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アビスフリード争奪戦
街角は宵闇に灯されて⑦前編
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「いらっしゃい、零弥くん」
流雅宅。
学校では何度も会っているが、こうやって流雅の家で会うのはユミがスフィアを連れてきて依頼、四日振りだ。
「スフィアちゃんの様子は?結構振り回されてるって聞いたけど」
「次期王女だということを忘れそうになるな。いや、忘れていたか。まぁそれだけ、無邪気な奴だ」
これらはあくまでも業務連絡だ。
流雅はいつも通りの笑顔を浮かべた。
「さて、最近活躍していないから、とりあえず実力を発揮してみたんだけど……」
流雅は既に開いているパソコンを操作する。すると、いくつかのウィンドウが次々と画面に現れた。
「こいつは……?」
「まぁ見たらわかるけど、とある商品の裏での輸出入のデータ。適当に漁ってたらここに行き着いちゃってね。参考程度でも見てくれないかな?」
零弥はそのデータをじっと見つめる。そこには産出地、国名、そして輸送先まで書かれていた。そして、その商品名は……
「アビスクロージャー!」
「その通り。一時期国際問題にもなったスペルキーパーの主な素材となる鉱石。そういや、ペルティエの件でもリーダーが大量に使ってたんだっけ?」
流雅はそう言いつつ、キーボードにコマンドを打ち始める。すると、今度は新たなウィンドウが拡大された。
「なんだと……ほとんどリーピタン王国からじゃないか!」
「気づいた?新たにハッキングしてたら、リーピタン王国はアビスクロージャーの特産地だって言うデータが出てきたんだ。その結果、犯罪の巣窟になってるわけ」
あまりにも危険すぎるクスリの原材料となるアビスクロージャーは、国際的にその情報が規制されている。それはもちろん、新たに被害者を生まないようにするためだ。
しかし、表向きはそうでも、裏ではこの規制は機能していなかった。結局、スペルキーパーは影で出回っているままだ。
今回のハッキングで、リーピタン王国の裏の一部が明らかになった。スペルキーパーの問題性は顕著であり、恐らく、オスカーも長い間、頭を悩ませ続けていたのだろう。
「そして、今回の黒幕らしきグループがこれ」
流雅はマウスを動かし、ある文面を浮かべた。その文章を零弥が読んでいく。
『我が隊が注目している組織は世界中の影で暗躍している組織がほとんどである。それらの動向を追い続けるのはいささか手間のかかることだ。さて、今回発生したリーピタン王国国王一家襲撃事件について、その首謀者及びその組織名は国際密売グループ、「Failnaught」である疑いが強いという報告が入った──』
「フェイルノート……?」
「聞いたことはないけど、結構大きな犯罪集団らしいよ?主にアビスクロージャーの密輸入、その他禁止商品の取引や回収も担っている。そして、世界中に支部をおいて、本部を特定させないようにしているみたい」
『フェイルノート』という響きは、どこかで聞いたことはあるような気はしている。そもそも、フェイルノートとは、アーサー王伝説に登場するトリスタン卿の弓矢の事である。他に使われたりしたような事は聞いていないし、もともと『聞いたことがある』というのはそこからのことである。
零弥は更に思考の幅を広げた。アビスクロージャーの輸出先を追うのではなく、次に相手がどのような一手を打つのかを考えた。
零弥の戦闘に於ける強さは、予測力とそれ以外の事態に対する対応力が大きな要因の一つとなっている。重力を操る力はかなりのアドバンテージを誇るが、ムダ打ちしていれば体力切れを起こしかねない。事実、それが原因で紅緒に怒られたこともあった。
そのために、零弥は攻撃の一部を光子剣や光子銃に任せているのだ。引き金を引くだけで刃や弾が精製されるこれらは、零弥にとって多大なる安心感を与えるものでもあった。そして精製スピードも、とある手順をふめば……
「もし、この情報が真実だとしたら、次はどう関わってくるか……」
零弥はさらに深く、思考の海に飛び込む。水面下に溺れる情報は果てしないものだが、いくつかの見当がつく情報は、水面上に浮かんでいるはずなのだ。
「国際的グループならば、そこには当然魔族がいるはず……だとしら……」
そのうち、零弥は一つの結論に近づいた。
「貴石競争を知っていたら、そのうちの参加者になっているかもしれない……!」
「そんなことになったら……ルールがどのようになっているか見当もつかないのに、組織的な強さからして違うフェイルノートに全力で叩き潰されに来たら……」
「また、犠牲者は増えるな」
零弥は冷静に答えた。
事実を述べることに、わざわざ動揺するようなメンタルはしていない。
ただ、事の重大さは身に染みている。
それと同時に、今度は自分がどうするべきかを考えなければいけない。泣き言を言っている暇などない。
「これ以上犠牲者は出しちゃいけない。そのために、まずはどうして奴らは国王一家を襲ったのかから考えるとしようか」
