虚構幻葬の魔術師

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異端児達の集結

異端児達の入学⑧後編

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「いくら何でも適当すぎるだろ。後、過去二年間の先輩の受験校全て調べたのか…」
「それぐらい何ともないよ。『情報』を集める事に関してはキミに負けるつもりはないからね」
 流雅が得意気に言う。
「情報…?」
 亜芽が疑問に思ったようだ。
「あぁー…気にしなくていいよ。二人はいつもこんなだから。ホント、情報情報情報…そんなに重要なものなんですかねぇ」
 ユミがフライドポテトを頬張りながら、呆れた顔を亜芽に向ける。亜芽は苦笑いで返すのだが、それでもほとんど表情は「無」のままである。それに対してユミがほとんど違和感を感じなかったのは、普段、零弥達と学校生活を共にしているからなのだろうか。それとも、単に気がつかなかっただけなのだろうか。
 情報…それはその物体や空間、更には時空までの状態を表すもの。
 全てを記録する情報は、場合によっては売り買いされる程だ。
 しかし、そんなことに興味を見つけられないユミにとっては決して理解できるものではない。いや、重要性が見当たらないと言うべきか。
 ただ、情報の重大さは零弥と流雅はこの世界で一番理解している(つもりだ)。
 だからこそ、日常会話で『情報』の単語ワードが飛び出すのだ。
 それに対してユミは心底うんざりしている。これも日常的だ。
「ところで月島さん、あなた、一人暮らし?」
 意外な質問がユミの口から飛び出す。それは零弥にとっても驚きであった。その理由わけは、ユミが作戦の意図をいまいち読み取れていないのを零弥はうすうす感じていたからだ。しかもユミは人見知りの性格。自分から質問することなんてほとんど無い。合流してからの会話も、零弥はともかく、ユミに関しては亜芽とまともに話していない。
 亜芽を誘う事は任せたが、たったそれだけで打ち解けられるかと言えば、それも解せない。
 どっちにしろ、こちらが聞きたい事を同じ女性のユミが発展してくれたことに変わりは無いのだが。
 ではここで会話に戻ってみよう。
「一人…暮らし…です…」
「えっ、あなたも?」
 ユミが手を口に当てて驚く。
「やっぱりそうなるのか…」
「そうなるんだね…」
「…どうしました?」
 立て続けに脱力する零弥と流雅に亜芽はクエスチョンマークを頭に浮かべる。もちろん理由は存在し、それを流雅が解説した 。
「僕たち、みんな一人暮らしなんだ…」
 そう、零弥たち三人は皆一人暮らしなのである。
「…はい?」
 亜芽が呆気にとられた顔をする。
 その束の間にユミが事情を説明する。
「なんか…その…兄弟の話とかさ…家族の話とかさ…色々あるじゃん。まさかあなたまで一人暮らしだとは…」
「…なんかすいません」
 変に責められた亜芽は仕方なく謝罪し、ドリンクをゆっくりとすする。
 流石にこんなやり取りをしていれば、帰りたい雰囲気や、話したくない雰囲気は、いつの間にか消えていた。亜芽もすっかり打ち解けたのだろう。ならば、この雰囲気を切らずに話を進めるのが最善手である。
「一人暮らしだからと言って別に困るものではないと思うがな。わざわざ遠くから通う者もいれば、アパートを借りる者もいる」
「一人暮らしの方が楽だと思うけどねぇ。色々自由だし、何も気にしなくていいし」
「そうかなぁ…私は寂しいな…」
 過去に家族を失ったユミがそういう。
 この事は二人には話していない。
 本来ならば失礼で無責任な質問だが、ユミはそんなことは微塵も感じていない。
 この事を聞いていない亜芽はユミの反応に疑問を浮かべるが、気にしなかったようだ。一口、ハンバーガーをかじる。
  少し話をしていると、客もそろそろ減ってきた。時刻は昼休みの半分がすぎる頃であった。この時点で、全員完食している。
 ここでラストの会話に持っていく。
 が、ここで…
「あの…そろそろ教室に戻ってもよろしいですか?私、色々準備しなければいけないことがあるので…」
 …やはりか…
 零弥の予想が当たっていた。ここまでよく解きほぐしたほうだが、それでも警戒心は捨てていなかった。幾つかの情報は引き出せたのだが、それ故に、怪しまれていた部分はあったのだろうか…いやそんな事は考えず、零弥は次の一手を打つことにした。
 しかし、その前にユミが自然と行動をとっていた。
「あっ…付き合わせてごめんね!」
「それでは…失礼します…」
 その一言を残して、亜芽は店を立ち去った。
「なんなんだろうなぁ…何であんなに、怖いものでもみてるような…零弥はどう思う?」
「さあ。普段の表情があんな感じではないのか?」
「それ、君が言えることなのかな?」
 流雅が軽くツッコミを入れる。
「ところで、何でこんな場を作ったの?」
ユミが流雅の顔を見て問いかける。
「ただ返すだけじゃ面白くないじゃん?あと、彼女からも色々聞けたんだしさ、ユミちゃんの人見知りも打ち解けてきたんじゃない?」
「流雅…ホントぶれないのね…」
「誉め言葉として受け取っておくよ」
 やれやれ顔のユミにあっさりとした返答をする。
 「さて、そろそろ僕たちも戻るとしますか」
 流雅が先だって店を出ようとし、後を2人が追う。
「ありがとうございました!」
自動ドアが開いたと同時に店員の威勢のいい挨拶が、客の耳障りにならない程度に鳴り響いた。
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