虚構幻葬の魔術師

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異端児達の集結

異端児達の入学⑧前編

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時間切れタイムオーバーだよ…零弥くん」
「いらっしゃいませー」
 店員の声が店内中に鳴り響く。
 零弥ははっとして店の入り口を振り向く。
 そこには、無事に到着していたユミと亜芽の姿があった。
「あれっ、ユミちゃんじゃん。こんなところで会うなんて、偶然だねぇ」
 白々しい嘘をつくが、それは予め作戦の全貌を知っているユミと零弥の視点から成り立つ事であり、他の客には本当に偶然に遭遇したとしか思えないような、なかなかの演技力である。
 元々流雅は対話や交渉術等は非常に長けており、恐らくプロ顔負けであろう。
 今回も予定通りにその実力を発揮する。
「あなたたちもここにいたんだ。せっかくだから、同じ席にしようか」
「そうだね。ならそこのテーブルを動かそうか」
 流雅は使われていないテーブルを自分達が使っているテーブルに繋げる。
「じゃあ、注文しに行こう」
 ユミが亜芽をつれてカウンターへと歩き出した。
「ふぅ、とりあえずこれで作戦の第一、第二段階は終了ということだね」
「…」
 零弥は状況が状況とはいえ、裁ち切る様にに話を止めた流雅を攻めたり追及することは無かった。それなりに理由があるかもしれないし、実際にユミと亜芽が目の前にいる。
 深刻な理由であれば、このばで追求するわけには行かないし、もし、そうでなくても時間が足りない。
 かといってそのままスルーするのは零弥にとっても腑に落ちないので、この作戦が終了し、席を外してからから聞くか、自分で推理するか、或いはその両方の3種類のいずれかの手段を取ることになる。
 まぁ、まずはこの作戦を実行することに集中するべきであろう。
 零弥は一旦自分の頭に湧いた疑問を無視して、亜芽に対する話のネタを練ることにした。
「注文取ってきたよ~」
 ユミがそう言いながら亜芽とともに流雅と零弥の反対側に座る。
 座席の配置は窓側の流雅の左に零弥。流雅の正面に亜芽。零弥の正面及び亜芽からして右にユミが座っている。
 零弥は第一声を流雅かユミに任せることにした。心の中で確実にプレッシャーを二人に与え続ける。
 その願いが通じたのか、第一声は流雅から放たれた。
「じゃ、とりあえず自己紹介をしておこうかな。僕は成川流雅。よろしくね」
 流雅の会話の内容は自己紹介。次に零弥、ユミが続いた。
「椎名零弥だ」
「相崎悠海よ。『ユミ』って読んでね」
 三人の自己紹介が終了すると、今度は亜芽から自己紹介が行われる。
「月島亜芽です…」
 小さく、か細い声ではあるが、弱々しくない声で自分の名前を言う。
 そして、ストラップについて話し始めた。
「私のストラップはどこで落としたのですか?」
「昨日の朝に校門の近くで僕にぶつかったでしょ。そのときに落としたみたいだね。本当は昨日に返したかったんだけど…キミ、いつの間にか帰ってたから」
 流雅がストラップの件について説明をすると同時に、さりげなく急いでいた理由について触れてみた。とりあえず朝の件から攻めてみるようだ。
 零弥の忠告通り、あまりプレッシャーをかけるような言動は控える。
 もし、彼女の怒りのもとになる導火線に火をつければその時点で作戦終了ゲームオーバー。そんなリスクと比べれば、情報を少しだけしか引き出せ無かった場合も些細な結末である。
「あなたが拾ってくれたんですね…昨日はぶつかってしまってすみませんでした。」
 亜芽は答える。
 流雅の仕掛けた罠に警戒しているのか、それとも気づいていないのか、亜芽はお礼と謝罪だけをして、急いでいた理由について触れなかった。
 さらに零弥は、流雅と亜芽の会話の最中に、亜芽をじっくりと観察した。
 そこまで寒くない四月に耳当てをし、髪は短め、目はぱっちりしてはないが決して細目ではない。
 口振りは小さめで、言葉も短く切っている。
 急に連れてこられたにも関わらず、焦る様子も混乱する様子も無く、ただ落ち着いて返答をする。
 敬語はあまり使わないのか、少し流暢に使えていない。ここは普段敬語を使わない零弥だからこそ読み取れる部分であった。
 表情は暗いというよりかは無に近い。ほぼ初対面の相手に明るく振る舞うような無駄なことはしないのだろう。
 以下の事から読み取れることは、性格は無に近く、かつ引っ込み思案ではない。更に言動の面からも、慣れていないような敬語を使い、文章も短め。警戒心と疑念の塊といってもあながち間違っていない。そもそも相手にしたくないということであろう。
 恐らく、ストラップを拾ってもらったことに対して、ユミにお礼を言って去るつもりが昼食時に謎の二人が混じってきたことにより、もう引き返せなくなってしまったのだろう。
 しかし、全て丸く、小さく収めるには、ここで会話をある程度進めてから後々関わりを断ればいいだけの話である。
 ならば、何故、会話のポイントを避けるように立ち回るのか?零弥は疑問に思う。
 そして、流雅がストラップの事だけでなく、急いでいた理由に踏み込んできたため、何故聞いてくるのかと疑念も露にしている。
 それは亜芽にとってどうでもいいことなのか、それとも…
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