虚構幻葬の魔術師

crown

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アビスフリード争奪戦

連鎖上のディストーション①

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 世界はまるで一つのゲームだ。
 ゲームだ、と言えば世界をバカにしているのではないのかと言われがちだが、よくよく考えてみればそうだと思うだろう。
 何故ならば、生命体同士には法律、規則、協定といったルールが存在し、かつ戦争、商売、スポーツ等でも明確な勝利から敗北までちゃんと規定されている。勝敗をつけるものはゲームとしては最重要事項であり、もしそれが満たされているのであればゲームとして見立てるのは難しい話ではない。また、プレイヤー同士にハンデと実力差があるのもよりゲームらしくかつリアルに見せている。資金や戦力は国同士で差がつき、その力が無いものは『同盟』という手段で強大な力を手に入れるか自分に矛先を向けさせないようにする。勝つために最善の行動を取る、これはゲームでも一致する。
 実際にプレイすることだって同じだ。国のトップはどのように戦うか、どのように事を進めていくか、それとも大人しく引き下がるか……これは一般的なRPGやストラテジーゲームに置き換えられる。また、実際に戦地に立つものはもはや言うまでもないが、シューティングゲーム、FPS、レーシングの要素が入ってくる。
 だが、それは相手と相手、即ち二チーム以上のプレイヤーが地球上を舞台として戦っている、つまり戦争の類いがゲームとして見立てやすいが故にそういう持論が成り立っているわけで、そのようなことに無縁な一般人には当てはまらないのではないのか?
 答えは『否』だ。
 例えば、農家は作物をより多く育てるために畑を耕したり、機械を操作したり、農薬を使うかどうかで大きく結果が変わる。そして、一般的なサラリーマンは、自分の企画が通るように相手に向ける言葉を選んだり、その戦略を立てたり、もしくは企画自体を練り直したりする。

 更に突き詰めれば、この理論は生命体全てに適用される恐るべき仮説を生み出す余地がある。

 その代表例として、生命体の一生をアクションRPGとして挙げるとしよう。
 まず、ゲームスタートとして、生命体の誕生が挙げられる。HPは常時少しずつ下がり続け、やがてはゼロになる。これが寿命だ。空腹状態では下がる量が多いので、生命体は食料と水を手にいれる。その手段として金を集め、その手段として働く。だが、運命とは非情なもので、あるプレイヤーは事故eventに遭遇した。傷口は小さかったのに全身を強く打ってしまった。その結果、傷口の大小関係なく全身を強く打ったことで、そのプレイヤーにはgame overと宣告された。
 どうだろうか?
 こう考えてみれば、世界の理など、ゲームとして見ることは決して間違いではないだろう?
 さて、政治的に大きく絡む一つ目の例、民間の職業である二つ目、そして生命体自体の一生である三つ目。これらに共通するルールは何だろうか?
 答えは『選択』である。
 戦争ではもちろん、職業でも人生でも、選択はいくらでもやってくる。例に挙げた事故だって、あらかじめ周りを注意するという見えない選択肢を取ればゲームは続いたかもしれない。
 さて、ではどんな事をすれば、一切のハンデも付かない公正なゲームになるのだろうか?では、一つ目の例を解決することを考えよう。
 世界で争いが無くならないのは、名目上どの国も同列の位置に存在し、その頂点を目指そうとするからだ。ならば、全てを統べ、絶対的ルールを決められる絶対的頂点、即ち『神』のような存在が全生命体で確立されれば、争いなどなくなるのだろうか?
 もしそうだとしても、その神は我々に向ける感情など無いだろう。
 生命体の死など、神々にとっては石を投げた時に起こる水の波紋程度に過ぎないのだから……




