オタク司令塔と六人の帰還英雄~日本を救う最終迎撃作戦~

K2画家・唯

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第9章:黒幕決戦

第43話「逆襲プラン」

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地上の臨時作戦本部に重い沈黙が降りていた。コンテナとテントが並ぶ簡易拠点の中央で、帰還者たちは輪を作って座り込んでいる。東の空が白み始め、薄い冷気が頬を撫でていた。夜明け直前の静寂の中で、誰もが同じ問いを抱えている。本当に勝てるのだろうか。

白影の魔均衡術は想像を超える強さだった。チーム全体の連携攻撃が完全に無効化され、逆流の反力で自分たちが傷つく。攻めるほど不利になる原理に、誰もが困惑している。

宅男は小さなノートを膝の上に広げていた。撤退中に走り書きした文字が、薄明かりの中で浮かび上がっている。

「非同調」

「段打ち」

「位相ずらし」

これらの言葉が、逆襲への唯一の手がかりだった。

「一斉同調は餌になる」

宅男が静かに口にした。

「白影の術は、我々の合力を読み取って等価の反力に変える。ならば、合力を作らなければいい」

仲間たちの視線が宅男に集まった。撤退の苦さを噛みしめていた彼らの表情に、わずかな希望の色が宿る。

小林作良が装置の損傷状況を確認しながら、技術的な可能性を探っていた。

「位相ずらしは可能です」

作良が装置の回路図を描きながら説明した。

「同調装置の出力を時間差で分割する。一度に全てを放出するのではなく、波を段階的に送り出す」

彼女の指が回路の一部を指し示す。

「ここの配線を組み替えれば、段階投入ができる」

氷川結は自分の結界術を見直していた。これまでの広域防御から、局所的な分断膜への転換。

「守りの膜を切り分ける」

結が呟いた。

「一枚の大きな結界ではなく、小さな膜を時間差で展開する。そうすれば、均衡術に読み取られにくくなる」

斎藤勇は不可視剣を握りながら、新たな役割への不安と向き合っていた。

「遅れて斬る」

勇が震える声で言った。

「一番最初でも、一番最後でもない。中途半端なタイミングで斬る」

恐怖を抱えながらも、覚悟を決めようとしている。

「怖いけど、やってみる」

赤城龍一はシルフと共にリズムを合わせる練習を始めていた。

「突撃の拍をずらす」

龍一がシルフの鱗に手を置きながら呟いた。

「一、二、三の掛け声じゃなく、一、二と半、三と四分の一、みたいな変則リズム」

シルフが小さく鳴いて同意を示した。

根黒凪は影の感触を確かめながら、別位相の動きを模索していた。

「影の位相をズラす」

凪が実際に影を少しずつ移動させて見せた。

「一度に全部じゃなく、影の一部だけを先行させる。時間差で忍び寄る」

影が波打つように動き、段階的な接近を実演している。

箱根秋奈は資材投入の段階をメモに書き出していた。

「補給も時間差で」

秋奈が細かい文字でスケジュールを記している。

「触媒、燃料、予備部品、それぞれを別のタイミングで投入する。一度に全部渡さない」

早川修一は政府との連絡を取りながら、新戦術への承認を準備していた。

「段階的攻撃による再戦を承認する」

早川が公式文書を読み上げた。

「非同調戦術の実施を政府として支持する」

米田美咲は特殊作戦群の配置を三段階に分割していた。

「部隊も時間差で動く」

米田が戦術図を描きながら説明した。

「第一波、第二波、第三波と分けて投入する。均衡術に読まれる前に、次の手を打つ」

森下優斗は記録を整理しながら、国民への説明を準備していた。

「負けではなく再挑戦」

森下が原稿を見直している。

「撤退は戦術の一部だった。今度こそ勝利を掴む」

その時、遠隔通信でエリスの声が届いた。

「異世界でも均衡を破る戦術は段付きだった」

エリスの助言が、チームの方向性を後押しする。

「一度に全力を出すのではなく、波のように押し寄せる攻撃が有効だった」

ガルドの声も続いた。

「段階的な力の投入が、相手の対応を上回る」

しかし、白影の幻声が空気を震わせた。

「均衡は揺れても戻る」

冷笑を含んだ声が、チームの議論を嘲る。

「小細工を弄しても、最終的には均される」

宅男は白影の挑発を正面から受け止めた。

「戻る前に崩す」

