10 / 109
異端児達の集結
異端児達の入学⑧前編
しおりを挟む
「時間切れだよ…零弥くん」
「いらっしゃいませー」
店員の声が店内中に鳴り響く。
零弥ははっとして店の入り口を振り向く。
そこには、無事に到着していたユミと亜芽の姿があった。
「あれっ、ユミちゃんじゃん。こんなところで会うなんて、偶然だねぇ」
白々しい嘘をつくが、それは予め作戦の全貌を知っているユミと零弥の視点から成り立つ事であり、他の客には本当に偶然に遭遇したとしか思えないような、なかなかの演技力である。
元々流雅は対話や交渉術等は非常に長けており、恐らくプロ顔負けであろう。
今回も予定通りにその実力を発揮する。
「あなたたちもここにいたんだ。せっかくだから、同じ席にしようか」
「そうだね。ならそこのテーブルを動かそうか」
流雅は使われていないテーブルを自分達が使っているテーブルに繋げる。
「じゃあ、注文しに行こう」
ユミが亜芽をつれてカウンターへと歩き出した。
「ふぅ、とりあえずこれで作戦の第一、第二段階は終了ということだね」
「…」
零弥は状況が状況とはいえ、裁ち切る様にに話を止めた流雅を攻めたり追及することは無かった。それなりに理由があるかもしれないし、実際にユミと亜芽が目の前にいる。
深刻な理由であれば、このばで追求するわけには行かないし、もし、そうでなくても時間が足りない。
かといってそのままスルーするのは零弥にとっても腑に落ちないので、この作戦が終了し、席を外してからから聞くか、自分で推理するか、或いはその両方の3種類のいずれかの手段を取ることになる。
まぁ、まずはこの作戦を実行することに集中するべきであろう。
零弥は一旦自分の頭に湧いた疑問を無視して、亜芽に対する話のネタを練ることにした。
「注文取ってきたよ~」
ユミがそう言いながら亜芽とともに流雅と零弥の反対側に座る。
座席の配置は窓側の流雅の左に零弥。流雅の正面に亜芽。零弥の正面及び亜芽からして右にユミが座っている。
零弥は第一声を流雅かユミに任せることにした。心の中で確実にプレッシャーを二人に与え続ける。
その願いが通じたのか、第一声は流雅から放たれた。
「じゃ、とりあえず自己紹介をしておこうかな。僕は成川流雅。よろしくね」
流雅の会話の内容は自己紹介。次に零弥、ユミが続いた。
「椎名零弥だ」
「相崎悠海よ。『ユミ』って読んでね」
三人の自己紹介が終了すると、今度は亜芽から自己紹介が行われる。
「月島亜芽です…」
小さく、か細い声ではあるが、弱々しくない声で自分の名前を言う。
そして、ストラップについて話し始めた。
「私のストラップはどこで落としたのですか?」
「昨日の朝に校門の近くで僕にぶつかったでしょ。そのときに落としたみたいだね。本当は昨日に返したかったんだけど…キミ、いつの間にか帰ってたから」
流雅がストラップの件について説明をすると同時に、さりげなく急いでいた理由について触れてみた。とりあえず朝の件から攻めてみるようだ。
零弥の忠告通り、あまりプレッシャーをかけるような言動は控える。
もし、彼女の怒りのもとになる導火線に火をつければその時点で作戦終了。そんなリスクと比べれば、情報を少しだけしか引き出せ無かった場合も些細な結末である。
「あなたが拾ってくれたんですね…昨日はぶつかってしまってすみませんでした。」
亜芽は答える。
流雅の仕掛けた罠に警戒しているのか、それとも気づいていないのか、亜芽はお礼と謝罪だけをして、急いでいた理由について触れなかった。
さらに零弥は、流雅と亜芽の会話の最中に、亜芽をじっくりと観察した。
そこまで寒くない四月に耳当てをし、髪は短め、目はぱっちりしてはないが決して細目ではない。
口振りは小さめで、言葉も短く切っている。
急に連れてこられたにも関わらず、焦る様子も混乱する様子も無く、ただ落ち着いて返答をする。
敬語はあまり使わないのか、少し流暢に使えていない。ここは普段敬語を使わない零弥だからこそ読み取れる部分であった。
表情は暗いというよりかは無に近い。ほぼ初対面の相手に明るく振る舞うような無駄なことはしないのだろう。
以下の事から読み取れることは、性格は無に近く、かつ引っ込み思案ではない。更に言動の面からも、慣れていないような敬語を使い、文章も短め。警戒心と疑念の塊といってもあながち間違っていない。そもそも相手にしたくないということであろう。
恐らく、ストラップを拾ってもらったことに対して、ユミにお礼を言って去るつもりが昼食時に謎の二人が混じってきたことにより、もう引き返せなくなってしまったのだろう。
しかし、全て丸く、小さく収めるには、ここで会話をある程度進めてから後々関わりを断ればいいだけの話である。
ならば、何故、会話のポイントを避けるように立ち回るのか?零弥は疑問に思う。
そして、流雅がストラップの事だけでなく、急いでいた理由に踏み込んできたため、何故聞いてくるのかと疑念も露にしている。
それは亜芽にとってどうでもいいことなのか、それとも…
「いらっしゃいませー」
店員の声が店内中に鳴り響く。
零弥ははっとして店の入り口を振り向く。
そこには、無事に到着していたユミと亜芽の姿があった。
「あれっ、ユミちゃんじゃん。こんなところで会うなんて、偶然だねぇ」
白々しい嘘をつくが、それは予め作戦の全貌を知っているユミと零弥の視点から成り立つ事であり、他の客には本当に偶然に遭遇したとしか思えないような、なかなかの演技力である。
