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アビスフリード争奪戦
街角は宵闇に灯されて①
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『世界はまるでゲームのようだ』
先日、そんな事を言ったような気がしないまでもない。
世界をゲームとして見立てることは、それほど現実とかけ離れた事ではないということは、その時でも少しは述べていたと思う。となると、当然沸いてくる考えとして、『世界をゲームとして見立てるなら、そのゲーム自体は一体何物なのか』ということであろう。この文章ではそれを重点的に追求していくとする。
さて、その考えに対する答えを導くためには、少しばかりか手順を踏む必要がある。その中でも大きな物は、『ルール』についての理解と、別視点での観察を重ねることが必要なのである。
始めに、『ルール』とは何か、考えていくために、『法律』と『生命』の二つの面を対比する。
ルール……それはプレイヤーに対して、その行動を制限したり、勝敗を定義したり、命令や使命を課すもの。ゲームにおいて、必然的に存在し、プレイヤーを絶対的に支配する物である。
ただし、『プレイヤーを絶対的に支配する』という点において、我々が普段プレイしているテレビゲームではそうであっても、『現実』においては、その法律を定義するのは我々知的生命体の一部なのである。つまり、自らが支配されるためにルールを作っていると言っても過言ではない。国会をイメージしてくれれば分かりやすいだろう。反対意見も存在するが、最終的にはどちらかが折れる。つまり、表向きにはそれを了承するということだ。生命体が都合よく生きるために、わざわざ自分を縛るようなルールを作ることでバランスをとっている……矛盾しているようで、実は利にかなった行為なのだ。
さて、『生命』においてはどうなるだろうか?
誰が考えたのかもわからないこの世界で、生まれた瞬間に課せられる絶対不変のルール。それは死ぬまでいつもいつも付きまとう。
それに対して、我々知的生命体はどういった行動を取るのだろうか。法律とは違い、誰が作ったのかもわからず、誰がそれを物理的に変えることは出来ない。死者を生き返らせることが出来ないように、知的生命体にとって都合の悪い面が多々ありながらも、最終的には受け入れるしかないのだ。
そして、それが生命体にある行動をさせる要因となる。それは『反抗』だ。
生きるために、自らの欲を満たすために、生命体は運命に抗い続ける。つまり、ルールを受け入れる前に、不都合な現実に対して抗う、『自分VS運命』の構造を生み出しているのだ。自殺や悟りを開く者もいるが、法律とは違い、反抗する割合が圧倒的に違う。まさに正反対と言っても過言ではない。
だが、物事には必ず『例外』が存在する。例えば、ルールの隙間を突くような、違反ではないが想定の出来ない行為をする、つまり、ゲームの秩序を著しく乱すプレイヤーだっている。
これからはその者を、『規則破り』と呼ぶことにする。
さて、この物語ではもうすぐ、貴石競争が行われる。このゲームにおいて、数多の策略を張り巡らせる、『規則破り』は一体何物なのか──
長くも感じられなかった休日はあっという間にすぎ、私立星蕾高校の新しい一週間は始まった。知的生命体というものは、いとも容易く怠けてしまうようで、土日の疲れが抜けきれていない者、眠そうにあくびやクマを作る者、心の中で登校拒否をするもので溢れ帰っている。
そんな中、受験に対して、そろそろ考え始めなければいけないのは三年生。六月の始めでも、大学入試はあっという間に来ると、耳に蛸ができるほど聞かされているので、自覚はしているつもりだがなんとなく実感がわかないのは事実。まぁ、とりあえず迫り来る模試に、鉛筆で対抗するしか方法は無いのだと思っていたりする。
さて、この女性もちゃんと三年生だ。
生徒会長、霧島紗亜矢。
会長まで登り詰めているだけあって、成績はかなり優秀だ。 星高の頂点に君臨……というほどではないが、トップクラスなのは違いない。
