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アビスフリード争奪戦
幻影 ~phantom~ ⑦
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「……妖霊獣が不覚を取った……」
監督室から眺める二人は、魔術によるモニターから、零弥達の戦闘をちょうど眺めていた。
序列五位、クーゲルは零弥の意外な勝利に感嘆した。零弥の能力の正体は判らずとも、その攻撃が届いていないことは読み取れる。そこからの逆転を予想できていなかったのだ。
「……えぇ。そうですわね……」
反して、スフィアの反応は薄い。
(レイヤ……あなたは一体、なんですの?)
暁介との戦闘、昨日の邂逅……そして、日本での出会い。
様々な出来事が、零弥に対する疑問を湧かせる。
スフィアはわからなかった。零弥の、その様が魅力的で、言葉は鋭く、思考は目を見張った、だが、それが彼に対する、不信感へと変わっていくのは。
(あなたは……私をどう見ているのでしょうか。
一国の王女?
単なる少女?
それとも……魔術師として?)
彼は言った。
「自分の運命と向き合え」と。
スフィアはまた、思い出していた。
昨日の夜の、零弥に対する質問を。
「……そうですわ、なら……」
零弥は、質問攻めにした対価を支払おうとしているのか。それとも、こちらの質問から何か引き出そうとしているのか。
どっちにしろ、選択肢は決まっている。
「わたくしも、あなたに聞きたいことがあります。それは……」
「あなたの……本当の正体は、一体何なのでしょうか」
「……どういう意味だ」
零弥は表情を変えない。言葉に反して、蔑むような顔は見せなかった。ただ、スフィアの返答を待つ。
「あなたは不思議な人。わたくしの奥底をいとも容易く見抜いてしまう」
スフィアは不意に目線を下げる。表情も暗い。
「レイヤの言うとおり、わたくしは王位を継承したくないし、望まない。だけど、周りはいつも『わたくししかいない』と迫り続ける。お兄様は国家戦力として統率しなければいけませんから……まぁ、当然なんですけども」
「……」
零弥は返答を待つ。
「あなたは違った。わたくしに選択肢を与える余地をくれた」
「……そんな権限は無いけどな」
零弥は視線を合わせない。そこに意味はない。
「それだけじゃない。あなたは他のプレイヤーとは違う。しなくてもいい戦いに挑んで、推理して、魔術に立ち向かって。人類であるあなたに意味は無かった。それでもあなたは戦い続ける」
スフィアはまたペンダントを握りしめる。緑の輝きが完全に遮られる。またうつむいた。
「だけど、意味があるからあなたは戦う。それを大事だとあなたは思ったから」
保健室でも耳にした、その言葉。
やはり、聞き間違いではなかったのだ。
「誰から聞いた、その言葉は」
「……とある日本人からです。もう四、五年も前ですから、はっきりとは覚えていないんですが」
「……そうか」
「……?」
零弥の応答に、スフィアが意味を理解できるはずはなかった。
反対に、零弥は納得した。
この少女は会っている。いや向こうが接触してきたのだ。
京 紅緒。
零弥の師にして最大の理解者。
時を越えて、今繋がったのだと。
「あなたは普通の人類とは違う。それは、アビスフリードが示している」
