虚構幻葬の魔術師

crown

文字の大きさ
15 / 109
異端児達の集結

狂騒乱舞のダークサイド②

しおりを挟む
 昼食を終え、何とも言えない雰囲気で零弥は校舎に戻って来た。
 残りの二人は先に教室へ行っている。というか、一人で整理したかったから、自然に歩を送らせていた。
 結局、亜芽はしびれを切らして途中退席し、得られた情報もわずかであった。
 しかし、あのストラップに僅かに反応していたのは個人的に気になった。あの青いストラップに何か意味があるのだろうか?それとも後々に使用されるのだろうか。それとも…
 零弥がそんなことを考えながら玄関で靴を脱ぐと…
「椎名零弥くんね。ちょっといいかしら」
 背後から聞き覚えのある声の持ち主が現れた。
 「あぁ、あなたは…」
 零弥が思い出したようにいいかけてるが、少しだけ遊ぶことにしたようで、
「…誰でしたっけ?」
 背後にいた女性がガクッと崩れ落ちた。
「ちょっと!それはいくら何でも酷すぎるでしょ!」
 零弥に交渉を行いに来た紗亜矢が大声で非難する。
 だが、大声はかなり響いたようで、周りが二人に注目する。次々と浴びせられる視線に、紗亜矢はただただ赤面する他ならなかった。
「おい…あれ生徒会長じゃないか?」
「ほんとだ。どうして一年の範囲に来てるんだ?」
「あの男の人って、A組の人よね」
「名前なんだったっけ…」
 というように、生徒会長の影響力はもの凄く大きいのだ。
 流石にやり過ぎたかと零弥は察したのか、動けなくなった紗亜矢より先に第一声を放った。
「自分に何か用ですか?」
 零弥が何も分かっていないような素振りを見せたので、周りのざわめきは沈静化した。
「…ごめんなさい、放課後、予定あるかしら?」
「もう一度聞きます。自分に何か用ですか?」
「あなたにちょっと付き合ってほしいことがあるの。放課後、また集合してくれない?」
 紗亜矢が零弥に要求する。若干上目遣いになっているのが気になったが 、まぁそれはどうでもいいだろう。
「それで、自分をどこへ拉致するつもりですか?」
「拉致って…そこら辺の店は色々あるでしょう。なら、喫茶店にでも集合しましょうか」
 事前に計画をたてていた様で、紗亜矢は店を指定した。
 この後も話が続くが、今度は視点を変えてみよう。

「あいつ…大丈夫なのか?」
「会長の言い出した事なので、我々が手を出すべき場面ではないので。このまま見守るだけですよ」
 柱の陰で藍那と奈緒が心配そうに紗亜矢を見つめる。
「こうなるとは…白峰には何と言えばいいのか…」
 いつも通りの摩美の煽りが、ここまで作用するとは藍那も予想外だった。実際、摩美が煽らなければ紗亜矢に逃げられてしまったのかもしれない。
 藍那自信、零弥のポテンシャルは個人的に気になっていた。だからと言って、紗亜矢のように堂々と話しかけるわけにもいかないから、今回はラッキーだった。
 まぁ、その前に目的の人物の前で立ちすくむ生徒会長の方が気になるのだが。
 これは、紗亜矢が初めて話しかける場面である。
「おっ…遂に行ったか」
 藍那が期待感を胸に見守る。
 紗亜矢が零弥に話しかける。だが、声までは詳しく聞き取れない。
 次に、零弥が返答する。紗亜矢が大きく崩れてしまったことで、藍那と奈緒は次の展開を一瞬で予測してしまった。
「ちょっと!それはいくら何でも酷すぎるでしょ!」
 この大声は藍那達にも届いていた。
 藍那は短髪の頭を押さえて項垂れる他なかった。
「…やっぱりいつもの会長のでしたね」
「だな」
 そんな、紗亜矢を見守る二人の後ろに、ある男が歩いてきた。
「あれ、穹賀未そらがみ先輩に茜沢先輩じゃないですか。どうしてこんなところに?」
「あぁ…新井か…あっち見てみろ」
 和希が藍那の指示通りに、藍那が指差す方向を見る。
「あれは、会長ですか…ん?あちらの男は?」
「噂の椎名零弥君だ」
「マジですか!?会長、弁当食べたばっかりなのに…珍しく行動が早いですね」
「んまぁ…それに関しては後々話すとして、紗亜矢は絶賛交渉中だ」
「椎名零弥ねぇ…うわぁ…絶対入らないでしょ。外見からして」
「紗亜矢はモテるんだぞ。やってみなきゃわからない」
「まぁ、入ってくれることに越したことはないですが…」
 和希は何か考えるような表情を二人に向けた。

「ですが、会長がなぜわざわざ自分の元へいらっしゃったのですか?それも人目をはばからず」
 そう言って零弥は紗亜矢を見下ろす。
「それくらい大事な用があるの。それについてはそこで話すわ」
 初対面ではないということはやはり大きいのだろうか。話が転がるように進んでいく。
 だが、周りからしてみればそんな事は考えもしないだろう。零弥と紗亜矢せいとかいちょうが当たり前のように話すことは、本来怪しいことなのである。疑惑と嫉妬の念がぽつりぽつりと零弥に向けられる。
「…あの、場所悪すぎませんか?」
 零弥はチラチラと周りを見てから紗亜矢に苦い顔を向ける。
「…それについては非常に申し訳ないわ」
 紗亜矢が赤面しながら詫びの一言を入れる。
「ありがとう。また会いましょうね。」
 紗亜矢は足早にその場を去った。
 一連の会話から、零弥は紗亜矢の性格を探るに必要な情報を見つけたようだ…いや、見つけてしまったようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

精霊姫の追放

あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。 「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...