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異端児達の集結
狂騒乱舞のダークサイド④
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紗亜矢からなんとか逃れ、零弥はやっと帰路につくことができた。
話はすんなり進んだものの、ユミについて話すのは流石に躊躇していた。抑制師であることは本来名誉であるはずなのだが、零弥にとっては話は別である。
その理由は、立場上サポート役の零弥自身にある。
そもそも、抑制師自身のみで犯行を取り締まることが一番なのだが、一般人である零弥がサポートしているのは、場合によっては問題視されかねない。それについては零弥も危惧している。だが、今までそのような通達は受けていない。何故だろうか?
答えは簡単。ユミが高校生だからである。キャリアが浅く、年齢的にも若すぎる彼女が一人で役職をこなしきることはあり得ないとされているのだ。
裏を返せば、それはユミの実力が甘くみられているということだ。零弥は時々、そのジレンマを感じている。
しかも、生徒会の勧誘を断るためにユミを利用してしまった。
零弥は後で謝らなければいけないと思った。
ちょうどその時、端末が振動し始めた。着信の合図だ。
画面をみてみると、相手はユミ本人であった。
「ユミか……ちょうどよかった。もしもし?」
『あっ、零弥ね。今大丈夫?』
「ちょうどよかった。今お前にかけようか迷っていたところなんだ」
『そうなの、じゃあこちらから用件を言うけど、さっきちょっと現場を見つけたんだ』
「大丈夫か?今いった方が…」
『ううん、相手は数人だったし、能力持ちでもなかったから、すぐに終わったよ』
ユミが現場の経緯を話す。
「そうか……怪我とかしてないか?」
『大丈夫、心配ないよ。ところで、今日は何かあったの?』
「ちょうどそれを言おうとしたところだ。今日、ある人から呼び出しがかかってだな……」
無傷であることを確認し、胸を撫で下ろした零弥は、先ほどのやり取りについて話し始めた。
『呼び出し?零弥、初日から何かやらかしたの?』
「違うわ!……まぁ、あながち間違ってもないが……」
ユミのからかいに少したじろいでしまった。
『?…続けて』
「その呼び出し相手は生徒会長だったんだ」
『えっ!?それで?』
「放課後に拉致された」
「拉致」というのは言葉のあやだが、ちゃんとユミは理解している。
『あーっ……それは災難だったね』
「問題はその先だ。生徒会入りの反証材料として、ユミのサポート役ということを使ったんだ」
零弥が本題に入る。
「断るだけにお前を利用したことは謝っておく。悪かった」
『え、いいよ。別にそんなことは気にしてないし。それに、私の方はいつも助かってるから』
「そうか……あのさあユミ、今夜空いてるか?」
『えっ!?今夜!?』
零弥の突然の誘いにユミは顔を赤くしながら動揺する。電話越しであるため零弥はその姿を見えてないが。
「?…どうした?無理なのか?」
『ううん、空いてるよ』
「今日、流雅の家に行って依頼を仕上げようと思うんだ。そこでユミと流雅に伝えたいこともあるから今夜流雅の家に集まってくれ」
『わかった。宿題も早めに仕上げておくよ』
「ありがとう。じゃあな」
『うん』
零弥はユミの返答を確認した後、通話を終了した。
「新井和希……高校生だとは聞いていたが、まさか星校はおろか、生徒会に所属していたとは……」
ふと沸いてきた質問は、決して何かを探る意図を持ち合わせていなかった。本当に、何故か沸いてきたようなも分からないような質問だったのだ。まさか、重要な情報がこうして手に入るとは……零弥は何とも言えない気分になった。
さらに、ユミとの会話のとき、事件に巡り会わせてしまった事も気になる。
零弥が通っていた中学校に、三年生の頃に転校してきたユミには、それ以来、抑制師のサポートを続けている。
零弥は、ユミに色々助けてもらっていることがあったのだ。
零弥は記憶喪失である。零弥の記憶は、三年前に目覚めた病室から始まっている。
病室に一番初めに訪れた人物がユミであったのだ。
怪我をし、倒れていた零弥を偶然発見し、病院へつれていくよう、色々手続きを行ったとか。
また、零弥の記憶喪失は少しばかりか特徴があった。
人間の脳に記憶される長期記憶には大きく分けて二種類ある。
一つは、言葉で説明できる「陳述記憶」。そのうち、出来事を記憶する「エピソード記憶」と言葉の意味を記憶する「意味記憶」に分けられる。
もう一つは、言葉で説明できない記憶である、「非陳述記憶」。そこから、物事の動作を記憶する「手続き記憶」や、先行した言葉に対して後続する単語や出来事などを覚える「プライミング」等に分けられる。
