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異端児達の集結
The last thinking⑤
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「この先か……」
逃走する唐木を追い続けた零弥は、一際大きな扉を見つける。なかなか簡単に開くような造りではなさそうだが、確かに数秒の前に人が通ったような形跡も残されている。状況から考えて、唐木が逃げ込んでいるはずだ。
零弥は扉を開ける。
「ここは……」
そこは、巨大な円形状のホールとなっていた。零弥はその三階部分に位置し、底へは十五メートルほどの高さ、いや、深さがある。
吹き抜け構造になっていて、上から見下ろせばその高さが伺える。十五メートルと言えば一体どのくらいだろうか?十メートルでビル三階分だから、ざっと五階分か?
ただの人間ならば足がすくむだろうが、零弥はただの人間ではない。それどころか、高さを利用して戦闘している。今さらこれに物怖じするわけがない。
零弥は躊躇無く飛び降りる。空中で一回転した後、柔らかい膝と足首、そして左手で衝撃を緩和する。
「遂にここまで来やがったな──」
先ほど何度か聞いた声。
これは唐木の声だ。
「あの戦闘力といい、あの統率の取れた制圧力といい、一体お前たちは何なんだ。警察か?」
「半分正解……と言いたいところだが、実際そうでもない。俺はただの一般人だ」
ウソはついていない。抑制師はユミだ。
「一般人だぁ?警察に目をつけられても見つからないアジトを探し、あいつらを無傷で制圧し、今ここで俺の目の前に立っている奴がただの一般人のはずがなかろうよ」
唐木は怨念を込めた威圧を向ける。
「いいや、俺は能力を持っているだけで、何の権力も持ち合わせちゃいない。ただ、俺達の目的の障害となりうるからこそ、こうやって来ている」
零弥は屈しない。
「──取引相手の素性を言え。あんな武器といい、大麻といい、海外との取引だろう。ならば『魔族』と繋がっている可能性など、容易に考えられるが?」
零弥は警告する。
魔族大戦が終結した後、人類が持つ領土は著しく減少していた。日本は人類が固まっていることで有名であるほどに、だ。ならば、海外勢力は、大体魔族であると考えられる。
しかし、これはかなりの問題事項なのだ。
人間が魔力を持たないが故に戦闘を避けてきたのは八千年前から変わらない。実際、日本は外交の面で様々な国と友好な関係を結んでいるほどだ。
そんな中、海外の勢力がそれに介入してきたらどうなるだろうか?ここからは零弥の勝手な推測だが、おそらく日本ヘの防衛に入るからこそ、戦闘に巻き込まれても仕方ないと考えている。
「おっと、それは言えないねぇ。相手を食わせるとは言ったが、仮にも表向きは友好な関係を結んでいるつもりだからなぁ」
ペルティエもまだ準備はできていない。その状態で裏切るという賭けに出るほど、唐木は無鉄砲ではない。
「ペルティエは本当に勝つ気があるのか?」
零弥が問いかける。
「戦闘力も、『商品』を運ぶ注意力もはっきり言ってザルだ。武器を持ち合わせているからって、あの程度の身体能力では、宝の持ち腐れだ。構成員達にはきっちり教育しているのか?」
「生憎、全員にそれをする手間は無くてな。所詮あいつらは手駒だ。必要無くなれば切り捨てるだけ。足りなくなれば、路頭に迷っている者を拾うだけだ。そういうやつは居場所が無いから、ホイホイとついてくる」
唐木は笑顔を見せる。その表情は、これでもかというぐらい歪みきっていた。
「──勝つためならば、その考え方は否定しない。いざとなれば、戦力を切ることも選択肢の一つになりうる」
「ほぉう?お前も同類か?」
零弥は表情を変えない。
「いや、これだけのメンバーを率いる度胸など、俺にはない」
ぶっきらぼうにこんなセリフを吐いているが、決して唐木のリーダーシップを称賛しているわけではない。
しかし、戦力を切ることを非難しているわけでもない。
結局のところ、零弥にとってはどうでもいい事なのだ。
「だが、俺達を邪魔したことに対して、容赦なくお前を斬るだけの覚悟は持ち合わせているつもりだ」
零弥は光子剣を起動させる。部屋中の素粒子光子と原子が結び付き、一つの刃を形作る。
「そうか、お前がそのつもりなら、こちらも奥の手だ」
唐木はポケットから小瓶を取り出す。
