魔王城近くのNPCは勇者に『お引き取り願います』〜勇者が10年間も魔王討伐に来ないので、俺が魔王を倒しておきます〜

R.l

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第一章

第十話 袖を分つ。

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  早天そうてん 、 残月ざんげつが弱々しく 水面みなもにうつる頃。

 ルディは寝床の上で眠たい目を擦る。

「ふぁああ。なんだぁ……眩しい……」

 睡眠を妨害する程の光に文句をこぼす。
 光源を辿るにベッドの左手に置かれる棚の上……

「父さんの小剣…?」

 なぜ剣が光っているのかと不思議に思うが……
 まぁ、そんな時もあるか。
 ルディの十年間の内では特に珍しい事でもなかった。

「こういう時のパターンは……」

 そう言って寝床より這い出たルディは小剣の剣身を鞘より引き抜く。

「何か俺に用があるから呼び出したんだろ?」

 って、何も用がなかったら 不貞寝ふてねしてやるからな。
 しかし、ルディの予測は的中することとなり、

「お、文字術式が発動した…なになに?——」

 術式が発動して、剣身に浮かび上がるは


『——ルディ
 これが発動しているという事は私が死んでから十年くらいの時が経ったのだろう。
 それが、老衰かはたまた病死か今の私には分かりかねるが』

「残念、戦死ですよ。父さん」

『遠い異国に生まれ育ち——旅の末に愛おしい人に出逢い。
 愛おしい二人の顔を並んで見た事は今の一秒たりとも忘れていない……』

『——お前の事を一人にしてすまないと』

「いえいえ、ルディは充分に楽しかったです」

『心ではなく口に出せていたら……と今更になって後悔している……』

「大丈夫ですよ。言葉は心にあれば」

『——でも、これだけは伝えておきたい』

『——私の宝物はルディとガミーユ以外の何者でもないという事を』

「…………」

 ルディは小剣と髪飾り。
 そして、その間に飾ってある、自身の首飾りに目を向ける。

 少し間が開き剣身は再び文字を浮かべる。

『……少し術式の文字が余ったな』

『——そうだ、ルディ』

『——暇があれば、私の故郷に行ってみろ』

『—— ---- という者達に話しかければ』

「何だ?文字が上手く浮かび上がって……」

『——"この『世界の役割』が理解できる"』

「——はっ?」

 ルディの驚愕の表情に剣身の光が収束していく。

「何だ……最後の爆弾発言…………」

 あー。

「とりあえず、 不貞寝ふてねしよ」

 ■■■

「……おい」
「はっ!」

 これは七大陸の何処か。
 とある魔族の根城。

「例の"街"の首尾は」

  威丈高いたけだかに振る舞う一人に
 下僕のように 傅かしず一人が

「はっ。現在、人類の 勇者共ゴミどもが結界を張り調査を行なっている模様で——」

 応える——しかし。

「——そんな事は聞いていない……」

 ——主の態度に絶対的な圧迫を受ける。

「し、失礼いたしました…げ、現在、フロッグ様の計らいにて、テニオス周囲の魔物は完全に掌握されました」
「ほぅ……」
「『例のモノ』は誰にも発見される事なく回収される可能性が"高いか"と……」

 下僕はすぐさまに畏まり、主の要望に応える——

「『高い?』だと…?」
「——ひっ!!」

 ——が……それは失敗に終わり下僕の視線は地へと堕ちるのであった……

「使えぬ者め。代わりを呼べ。この様なゴミはいらん」

 数日という長い期間仕えることのできた 僕しもべは、二つのミスで断頭され、即座に代わりが現れる。

「——私の願いは絶対だ——」

 ■■■

「なにぃ?テニオスに戻るだと?」

 その日の朝ルディはアリシアにテニオスへと向かう旨を伝えに来た。

「ダメだダメだ。いくら可愛いお前の頼みでもそれは聞いてやれない」
「何故ですか?」
「危険だからに決まってるじゃないっ!!」

 ルディの問いに間髪を入れぬ勢いで怒鳴るルリス。

「ルリス、僕はあの場所でじゅ——半年も過ごしたんだ。だから——」
「『だから』何だ?危険なことには代わりないだろ?」
「ルディ、お母さんの言うとおりだよ」

 ん~これは。
 理屈で話をしても俺の意見は通らないな。

「ルディよ……」

 ルディ対 母娘おやこの構図に一つの助け舟がやってくる。

「ジジ村長……——いたんですね?」
「ずっとおったわいっ!!」

 ルディとジジはふざけたことを言っているが、二人の眼光は至って真剣である。

「それより、お主……なぜに、再び魔境に向かうのだ?」
「先程も言いましたが——僕は勇者・キオナ様にもう一度会いに行きたいのです」
「して、要件は?」

 ルディが危険を冒してまで勇者キオナに会いたい訳。

「——父の故郷を探すためです」

『世界の役割』——父の形見に記された文字術式。
 何の偶然か因果かは分からないが…… 息子ルディもその父も人々には"役割"があると考えた——
 この世に自分と他に同じ考えを持つ者がいるならば、その者の言葉に手がかりがあるならば。

 ——分かるかもしれない。

 ——もう一人の 自分ルディが存在する意味が——

 ■■■

 ルディの目的を聞いたジジは彼を自宅へと帰した。

「どうするつもりだ親父。ルディの奴、あのままだと勝手に行く勢いだぞ?」

「……儂は………止めるつもりはない——」
「「はっ!?」」

「何言ってんだ親父っ!?良いわけねぇだろ!!そこらの兎狩りとはちげぇんだぞ!?」
「そうだよっ!!戦争の時みたいに軍の人達が付ききっきりでルディを守ってくれるわけでもない!!」

「二人とも落ち着け……儂じゃって心配がない訳ではない」
「——ならっ!」
「——しかしの」

 ジジは娘と孫を真っ直ぐと見つめ、何かを決したように二人に伝える。

「——他者の人生を咎めれるほど、人は偉くない……」

「「…………」」

 沈黙に悲しむ 母娘おやこに優しい声色で続ける。

「歳は若いが 彼奴あやつには 凌雲りょううんの念がある——」

 ジジは彼の纏う意気は、決して曲げられぬものと判断した。

「ならば、いま儂らにできるのは、ルディに対する想いをぶつけた上で 彼奴あやつの想いを重ねることじゃ——」

「—— 時宜じぎは待ってはくれぬ——」
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