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アビスフリード争奪戦
幻影 ~phantom~ ③
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「空港を出ていると聞いたが、状況は?」
「無事検問を通過した。もうすぐフライトだ」
ご丁寧に、ボイスチェンジャーを利用して会話する二人。だが、放たれるのはお互いのスピーカーであるため、周囲の客は怪しまない。
「申し訳ない。直前で危険を感じた。比較的に安全な国である日本に向かうつもりだ。盗聴機をはずすことは出来なかった。それを、人類陣営は気づいている可能性がある」
「……そうか。だが、盗聴がバレただけならまだいい。改めて立ち回る。そして、いい情報も仕入れられている」
「成る程。後は任せた。必ずアビスフリードを手に入れてくれ」
「そうだ。我が国のためにも」
二人は怪しい笑いとともに、電話を切った。
午前、試合開始には早すぎる時間。
人類陣営の二人は、ウォーミングアップ代わりといっては何だが、組み手をしていた。
組み手といっても、空手本来の型を知らないので、お互いの実践的な攻撃のみで、目的もあくまで相手の攻撃を交わすことに重点を置いている。
「はぁっ!」
まずはユミの正拳。零弥は右に首を倒す。その後も何度も何度もパンチを繰り出す。
数歩下がった零弥は能力を使わずとも一歩でユミの懐に潜り込み、即座に溝尾を狙って左手で手刀を入れる。
対して、ユミは余った右手で零弥の左手を叩き、払いのける。
「よし……」
零弥は逃れる勢いを吸収し、一度回転を加え180度方向転換する。
そうして、一瞬の呼吸とともに、ユミに向かって突進した。それに対して、ユミは再び捕まえる体勢をとった。追いかけず、待つ。そして捕まえる。そうして仕留めるつもりだった。
だが、そこに零弥の姿は無かった。
零弥は直前、空中に大ジャンプし、ユミの捕獲を避けていた。
予想外の動きに、ユミは対応できない。
地面についた零弥はユミの腰に手刀を加え、体勢を崩させる。そして、倒れたユミの首筋に手刀を振るい……直前で止めた。
「……勝負ありだな」
「……くぅぅ……」
零弥は掴んだ右手を放し、左手をユミに差しのべる。
だが、ユミは立ち上がらない。座ったまま、そっぽを向く。
「まだ気が晴れないのか?それとも、作戦を諦めきれなかったか?」
差し伸べた手を引く。二人の視線は会わない。
「……そんなのじゃなくて……」
「はぁ?なら何なんだよ」
「……あぁーーーもう!察しろやこの無頓着ヤロー!」
「うぉっと!」
零弥は突然襲いかかってきた右拳を左手で受け止める。正直、さっきの組み手よりも不意を突いていた。もう少しで本当に殴られそうだった。
「突然なんだ!調子悪いと思ったら殴ってくるわ、一体どうしたんだよ!」
「うるさいうるさいうるさい!何でも無いわよ!」
ユミは掴まれた右手を払う。
その顔が少し赤らめれいたのを、零弥は見逃した、いや、見ていなかった。
「……何があったかは知らないが、とりあえず、作戦を練るぞ」
このように、零弥はユミの変化に無頓着なままだった。
「どうせ、アビスフリードを探すだけでしょ?しかもその場その場で対応するぐらいの」
「……いいや、もう見当はついてる」
「……え?」
意外な返答に、ユミは少々戸惑ってしまった。
戦闘続きでほとんどヒントが得られなかったのに、もう居場所がわかっているのだとという。ユミ自身もわからないままだったので、この返答には驚くばかりだった。
「その居場所は──」
「では、最終日、開始ですわ!」
スフィアの合図とともに、号砲は勇ましく鳴らされた。
おそらく、他の陣営はそれとともに各地を駆け巡っているのであろう。アビスフリードの居場所のヒントは少ない。その事実はどの陣営にも当てはまる。だからこそ、時間を浪費するわけにはいかないのだ。
だが、この二人は違った。
「……何をしている……ですの?」
スフィアの目には、二人は目的地に向かって真っ直ぐ、堂々と歩いている姿が写っていた。迷い無く、振り向きもせず、ただ真っ直ぐ。まるで二人には、アビスフリードの輝きが見えているようだった。