「──まさか……そいつは!?」
零弥はそれを直接見たことはないが、知識として聞いたことがあった。
「『スペルキーパー』だと!しかも液体とは……」
「向こうの人が一本だけ渡してくれてねぇ。ここまでバレたなら、今さら温存する必要はなかろうよ」
スペルキーパーとは、文字通り『魔術を保存』している道具である。これを服用するなどの手順を踏むことで、保存されていた魔術を使用することができる。これは、魔力を持たない人間でも可能だ。しかし、魔術が誰でも使用できるという事は驚異にもなりうる道具のため、国家間では製造や貿易を全面的に禁止している国も多く、日本もそのうちの一つだ。更に、もう一つ理由があるのだが……
「お前の推測通り、ペルティエは魔族と関係を結んでいる。俺はこいつを使わせてもらうぞ!魔族を敵に回したこと、後悔するんだな!」
「待て!大量に使用すれば──」
遅かった。
零弥の忠告は、唐木には届かなかった。
唐木は、小瓶の中身を全て飲み干してしまった。
そして数秒後──
「ガハッ!」
唐木が血を吐いた。そして、その目は紅く染まり、全身の血管が浮き始めたのだ。
苦しみから逃れようとする雄叫びが部屋中に響き渡る。
そして、唐木を構成する身体的な部分は魔術によって巨大化し、ペルティエのリーダー、唐木庸治は巨大な猛獣へと変貌した。
ここのような、高さのあるホールでなければ天井を突き破っていただろう。高さは、ざっと十メートルくらいかだろうか?
さすがに零弥も驚かざるを得なかった。
それと同時に、唐木を憐れんだ。
「バカが……あれだけ大量に使用すれば、もう元には戻らないぞ!」
国家間で取引が禁止されている理由、もう一つは『副作用』である。
十分な効果を期待して、大量に使用すれば、当然ながら使用者に大きな負担がかかる。
例え、効果が上がっていても、使用者に命の危険が伴うのであれば意味がない。
そもそも能力や魔術の使いすぎで重大な障害を持ってしまった者も多数存在するのに、そもそもそういう力を持っていない人間が、スペルキーパーを手にすればどうなるか?興味本意で使いすぎることは明白だ。だからこそ禁止しているのだ。
しかし、唐木は間違えたのだ。
「大人しくしろよ……」
零弥は光子剣を構え、ペルティエとの最終決戦に挑む。
逃走する唐木を追い続けた零弥は、一際大きな扉を見つける。なかなか簡単に開くような造りではなさそうだが、確かに数秒の前に人が通ったような形跡も残されている。状況から考えて、唐木が逃げ込んでいるはずだ。
零弥は扉を開ける。
「ここは……」
そこは、巨大な円形状のホールとなっていた。零弥はその三階部分に位置し、底へは十五メートルほどの高さ、いや、深さがある。
吹き抜け構造になっていて、上から見下ろせばその高さが伺える。十五メートルと言えば一体どのくらいだろうか?十メートルでビル三階分だから、ざっと五階分か?
ただの人間ならば足がすくむだろうが、零弥はただの人間ではない。それどころか、高さを利用して戦闘している。今さらこれに物怖じするわけがない。
零弥は躊躇無く飛び降りる。空中で一回転した後、柔らかい膝と足首、そして左手で衝撃を緩和する。
「遂にここまで来やがったな──」
先ほど何度か聞いた声。
これは唐木の声だ。
「あの戦闘力といい、あの統率の取れた制圧力といい、一体お前たちは何なんだ。警察か?」
「半分正解……と言いたいところだが、実際そうでもない。俺はただの一般人だ」
ウソはついていない。抑制師はユミだ。
「一般人だぁ?警察に目をつけられても見つからないアジトを探し、あいつらを無傷で制圧し、今ここで俺の目の前に立っている奴がただの一般人のはずがなかろうよ」
唐木は怨念を込めた威圧を向ける。
「いいや、俺は能力を持っているだけで、何の権力も持ち合わせちゃいない。ただ、俺達の目的の障害となりうるからこそ、こうやって来ている」
零弥は屈しない。
「──取引相手の素性を言え。あんな武器といい、大麻といい、海外との取引だろう。ならば『魔族』と繋がっている可能性など、容易に考えられるが?」
零弥は警告する。
魔族大戦が終結した後、人類が持つ領土は著しく減少していた。日本は人類が固まっていることで有名であるほどに、だ。ならば、海外勢力は、大体魔族であると考えられる。
しかし、これはかなりの問題事項なのだ。