今のところ仕事はほとんどなく、あると言えば二学期初頭の文化祭、『星高祭』の初期計画と言ったところか。それが終われば、ついにその身を引くことになる。
それはなんとなく、寂しいものだった。あの狂騒の日々が無くなってしまうなんて、考えることも想像することも出来ない。まだ終わってないのだが。
そんなことより。
今日は隣に、正確には前に、可愛い可愛い後輩の姿が。
「おはよう!零弥くん」
「……あぁ、おはようございます」
別に直属の後輩になった覚えはない零弥が目の前に。案外愛想が悪いので、紗亜矢は膨れっ面をして、
「なに、その返答は。もっと先輩を敬いなさい」
「自分はあなたの後輩でも、生徒会の一員でもなく、所属する予定もないただの一年生ですが」
やっぱり愛想が悪い。
「いいえ!知ってる?私は生徒会長なのよ!」
「それは知ってます」
「ならば、私はこの学校のリーダーということになる」
「……?」
この学校のリーダー……は校長のはずだが?と、零弥は首をかしげる。
「つまり、この学校の一二年生は、すべて私の後輩ということになるのよ!」
「……はぁ?」
後輩というのはあながち間違ってはいないが……そもそも定義が間違っているような、そうでないような。後輩……あれ、年下のことをすべて指すのか?じゃあ、俺は次の世代の人間全てが後輩ということになるのか?別に話したこともないのに?……あぁ、止めよ。
などという思考を張り巡らせたのは地味に疲れる。
「もう、聞いてるの!」
「……聞いてはいます」
「ならよろしい」
紗亜矢は満足そうに目を閉じる。
「ちゃんと私の話を聞いたご褒美に、私の相談を聞く権利をあげましょう」
「……恋愛相談ならお断りますが」
本来の立場が逆だという野暮なツッコミは敢えてしない。悪しからず。
「コホン……私も二学期には引退だから、そろそろ新しいメンバーを探さなきゃいけないのよねぇ。この学校、選挙しないから」
「全く、生徒会以外の話題は無いのですか……?」
「生徒会長なら当然よ!これでも、星高のリーダーだから。恋愛なんてしてる暇はないの」
「でも、校内ではモテるんですよね?学年問わず、男女問わず」
「えっ……そんなこと……ないわよ」
なぜそこで顔を赤くする、目を逸らす……?
「……んまぁ、成績を見て決めるんじゃあ、そりゃあ大変になりますって。今時、立候補制度もないなんて、珍しいにも程がある」
選挙制度も十代が投票できる今、生徒会の選挙すら行わないのは珍しい。特に理由は無いが。
「わかってるじゃないの。そこで……君、椎名零弥くん」
「はぁ……?」
零弥はため息で返答する。
「新しいメンバーを探すための作戦を組み立ててくれないかな?」
紗亜矢は零弥に上目遣いですり寄ってくる。所々でウィンクしてくるところに妙な本気度が感じられる。
「──うわぁ……」
情けないため息が出てしまったのは正直失敗した。本当は読めていたはずなのに。
「場所はいつものカフェ。日時はどうする?」
いつもの……ではない。零弥を生徒会に誘った時から、別に二人っきりで行った覚えはないし、事実行ってない。
「待ってください。別に俺はその要望を受け持つなんて言ってないはずだ」
「あら、そうなの?ケーキでもおごってあげようと思ったのに」
「!……ケーキ……?」
そういえば……最近新しいメニューにチョコレートケーキが入ったとか。零弥は余計な(?)ことを思い出してしまった。
「決まりね。で、結局日時はどうするの?」
「週末……木曜日までなら大丈夫です」
「木曜日ね……いいわよ。で、週末に何かあるわけ?」
紗亜矢がさらに顔を近づけて来る。
「そうですね。ちょっくら、『旅行』にでも」
零弥も準備は進めている。一日位大丈夫だ。そして、紗亜矢にはペルティエの件で情報提供や外出許可など、色々世話になっている(本人は自覚していないようだが)。ケーキを抜きにしても、別に断る理由はなかったし、今回ぐらいは協力してもいい気はしていた。
後、登校前の最後に。
「……会長、一ついいですか?」
「?何か?」
「その体制はいささか誤解を招く気がしなくもないのですが……」
