性愛 ---母であり、恋人であったあの人---

来夢モロラン

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第9章 セックスする静香を目撃、距離をとる僕

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 養父の金田鉄男の様子がおかしくなったのは、僕が高校に入った頃であった。外で泊まり、あまり自宅に帰ってこなくなったのである。月2,3回しか帰宅しなかった。女ができたのである。帰宅しても家では寝ず、夜は女ところに帰って行った。後に養母の静香から聞いた話によると、過去にも女出入りが激しく、静香を何度も泣かせたようである。鉄男から性病をうつされたこともあるという。鉄男の浮気相手から性病を感染させられたと知った時は、惨めで、悲しみと怒りで死にたくなったそうだ。
 僕が金田夫妻の養子になったことにも鉄男の浮気が絡んでいた。鉄男は里子をもらうことに難色を示していたが、浮気を許してもらうことを条件に、僕を養子にしたいという静香の希望に譲歩したのである。そもそも静香が養子を望んだのは、たびたび外に女をつくる夫との冷え切った夫婦関係の中で、子供を育てることにより安らぎを得ようとしたからではないかと僕は思う。 
 今回の浮気相手は鉄男の昔馴染みの女であった。十数年前にすったもんだの末切れたはずの女とよりを戻したのだ。鉄男はその女に入れ込み、ほとんど帰宅しない日が半年ほど続いた。静香が僕に何も言わないので、その間、鉄男と静香の間でどのようなやり取りが続いていたのか全く知らないが、二人は別れるではないかと僕は思っていた。高校生の僕には、裏切り裏切られた男と女の亀裂が修復可能とは考えられなかった。冷め切った仲が元に戻るとは思えなかった。しかし、鉄男はやがてその女に飽きたのか、女と別れて戻ってきた。そして、静香はそれを受け入れた。
 鉄男が戻って来た日は、夏が終わり、柿の木がオレンジ色の実をつけ、肌寒さが感じられる頃であった。この地方は、積雪寒冷の厳しい北海道の中では、雪も少なく比較的温暖な地域であるが、寒い日にはストーブをつける時期であった。鉄男が帰ってきた夜もストーブが焚かれていた。その日、僕はいつもより早く寝床に入った。僕はいったん寝入ると夢も見ないで朝までぐっすりの方で、夜中に目を覚ますということめったにないのだが、その日は寝苦しくて起きてしまった。いつもは寝る前に消すストーブがまだ焚かれているらしく、蒸し暑くて目が覚めたようである。鉄男の帰宅の興奮が僕の眠りを浅くしたのかも知れない。
 目覚めると隣室から押し殺したような低い声が耳に入って来た。「そこよ、そこ」「もっと、もっと」という苦しそうにあえぐ声が断続的に漏れてくる。静香の声のようだ。いったん止んだと思うと、またすぐに切羽詰まったような声で「そこよ、そこ」「もっと、もっと」と繰り返される。あえいでいるが、苦痛とは違うようだ。苦しそうだが、無我夢中のようだ。「ああ、いい気持ちよ。いい気持ちよ。あなた」という低い声に続いて、我慢していたのに我慢しきれず出てしまったような「うー、うー」という低い叫び声が聞こえて静かになった。僕は起きているのを悟られてはいけない、早く眠らなくてはと思って、急いで羊の数を数え始めたが、目が冴えて眠れなかった。
 しばらくすると、また声にならない嗚咽のようなうめき声が漏れ始めた。嗚咽の中に「もう許して、許して」という静香の低い声が断続的に聞こえた。鉄男の声は聞こえない。やがて静香の声も止んだ。やっと終わったと思い、僕はこわばっていた身体の緊張を解いた。でも、まだ終わっていなかった。鉄男の野太い声と静香の細いくぐもった声が聞こえてきた。はっきり聞き取れなかったが「それも脱げ、全部ぬげ」「いやよ、恥ずかしいわ」「よく見えるように立ち上がりな。はっきり見えないぞ。電気をつけな。ああよく見える。おっぱいを寄せて持ち上げな。脚を開きな。お尻をふりな」「恥ずかしいのはいや。ああ、四つん這いはいや。だめ」「上品ぶるな。俺たちはけものだ。今度はお前が上になりな」「少し寒いわ。上に肌着を着けてもいい?」「だめだ。寒いならストーブの前でやろう」というような会話の後、隣室のふすまをそっと開く気配がした。
 僕は好奇心を抑えきれなくなった。僕は音をたてないようにそっと起き上がり、ふすまを小さく開け、居間を覗いてみた。居間は消灯していたが、隣室の明りが居間に届き、赤く燃える薪ストーブの前で折り重なっている二人がはっきり見えた。二人は全裸だった。静香が鉄男におおいかぶさっている。
 目を凝らすと鉄男の上で静香が胸を反らし、鉄男が静香の乳房を両手で鷲づかみにして、乳首にむしゃぶりついている。右を吸い、左を吸い、また右に吸いついている。ふすまの隙間の真正面に静香の顔が見えた。静香は激しく吸われながら、気持ちよさそうに目をつぶっていた。吸われ終わると静香は鉄男の手を握り、鉄男の胸に顔を埋めた。それから、静香は自分の手を鉄男の胸にあて優しくさすり始めた。鉄男は下から静香の頭やうなじを撫でまわしている。静香は下を向いているので顔は見えないが、静香の乱れた黒髪が静香のむき出しの肩に絡みつているのが見えた。
 やがて静香は膝を立て、腰を上下にゆすり始めた。最初、鉄男の手は静香の胸にあてられていたが、いつの間にか静香の腰に回り、静香の腰を上下や前後左右に動かしている。腰の動きのスピードが増し、鉄男の口から喘ぐような荒い声が漏れた時、「あなた待って。まだよ。まだよ。待って」と静香は叫び、つながっている部分を下に押し付け、円を描くように腰を回転し始めた。静香は腰を激しくなすりつけながら、上半身をのけぞらした。そのせつな、ふすまから覗いていた僕の目と静香の目が合った。静香は一瞬驚いて目を見開いたが、僕の絡む視線を振りほどき、黒い髪を振り乱して、フィニッシュに向けて腰を激しく振り続けた。
 
 鉄男が浮気して外に女をつくる以前は、僕には静香はとても穏やかで、満たされているように見えていた。彼女のまわりには優しさとあたたかさが漂っていて、一緒にいると幸せな気持ちになった。静かに家事や子育てにいそしみ、外に刺激を求めることなどなかった。
 だから「昨夜見た養母は、本当に養母だったのだろうか?」と考えてしまう。自らの快楽を夢中になって追求している静香は幻だったような気もする。僕はこれまで養母の静香を女として見たことはなかった。血は繋がってはいないが母として見ていたので、静香の女の顔を見せられてショックだった。裏切られたように感じた。記憶から消したいと思ったが、苦い後味が残った。 
 静香は当時三十九歳であったが、二十代後半と言ってもおかしくないほど若々しくて綺麗だった。静香と一緒に歩いていると、道路を行きかう見知らぬ男達が静香に頻繁に視線を投げかけて来た。静香は男たちの目を引き付ける美貌の持ち主であったが、色っぽいとか、艶っぽいところはなく、上品で澄んだ美しさのある女性だった。
 僕は歳を重ねても美しい養母を自慢に思っていた。実の母ではないこともあって、思春期の男の子が、歳の離れた美しく、優しい義姉に抱くあこがれに近い感情が全くなかったとは言えないが、養母を女として見たことはなかった。女である前に良い母親であった。清潔で恥じらい深い母が女であることを知ってから、僕は以前のように甘えることをしなくなった。意識してよそよそしい態度をとるようになった。
 
 
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