ならカテロヘブの顔を知っている。つまりヤツはザジリレンの民ではない」
「ローシェッタ国民だってこと?」
「そこまでは判らない。囚われた人々を目覚めさせに行った時、開けるなと言った部屋が三部屋あっただろう? その中の一部屋に幽閉されてた。他の人たちと同じで夢見の魔法を掛けられている」
「他の二部屋には誰が居るんですか?」
これはカッチー、
「ただの空き部屋、少しでも手間を減らそうと思ったんだよ」
ピエッチェの答えに少しがっかりしたようだ。
「そいつは夢を見させたまま王都に連れて行こうと考えている。明日、清風の丘・ジランチェニシスの屋敷で合流する手はずになっている」
「偽者を王都に連れて行って何をするつもり?」
マデルがニヤリと笑う。ピエッチェがニヤリと笑い返す。
「カテロヘブを連れてきたと言って、ローシェッタ国王との目通りを願い出る」
途端にマデルの顔から笑みが消えた。
「あんた……わたしとの約束は? フレヴァンスさまはどうするのよ?」
震える声で訴えるマデル、フレヴァンスを救出したらローシェッタ国王に会いたい、そんな約束だ。二人を見て、カッチーがオドオドしている。
うん、とピエッチェが頷いた。
「安心しろ。フレヴァンスも王宮に連れて行く」
「えっ?」
「だけど、まだ会わせてあげられない」
「どういうこと?」
さて、どう話せばいいか?
絵のこともマデルとカッチーにはまだ話していない。絵の中からフレヴァンスを助け出す見通しがついてから話したいと思っていた。そうしなければ、マデルはきっとさらに疲弊する。責任を感じて、ラクティメシッスとの話もなかったことにしてしまいそうだ。
「俺を信用してくれないか? 王女の居所は判っている。必ず王宮に、元気な姿で連れて帰る。約束だ」
でももし、絵からフレヴァンスを出す方法が見つからなかったら?
(大丈夫、なんとかなる)
頭の中でクルテの声、いつもだったら食事中は周囲に無関心のくせに?
(なんともなりそうもないから困ってるんじゃないか)
(魔法封じを試していない)
(あの絵の魔法はきっとザジリレンの魔法封じが通用しない。ぬいぐるみの魔物を封じた時、あの近さなら何か影響が出るはずなのに何もなかった)
(決めつけるな。物は試しと言うじゃないか――まぁ、試すのはララティスチャングに着いてからってのは変更しないでいい)
王女を庶民の馬車に乗せるわけにはいかない。庶民の馬車に乗る王女を誰かに見られるわけにもいかない。だから絵はあのまま運ぶことにしている。
(なにしろ、自分だけでなんとかしようとするな。王宮にはラクティメシッスがいる。たまには他人の力も信じろ。カティの知らない何かがあるかもしれないぞ)
(確かにラクティメシッスは優れた魔法使いだ。だけど、魔法解除に於いてザジリレンの魔法封じ以上のものはない)
(ふん! ザジリレンを誇りに思うのはいい。でも拘泥するのはよくない)
クルテがぱくりとたまごのサンドイッチに嚙り付いた。きっともう、ピエッチェが心で話しかけても返事はないだろう。
クルテとの脳内会話の間もマデルを見つめ続けた。信用してくれと言う自分の言葉は誤魔化しだと、痛いほど判っている。それでも信じさせたい。だからこそ、視線を逸らせられない。
マデルもピエッチェを見詰めていた。睨んでいると言ってもいい。マデルの視線から刺々しいものが消えたのはクルテが食べかけのサンドイッチを皿に置き、なぜかピエッチェに撓垂れかかった時だった。
マデルの口が動き何か言おうとする。が、何も言わずに閉じて替わりに溜息をついた。
「ピエッチェは間違えない、か」
呟くようにマデルが言った。
「ピエッチェはいつも正しい。そうクルテに言われてジランチェニシスと同行するのを承知したわ」
再び自分に向けられたマデルの視線にピエッチェが身動ぐ。マデルは何が言いたいんだろう?
「いいわ、今さらよ――ジランチェニシスと偽カテロヘブ、二人と同行しようじゃないの。もちろん、王都についてからもきっちり計画してるのよね?」
ニヤリとするマデル、
「あぁ、もちろんだ」
ピエッチェが頷いた。
ピエッチェの計画を聞いてマデルが考え込む。
「なるほどね……でも、それだと王宮内部にも協力者が欲しいわね。街の噂が本当ならザジリレンとは険悪なはずだもの。まして政治的手続きを踏んでない隣国王に会う気になるかな?」
「行方不明のザジリレン王を連れてきたんだ。興味を持つんじゃないか?」
「そうかもしれないけど……」
「マデルなら、何か伝手がありそうだけど?」
「そうね……兄が健康を取り戻していたらなんとかしてくれると思う。だけど父はきっとダメ、そんな怪しいヤツを王宮に入れるなって怒る」
「マデルさんの父上と兄上は王宮に影響力を持ってるんですか?」
横からカッチーが口を挟む。それには、
「まぁ、それなりにね」
王室魔法使いの総取締だなどとは言わず、お茶を濁すマデルだ。
「美味しかった……」
やっと食べ終わったクルテが溜息をつく。
「食べ過ぎたかも。ピエッチェが一切れしか食べてくれなかったから」
なんで俺のせいにするんだよ? それなら他も食べてくれって言えばいいだろうが?
「でも、他のは自分で食べたかった。だからピエッチェのせいじゃない」
そしてニッコリ笑う。
「王宮にはきっと入れる。もし入れなくってもマデルのせいじゃない。気にしなくていい」
とマデルに言った。
「クルテ、あんた、取っ散らかってるけど、優しい子だよね」
「取っ散らかってるって何?――そんな事よりラクティメシッスは本当に王都に居るのかな?」
「優しいって言ったのを撤回してもいい?」
「しなくていいよ。別に連絡取れないのを責めたりしないし、それもマデルのせいじゃない。音沙汰なしのラクティメシッスが悪い」
「彼を悪く言わないで、忙しいのよ」
「マデルはラクティメシッスが大好き」
「もう! いいから話を元に戻そう。王宮のことは向こうに着いてから考えればいいよ」
「そしてラクティメシッスはマデルがだぁい好き」
「クルテったら!」
「だからね」
クルテがマデルを真面目な顔で見た。
「マデルが王都に帰ってきたと知って、ラクティメシッスが接触してこないはずはない――と、わたしは思う」
「あ……」
ポカンとクルテを見るマデルを、カッチーがこっそり笑った――
ギュリューから王都ララティスチャングへはモフッサ街道を行く。セレンヂュゲやモフッサ、そのほか小さな村をを経由して馬車でも四日がかりだ。あるいはグリュンパに一度出て、通称『王の道』と呼ばれるカテール街道を使う方法もある。コゲゼリテからなら三日で行けるが、ギュリューからならやはり四日かかる。
なぜ『王の道』と呼ばれるか? ザジリレン建国の王カテルクルストがローシェッタを去るにあたって、新王都ララティスチャングと旧王都ギュリューの往来の便を考えて建設した道だからだ。カテール街道の名はカテルクルストに由来する。
だが、ギュリューには通じていない。新たに建国する王子に膨大な費用を負担させるのに気が引けたのだとも、遷都する前のギュリューにカテルクルストの影響力を持ち込みたくなかったのだとも言われている。
「どっちも同じ日数、だったら『王の道』を行こう」
クルテが言えば、マデルやカッチーは異を唱えたりしない。ピエッチェだって反対する理由がない。でも……
クルテとカテルクルストの関係が気になっていた。
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