虚構幻葬の魔術師

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アビスフリード争奪戦

幻影 ~phantom~ ④

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「散々荒らしやがって……オメェらは何なんだよォ!」
 駆けつけた男の悲鳴は、反響に反響を重ねて、洞窟内を駆け巡る。
「薄々気づいてんだろ?『魔力に関する効果を持つなら、魔力を持たない人類には効果がない』ってことをさァ!」
「わぁっ!?」
 暁介の叫びは強烈で、ユミは思わず怯んでしまった。
 それとは対照的に、零弥はじっと暁介をにらみ続けている。
「クッ……やはり」
 辺りが熱い。おそらく魔術の影響だ。魔力や能力アビリティを保有しているか否かはDNAに情報として含まれている。また、それをコントロールするという器官の情報も同時に獲得している。つまり、という事だ。また、DNA検査でもそれらの保有の有無が分かる。
 また、心理的な影響は顕著に現れる。火事場の馬鹿力という言葉を知っているだろうか?あれは普段、身体の崩壊を防ぐために脳は制御しているが、緊急事態になるとその安全装置セーフティを外す。つまり普段以上の身体能力を発揮する。
 心理的に大きなインパクトがあれば、当然セーフティを外すきっかけになるのだ。だからこそ、暁介の魔術が発揮されている。
 また、もうひとつ分かることがある。
「高温、そして、ユミへの火を飛ばした不意討ち……様々な魔術が使える魔族……その中でも得意とする魔術は1つ存在する。燎 暁介は……」

「炎の魔術使いか!」 

 零弥は暁介の得意とする魔術の系統を突き止めた。洞窟となっているこの場所では、高温は最もといっていいほど体力を奪う要因である。だから、今はその場を退散するのが最善手だ。
「逃がさねぇぞ……テメェらに、アビスフリードは渡さねぇ!」
「行くぞ」
「えっ?」
 零弥はユミに掛け声をした。しかし、作戦など全く考えてもいないので、ユミはどうしたらよいかわからないままであった。
 だから、立ちすくむ。
 それとは対照的に、零弥は暁介の元へと突っ込んだ。重力を操作し、暁介の懐へと一瞬で飛び込む。
「甘ぇよ!『フレア・バースト』!」
 暁介の叫びとともに、零弥の眼前で魔力が爆発する。それとともに、炎が上がる。岩石が爆発につられ、四方八方に飛び散る。
 フレア・バーストは込めた魔力を所定位置に飛ばし、そこで爆発を起こさせる魔術。暁介が最も基本とする攻撃技である。
「……チッ」
 妖霊獣ドワーフは他の魔族に比べ、発動速度は劣る。だが、発動タイミングは早かった。したがって、零弥の突撃は届かない。
 爆発が、飛び散った岩石が零弥へと襲いかかる!
「アブねえ。やはりコイツは手放せないな」
 零弥の手には光子剣。何とか岩石の直撃を防いだ。辺りは粉塵が舞い、咳き込みそうになる。
 零弥は後方へひとっ跳び。ユミの手前に下がる。
「……ユミ。いいか」
「何?」
 零弥はユミに告げる。
「出来るだけ敵を引き連れて逃げろ。今すぐここは立ち去ってくれ。そうじゃなきゃ、今は本当に危ない。俺は奴の攻撃を完璧に防ぎきる自信がないんだ」
「……わかった。善処する」
 零弥は宝石をユミに渡す。それを掴んだユミは、出口へとまっしぐら。息を切らしながら逃げる。
「待ちやがれ!」
「させない」
 発動しかけたフレア・バースト。だが、光子フォトンの弾丸が暁介へと向かう。
「クソ……」
 弾丸は当たらない。だが、それによってフレア・バーストはあらぬ方向へと逸れた。
 暁介の一撃を、零弥は間一髪で防いだ。
「どうやら、お前は人類に何か怨みがあるようだな。まぁ、お前に何があったのか、何がそうさせたのか、その内容はどうでもいいが」
「テメェには関係ねェ。だけどなァ!人類はどいつもこいつも、魔族を畏れ、遠ざける。そうして俺が受けた仕打ちを!テメェは解らねェ!」
 暁介はさらに興奮する。奇声はさらに響き渡り、灼熱の熱波は冷静さを吹き飛ばす。
「魔力も持たねェ人類が何故俺の前に立ちはだかる?何故優位に立つ?何故……わざわざ遠ざけておきながら、魔族俺達の領域に無責任に踏み込んでくる!」
 暁介の主張は止まらない。
「魔力を持たない奴らは何も救えねェ。だからこそ、奴らはキテレツな技術に頼り、そして失敗する。あの時の、俺自身の様になァ!」
 暁介の悲鳴はまたしても響き渡る。必死にもがき、崩れそうになる。そういった姿に、零弥は応える。
「……人類は確かに鎖国的だ。八千年経った今でも、国際交流は薄い」
 零弥は間を置いて口を開く。
「だが、全ての人類がそうだと言えない事は、お前はよくわかっているはずだ。人類国家に住み続け、人類とともに生きているのならな!」
 零弥は追い討ちをかける。
「魔力がどうした?そんなものがなくても生命体は文明を進化させた。魔力が無ければ救えない?嘘をつけ。魔力や技術が無くとも、生命体を救ってきた者はたくさんいる。お前はどうなんだ?お前は……魔力にしか救われて来なかったのか?違うだろう。生命体は皆、様々な事象に影響される。それが魔力かどうかはわからない。だが、短絡的に人類を恨むお前に、歴史を紡いできた人類の技術と存在意義を否定する権利は無い!」
 零弥は左手で暁介を指差した。その眼差しは、いつものような力の抜けたものではない。明確に、敵意を持っている。
 対して暁介も、その腕に炎をまとわせるばかりだった。

「俺はお前の……行動原理を否定する!」

 「……望む所だァ!」

 その声と共に、辺りは爆発した。

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