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異端児達の集結
The last thinking③中編Ⅱ
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「分散したのはいいけど……私一人で大丈夫なのかなぁ……」
ユミは走りながらそう呟く。
「──まぁいっか!こんなときは桐鋼がなんとかしてくれるでしょ……はぁ」
なんとか不安を消し去ろうとしたが、結局失敗に終わったようだ。
分散してから数分経っている。銃声(腔発音)が聞こえてきたので、零弥はもう戦闘を開始しているのだろう。
「──ここね……」
ユミは扉の前に立つ。そして、扉に触れないように壁に耳を当て、澄ませる。
カチャッ……
おそらくこれは銃を構えている音だろう。零弥とは違い、ユミ自身は能力を持っていない。そうやすやすと正面突破すれば蜂の巣だ。
「うーん……そうだ!」
ユミは見つけた。それは天井部分。空気の入れ換えに利用しているのだろう。ダクトがあった。
隣の部屋ならば、おそらくダクトは繋がっている。
幸いにも、天井は低めで、箱などの荷物も周辺に散らばっており、ダクトの蓋も道具も無しに簡単に開けられた。
桐鋼が擦れたりして音がならないように慎重にユミはダクトに入る。
「案外広いね……ちょっと安心した」
ユミは一呼吸置く。
そして、ゆっくり進んでいけば、方角的に隣の部屋のダクトまですぐについた。
「えーと……敵はこっちに気づかれてないね……チャンス!」
ユミは即座に敵の情報を洗い出す。
「案外敵は少ない。多分零弥のところを重要視したか……もしくはかなり強い人が固まっているか。人数は七人。内、銃を持っているのは五人。二人はなんかしら隠し持ってるのかな。そして、この部屋、かなり狭い。でも、桐鋼のリーチに影響はないね」
ユミはある程度の情報を手にいれた。そして、遂に覚悟を決める。
「今だね──」
ユミは桐鋼でダクトの出入り口をおもいっきり壊す。そして落下、着地。
「うおっ!?そこから!?」
男はもちろん驚いている。むしろそれが狙いだったので、まだ計画通りだ。
「はぁぁぁっ!」
ユミは全力で走りながら桐鋼を振る。
男二人はあわてて銃を構え、発砲するが、間に合わず。あっけなく避けられ、桐鋼の餌食になった。ちなみに今回は敵の抹殺が目的ではないので、全て峰打ちで斬るつもりだ。それでも骨折や挫傷は当たり前だが。
それはさておき、もう一人の銃の男がユミに向かって発砲する。これはサブマシンガンであり、部屋自体が狭いがゆえに、頭ごなしに撃っていれば味方に当たりかねないので、一斉攻撃は行わない。
ユミは全力で走る走る。それこそ、弾丸が正確に見えているかのように避けながら近づく。そして、勢いに乗ったまま壁を蹴り、銃の男の脇腹を斬った。
「ウアァァッ!」
斬られた男は悲鳴をあげる。その声を聞いて、残りの二人は銃撃を開始する。
しかし、ユミには全てが視えている。弾丸が発射されるであろう向きは完全に予測済みだ。野生のカン、というやつだろうか。銃撃をものともせず、男たちに突進していく。
片方は足元に潜られて、下から脇腹に一撃。その後、息をする間もなくもう片方は肩から斜めに斬られた。
さて、五人の銃撃隊を始末すれば、必然的に攻撃対象は残りの二人に向けられる。もちろん、ユミはこの二人を甘くは見ていない。
「バケモノめ!」
「これでも食らえ!」
男の一人は床に、もう一人の男はユミに向かって力強く手を向ける。
(能力持ち……やっぱり)
床に伏せた手からは、地面にヒビが入り、その時発生する欠片をもう一人がユミに向かって飛ばす。なるほど、地面でユミの足をとり、欠片で攻撃する。なかなかのコンビネーションだ。
しかし、攻撃を受ける当の本人は全く危険視していなかった。
欠片の大群に向かって一振り……そこにある空間と地面を『斬った』……
すると、欠片は全て床に落ち、ひび割れもユミの手前で止まってしまった。
「こっ、これはどういうことだ!?」
「能力が届かない?」
男たちは困惑している。
「……これが桐鋼の力」
ユミは全くついていない血を振るった。これには普段の癖、相手への威嚇、次への臨戦態勢の形成が含まれる。