「レイヤ、あなた何か、あなた自身の奥底に隠しているものがいる。本当の正体が」
「愚問だな。俺は能力持ち。それ以上でも、それ以下でもないさ。ただ、その宝石に惹かれただけだ」
「あなたはもうわかっているのでしょう?アビスフリードのありかも、一連の事件の真相も……お父様の、意思も。だから、教えて欲しい」
「あなたは、いったい、何者ですの?」
スフィアからの強い質問。
その目は、真っ直ぐこちらの目を見つめていた。澱み無く、澄んだ瞳。逃げられない、そう思った。
「俺は……分からないんだ」
零弥もうつむいた。
自分が何者なのか。
答えられるはずがない。
そのわけは、自分が一番分かっている。
「俺は、自分の正体が分からない。遠いんだよ。近くにいるはずなのに、分からない。だから、俺は追いかけている」
零弥は唇を噛み締めた。自分が分からないことの辛さは、誰にも分からない。それはスフィアだって同じだ。
「……申し訳ありません。つかぬことをお聞きしました。あなたも苦しんでおられたのですね」
「気にするな。俺もお前の苦しみを掻き出すようなことをしたからな」
「とんでもありませんわ。ですが、換わりにもう一つ聞かせていただきます」
「あなたも、犯行グループを追っている。違いますか?」
スフィアからの突然の質問。
「別に、俺には関係ないだろ」
「いいえ、関係ないならば、わたくしに『深追いするな』なんて言えませんわ。あなたは何かつかんでいるんでしょう?」
「……あったとしても、俺は教えないだろうな。むしろ、国家での調査を行っているお前のほうが情報を握っているだろう?ただの一般人に聞いても意味はない」
零弥はそっぽ向いた。あの瞬間、スフィアを誘導したのはやはり失敗だった。だが後悔はしない。
「……そうですか……やはり、答えないのですね」
「そう受け取っていただいて構わない」
零弥は目線を合わそうとはしなかった。これ以上詮索されることがないよう、できるだけ話題を逸らしたかった。
「私からは以上です。ありがとう、レイヤ」
「礼はいい。とにかく見ていろ。アビスフリードの正体を知りたいのならな」
「期待していますわ」
零弥は立ち去る。その空間を。
スフィアの追求は案外鋭いものだった。いったいどうしたら正体を聞こうと思うのか。
反対に、スフィアはまともに信じられなかった。
「レイヤ……やはりあなたは、大きな何かを隠している。わたくしが知る由の無い何かを」
不信感は募り続ける。
最終日となった今でも。
だが、待ち続ける外無いのだ。
監督席は、静かに時が流れ続ける。
貴石競争は最終局面を迎える……
監督室から眺める二人は、魔術によるモニターから、零弥達の戦闘をちょうど眺めていた。
序列五位、クーゲルは零弥の意外な勝利に感嘆した。零弥の能力の正体は判らずとも、その攻撃が届いていないことは読み取れる。そこからの逆転を予想できていなかったのだ。
「……えぇ。そうですわね……」
反して、スフィアの反応は薄い。
(レイヤ……あなたは一体、なんですの?)
暁介との戦闘、昨日の邂逅……そして、日本での出会い。
様々な出来事が、零弥に対する疑問を湧かせる。
スフィアはわからなかった。零弥の、その様が魅力的で、言葉は鋭く、思考は目を見張った、だが、それが彼に対する、不信感へと変わっていくのは。
(あなたは……私をどう見ているのでしょうか。
一国の王女?
単なる少女?
それとも……魔術師として?)