人間が魔力を持たないが故に戦闘を避けてきたのは八千年前から変わらない。実際、日本は外交の面で様々な国と友好な関係を結んでいるほどだ。
そんな中、海外の勢力がそれに介入してきたらどうなるだろうか?ここからは零弥の勝手な推測だが、おそらく日本ヘの防衛に入るからこそ、戦闘に巻き込まれても仕方ないと考えている。
「おっと、それは言えないねぇ。相手を食わせるとは言ったが、仮にも表向きは友好な関係を結んでいるつもりだからなぁ」
ペルティエもまだ準備はできていない。その状態で裏切るという賭けに出るほど、唐木は無鉄砲ではない。
「ペルティエは本当に勝つ気があるのか?」
零弥が問いかける。
「戦闘力も、『商品』を運ぶ注意力もはっきり言ってザルだ。武器を持ち合わせているからって、あの程度の身体能力では、宝の持ち腐れだ。構成員達にはきっちり教育しているのか?」
「生憎、全員にそれをする手間は無くてな。所詮あいつらは手駒だ。必要無くなれば切り捨てるだけ。足りなくなれば、路頭に迷っている者を拾うだけだ。そういうやつは居場所が無いから、ホイホイとついてくる」
唐木は笑顔を見せる。その表情は、これでもかというぐらい歪みきっていた。
「──勝つためならば、その考え方は否定しない。いざとなれば、戦力を切ることも選択肢の一つになりうる」
「ほぉう?お前も同類か?」
零弥は表情を変えない。
「いや、これだけのメンバーを率いる度胸など、俺にはない」
ぶっきらぼうにこんなセリフを吐いているが、決して唐木のリーダーシップを称賛しているわけではない。
しかし、戦力を切ることを非難しているわけでもない。
結局のところ、零弥にとってはどうでもいい事なのだ。
「だが、俺達を邪魔したことに対して、容赦なくお前を斬るだけの覚悟は持ち合わせているつもりだ」
零弥は光子剣を起動させる。部屋中の素粒子光子と原子が結び付き、一つの刃を形作る。
「そうか、お前がそのつもりなら、こちらも奥の手だ」
唐木はポケットから小瓶を取り出す。
「──まさか……そいつは!?」
零弥はそれを直接見たことはないが、知識として聞いたことがあった。
「『スペルキーパー』だと!しかも液体とは……」
「向こうの人が一本だけ渡してくれてねぇ。ここまでバレたなら、今さら温存する必要はなかろうよ」
スペルキーパーとは、文字通り『魔術を保存』している道具である。これを服用するなどの手順を踏むことで、保存されていた魔術を使用することができる。これは、魔力を持たない人間でも可能だ。しかし、魔術が誰でも使用できるという事は驚異にもなりうる道具のため、国家間では製造や貿易を全面的に禁止している国も多く、日本もそのうちの一つだ。更に、もう一つ理由があるのだが……
「お前の推測通り、ペルティエは魔族と関係を結んでいる。俺はこいつを使わせてもらうぞ!魔族を敵に回したこと、後悔するんだな!」
「待て!大量に使用すれば──」
遅かった。
零弥の忠告は、唐木には届かなかった。
唐木は、小瓶の中身を全て飲み干してしまった。
そして数秒後──
「ガハッ!」
唐木が血を吐いた。そして、その目は紅く染まり、全身の血管が浮き始めたのだ。
苦しみから逃れようとする雄叫びが部屋中に響き渡る。
そして、唐木を構成する身体的な部分は魔術によって巨大化し、ペルティエのリーダー、唐木庸治は巨大な猛獣へと変貌した。
ここのような、高さのあるホールでなければ天井を突き破っていただろう。高さは、ざっと十メートルくらいかだろうか?
さすがに零弥も驚かざるを得なかった。
それと同時に、唐木を憐れんだ。
「バカが……あれだけ大量に使用すれば、もう元には戻らないぞ!」
国家間で取引が禁止されている理由、もう一つは『副作用』である。
十分な効果を期待して、大量に使用すれば、当然ながら使用者に大きな負担がかかる。
例え、効果が上がっていても、使用者に命の危険が伴うのであれば意味がない。
そもそも能力や魔術の使いすぎで重大な障害を持ってしまった者も多数存在するのに、そもそもそういう力を持っていない人間が、スペルキーパーを手にすればどうなるか?興味本意で使いすぎることは明白だ。だからこそ禁止しているのだ。
しかし、唐木は間違えたのだ。
「大人しくしろよ……」
零弥は光子剣を構え、ペルティエとの最終決戦に挑む。
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