「桐鋼には能力が組み込まれている」
その一言は、男たちが知りうる情報ではなかった。
「刀に能力だと?そんなバカな!」
「そうと思いたいのなら今目の前に起きていることを確認した方がいい。これは紛れもなく真実なのだから」
ユミは桐鋼の刃をそっと撫でる。
「そして、あなた達の能力は『波』。片方は床に、もう片方は空気中に波を作ることで私を攻撃しようとした。特に変わったような音がしなかったのは、振幅が大きく、振動数がかなり少なく作られたからね」
「──ぐっ……」
男たちは身構えた。どうやら、ユミの仮説は正しいようだ。
「でも──」
ユミは走りだす、全力で。
それに対して男たちはあわてて空気中に『波』を作り出す。二人とも空気中に生成したため、波同士が共鳴し、かなりの威力を誇るだろう。当たればひとたまりもない。
ただ、ユミは何も考えない。
その空気に、桐鋼を一振り……
その結果、波が一瞬で消えたのが理解できた。
「なっ……」
男は言葉を発する間もなく桐鋼の餌食になった。しかも一瞬で。
男は力無く倒れ込む。反撃の様子など一切見せずに。
「──能力自体は一つしか発動していないから対処もしやすい。欠片一つ一つに異なった効果を盛り込む誰かとは違ってね」
ユミは桐鋼を血振るいの要領で一閃する。そして、達観したような表情でこう言う。
「桐鋼に込められた能力……。それは発動した能力を直接『斬る』ことでその効果を消失させる効果……」
桐鋼の正体が明かされる。
「能力名は……
『結論改竄』。
これが桐鋼の真価」
カチン!
ユミは桐鋼を鞘に収める。この者たちはしばらく起き上がれないだろう。
………………。
「あっ 、あっあ……あぁ」
戦いの一時的な緊張から逃れ、我に帰ったユミは急に顔を赤くする。
「わ、わ、私……何であんなカッコつけた台詞を……」
赤くなった顔を両手で隠すように覆い被さった。熱が伝わったのか、両手まで赤くなっているようにも見える。
「改めて振り替えると……恥ずかしい……」
ユミは今すぐ寝転がってジタバタしたくなる衝動を抑えて、そっと深呼吸した。
「──ふぅ。さて……他のみんなは大丈夫かな?」
ユミはそう言って立ち上がり、他の者の身を案じながら足を運んだ。
ユミは走りながらそう呟く。
「──まぁいっか!こんなときは桐鋼がなんとかしてくれるでしょ……はぁ」
なんとか不安を消し去ろうとしたが、結局失敗に終わったようだ。
分散してから数分経っている。銃声(腔発音)が聞こえてきたので、零弥はもう戦闘を開始しているのだろう。
「──ここね……」
ユミは扉の前に立つ。そして、扉に触れないように壁に耳を当て、澄ませる。
カチャッ……
おそらくこれは銃を構えている音だろう。零弥とは違い、ユミ自身は能力を持っていない。そうやすやすと正面突破すれば蜂の巣だ。
「うーん……そうだ!」
ユミは見つけた。それは天井部分。空気の入れ換えに利用しているのだろう。ダクトがあった。
隣の部屋ならば、おそらくダクトは繋がっている。
幸いにも、天井は低めで、箱などの荷物も周辺に散らばっており、ダクトの蓋も道具も無しに簡単に開けられた。
桐鋼が擦れたりして音がならないように慎重にユミはダクトに入る。
「案外広いね……ちょっと安心した」
ユミは一呼吸置く。
そして、ゆっくり進んでいけば、方角的に隣の部屋のダクトまですぐについた。
「えーと……敵はこっちに気づかれてないね……チャンス!」
ユミは即座に敵の情報を洗い出す。
「案外敵は少ない。多分零弥のところを重要視したか……もしくはかなり強い人が固まっているか。人数は七人。内、銃を持っているのは五人。二人はなんかしら隠し持ってるのかな。そして、この部屋、かなり狭い。でも、桐鋼のリーチに影響はないね」
ユミはある程度の情報を手にいれた。そして、遂に覚悟を決める。
「今だね──」
ユミは桐鋼でダクトの出入り口をおもいっきり壊す。そして落下、着地。
「うおっ!?そこから!?」
男はもちろん驚いている。むしろそれが狙いだったので、まだ計画通りだ。
「はぁぁぁっ!」
ユミは全力で走りながら桐鋼を振る。
男二人はあわてて銃を構え、発砲するが、間に合わず。あっけなく避けられ、桐鋼の餌食になった。ちなみに今回は敵の抹殺が目的ではないので、全て峰打ちで斬るつもりだ。それでも骨折や挫傷は当たり前だが。
それはさておき、もう一人の銃の男がユミに向かって発砲する。これはサブマシンガンであり、部屋自体が狭いがゆえに、頭ごなしに撃っていれば味方に当たりかねないので、一斉攻撃は行わない。
ユミは全力で走る走る。それこそ、弾丸が正確に見えているかのように避けながら近づく。そして、勢いに乗ったまま壁を蹴り、銃の男の脇腹を斬った。
「ウアァァッ!」
斬られた男は悲鳴をあげる。その声を聞いて、残りの二人は銃撃を開始する。
しかし、ユミには全てが視えている。弾丸が発射されるであろう向きは完全に予測済みだ。野生のカン、というやつだろうか。銃撃をものともせず、男たちに突進していく。
片方は足元に潜られて、下から脇腹に一撃。その後、息をする間もなくもう片方は肩から斜めに斬られた。
さて、五人の銃撃隊を始末すれば、必然的に攻撃対象は残りの二人に向けられる。もちろん、ユミはこの二人を甘くは見ていない。
「バケモノめ!」
「これでも食らえ!」
男の一人は床に、もう一人の男はユミに向かって力強く手を向ける。
(能力持ち……やっぱり)
床に伏せた手からは、地面にヒビが入り、その時発生する欠片をもう一人がユミに向かって飛ばす。なるほど、地面でユミの足をとり、欠片で攻撃する。なかなかのコンビネーションだ。
しかし、攻撃を受ける当の本人は全く危険視していなかった。
欠片の大群に向かって一振り……そこにある空間と地面を『斬った』……
すると、欠片は全て床に落ち、ひび割れもユミの手前で止まってしまった。
「こっ、これはどういうことだ!?」
「能力が届かない?」
男たちは困惑している。
「……これが桐鋼の力」
ユミは全くついていない血を振るった。これには普段の癖、相手への威嚇、次への臨戦態勢の形成が含まれる。
「桐鋼には能力が組み込まれている」
その一言は、男たちが知りうる情報ではなかった。
「刀に能力だと?そんなバカな!」
「そうと思いたいのなら今目の前に起きていることを確認した方がいい。これは紛れもなく真実なのだから」
ユミは桐鋼の刃をそっと撫でる。
「そして、あなた達の能力は『波』。片方は床に、もう片方は空気中に波を作ることで私を攻撃しようとした。特に変わったような音がしなかったのは、振幅が大きく、振動数がかなり少なく作られたからね」
「──ぐっ……」
男たちは身構えた。どうやら、ユミの仮説は正しいようだ。
「でも──」
ユミは走りだす、全力で。
それに対して男たちはあわてて空気中に『波』を作り出す。二人とも空気中に生成したため、波同士が共鳴し、かなりの威力を誇るだろう。当たればひとたまりもない。
ただ、ユミは何も考えない。
その空気に、桐鋼を一振り……
その結果、波が一瞬で消えたのが理解できた。
「なっ……」
男は言葉を発する間もなく桐鋼の餌食になった。しかも一瞬で。
男は力無く倒れ込む。反撃の様子など一切見せずに。
「──能力自体は一つしか発動していないから対処もしやすい。欠片一つ一つに異なった効果を盛り込む誰かとは違ってね」
ユミは桐鋼を血振るいの要領で一閃する。そして、達観したような表情でこう言う。
「桐鋼に込められた能力……。それは発動した能力を直接『斬る』ことでその効果を消失させる効果……」
桐鋼の正体が明かされる。
「能力名は……
『結論改竄』。
これが桐鋼の真価」
カチン!
ユミは桐鋼を鞘に収める。この者たちはしばらく起き上がれないだろう。
………………。
「あっ 、あっあ……あぁ」
戦いの一時的な緊張から逃れ、我に帰ったユミは急に顔を赤くする。
「わ、わ、私……何であんなカッコつけた台詞を……」
赤くなった顔を両手で隠すように覆い被さった。熱が伝わったのか、両手まで赤くなっているようにも見える。
「改めて振り替えると……恥ずかしい……」
ユミは今すぐ寝転がってジタバタしたくなる衝動を抑えて、そっと深呼吸した。
「──ふぅ。さて……他のみんなは大丈夫かな?」
ユミはそう言って立ち上がり、他の者の身を案じながら足を運んだ。
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