虚構幻葬の魔術師

crown

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異端児達の集結

The last thinking④

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「くっ……くぅぅぅぅ……」
 亜芽は激痛に襲われる両手をかばい、耳をふさぎながら廊下を走り抜ける。痛みのせいか、顔はかなりしかめている。
「そんな、そんな……あんなことって!」
 亜芽は走り抜ける。何かから逃げるように。
 息はかなり切らしている。本当に吐くんじゃないかというレベルで。
 亜芽が何かから逃げている理由は、ほんの数分前に遡る。





「──さよなら」
 流雅に向かって、凶弾がいとも簡単に放たれた。
 しかし……銃弾は
「──え……?」
 零弥のように勢いを無くして地上に落ちたり、その場でフワフワ浮いているわけでもない。流雅の目前で、一ミクロも動かず、ただピタリと停止し、空中にとどまっている。
「うっ……うぁぁぁっ……」
 亜芽の両手と両耳に激痛が走る。覚悟の上での発泡だったが、それでも十分痛い。
「一つ目。僕は武器を持っていない。その時点でノコノコと敵の目の前を歩く事自体が不自然。何らかの隠し球を考えるべきだ」
 流雅は挙げていた両手を降ろす。
「二つ目。僕は君の警告に対して一切抵抗しなかった。つまり、抵抗しなければ勝てる道筋が僕にはあるということだ」
 流雅はまた奥深い笑顔を見せる。
「三つ目。一人は能力持ちアビリスト、もう一人は抑制師サプレッサー、これもネタバラシすると、彼女の剣は能力アビリティが込められてるんだけど、まぁ今はどうでもいいや」
 流雅は少し左側に移動する。
 そして、未だ停止し続ける銃弾に向かって右手をかざす。すると、銃弾は息を吹き替えしたように高速で進んだ。
「だからといって、残りの一人がと考えるのは、いささか短絡的だと思うな~」
 流雅はいつもの笑顔に戻る。そして、自分の右手を覗きながら、右手を握る。
「君も理解したと思うけど、僕は能力持ちアビリストだよ」
 亜芽は唾を飲み込む。だが、緊張はほどけない。
「そして、僕の能力アビリティは『状態保存』。対象の物体の形状、座標、そして対象に加わっている力、変化をそのまま保存しちゃう能力アビリティ。名前は……特にないけどね」
「状態……保存……」
 亜芽の手の痛みはまだ消えない。
「保存された物体はあらゆる事象からの干渉を一切受けない。ハンマーで叩こうが、ミサイルをぶつけようが、微動だにしないどころか、傷一つ付かないんだ」
「くっ……」
 亜芽はその言葉を聞いて銃を構える。もう痛みなどお構いなしだ。
「無駄だよ」
 流雅は銃に向かって人差し指を向ける。
 すると銃は『保存』され、引き金すら引けなくなった。
「う……そんな!」
 亜芽は更にパニックになる。
「まぁこんなふうに武器を全部『保存』しちゃえば、後は接近して捕まえるだけだよねぇ~」
 亜芽は逃げる。その手を押さえながら、必死に。
 そして、流雅から自分の姿が見えないように、物を投げて、照明を一つ一つ割っていく。
「──だいぶ物分かりがいいみたいだね……」
 流雅もそれに呼応するように照明を『保存』していく。しかし、いくつかは既に割られているので、辺りはかなり暗くなっている。こうなれば、亜芽にとってかなり有利だ。
 
 そして、今に至る。

「っ……はぁ……はぁ……」
 亜芽は必死に逃げる。階段を下りたり、わからないように曲がり角を曲がったり、とにかく流雅から逃げるために何でもした。
「……はぁぁっ」
 亜芽は逃げ切った。少なくとも、状況は改善しているはずだ。
 亜芽が到着した場所はかなり広い、二階建ての吹き抜けになっている。その一階部分(全体では地下二階)の入り口から、亜芽は入ってきた。
 敵襲に備えて、電気はつけてある。
 亜芽は壁にもたれて深呼吸する。
「まさか……能力持ちアビリストだったなんて……わかるわけ……無い……」
 深呼吸しても過呼吸は治まらない。
「しかも……ほとんど考えを……読まれてた……今も追いかけて……来てるはず」
 亜芽は思考力をなんとか働かせる。
「戦うしかないんだ……例え、この身が痛みで滅ぼうとも、世界にとってははどうだっていい。何をしても、何を頑張ろうとも……世界は私を捨てるんだ……」
 亜芽は涙を流す。もう痛みはひいているようだ。
「もう……来ないで……」
 しかし……亜芽の期待はいとも簡単に破られた。
「──そこにいるんだね」
「!?」
 流雅の声だ。
「確かに、照明を消せば、生命体は誰しも足を止めてしまう。無意識にね。だけど、足音やドアが開く音、何より消えていく照明をたどっていけば自ずとゴールへとたどり着くんだ」
 こちらの姿は見せていない。だが、流雅にはもう視えているようだ。だが、痛みを代償に牽制ぐらいはしないといけない。
 亜芽は物陰から意表を突く一発。しかし、ちゃんと流雅の姿を見ていなかったため、弾は完全に外れる。
 牽制は……失敗したようだ。
「──痛そうだね」
 流雅は憐れみの表情を向ける。
「ハンバーガー店でもあんな格好をしていたけど、もしかして君、感覚過敏じゃないの?」
(──感覚過敏!?)
 亜芽は大きく目を見開く。
「感覚過敏は先天性なものもあるけど、後天的なものとしての原因は様々だよ。そのうちの一つとして、『薬物』が挙げられる」
 流雅は表情も変えず、ただ淡々と説明を続ける。
「おそらく、『商品』の一部をこっそり使っていた連中がいたみたいだね。その煙を君も吸っちゃったんじゃないかな?全く、警察が目につけている組織がこんなずさんなことをするとはね……」
 流雅は数歩前に出る。既に本気のようだ。
「言っとくけど、僕達には僕達の目的があるんだ。それを邪魔するような障害は、何としてでも取り除かなきゃいけない……」
 流雅から笑顔が消える。
「勝負だよ、月島亜芽……」
 その言葉を聞いて、亜芽も覚悟を決めた。隠れていた柱から姿を表す。
「もう……これ以上、私には関わらないで!」
 両者とも、準備は万端のようだ。
 お互いの『目的のぶつけ合い』は、今、本当の始まりを迎えた所だった。
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