「へ?あっ……ごめんなさい……」
すぐに顔を離した。真っ赤に染めて。
この後、そのようすを目撃していた摩美と藍那に問い詰められたのは、また別の話である。
先日、そんな事を言ったような気がしないまでもない。
世界をゲームとして見立てることは、それほど現実とかけ離れた事ではないということは、その時でも少しは述べていたと思う。となると、当然沸いてくる考えとして、『世界をゲームとして見立てるなら、そのゲーム自体は一体何物なのか』ということであろう。この文章ではそれを重点的に追求していくとする。
さて、その考えに対する答えを導くためには、少しばかりか手順を踏む必要がある。その中でも大きな物は、『ルール』についての理解と、別視点での観察を重ねることが必要なのである。
始めに、『ルール』とは何か、考えていくために、『法律』と『生命』の二つの面を対比する。
ルール……それはプレイヤーに対して、その行動を制限したり、勝敗を定義したり、命令や使命を課すもの。ゲームにおいて、必然的に存在し、プレイヤーを絶対的に支配する物である。
ただし、『プレイヤーを絶対的に支配する』という点において、我々が普段プレイしているテレビゲームではそうであっても、『現実』においては、その法律を定義するのは我々知的生命体の一部なのである。つまり、自らが支配されるためにルールを作っていると言っても過言ではない。国会をイメージしてくれれば分かりやすいだろう。反対意見も存在するが、最終的にはどちらかが折れる。つまり、表向きにはそれを了承するということだ。生命体が都合よく生きるために、わざわざ自分を縛るようなルールを作ることでバランスをとっている……矛盾しているようで、実は利にかなった行為なのだ。
さて、『生命』においてはどうなるだろうか?
誰が考えたのかもわからないこの世界で、生まれた瞬間に課せられる絶対不変のルール。それは死ぬまでいつもいつも付きまとう。
それに対して、我々知的生命体はどういった行動を取るのだろうか。法律とは違い、誰が作ったのかもわからず、誰がそれを物理的に変えることは出来ない。死者を生き返らせることが出来ないように、知的生命体にとって都合の悪い面が多々ありながらも、最終的には受け入れるしかないのだ。
そして、それが生命体にある行動をさせる要因となる。それは『反抗』だ。
生きるために、自らの欲を満たすために、生命体は運命に抗い続ける。つまり、ルールを受け入れる前に、不都合な現実に対して抗う、『自分VS運命』の構造を生み出しているのだ。自殺や悟りを開く者もいるが、法律とは違い、反抗する割合が圧倒的に違う。まさに正反対と言っても過言ではない。
だが、物事には必ず『例外』が存在する。例えば、ルールの隙間を突くような、違反ではないが想定の出来ない行為をする、つまり、ゲームの秩序を著しく乱すプレイヤーだっている。
これからはその者を、『規則破り』と呼ぶことにする。
さて、この物語ではもうすぐ、貴石競争が行われる。このゲームにおいて、数多の策略を張り巡らせる、『規則破り』は一体何物なのか──
長くも感じられなかった休日はあっという間にすぎ、私立星蕾高校の新しい一週間は始まった。知的生命体というものは、いとも容易く怠けてしまうようで、土日の疲れが抜けきれていない者、眠そうにあくびやクマを作る者、心の中で登校拒否をするもので溢れ帰っている。
そんな中、受験に対して、そろそろ考え始めなければいけないのは三年生。六月の始めでも、大学入試はあっという間に来ると、耳に蛸ができるほど聞かされているので、自覚はしているつもりだがなんとなく実感がわかないのは事実。まぁ、とりあえず迫り来る模試に、鉛筆で対抗するしか方法は無いのだと思っていたりする。
さて、この女性もちゃんと三年生だ。
生徒会長、霧島紗亜矢。
会長まで登り詰めているだけあって、成績はかなり優秀だ。 星高の頂点に君臨……というほどではないが、トップクラスなのは違いない。
今のところ仕事はほとんどなく、あると言えば二学期初頭の文化祭、『星高祭』の初期計画と言ったところか。それが終われば、ついにその身を引くことになる。
