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アビスフリード争奪戦
街角は宵闇に灯されて④中編Ⅰ
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「わぁ……ここは何ですの?色んな機械と人がいっぱい……何だか楽しそうですわ!」
「ゲームセンター。ここらでは一番大きな所。スフィアもきっと楽しめるはず」
今日は敢えてこの場所を選んだ。選定は零弥、勿論それなりの理由があったりする。
聞こえてくるゲーセン特有の騒音と人混み。だが敷地の広さが、決してそれを不快な感覚にさせない。
その前に……
「アメ、『ゲームセンター』って、何ですの?」
「まさか……ゲーセンを知らないのか?」
「私は王族ですわ。あまり外に出掛けたことは無いですし、外に出たと思ったら父の仕事に連れられて……遊ぶ暇なんて無いんですの」
「シッ、あまり大きい声で言うな」
ヴァールリード家襲撃事件は世界中に知れ渡っている。下手に関連ワードをしゃべっていれば、本当に零弥は犯罪者になる。
「ゲーム……は我が国でもありますが、これは見たことが無いですわ。こんな大きな機械がズラリと並べられているのは、首都大学のスーパーコンピュータを見たとき以来です」
スフィアはキョロキョロと回りを見渡している。
「じゃあ、手短に解説するよ」
亜芽がケホンと咳払いをする。
「ゲームセンターとは、その名の通り多数のゲームが一つの敷地に集められた場所を指す。だけど、大迫力の画面と音響のように、家庭では味わえない部分を強調しているのがウリ。遊びたいと思う台で支払えばすぐに遊べるから、色々回ってみると良い。」
以上、月島亜芽の解説コーナーでした。
「そして、ここは俺が中学生の頃に通っていた所でもある」
「──そうだったの?」
亜芽が驚きの……あまり表情は変わっていないが、顔をしている。
「しかし……いざ来てみると広いもんだな。そういや、半年ぐらいは行ってなかったか」
辺りを見回す零弥。独特の雰囲気は、中学生の時に通ったあの頃を思い出させる。
「あの時は、音ゲーやクレーンゲームも、一人籠って遊んでいたな……少しだけ商品を押してやったこともあったな……うんうん」
「能力をそんな事に使うんじゃない。商品の重力を制御なんかしたら、クレーンの存在意義が無くなるし、お店側も商売あがったり」
「あっはは……」
亜芽が白い目をしていたのは振り向かなくてもわかる。
ユミや流雅とつるんではいたが、ゲーセンはほとんど一人で遊んでいた。スマホのアプリで遊ぶのも良いが、自分より大きいスケールを相手にコマンドを打ち続けるという行為は実際に来なければ味わえない。自分の趣味がほとんど無い零弥にとって、金の使い道では絶好の場所だった。
「いや~それでも、最近は新台が増えたのか?見たこともないゲームがそこら中に置かれている。これからも通わなきゃな……見てみろ、あの台は無くなってしまったか……中々高確率で確変するから良いカモだったが、ここぞというときに外すんだぞ。あの時はよく引っ掛かったもんだ。おっ、あれは最新型に更新されたのか──」
あれ……これは……
「──あのレースゲームのハンドルは絶妙な力加減をしていてな……少し弱すぎると曲がりきれず、少し強すぎるだけでコースアウトだ。何度もやって始めてトップ通過できたが……初心者は難しいだろうな──」
──二人に、嫌な予感が背中の表面を駆け巡った。
「──そうそう、クレーンゲームのアームは最悪だったな。当時は吊るよりもアームの開閉を利用して商品自体を押してやるのが主流だった。ごく稀に雪崩が起きたときの爽快感は堪らなくてな──」
零弥が解説をすると中々止まらない。今回もハマってしまった。
「長いですわね……」
「長いのは良いとして、しれっと私の『ゲーマー』ポジションまで奪おうとしているわけ、ない?」
一応解説しておくと、零弥はゲーセンに思い出はあるが、亜芽程に熱さは持っていない。ここでなければ、解説役は更に亜芽が受け持っていたことだろう。何故零弥なのかというと、それは『思い出補正』がかかっているからである。
零弥の懐かしさにまみれた思い出は、放たれれば中々止まらなかった。人というものは、興味ないことを聞かされるのは苦痛だが、興味のあることをずっと話すことに苦痛を感じず、むしろ気持ちよくなるものだ。饒舌な人間を止めることは難しい。実際、二人はこの話をほとんど聞いていない。
「あれはなんでしょうか?どうやって動いているのかな?あっちはどうなのかな?」
好奇心が爆発したようで、スフィアは二人を置いて走り出してしまった。やはり、王族でも十一歳。世の中のことに色々興味を持ち出す年頃なのだ。しかも保健室でなかなかの好奇心を見せつけたスフィア。別に、今走り回りたくなっても仕方がないだろう。本来、これは良いことなのだから。
「あっ、待ってって!走ったら危ない」
ただし、それが原因で護衛を外れるのは良くないことだ。亜芽が慌てて追いかける。零弥の昔話は放って置き、ただ彼女だけを一転集中して。
「──それで、メダルの通り道を何とか限定させてやることで安定したメダルの確保が可能となる……あら?」
情けない声と共にそこにいたはずの少女たちがいないことを確認すると、零弥は走っていく二人の姿をすぐさま見つけた。途中から完全に聞いていない。