元々流雅は対話や交渉術等は非常に長けており、恐らくプロ顔負けであろう。
今回も予定通りにその実力を発揮する。
「あなたたちもここにいたんだ。せっかくだから、同じ席にしようか」
「そうだね。ならそこのテーブルを動かそうか」
流雅は使われていないテーブルを自分達が使っているテーブルに繋げる。
「じゃあ、注文しに行こう」
ユミが亜芽をつれてカウンターへと歩き出した。
「ふぅ、とりあえずこれで作戦の第一、第二段階は終了ということだね」
「…」
零弥は状況が状況とはいえ、裁ち切る様にに話を止めた流雅を攻めたり追及することは無かった。それなりに理由があるかもしれないし、実際にユミと亜芽が目の前にいる。
深刻な理由であれば、このばで追求するわけには行かないし、もし、そうでなくても時間が足りない。
かといってそのままスルーするのは零弥にとっても腑に落ちないので、この作戦が終了し、席を外してからから聞くか、自分で推理するか、或いはその両方の3種類のいずれかの手段を取ることになる。
まぁ、まずはこの作戦を実行することに集中するべきであろう。
零弥は一旦自分の頭に湧いた疑問を無視して、亜芽に対する話のネタを練ることにした。
「注文取ってきたよ~」
ユミがそう言いながら亜芽とともに流雅と零弥の反対側に座る。
座席の配置は窓側の流雅の左に零弥。流雅の正面に亜芽。零弥の正面及び亜芽からして右にユミが座っている。
零弥は第一声を流雅かユミに任せることにした。心の中で確実にプレッシャーを二人に与え続ける。
その願いが通じたのか、第一声は流雅から放たれた。
「じゃ、とりあえず自己紹介をしておこうかな。僕は成川流雅。よろしくね」
流雅の会話の内容は自己紹介。次に零弥、ユミが続いた。
「椎名零弥だ」
「相崎悠海よ。『ユミ』って読んでね」
三人の自己紹介が終了すると、今度は亜芽から自己紹介が行われる。
「月島亜芽です…」
小さく、か細い声ではあるが、弱々しくない声で自分の名前を言う。
そして、ストラップについて話し始めた。
「私のストラップはどこで落としたのですか?」
「昨日の朝に校門の近くで僕にぶつかったでしょ。そのときに落としたみたいだね。本当は昨日に返したかったんだけど…キミ、いつの間にか帰ってたから」
流雅がストラップの件について説明をすると同時に、さりげなく急いでいた理由について触れてみた。とりあえず朝の件から攻めてみるようだ。
零弥の忠告通り、あまりプレッシャーをかけるような言動は控える。
もし、彼女の怒りのもとになる導火線に火をつければその時点で作戦終了。そんなリスクと比べれば、情報を少しだけしか引き出せ無かった場合も些細な結末である。
「あなたが拾ってくれたんですね…昨日はぶつかってしまってすみませんでした。」
亜芽は答える。
流雅の仕掛けた罠に警戒しているのか、それとも気づいていないのか、亜芽はお礼と謝罪だけをして、急いでいた理由について触れなかった。
さらに零弥は、流雅と亜芽の会話の最中に、亜芽をじっくりと観察した。
そこまで寒くない四月に耳当てをし、髪は短め、目はぱっちりしてはないが決して細目ではない。
口振りは小さめで、言葉も短く切っている。
急に連れてこられたにも関わらず、焦る様子も混乱する様子も無く、ただ落ち着いて返答をする。
敬語はあまり使わないのか、少し流暢に使えていない。ここは普段敬語を使わない零弥だからこそ読み取れる部分であった。
表情は暗いというよりかは無に近い。ほぼ初対面の相手に明るく振る舞うような無駄なことはしないのだろう。
以下の事から読み取れることは、性格は無に近く、かつ引っ込み思案ではない。更に言動の面からも、慣れていないような敬語を使い、文章も短め。警戒心と疑念の塊といってもあながち間違っていない。そもそも相手にしたくないということであろう。
恐らく、ストラップを拾ってもらったことに対して、ユミにお礼を言って去るつもりが昼食時に謎の二人が混じってきたことにより、もう引き返せなくなってしまったのだろう。
しかし、全て丸く、小さく収めるには、ここで会話をある程度進めてから後々関わりを断ればいいだけの話である。
ならば、何故、会話のポイントを避けるように立ち回るのか?零弥は疑問に思う。
そして、流雅がストラップの事だけでなく、急いでいた理由に踏み込んできたため、何故聞いてくるのかと疑念も露にしている。
それは亜芽にとってどうでもいいことなのか、それとも…
0
あなたにおすすめの小説
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
精霊姫の追放
あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。
「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども
神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」
と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。
大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。
文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる