虚構幻葬の魔術師

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異端児達の集結

エグゼキュート・コンプレックス②後編Ⅲ

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 とりあえず、流雅はその場から動くことにした。その場でいても何の意味もなさないし、むしろ流れに乗っているアリアドネを調子に乗せるだけだ。
 幸い、アリアドネからの死角を通りながら、オフィスを抜け出すことに成功した。
 しかし、アリアドネも追いかけていることは明白。どこか、自分の有利になる場所へと引き付けなければ──零弥はそう考えている。
 しかし、当のプレイヤーである流雅の考えは少しだけ違ったようだ。
 まず、アリアドネの戦闘スタイルをを確認するが、先ほど見せつけられたように、跳躍弾を利用したアクティブなクイックモーション。おそらく、流雅と同じように走力をかなり上げているのであろう。
 また、銃の精度もかなり高いことが見受けられる。
 そのような情報をもとに、流雅がとった行動は──あるポイントで撃ち落とすことだ。
 そう、このステージはオフィス……つまり荒廃した会社をイメージしている。しかも、なかなかの階層だ。
 ならば、必ずといっていいほどに存在すべきものがあるであろう。
 そう、エレベーターホールである。
 しかも、このホールは円形状だ。跳躍弾の反射が比較的読みづらくなる。ホールであるために障害物もほとんど無い。
 ならば、姿を現した瞬間に狙うのが最善手だ。
 ただし、歩みを止めることはない。曲がり角で待ち構えた際に、アリアドネの代わりに弾丸が飛んでくれば元も子もない。
 パァン。
 後ろから発砲音。
 アリアドネは刻一刻と近づいている。
「どうするんだ、撃ち合いで勝てる自信あるのか?」
「無いね」
「──即答かよ……」
 零弥が呆れる。
「それに、円形状と言っても中心じゃないとほとんど意味がないし、どうせ壁際に追いやられて戦わざるを得なくなるから。不利なことに変わりは無いよ」
 流雅が解説を交えるが、ここで零弥は疑問に思ったことがひとつある。
「そういや、跳躍弾の耐久性はどれぐらいだ?」
 そう、跳躍弾といえども、耐久性に限界がある。円形状のエリアでも、全てが斜線に入る訳ではない。
「んー、まぁ大体7反射ぐらいまでじゃない」
 それでもかなり多いが。
「ん?おっと」
 右上から弾丸が落ちてくる。その後の反射ダメージも当然考慮しながら、流雅は避ける。
「ふぅーあぶないあぶない。少しでも気を抜きゃあ負けちゃうわ、これ」
「今さらだな。もう少し戦いやすい場所に行けよ」
「だが断る」
 どこかで聞いたことのあるような台詞を吐きながら、零弥の提言など聞きもしなかった。
 そして、あのプレイヤーがついに姿を現した。
「やっとお出ましだね。さっきは邪魔が入ったけど、ここからは本当に一騎討ちだ。とりあえず、お手柔らかに」
 アリアドネが広範囲に弾丸を散らばせる。流雅に向かって飛んでくるものもあれば、行動を先読みして待ち構えるであろう物体も存在する。
「そこっ!」
 流雅の反撃の一発。
 わずかに脇腹をかすめた。しかし、ダメージは微々たるものだ。
 そして、アリアドネから弾丸がもう一発。しかし、これは顔面から大きく外れる。
「──いや──」
 しかし、流雅はダメージ覚悟で弾丸へと寄った。弾丸は少し進んだ後、流雅の背後で最初に拡散した弾丸にもろにぶつかり、そして反射した。
「何だよ、壁とか全く関係ないじゃないか……」
 これは隠れた弾丸ステルスシュートの応用版だろう。
 恐らく、このまま動かなければもろにヘッドショットを食らっていたかもしれない。『壁が無ければ作ればいい』という謎理論に流雅は殺されかけた。
 だが、これはチャンスである。
「うん、確かに恐ろしいね……でも、アリアドネのリボルバー装填数分だけの跳躍弾を既に発射しきっている。もちろん、ストックは持っているだろうけど。それでも今決めなければ負ける」
 流雅は意を決して前に走りながら弾丸を放つ。
 アリアドネも装填が終了したのか、銃弾を放つ。
「普通なら避けるだろうけど……ここはそうじゃない」
 流雅は避けずにオートマチックを持つ右手を前に突き出した。
「まさか……オートマチックで受け止める気か!?」
 零弥が驚嘆する。
「跳躍弾なら数発受けても壊れたりしない。頭と心臓だけ守りきれば……」
 その時だった。
 耐久力が満タンの筈の流雅のオートマチックが、その場でバラバラになって崩れ落ちた。
「──えっ?」
 流雅は到底信じられなかった。
 自分の作戦にそれなりの自信を持っていたから──でもあるが、最大の理由としては、オートマチックがわずか三発で破壊されたことだ。
「三発で武器破壊だと?防御はほとんど取っていなかったはずだが」
「──別の弾を混ぜてたんだ──」
「そういうことか……」
 武器が数発耐えられるのは、あくまで弾が跳躍弾であった場合の話だ。だが、リボルバー式でよく見るフルメタルジャケット弾ならば、ダメージは大きい。
 アリアドネはきっちり読みきっていたのだ。
 武器を変える暇もなく、アリアドネはだめ押しの数発を流雅に浴びせた。



「──負けたか」
 このバトルはアリアドネの優勝で終わった。優勝といえば何かのイベントか大会があったと勘違いされるため、語弊を生むのかもしれない。
「強かったなぁー。でも、あの場面はどうしようもないか」
 流雅がコントローラを置く。
「世界にはあんなプレイヤーが居るんだな。反射神経が常軌を逸している」
「ほんと。実際にあってみたいな。この近くに居るのなら」
 流雅は窓辺を不意に振り向く。それ自体に、特に意味はなかった。




「──は成功したようだな」
『はい。特に妨害などはなかったようです』
 電話で話し合う男二人。
「作戦としてはリスクが生じるものだったが、やはり目には付きづらい」
 にやりと笑いながら、ボスのような男は成果を見る。
『──次は、いつ頃に届くのでしょうか』
 ボスの側近らしき男が質問する。
「もうすぐと向こうから聞いている。ならば、次も同じ手法で行こうと思うのだが」
『かしこまりました。今回届いたものはすぐに取引先に回しておきます』
「あぁ、頼んだぞ」
『では、これで』
 通話がプツリと切れる。
「思った以上に、は使えるようだな。では、次も任せるとしよう」
 こうして男は端末を取り出し、『彼女』宛のメールを打ち込み始めた……
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