宅男の宣言に、仲間たちが一斉に顔を上げた。

「均衡が戻ろうとする瞬間こそ、隙ができる。その瞬間を狙う」

希望の光が、全員の瞳に宿った。撤退の苦さが、再挑戦の意志に変わっていく。

作良が装置の改造作業を開始した。配線を組み替え、位相ずらし機能を実装していく。

「二時間あれば完成します」

作良の確信に満ちた声が、チーム全体を勇気づけた。

結が新たな術式の準備を始めた。分断膜の展開パターンを頭の中で整理している。

「氷精たちにも段階的な動きを覚えてもらう」

結が小さな氷の妖精たちと意思疎通を図っていた。

勇が不可視剣の新たな使い方を練習し始めた。タイムラグを意識した斬撃の感覚を掴もうとしている。

「中途半端なタイミング」

勇が自分に言い聞かせながら、剣を振る。

「それが、俺の役目だ」

龍一とシルフが変則リズムの練習を続けていた。一定のパターンを崩し、予測困難な動きを作り出そうとしている。

「音楽と同じだ」

龍一が楽しそうに言った。

「ジャズみたいに、即興で崩していく」

凪が影の位相ずらしを実践し、新たな戦術を体得していた。

「影の一部だけを先行させる」

凪の影が複雑な動きを見せ、段階的な攻撃パターンを形成している。

「これなら均衡術にも読まれにくい」

秋奈が補給スケジュールを細分化し、最適な投入タイミングを計算していた。

「第一段階で触媒、第二段階で燃料、第三段階で予備部品」

秋奈の計画が、戦術の実現を支える基盤になっている。

米田が部隊の分割配置を完了し、段階的投入の準備を整えていた。

「第一波は陽動、第二波は本攻撃、第三波は追撃」

米田の戦術が、帰還者たちの戦術と完全に同調している。

早川が政府承認を正式に発令した。

「段階的攻撃戦術の実施を承認する」

早川の公式発表が、作戦に法的根拠を与えた。

森下が国民への説明文を完成させた。

「反撃の時が来ました」

森下の原稿が、希望に満ちた内容になっている。

「帰還者たちは新たな戦術で必ず勝利します」

夜明けの光が東の空から差し込み、臨時作戦本部を照らし始めた。薄明かりが、チーム全体の表情を明るく浮かび上がらせている。

宅男は立ち上がり、仲間たちを見回した。

「準備は整った」

宅男の声に、強い決意が込められていた。

「今度こそ、白影を倒す」

仲間たちが次々と立ち上がった。撤退の重苦しさは消え、新たな戦いへの意欲が満ちている。

作良が改造した装置を抱え上げた。

「位相ずらし機能、完成です」

結が術式の最終確認を行った。

「分断膜の展開、準備完了」

勇が不可視剣を構え直した。

「中途半端なタイミング、覚悟できました」

龍一がシルフと息を合わせた。

「変則リズム、マスターしました」

凪が影の感触を確かめた。

「位相ずらし、実戦投入可能」

秋奈が補給計画を確定した。

「段階的投入、スケジュール完成」

米田が部隊配置を最終確認した。

「三段階投入、準備完了」

早川が政府承認を再確認した。

「作戦実施、正式承認済み」

森下が記録機材を準備した。

「歴史的瞬間の記録、準備万端」

白影の幻声が最後に響いた。

「来るが良い。均衡は必ず勝つ」

しかし、もはや誰も動揺しない。チーム全体が新たな戦術への確信を持っている。

宅男が最後の確認を行った。

「段階的攻撃。時間差連続。合力回避」

宅男の言葉が、新戦術の核心を表している。

「非同調で均衡を崩す」

夜明けの光が強くなり、臨時作戦本部全体を明るく照らしていた。新たな一日の始まりが、決戦の時を告げている。

チーム全体が決戦に向けて歩み出した。地下聖堂への再侵入が、間もなく始まる。今度は撤退ではなく、勝利を掴むための戦いになるだろう。

白影の魔均衡術は強力だが、もはや無敵ではない。段階的攻撃による非同調戦術が、均衡を崩す鍵になる。

宅男は小さなノートを閉じながら、最後の決意を固めていた。

「誰も切り捨てない。全員で勝つ」

その信念が、新たな戦術の根底にある。力のない司令塔が、力ある者たちを非同調で導く。それが、彼らの最終形態だった。

夜明けの光に照らされ、七人の帰還者とその仲間たちが、最後の戦いに向かって歩いていく。逆襲プランは完成し、総力戦の準備が整った。次こそは、必ず勝利を掴む。

第43話 終わり
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