それはなんとなく、寂しいものだった。あの狂騒の日々が無くなってしまうなんて、考えることも想像することも出来ない。まだ終わってないのだが。
そんなことより。
今日は隣に、正確には前に、可愛い可愛い後輩の姿が。
「おはよう!零弥くん」
「……あぁ、おはようございます」
別に直属の後輩になった覚えはない零弥が目の前に。案外愛想が悪いので、紗亜矢は膨れっ面をして、
「なに、その返答は。もっと先輩を敬いなさい」
「自分はあなたの後輩でも、生徒会の一員でもなく、所属する予定もないただの一年生ですが」
やっぱり愛想が悪い。
「いいえ!知ってる?私は生徒会長なのよ!」
「それは知ってます」
「ならば、私はこの学校のリーダーということになる」
「……?」
この学校のリーダー……は校長のはずだが?と、零弥は首をかしげる。
「つまり、この学校の一二年生は、すべて私の後輩ということになるのよ!」
「……はぁ?」
後輩というのはあながち間違ってはいないが……そもそも定義が間違っているような、そうでないような。後輩……あれ、年下のことをすべて指すのか?じゃあ、俺は次の世代の人間全てが後輩ということになるのか?別に話したこともないのに?……あぁ、止めよ。
などという思考を張り巡らせたのは地味に疲れる。
「もう、聞いてるの!」
「……聞いてはいます」
「ならよろしい」
紗亜矢は満足そうに目を閉じる。
「ちゃんと私の話を聞いたご褒美に、私の相談を聞く権利をあげましょう」
「……恋愛相談ならお断りますが」
本来の立場が逆だという野暮なツッコミは敢えてしない。悪しからず。
「コホン……私も二学期には引退だから、そろそろ新しいメンバーを探さなきゃいけないのよねぇ。この学校、選挙しないから」
「全く、生徒会以外の話題は無いのですか……?」
「生徒会長なら当然よ!これでも、星高のリーダーだから。恋愛なんてしてる暇はないの」
「でも、校内ではモテるんですよね?学年問わず、男女問わず」
「えっ……そんなこと……ないわよ」
なぜそこで顔を赤くする、目を逸らす……?
「……んまぁ、成績を見て決めるんじゃあ、そりゃあ大変になりますって。今時、立候補制度もないなんて、珍しいにも程がある」
選挙制度も十代が投票できる今、生徒会の選挙すら行わないのは珍しい。特に理由は無いが。
「わかってるじゃないの。そこで……君、椎名零弥くん」
「はぁ……?」
零弥はため息で返答する。
「新しいメンバーを探すための作戦を組み立ててくれないかな?」
紗亜矢は零弥に上目遣いですり寄ってくる。所々でウィンクしてくるところに妙な本気度が感じられる。
「──うわぁ……」
情けないため息が出てしまったのは正直失敗した。本当は読めていたはずなのに。
「場所はいつものカフェ。日時はどうする?」
いつもの……ではない。零弥を生徒会に誘った時から、別に二人っきりで行った覚えはないし、事実行ってない。
「待ってください。別に俺はその要望を受け持つなんて言ってないはずだ」
「あら、そうなの?ケーキでもおごってあげようと思ったのに」
「!……ケーキ……?」
そういえば……最近新しいメニューにチョコレートケーキが入ったとか。零弥は余計な(?)ことを思い出してしまった。
「決まりね。で、結局日時はどうするの?」
「週末……木曜日までなら大丈夫です」
「木曜日ね……いいわよ。で、週末に何かあるわけ?」
紗亜矢がさらに顔を近づけて来る。
「そうですね。ちょっくら、『旅行』にでも」
零弥も準備は進めている。一日位大丈夫だ。そして、紗亜矢にはペルティエの件で情報提供や外出許可など、色々世話になっている(本人は自覚していないようだが)。ケーキを抜きにしても、別に断る理由はなかったし、今回ぐらいは協力してもいい気はしていた。
後、登校前の最後に。
「……会長、一ついいですか?」
「?何か?」
「その体制はいささか誤解を招く気がしなくもないのですが……」
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