「あっ、ちょっ……待ってくれ!」
零弥は二人の後を追うと共に、亜芽とどのようなゲームで勝負しようか、下調べを開始した。
「ゲームセンター。ここらでは一番大きな所。スフィアもきっと楽しめるはず」
今日は敢えてこの場所を選んだ。選定は零弥、勿論それなりの理由があったりする。
聞こえてくるゲーセン特有の騒音と人混み。だが敷地の広さが、決してそれを不快な感覚にさせない。
その前に……
「アメ、『ゲームセンター』って、何ですの?」
「まさか……ゲーセンを知らないのか?」
「私は王族ですわ。あまり外に出掛けたことは無いですし、外に出たと思ったら父の仕事に連れられて……遊ぶ暇なんて無いんですの」
「シッ、あまり大きい声で言うな」
ヴァールリード家襲撃事件は世界中に知れ渡っている。下手に関連ワードをしゃべっていれば、本当に零弥は犯罪者になる。
「ゲーム……は我が国でもありますが、これは見たことが無いですわ。こんな大きな機械がズラリと並べられているのは、首都大学のスーパーコンピュータを見たとき以来です」
スフィアはキョロキョロと回りを見渡している。
「じゃあ、手短に解説するよ」
亜芽がケホンと咳払いをする。
「ゲームセンターとは、その名の通り多数のゲームが一つの敷地に集められた場所を指す。だけど、大迫力の画面と音響のように、家庭では味わえない部分を強調しているのがウリ。遊びたいと思う台で支払えばすぐに遊べるから、色々回ってみると良い。」
以上、月島亜芽の解説コーナーでした。
「そして、ここは俺が中学生の頃に通っていた所でもある」
「──そうだったの?」
亜芽が驚きの……あまり表情は変わっていないが、顔をしている。
「しかし……いざ来てみると広いもんだな。そういや、半年ぐらいは行ってなかったか」
辺りを見回す零弥。独特の雰囲気は、中学生の時に通ったあの頃を思い出させる。
「あの時は、音ゲーやクレーンゲームも、一人籠って遊んでいたな……少しだけ商品を押してやったこともあったな……うんうん」
「能力をそんな事に使うんじゃない。商品の重力を制御なんかしたら、クレーンの存在意義が無くなるし、お店側も商売あがったり」
「あっはは……」
亜芽が白い目をしていたのは振り向かなくてもわかる。
ユミや流雅とつるんではいたが、ゲーセンはほとんど一人で遊んでいた。スマホのアプリで遊ぶのも良いが、自分より大きいスケールを相手にコマンドを打ち続けるという行為は実際に来なければ味わえない。自分の趣味がほとんど無い零弥にとって、金の使い道では絶好の場所だった。
「いや~それでも、最近は新台が増えたのか?見たこともないゲームがそこら中に置かれている。これからも通わなきゃな……見てみろ、あの台は無くなってしまったか……中々高確率で確変するから良いカモだったが、ここぞというときに外すんだぞ。あの時はよく引っ掛かったもんだ。おっ、あれは最新型に更新されたのか──」
あれ……これは……
「──あのレースゲームのハンドルは絶妙な力加減をしていてな……少し弱すぎると曲がりきれず、少し強すぎるだけでコースアウトだ。何度もやって始めてトップ通過できたが……初心者は難しいだろうな──」
──二人に、嫌な予感が背中の表面を駆け巡った。
「──そうそう、クレーンゲームのアームは最悪だったな。当時は吊るよりもアームの開閉を利用して商品自体を押してやるのが主流だった。ごく稀に雪崩が起きたときの爽快感は堪らなくてな──」
零弥が解説をすると中々止まらない。今回もハマってしまった。
「長いですわね……」
「長いのは良いとして、しれっと私の『ゲーマー』ポジションまで奪おうとしているわけ、ない?」
一応解説しておくと、零弥はゲーセンに思い出はあるが、亜芽程に熱さは持っていない。ここでなければ、解説役は更に亜芽が受け持っていたことだろう。何故零弥なのかというと、それは『思い出補正』がかかっているからである。
零弥の懐かしさにまみれた思い出は、放たれれば中々止まらなかった。人というものは、興味ないことを聞かされるのは苦痛だが、興味のあることをずっと話すことに苦痛を感じず、むしろ気持ちよくなるものだ。饒舌な人間を止めることは難しい。実際、二人はこの話をほとんど聞いていない。
「あれはなんでしょうか?どうやって動いているのかな?あっちはどうなのかな?」
好奇心が爆発したようで、スフィアは二人を置いて走り出してしまった。やはり、王族でも十一歳。世の中のことに色々興味を持ち出す年頃なのだ。しかも保健室でなかなかの好奇心を見せつけたスフィア。別に、今走り回りたくなっても仕方がないだろう。本来、これは良いことなのだから。
「あっ、待ってって!走ったら危ない」
ただし、それが原因で護衛を外れるのは良くないことだ。亜芽が慌てて追いかける。零弥の昔話は放って置き、ただ彼女だけを一転集中して。
「──それで、メダルの通り道を何とか限定させてやることで安定したメダルの確保が可能となる……あら?」
情けない声と共にそこにいたはずの少女たちがいないことを確認すると、零弥は走っていく二人の姿をすぐさま見つけた。途中から完全に聞いていない。
「あっ、ちょっ……待ってくれ!」
零弥は二人の後を追うと共に、亜芽とどのようなゲームで勝負しようか、下調べを開始した。
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