虚構幻葬の魔術師

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異端児達の集結

異端児達の入学⑥

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 キーンコーンカーンコーン…
 遂に四時限目の終了を告げるチャイムが鳴る。
 零弥達は予定通りユミを利用して亜芽を釣る作戦を遂行する。
 作戦の詳しい内容はこうだ。
①零弥と流雅は先に店に行く。
②ユミが亜芽をストラップ返却と同時に昼食に誘う。
③偶然を装い、零弥達と合流する。
 という理想に理想を重ねた作戦であった。
 正直、話がしたかったのは流雅であり、零弥は急いで立ち去ったことに対する不信感程度であった。
 急ぐ必要はないし、たとえユミが亜芽と話をするだけで逃がしても大きな収穫といえるであろう。
「はい。これ渡しておくね」
 ストラップが流雅の手からユミへと渡る。
「それじゃぁ、僕たちは先に行くね」
 打ち合わせ通り、男子の二人は先に店に行く。
 一人取り残されたユミは、一息ため息をついて、亜芽のもとへと歩き始める。
 亜芽は特に変わったような表情をしていない。完全な無表情だ。
 非常に話しづらいオーラを見に纏う亜芽を見て、流石に腰が引けてしまう。
 が、しかし、行くしかないと覚悟を決めたようだ。
「あの…月島さんだっけ。」
「はい。そうですが…」
 思いきって、亜芽に話しかけた。
「これ、あなたのストラップじゃないかな?」
 亜芽にストラップを見せる。すると亜芽が大きく目を見開いた。
「それ…どこで拾ったんですか!」
 少し強ばったような表情にユミは会話を続けるのに退けてしまったが、
「昨日の朝に、生徒にぶつかったでしょ。あの時に落としたみたい」
「あっ…ありがとう…ございます…」
 亜芽は無に近い表情をしているが、内心はほっとしているようにユミには見えた。
「良かったらお昼ごはん一緒に食べに行かない?この近くに美味しいところあるんだ」
 作戦通り、ユミは例の店へと亜芽を誘う。
 少し展開を急ぎすぎただろうか…亜芽は少し警戒心を露にする。
 まぁユミにとってはどうでもいいことである。何故なら、亜芽に話を聞く理由が未だにいまいちわからないからだ。
 流雅の要望で亜芽を誘っているだけであって、ユミにはなんのメリットもない。
 半ば投げやりでやってみようとも考えたが、結局は変わらないと理解している。これは論理的な思考ではなく、女の直感というものであろう。そもそも、ユミにそこまでの思考力は無い。
「…じゃあ…ご一緒させても…いいでしょうか…」
 なんとユミの誘いへ亜芽が乗った。
 すんなり作戦が成功してしまったために、ユミは驚きの表情をしてしまう。しかし、幸いにもその理由が亜芽にはわからなかったようだ。
「…っと、ならよかった。じゃあ、一緒にいこうか!」
 我に帰ったユミは、早速亜芽をつれていこうとした。
「あっ…あの…」
 亜芽が何か言いたそうな表情を向けたので、ユミは顔を向ける。
「何で私を誘おうと思ったのですか?」
 それを知りたいのはやまやまである。こんな質問を向けられるのであれば、先に流雅に聞いておけばよかった。ユミは軽く後悔する。
「それはね…私って、軽い人見知りなんだ」
「人見知り?」
 亜芽が首をかしげる。
「そう。中学校の頃なんて、特定の友達としか話してないし、その友達の数がそもそも少ないんだけどね」
 ユミが語り始める。
「人見知りは辛いんだよ?私はまだ軽度だからいいんだけど、本当に重度の人はまともに人の顔見れないからね。そうやって、世界の国の社会の人間の波に飲み込まれていくんだって、私は思ってる」
「……」
「私はこんなだけど、体力面では誰にも負けないよ?勉強は…星校のみんなに比べたら…ね」
 更にユミは続ける。どうやら夢中になってしまったようだ。しかし、亜芽は飽きた様子もイライラする様子も見せない。
「これぐらい気丈に振る舞わないといけない気がするんだ。そうじゃないと、波に飲み込まれる。飲み込まれるような人間になりたくないんだ。あのときのような、目の前で起こったことも認められず、ただ立ちすくむだけの子供にね。」
 そんなことを言えば、過去の忌まわしき記憶がフラッシュバックしてしまった。
 子供の泣く声。
 目の前で斬られた女性。
「おかあさん!おかあさん!」
 少女の声は女性に届くことはなく、むなしく闇へと吸い込まれていく。
 やがて女性は大量の血を流すとともに、温もりも急速に無くなっていく。
 やがて犯人と思わしき人物は少女に向かってこう言う。
「理不尽だよな、この世の中も。お前もそう思わないか。
 結局はどうあがこうと未来は同じ結果で収束する。
 それを変えたいと思うのならまずはこの事件を解明させてみろ。
 いずれも、お前とは数年後に会うだろう。その時のお前は、そこで立ちすくむだけのひ弱な少女では無いはずだ」
 ユミの頬に一筋の涙がうっすらと滴り落ちる。
 これこそがユミの情報きおく。そして今のユミの原動力となる。
「…ですね」
 ここで、沈黙を保っていた亜芽が遂に破る。
「強いんですね」
「…えっ?」
 一心不乱に語って別世界へと引き込まれそうなユミを亜芽が引き留める。
「何か言った?」
「いいえ…何も」
 そう言う亜芽を見ると不思議な感覚にユミは陥った。そう、何か、暗くて、寂しくて、溶け込まれそうで…
 しかし、そんな話をしても今回の作戦を忘れてはいない。
 気持ちを切り替えることは何度も同じ状態に陥っているユミにとってたやすいことだ。
「あっ、ゴメンゴメン。なんか暗い感じになっちゃったね…気を取り直して、今度こそ本当にごはん食べに行こうか」
 その言葉を聞いて、亜芽は少し歩を進めるが、また立ち止まってしまう。
 そしてまた亜芽は呟く。
「何で…私を誘うの?どうせまた、捨てるはずなのに…」
 その言葉は決してユミに届くことはなかった。
 彼女もまた、異端児としての宿命を背負っていたのである。
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