 ならば、むしろ各自のルールに従って、今後の出来事を有利に進めようではないか。
 そのゲームのルールはいたって簡単。運と駆け引き、そして相手の情報をいかに利用するかがカギとなる戦争ゲームだ。
 そこに石とハサミと紙がある。
 石は硬いボディを利用し、ハサミなどものともしないが、紙に包まれてしまえば身動きが取れない。
 ハサミは石を切ることは出来ないが、紙を切ることは容易だ。
 紙はハサミに到底太刀打ち出来ないが、石を包み込んでしまうことができる。
 一度決めた兵を取り替えることは出来ない。ましてや、攻撃するタイミングは同じで、それをずらすことは許されない。
 同じ兵が戦った場合はお互いに相討ちとなり、新たに兵を選択し、勝負する。これを決着がつくまで繰り返す。
 そして、開戦時は高らかにこう宣言するのがマナーだ。




『「ジャンケン、ポン!」』
 
 

「やったぁーー!」
  ユミの石が零弥のハサミを見事に打ち破った。ユミの選択は正しかったのだ。
「くっ……そ……俺のシュークリームが……」
「勝ったから私のものよ♪残念だったわね」
 どういう風の吹き回しなのか、流雅がベビーシュークリームを買ってきたのである。ちょうど零弥、ユミ、亜芽もいたのだが、その数なんと、十三個入り。まさかの素数かつ一個だけ残る明らかに出来すぎた個数だった。
 甘党の零弥とシュークリームが大好きなユミの仁義無き戦いが行われた結果、深読みをしすぎた零弥が自滅する形で幕を閉じた。
「あーあ、深読みしすぎたね」
「零弥、考えすぎ」
 ギャラリーの二人におちょくられたのは単純に腹が立った。一番負けてはいけないユミに読み合いで負けることに屈辱を感じながらも言い返せないもどかしさに、零弥はしばらく悶えていたようで、「くそっ……くそ……」と何度も呟いていた。
「っていうか、これからどこ行くの?こんなところで時間食ってたらもったいないじゃん」
  私立星蕾高校、今日は一年生の遠足の日である。出来るだけ長く楽しめるように……という粋な計らい(?)もあり、出発はなんと七時ジャスト!
 眠い。
 だるい。
 出発前の生徒たちの気持ちはこれっきりだったが、バスに乗ってしまえばそんな雰囲気は一気に取っ払われた。
 結局、長く非日常を味わえるのは良いことなのだ。
「ユミちゃん、じゃあ聞くけど、君はどこか行きたいところはあるのかい?」
「無い」
「即答……」
 ユミの返答に亜芽は呆れたのか気が抜けたのかわからない返答をした。
「だって、遠足だからってどこかに連れてくれるのかって思ったら、海で泳ぐわけでもなく、どこか観光でもするわけでもなく、ただ都会の町並みにほっぽりだされただけじゃん。いまさら行くとこ考えろってね……」
「考える時間は授業で取ったぞ」
 零弥が息を吹き返した。
「結局ここで寄るような場所はなかったでしょーが!」
 ユミは頭を抱える。
「あぁ……せめて遊園地だったら楽しめたのになぁ……」
「遊園地?テーマパーク?アミューズメントパーク?」
 亜芽がふざける。
「どれも同じじゃない……いや、それは置いといて、私って絶叫系は得意な方なんだよね」
「あぁ、去年の遠足では何周もジェットコースターを乗り回してたな」
 零弥が顎に手を当て思い出す。
「ジェットコースターだけじゃなくて、フリーフォールとかも積極的に行ってたね」
「その結果、班の女子たちがモヌケの殻になったがな」
 ユミがその言葉を聞いて苦笑いした。
「そもそも、ジェットコースターの楽しみって何なんだ?あんなの、ただ猛スピードで決められた道を通るだけだろ?」
 零弥が嘲り混じりの質問する。
「それが楽しいんでしょ!後、ただ決められた道を通るだけってのは語弊があるよ。高いところから猛スピードで落ちる感覚が醍醐味なんでしょうが」
「まぁ、確かに高いところから猛スピードで落ちることなんて
「それ、零弥が言うこと?」
 亜芽が冷たく突っ込む。
「でも、千メートル級から落ちるのって気持ちいいんだろうなぁ……」
 ユミが余韻に浸ったところで、零弥達はそこから移動することにした。

 
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