虚構幻葬の魔術師

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アビスフリード争奪戦

幻影 ~phantom~ ⑩後編Ⅱ

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 お互いが衝突した。
 零弥は立体的な近接戦闘。対してジェフはほとんど動かなかった。零弥に合わせてカウンターを仕掛ける程度に留まった。
 ジェフは魔方陣を展開する……が、その向きは零弥を向いていない。まるで何かの物体を囲うように描かれた。
 それが一体どの物体なのか。端から見れば適当に魔方陣を置いているようにしか見えない。
 部屋が狭すぎるお陰で、空間の重力操作に意味を為さなくなった。立体的な移動はが、空間の重力を変えた上で自らの重力のベクトルを変化すると、それは新しく重力を追加することになる。もしここで、変な方向に力がかかれば、最悪押し潰されてしまう。 よって、ジェフを重力圏に巻き込むことは出来ないのだ。
 ジェフはさらに魔方陣を展開。魔力弾を生成した。
 零弥はジェフを切り付けようとした。光子剣の太刀筋はいつもと変わらない。両刃は持ち替えのロスを無くすため。それが変則的な動きに対応した太刀筋を実現させている。
 刃はジェフへと正確に向かった。ちょうど肩関節を切り裂く位置だ。刃が正確に当たる。
 だが、その軌跡は進むこと無く、鋼のような身体を斬れなかった。
「……何!?」
「へへっ」
 ジェフは零弥を蹴り飛ばした。幸い急所は外したが、遠くに飛ばされてしまう。
 零弥は受け身を取った。
 無傷だったのはいいが、それよりも攻撃が通らなかったことが気になる。ただただ硬い身体だった訳がない。そんな単純な話では無いはずだ。
「これはどうかな?」
 シンクに溜まった水がいきなり飛び出した。それはまるで人の腕を模していて、ジェフの動作と共に襲いかかってくる。
「水?いや、これは……」
 零弥は反応することが出来た。掴みかかろうとする腕を飛びながら避け、反撃の隙を伺った。水の拳は雫を落とすこと無く壁を壊す。
「間違いない。ヤツが動かしている。だが、どういうプロセスだ?」
 光子剣が刺さる。 水は液体の粒に分かれ、床に叩きつけられる。光子剣を水の手首に刺す事は出来たが、『斬った』と言う手応えが感じられなかった。当然と言えば当然なのだが、生き物のような動きをした水が、一瞬で液体に戻るのは違和感を感じた。
「壁を壊した水が、一瞬で崩れた……桐鋼なら自然だが、コイツには何も仕組んではいない。ということは……」
 ジェフが笑みを浮かべた。まるで遊び回る子供を観察するように、何処か余裕のある表情で佇んでいた。
 恐らく、こちらが答えを求めているのを読んでいる。それを知っておきながら、待っているのだ。
「……アイツがスイッチを切った……」
 その余裕さに若干の苛立ちを覚えるが、それもすぐに消える。そして、零弥は一つ手段を思い付いた。
「だとすると……。そうなるのか」
 零弥の目が紅く染まる。
 零弥の視界も、紅く染まった。
 視界には、幾本もの軌跡が見える。紅い世界の濃淡の違いが、数本の筋を産み出している。そしてそれは、魔方陣へと集まっているのだ。

 これこそが、魔力の流れだ。

「あぁ、そうか」
 零弥の結論。ついに導かれた。そして、それが真実だとすると、とるべき行動は一つしかない。
「何処見てんの?」
 ジェフが畳み掛ける。作られた水の腕が、零弥の首本を狙ってきた!

 対して、零弥はシンクを銃撃した。
「うっ!」
 すると、何故かジェフが痛がる様子を見せたのだ。零弥の予想が当たっていた。
「『一体化』……。対象の物体の要素を取り込む魔術か……」
「あぁ、もう気づいたのか……やっぱ話が早くていいや。面倒くさくなくていいね」
 一体化は物体の要素を引き継ぐだけでなく、感覚がリンクする。よって、シンクへの銃撃の痛みを感じとる結果となった。
 魔術の正体がバレたのにも関わらず、ジェフは余裕の表情を保ったままだった。しかし、攻撃は止めてしまった。
「今までそんな魔術は見たことがない。貴様、表立って戦ったことはあるのか?」
「……へぇ、君、色々知ってるんだ。やっぱり、実際に戦地に赴いていた人は違うなぁ」
「残念。生憎、こっちには優秀なハッカーがいてな。情報量では後れは取らない」
「……誤魔化さなくていい。椎名零弥。君は戦い続ける。いや、

 僕達と」



「椎名零弥。彼は能力持ちアビリストだ」
 作戦の後片付けに流雅は奔走する。といっても、彼にとっては余裕の作業だ。
「記憶を失くし、全てを失くした彼は、名前とその力だけで生きていた、はずだった」
 零弥が手にしていたモノ……それは意外なモノだった。
 世界にも、未確認の状態。
 その事実は、流雅しか知らされていない。
「……そうして、彼は、『最強』の呪い称号を得た」



「……貴様ァ……!」
 零弥の表情が変わる。事後処理にはなかった、沸き出る感情。怒り、憎悪。その全てが、彼に向けられる。
「あぁ、だんだん思い出してきたよ。君は彼女に付いていた。そうして、君の真の実力を発揮した」
「……!」
 彼の煽りは止まらない。
「その力だけで、戦機族ヴァルキュリウスすら軽く退けた。その力だけで、君は全てを壊した。その力だけで、君は登り詰めたんだ!」
「クソッ!」
 零弥が攻撃した。
 その攻撃は、乱入してきたもう一人の青年によって防がれる。
 また、零弥の攻撃は、光のレーザー砲。

 それは、背後の巨大なから放たれた。

「久しぶり!2年前だったかな。またこうして会えるとは」

序列ランキング第一位、幻影の暗殺者ファントム・アサシン!」 
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