虚構幻葬の魔術師

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異端児達の集結

エグゼキュート・コンプレックス③前編

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 時は四月の終盤、もうすぐ五月に差し掛かろうとした時の事だ。
 私立星蕾高校生徒会長の霧島紗亜矢はまたも悩みごとを抱えていた。
「はぁ……もうすぐ参観日ですかぁ……仕事が増える増える……」
 はぁぁぁぁぁっ──とため息をつき 、今日も視線を落として登校していた。
 国内でも異彩を放つ星校でも、当然ながら参観日などの校内イベントは存在する。しかも、普段は部外者は入ることができない星校が一般公開されるのである。これだけ人が殺到しかねない状態で、生徒会長にかかる重石が軽くなるはずなど微塵もなく、むしろ重くなっていく一方である。
 さらに、今回に関しては、新入生が加わって初めての参観日である。今までよりも新しくやって来る人が増えるのは火を見るよりも明らかだ。
 コツっ!
「イタっ!」
 色々な仕事がぐちゃぐちゃと頭の中を駆け巡っているのを処理しようと思えば、目の前に迫る危険を察知することさえ忘れていた。
「おはよう、さ……」
 幸なのか、はたまた不幸なのか、そこに、たまたま藍那が通りかかった。
「……なにしてんるんだ?」
「あぁ……おはよう、藍那ぁ」
 紗亜矢は頭を押さえてうずくまっている。
 今時、電柱にぶつかるような女子高生はそうそう見かけないだろう。
 紗亜矢は醜態を晒したことに、羞恥の面や、たまたま藍那が通りかかったことがラッキーだったことが混ざり、なんとも言えない気分になった。もちろん、悪い方向である。
 紗亜矢は立ち上がり、うつ向きながら、とぼとぼ、とぼとぼと校舎へと向かっていくのであった。




「そういえば、もうすぐ参観日か」
 教室に入り、自分の席に座った零弥は、ノートパソコンを立ち上げながらユミの話に耳を傾ける。
「うん。一般公開だからほとんどオープンスクールに近いかも」
「参観日か……俺たちにとって、あんまりイメージのいいものじゃないがな──」
 零弥はふと天井を見上げる。
 記憶が無い──ということは、零弥を形成する情報がこの世界に全く無いわけだ。しかも、世界的に強力な流雅の手助けがあっても。つまり、は、今のところ見つかっていないのだ。それは、零弥の家族も含まれる。
 『椎名』という名前は全国的であるし、DNAなどの科学操作も広範囲であるが故に効果をもたらさないだろう。
 また、ユミはかつて母子家庭であり、五年前に何者かに母を殺害されている。しかも、目の前で……だ。
 流雅の家族についてはほとんど聞いたことがない。なにやら、数年前に突然消えてしまったとか。
 家族がおらず、天涯孤独な三人にとって、親子の微笑ましいイベントである参観日は、苦痛以外にならなかった。慣れというものは恐ろしいもので、最近は平気であるが。
 「──まぁ、休みが一日増えると考えればいいんじゃないかな?ほら、仕事だってたくさんあるし」
 ユミは吐き出すように答えた。
『参観日』─『家族』─『親』─
 零弥はふと連想ゲームを行った。それ自体に、特に意味はない。ただ、行き着く先は大きな意味がある。
─『五年前の事件』─『事件』─『ある事件』
 たどり着いたのは、ただひとつの事件。全国で報道された、重大な事件。そして、この事件は、零弥にとって大きな意味を持っているかもしれない事件。


 椎名零弥の出発点スレッシュホールド


 倒れていた零弥を介抱したのはユミ。だからこそ、ふと聞きたくなった。
「なぁ……ちょっといいか?」
「どうしたの?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだが、今聞くべきことではないかもしれないが……」
 零弥は懸念の意を示す。
「ううん。いいよ」
 ユミは首を振った。
「『三年前』に、何が起こっていた?」
 ユミは表情を強ばらせた。やはり、今聞くべきことではなかったのだろうか。
「……それはとても難しい質問だと思う。私が知っているのは零弥が倒れていただけ。他にこの事件を知っている、もしくは関わっている人はおそらく……もうこの世には……」
 ユミは言葉を詰まらせる。
 わかりきっていることだ。今まで何度も何度も繰り返し聞いたことだ。今さら驚きはしない。何度も何度も聞いて、何度も何度も同じ答えであることはわかりきってたはずだ。それでも聞くのは、きっと自分の中で『知りたい』という感情が強いのだろう。
 そのために、零弥は生き続けている。
 そのために、こうしてユミや流雅と手を組んだ。
 そのために、自分は──
「そうだよな。何度も聞いてすまない」
「いいよ。あのときのことを一番知りたいのは零弥だから」
 学年で、割りと人気の高い笑顔をユミは向ける。
 ふぅ、と息を吐いて、パソコンを操作し始める。
 キーンコーンカーンコーン──
 宿題や教科書等の色々なデータを整理し始めるが、チャイムと同時に手を止めた。
「おはようございます。今日は連絡事項がたくさんあるので──」
 担任から告げられる多数の連絡事項は、軽く頭に入れる程度で聞き流した。
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