彼は言った。
「自分の運命と向き合え」と。
スフィアはまた、思い出していた。
昨日の夜の、零弥に対する質問を。
「……そうですわ、なら……」
零弥は、質問攻めにした対価を支払おうとしているのか。それとも、こちらの質問から何か引き出そうとしているのか。
どっちにしろ、選択肢は決まっている。
「わたくしも、あなたに聞きたいことがあります。それは……」
「あなたの……本当の正体は、一体何なのでしょうか」
「……どういう意味だ」
零弥は表情を変えない。言葉に反して、蔑むような顔は見せなかった。ただ、スフィアの返答を待つ。
「あなたは不思議な人。わたくしの奥底をいとも容易く見抜いてしまう」
スフィアは不意に目線を下げる。表情も暗い。
「レイヤの言うとおり、わたくしは王位を継承したくないし、望まない。だけど、周りはいつも『わたくししかいない』と迫り続ける。お兄様は国家戦力として統率しなければいけませんから……まぁ、当然なんですけども」
「……」
零弥は返答を待つ。
「あなたは違った。わたくしに選択肢を与える余地をくれた」
「……そんな権限は無いけどな」
零弥は視線を合わせない。そこに意味はない。
「それだけじゃない。あなたは他のプレイヤーとは違う。しなくてもいい戦いに挑んで、推理して、魔術に立ち向かって。人類であるあなたに意味は無かった。それでもあなたは戦い続ける」
スフィアはまたペンダントを握りしめる。緑の輝きが完全に遮られる。またうつむいた。
「だけど、意味があるからあなたは戦う。それを大事だとあなたは思ったから」
保健室でも耳にした、その言葉。
やはり、聞き間違いではなかったのだ。
「誰から聞いた、その言葉は」
「……とある日本人からです。もう四、五年も前ですから、はっきりとは覚えていないんですが」
「……そうか」
「……?」
零弥の応答に、スフィアが意味を理解できるはずはなかった。
反対に、零弥は納得した。
この少女は会っている。いや向こうが接触してきたのだ。
京 紅緒。
零弥の師にして最大の理解者。
時を越えて、今繋がったのだと。
「あなたは普通の人類とは違う。それは、アビスフリードが示している」
「レイヤ、あなた何か、あなた自身の奥底に隠しているものがいる。本当の正体が」
「愚問だな。俺は能力持ち。それ以上でも、それ以下でもないさ。ただ、その宝石に惹かれただけだ」
「あなたはもうわかっているのでしょう?アビスフリードのありかも、一連の事件の真相も……お父様の、意思も。だから、教えて欲しい」
「あなたは、いったい、何者ですの?」
スフィアからの強い質問。
その目は、真っ直ぐこちらの目を見つめていた。澱み無く、澄んだ瞳。逃げられない、そう思った。
「俺は……分からないんだ」
零弥もうつむいた。
自分が何者なのか。
答えられるはずがない。
そのわけは、自分が一番分かっている。
「俺は、自分の正体が分からない。遠いんだよ。近くにいるはずなのに、分からない。だから、俺は追いかけている」
零弥は唇を噛み締めた。自分が分からないことの辛さは、誰にも分からない。それはスフィアだって同じだ。
「……申し訳ありません。つかぬことをお聞きしました。あなたも苦しんでおられたのですね」
「気にするな。俺もお前の苦しみを掻き出すようなことをしたからな」
「とんでもありませんわ。ですが、換わりにもう一つ聞かせていただきます」
「あなたも、犯行グループを追っている。違いますか?」
スフィアからの突然の質問。
「別に、俺には関係ないだろ」
「いいえ、関係ないならば、わたくしに『深追いするな』なんて言えませんわ。あなたは何かつかんでいるんでしょう?」
「……あったとしても、俺は教えないだろうな。むしろ、国家での調査を行っているお前のほうが情報を握っているだろう?ただの一般人に聞いても意味はない」
零弥はそっぽ向いた。あの瞬間、スフィアを誘導したのはやはり失敗だった。だが後悔はしない。
「……そうですか……やはり、答えないのですね」
「そう受け取っていただいて構わない」
零弥は目線を合わそうとはしなかった。これ以上詮索されることがないよう、できるだけ話題を逸らしたかった。
「私からは以上です。ありがとう、レイヤ」
「礼はいい。とにかく見ていろ。アビスフリードの正体を知りたいのならな」
「期待していますわ」
零弥は立ち去る。その空間を。
スフィアの追求は案外鋭いものだった。いったいどうしたら正体を聞こうと思うのか。
反対に、スフィアはまともに信じられなかった。
「レイヤ……やはりあなたは、大きな何かを隠している。わたくしが知る由の無い何かを」
不信感は募り続ける。
最終日となった今でも。
だが、待ち続ける外無いのだ。
監督席は、静かに時が流れ続ける。
貴石競争は最終局面を迎える……
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