あちこちで魔術が使われる音がする。もしかしたら、戦闘が行われているのかもしれない。そうなると、飛び火が来るか心配なはず。
それでも、二人は気にしなかった。
「……『新緑の宝石は器の中。それは近いようで遠い。暗闇の中にいる者達、そして我々に明るみを照らす。ただ、いつも、大切なものの近くにいる』……か」
二人がたどり着いたのは、まるで洞窟のように地盤が掘られた場所。過去に地震があったのだろう。断層がずれているように見える。そこに横穴を掘って、洞窟にした。そう考えられる。
進んでいくと、途中で不自然な場所が。
「ここ、水が入り込んでいる」
壁になっているはずなのだが、水が不自然に切れている。と言うことは……
「ドアになっているのか!」
強く押してみると、耳がいたくなるような害音とともに、壁が開く。そう、壁のように偽装したドアだったのだ。
そこを進んでいくと、一転、辺りは広場へと移る。
零弥の光子剣、そして、ユミに持たせたライトで周辺は何とか見える。二人は、ここが何なのかは一瞬で理解し、同時にユミは零弥の推理を肯定した。
「ここは……先人たちが眠る墓場。確かに、『大切なもの』がいる」
「これが……墓地?」
二人は、その荘厳さに息を飲んでいる。同時に、息遣いが荒くなっているような気がした。気のせいだったのでよかったのだが、本当にそうなってもおかしくなかった。それぐらいの雰囲気を醸し出している。
「広い城内だが、外には墓地だけがなかった。だから、詳しく調べていないここにあると思ったが、予想通りか」
零弥は推理を開始する。
「そしてここは……入り口自体は見えているが、壁のトリックを破らなければたどり着かない。つまり、『近いようで遠い』」
「零弥、あそこに!」
ユミが指を指す。その先には、明らかに怪しいものがあった。
「『目的の物は器の中』か」
そこには、大事そうにおかれた木箱。零弥は躊躇無く開ける。
それは、緑色にはほど遠い、真っ青な宝石だった。
「……え?まさか、ハズレ?」
「いいや、人類は魔力を持っていない。と言うことは……」
「アビスフリードは光らないってカァ?」
もう一人、いた。
いや、今ここに追い付いてきたのだ。
「燎 暁介!?」
零弥は驚く。それと同時に、宝石をポケットにしまい、臨戦態勢に入る。
「今度こそケリを付けるぜェ。覚悟しろォ。人類!」
「無事検問を通過した。もうすぐフライトだ」
ご丁寧に、ボイスチェンジャーを利用して会話する二人。だが、放たれるのはお互いのスピーカーであるため、周囲の客は怪しまない。
「申し訳ない。直前で危険を感じた。比較的に安全な国である日本に向かうつもりだ。盗聴機をはずすことは出来なかった。それを、人類陣営は気づいている可能性がある」
「……そうか。だが、盗聴がバレただけならまだいい。改めて立ち回る。そして、いい情報も仕入れられている」
「成る程。後は任せた。必ずアビスフリードを手に入れてくれ」
「そうだ。我が国のためにも」
二人は怪しい笑いとともに、電話を切った。
午前、試合開始には早すぎる時間。
人類陣営の二人は、ウォーミングアップ代わりといっては何だが、組み手をしていた。
組み手といっても、空手本来の型を知らないので、お互いの実践的な攻撃のみで、目的もあくまで相手の攻撃を交わすことに重点を置いている。
「はぁっ!」
まずはユミの正拳。零弥は右に首を倒す。その後も何度も何度もパンチを繰り出す。
数歩下がった零弥は能力を使わずとも一歩でユミの懐に潜り込み、即座に溝尾を狙って左手で手刀を入れる。
対して、ユミは余った右手で零弥の左手を叩き、払いのける。
「よし……」
零弥は逃れる勢いを吸収し、一度回転を加え180度方向転換する。
そうして、一瞬の呼吸とともに、ユミに向かって突進した。それに対して、ユミは再び捕まえる体勢をとった。追いかけず、待つ。そして捕まえる。そうして仕留めるつもりだった。
だが、そこに零弥の姿は無かった。
零弥は直前、空中に大ジャンプし、ユミの捕獲を避けていた。
予想外の動きに、ユミは対応できない。
地面についた零弥はユミの腰に手刀を加え、体勢を崩させる。そして、倒れたユミの首筋に手刀を振るい……直前で止めた。
「……勝負ありだな」
「……くぅぅ……」
零弥は掴んだ右手を放し、左手をユミに差しのべる。
