虚構幻葬の魔術師

crown

文字の大きさ
16 / 109
異端児達の集結

狂騒乱舞のダークサイド③前編

しおりを挟む
 一日の授業が全て終了し、ユミ達は帰宅する準備を進めている。
「零弥ー帰ろう。」
「悪いが、今日は用事があるんだ。先に帰ってくれないか?」
「用事って…どうかし─」
「─わかったよ」
 流雅がユミの一言を遮るように帰宅を促す。
 そして、流雅は零弥の方を振り向き…
「お互いに、気をつけてね?」
「…分かっている」
 意味深な会話をして、ユミと流雅は退出し、教室には零弥のみになった。
 後に零弥も、端末とノートパソコンが入ったケースを片手に、教室を後にする。
 誰もいなくなったことを感知したカメラは、システムにアクセスし、教室のドアをロックした。

「いらっしゃいませー」
 喫茶店の扉を開けると、店員の出迎えの声が聞こえる。
 この喫茶店は、チェーン店のように多くの人が賑わっているのではなく、あくまで、ある程度の静けさを保っている。だから、常連客の多い愛された店なのだ。
 先ほど入店したのは零弥だ。
 辺りを見渡す限り、紗亜矢の姿は無い。
 向かい合わせになるようなテーブルを探し、そこに座ることにした。
霧島紗亜矢せいとかいちょうがわざわざ交渉に来るとは…思いきったな。―いや、あの人が押し付けられたという仮説が有力か?」
 零弥は、交渉にわざわざ紗亜矢が乗り出してきた理由を探っていた。零弥自身、交渉はもう少し日付が変わってから来ると予測していた。早くても一週間は越えるだろうとも考えていた。
 しかし、実際は入学式の翌日に動き出した。全くの無警戒だった零弥は、紗亜矢に話しかけられたとき、流石に動揺しかけた。だが、動揺しかけたということは、実際には動揺していないということである。その時の零弥は、自らが持つ演技力を最大限に活かして乗りきったのだ。
 しかし、先ほどの会話で紗亜矢の性格が大体読めてしまった。
 あの性格は、突然に、また無意識に痛いところをついてしまうタイプだ。
 とどのつまり、零弥はそれなりの対策をしなければいけないのだ。紗亜矢に対してここまで警戒しなければいけないことに、零弥は何故か悔しさを覚えた。
「いらっしゃいませー」
 ドアが開く音と店員の声が混ざって聞こえた。そしてこの足音は……紗亜矢のものだ。
「遅れてごめんね。何にしようかな…」
 紗亜矢は零弥に軽く謝ると、すぐさまメニュー表に目を移した。
「ところで、なぜ僕に話しかけたんですか?あんな公衆の面前で」
「うぅ…それは…」
 零弥の口車に乗せられて赤面したあの瞬間を思い出して、紗亜矢は口ごもりしてしまった。
 だが、すぐに気を取り直したようだ。
「今日君を読んだ理由は、生徒会についてです」
 零弥の読み通り、生徒会への勧誘だ。
「君の成績を見させて頂いたけど、ほんとすごい成績ね。あんなの、なかなかできないことよ。」
「そんなに大袈裟に言わなくても…」
 零弥は軽く受け流した。
「星校の生徒会は、毎年ほとんどが役員の推薦で成り立っているんです。」
 そして、たくさんの男達を振り向かせる、とびっきりの笑顔で追い討ちをかける。
「今回、入試の成績が格段によかった椎名零弥くん…我が校の先頭に立つ、私立星蕾高校生徒会に入りませんか?」
 紗亜矢がいきなり本題に入った。
「お断りします」
「…え?」
 あまりにもあっさりと告げられた言葉に、紗亜矢は驚きを隠せないようだ。
「なっ、何で、そんなあっさりと…」
「もちろん理由はあります。」
 零弥は説明を始めた。
「その理由とは……彼女にある……といった方が正しいでしょうか」
「彼女?それって誰のこと?」
「聞いておりませんか?彼女とは、相崎悠海のことです」

 その頃、ユミは帰路についていた。流雅とは分岐点で別れ、一人で歩いている。
 普段は零弥と共にするのだが、今回は零弥は都合ですぐに帰れない。
 何となく寂しい雰囲気にユミは包まれていた。
「零弥…何かあったのかな?何かしら事件が起こったわけでもないし…まぁ、そんなことが起こればまず第一に私がいかなきゃならないんだけどね」
 ユミはポツリと呟く。
 そして、ユミはずっと歩いていると、何故か細い路地の方を振り向いた。
 この時、自分の不運さを恨んだ。それは、また厄介事に巻き込まれるからだ。
 この時、自分の幸運さを悦ばしく思った。それは、自分の実力を発揮できると共に、目の前の女性に貢献することができるからだ。
 そこでは、ある女性が数人の男性に絡まれていたのだ。
 ユミはすぐさまそこへ向かって走り出した。そして一言、男達を蔑むように警告する。
「そこで何をしているんですか?」
「何だ、テメェ?」 
 その声に反応した男の一人が、威圧的に返答する。そして、なりふり構わずユミに襲いかかった。

「聞いておりませんか?彼女とは、相崎悠海のことです。」
「相崎悠海って…確か…」
 ユミが襲いかかられた時、零弥は生徒会を断る理由について説明し始めたときであった。
「そう、なんてったって彼女は─」

「ぐはっ!」
 襲いかかったはずの男がユミの前で膝を屈している。

「─国民の安全を守る国家公務員の一つ……抑制師サプレッサーですから」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

精霊姫の追放

あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。 「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...