一連の事件のすべての始まりである、ヴァールリード家襲撃事件。その意味を紐解くしかないのだ、この事件を解決するためには。僅かな情報だけでも、零弥はとりあえず、考えてみることにした。
流雅宅。
学校では何度も会っているが、こうやって流雅の家で会うのはユミがスフィアを連れてきて依頼、四日振りだ。
「スフィアちゃんの様子は?結構振り回されてるって聞いたけど」
「次期王女だということを忘れそうになるな。いや、忘れていたか。まぁそれだけ、無邪気な奴だ」
これらはあくまでも業務連絡だ。
流雅はいつも通りの笑顔を浮かべた。
「さて、最近活躍していないから、とりあえず実力を発揮してみたんだけど……」
流雅は既に開いているパソコンを操作する。すると、いくつかのウィンドウが次々と画面に現れた。
「こいつは……?」
「まぁ見たらわかるけど、とある商品の裏での輸出入のデータ。適当に漁ってたらここに行き着いちゃってね。参考程度でも見てくれないかな?」
零弥はそのデータをじっと見つめる。そこには産出地、国名、そして輸送先まで書かれていた。そして、その商品名は……
「アビスクロージャー!」
「その通り。一時期国際問題にもなったスペルキーパーの主な素材となる鉱石。そういや、ペルティエの件でもリーダーが大量に使ってたんだっけ?」
流雅はそう言いつつ、キーボードにコマンドを打ち始める。すると、今度は新たなウィンドウが拡大された。
「なんだと……ほとんどリーピタン王国からじゃないか!」
「気づいた?新たにハッキングしてたら、リーピタン王国はアビスクロージャーの特産地だって言うデータが出てきたんだ。その結果、犯罪の巣窟になってるわけ」
あまりにも危険すぎるクスリの原材料となるアビスクロージャーは、国際的にその情報が規制されている。それはもちろん、新たに被害者を生まないようにするためだ。
しかし、表向きはそうでも、裏ではこの規制は機能していなかった。結局、スペルキーパーは影で出回っているままだ。
今回のハッキングで、リーピタン王国の裏の一部が明らかになった。スペルキーパーの問題性は顕著であり、恐らく、オスカーも長い間、頭を悩ませ続けていたのだろう。
「そして、今回の黒幕らしきグループがこれ」
流雅はマウスを動かし、ある文面を浮かべた。その文章を零弥が読んでいく。
『我が隊が注目している組織は世界中の影で暗躍している組織がほとんどである。それらの動向を追い続けるのはいささか手間のかかることだ。さて、今回発生したリーピタン王国国王一家襲撃事件について、その首謀者及びその組織名は国際密売グループ、「Failnaught」である疑いが強いという報告が入った──』
「フェイルノート……?」
「聞いたことはないけど、結構大きな犯罪集団らしいよ?主にアビスクロージャーの密輸入、その他禁止商品の取引や回収も担っている。そして、世界中に支部をおいて、本部を特定させないようにしているみたい」
『フェイルノート』という響きは、どこかで聞いたことはあるような気はしている。そもそも、フェイルノートとは、アーサー王伝説に登場するトリスタン卿の弓矢の事である。他に使われたりしたような事は聞いていないし、もともと『聞いたことがある』というのはそこからのことである。
零弥は更に思考の幅を広げた。アビスクロージャーの輸出先を追うのではなく、次に相手がどのような一手を打つのかを考えた。
零弥の戦闘に於ける強さは、予測力とそれ以外の事態に対する対応力が大きな要因の一つとなっている。重力を操る力はかなりのアドバンテージを誇るが、ムダ打ちしていれば体力切れを起こしかねない。事実、それが原因で紅緒に怒られたこともあった。
そのために、零弥は攻撃の一部を光子剣や光子銃に任せているのだ。引き金を引くだけで刃や弾が精製されるこれらは、零弥にとって多大なる安心感を与えるものでもあった。そして精製スピードも、とある手順をふめば……
「もし、この情報が真実だとしたら、次はどう関わってくるか……」
零弥はさらに深く、思考の海に飛び込む。水面下に溺れる情報は果てしないものだが、いくつかの見当がつく情報は、水面上に浮かんでいるはずなのだ。
「国際的グループならば、そこには当然魔族がいるはず……だとしら……」
そのうち、零弥は一つの結論に近づいた。
「貴石競争を知っていたら、そのうちの参加者になっているかもしれない……!」
「そんなことになったら……ルールがどのようになっているか見当もつかないのに、組織的な強さからして違うフェイルノートに全力で叩き潰されに来たら……」
「また、犠牲者は増えるな」
零弥は冷静に答えた。
事実を述べることに、わざわざ動揺するようなメンタルはしていない。
ただ、事の重大さは身に染みている。
それと同時に、今度は自分がどうするべきかを考えなければいけない。泣き言を言っている暇などない。
「これ以上犠牲者は出しちゃいけない。そのために、まずはどうして奴らは国王一家を襲ったのかから考えるとしようか」
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