だが、ユミは立ち上がらない。座ったまま、そっぽを向く。
「まだ気が晴れないのか?それとも、作戦を諦めきれなかったか?」
差し伸べた手を引く。二人の視線は会わない。
「……そんなのじゃなくて……」
「はぁ?なら何なんだよ」
「……あぁーーーもう!察しろやこの無頓着ヤロー!」
「うぉっと!」
零弥は突然襲いかかってきた右拳を左手で受け止める。正直、さっきの組み手よりも不意を突いていた。もう少しで本当に殴られそうだった。
「突然なんだ!調子悪いと思ったら殴ってくるわ、一体どうしたんだよ!」
「うるさいうるさいうるさい!何でも無いわよ!」
ユミは掴まれた右手を払う。
その顔が少し赤らめれいたのを、零弥は見逃した、いや、見ていなかった。
「……何があったかは知らないが、とりあえず、作戦を練るぞ」
このように、零弥はユミの変化に無頓着なままだった。
「どうせ、アビスフリードを探すだけでしょ?しかもその場その場で対応するぐらいの」
「……いいや、もう見当はついてる」
「……え?」
意外な返答に、ユミは少々戸惑ってしまった。
戦闘続きでほとんどヒントが得られなかったのに、もう居場所がわかっているのだとという。ユミ自身もわからないままだったので、この返答には驚くばかりだった。
「その居場所は──」
「では、最終日、開始ですわ!」
スフィアの合図とともに、号砲は勇ましく鳴らされた。
おそらく、他の陣営はそれとともに各地を駆け巡っているのであろう。アビスフリードの居場所のヒントは少ない。その事実はどの陣営にも当てはまる。だからこそ、時間を浪費するわけにはいかないのだ。
だが、この二人は違った。
「……何をしている……ですの?」
スフィアの目には、二人は目的地に向かって真っ直ぐ、堂々と歩いている姿が写っていた。迷い無く、振り向きもせず、ただ真っ直ぐ。まるで二人には、アビスフリードの輝きが見えているようだった。
あちこちで魔術が使われる音がする。もしかしたら、戦闘が行われているのかもしれない。そうなると、飛び火が来るか心配なはず。
それでも、二人は気にしなかった。
「……『新緑の宝石は器の中。それは近いようで遠い。暗闇の中にいる者達、そして我々に明るみを照らす。ただ、いつも、大切なものの近くにいる』……か」
二人がたどり着いたのは、まるで洞窟のように地盤が掘られた場所。過去に地震があったのだろう。断層がずれているように見える。そこに横穴を掘って、洞窟にした。そう考えられる。
進んでいくと、途中で不自然な場所が。
「ここ、水が入り込んでいる」
壁になっているはずなのだが、水が不自然に切れている。と言うことは……
「ドアになっているのか!」
強く押してみると、耳がいたくなるような害音とともに、壁が開く。そう、壁のように偽装したドアだったのだ。
そこを進んでいくと、一転、辺りは広場へと移る。
零弥の光子剣、そして、ユミに持たせたライトで周辺は何とか見える。二人は、ここが何なのかは一瞬で理解し、同時にユミは零弥の推理を肯定した。
「ここは……先人たちが眠る墓場。確かに、『大切なもの』がいる」
「これが……墓地?」
二人は、その荘厳さに息を飲んでいる。同時に、息遣いが荒くなっているような気がした。気のせいだったのでよかったのだが、本当にそうなってもおかしくなかった。それぐらいの雰囲気を醸し出している。
「広い城内だが、外には墓地だけがなかった。だから、詳しく調べていないここにあると思ったが、予想通りか」
零弥は推理を開始する。
「そしてここは……入り口自体は見えているが、壁のトリックを破らなければたどり着かない。つまり、『近いようで遠い』」
「零弥、あそこに!」
ユミが指を指す。その先には、明らかに怪しいものがあった。
「『目的の物は器の中』か」
そこには、大事そうにおかれた木箱。零弥は躊躇無く開ける。
それは、緑色にはほど遠い、真っ青な宝石だった。
「……え?まさか、ハズレ?」
「いいや、人類は魔力を持っていない。と言うことは……」
「アビスフリードは光らないってカァ?」
もう一人、いた。
いや、今ここに追い付いてきたのだ。
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