一般的に「 記憶喪失」という単語に対して、出来事はもちろん、今まで学習したことや、日常生活の動作を忘れているというイメージが強い。
しかし、零弥は全てのエピソード記憶と、意味記憶の一部が欠落していた。つまり出来事に関しては完全に覚えておらず、言葉の意味、つまり小学校の授業で習うような言葉や内容の一部を喪失していたというものだ。
逆に言えば、手続き記憶は全て覚えているので日常生活には支障は無かった。これが不幸中の幸いだろうか。
本題に戻るが、いくつかの意味記憶を喪失しているため、零弥は日常会話は支障は無いものの、学習した内容をまた覚えなければならない。普段のテスト勉強のように、苦手な部分だけ覚え直すような簡単な話ではなく、どこを忘れているのかもわからないため、一から全て覚え直さなければならない。それを手伝ったのはユミだ。
ユミは元々成績はよかった。だから、教科書やノートはきちんとまとめていた。
それらを零弥に貸したところ、記憶を取り戻そうとする執念からか、少し教えただけで零弥は全て覚えてしまったのだ。
進む中学校は違っていたものの、零弥はユミのことを忘れていなかった。そして、三年間の訓練を終えたユミは零弥と同じ中学校に転校することが決まり 、再会した。
それから、零弥はユミのサポートをするようになった。しかし、サポートとはいえ、零弥が主体となって戦闘を進めることが多いが。
そして、零弥はユミを守らなければいけないと思った。それはユミへの恩返しとして、また、一人の「能力持ち」として……
話はすんなり進んだものの、ユミについて話すのは流石に躊躇していた。抑制師であることは本来名誉であるはずなのだが、零弥にとっては話は別である。
その理由は、立場上サポート役の零弥自身にある。
そもそも、抑制師自身のみで犯行を取り締まることが一番なのだが、一般人である零弥がサポートしているのは、場合によっては問題視されかねない。それについては零弥も危惧している。だが、今までそのような通達は受けていない。何故だろうか?
答えは簡単。ユミが高校生だからである。キャリアが浅く、年齢的にも若すぎる彼女が一人で役職をこなしきることはあり得ないとされているのだ。
裏を返せば、それはユミの実力が甘くみられているということだ。零弥は時々、そのジレンマを感じている。
しかも、生徒会の勧誘を断るためにユミを利用してしまった。
零弥は後で謝らなければいけないと思った。
ちょうどその時、端末が振動し始めた。着信の合図だ。
画面をみてみると、相手はユミ本人であった。
「ユミか……ちょうどよかった。もしもし?」
『あっ、零弥ね。今大丈夫?』
「ちょうどよかった。今お前にかけようか迷っていたところなんだ」
『そうなの、じゃあこちらから用件を言うけど、さっきちょっと現場を見つけたんだ』
「大丈夫か?今いった方が…」
『ううん、相手は数人だったし、能力持ちでもなかったから、すぐに終わったよ』
ユミが現場の経緯を話す。
「そうか……怪我とかしてないか?」
『大丈夫、心配ないよ。ところで、今日は何かあったの?』
「ちょうどそれを言おうとしたところだ。今日、ある人から呼び出しがかかってだな……」
無傷であることを確認し、胸を撫で下ろした零弥は、先ほどのやり取りについて話し始めた。
『呼び出し?零弥、初日から何かやらかしたの?』
「違うわ!……まぁ、あながち間違ってもないが……」
ユミのからかいに少したじろいでしまった。
『?…続けて』
「その呼び出し相手は生徒会長だったんだ」
『えっ!?それで?』
「放課後に拉致された」
「拉致」というのは言葉のあやだが、ちゃんとユミは理解している。
『あーっ……それは災難だったね』
「問題はその先だ。生徒会入りの反証材料として、ユミのサポート役ということを使ったんだ」
零弥が本題に入る。
「断るだけにお前を利用したことは謝っておく。悪かった」
『え、いいよ。別にそんなことは気にしてないし。それに、私の方はいつも助かってるから』
「そうか……あのさあユミ、今夜空いてるか?」
『えっ!?今夜!?』
零弥の突然の誘いにユミは顔を赤くしながら動揺する。電話越しであるため零弥はその姿を見えてないが。
「?…どうした?無理なのか?」
『ううん、空いてるよ』
「今日、流雅の家に行って依頼を仕上げようと思うんだ。そこでユミと流雅に伝えたいこともあるから今夜流雅の家に集まってくれ」
『わかった。宿題も早めに仕上げておくよ』
「ありがとう。じゃあな」
『うん』
零弥はユミの返答を確認した後、通話を終了した。
「新井和希……高校生だとは聞いていたが、まさか星校はおろか、生徒会に所属していたとは……」
ふと沸いてきた質問は、決して何かを探る意図を持ち合わせていなかった。本当に、何故か沸いてきたようなも分からないような質問だったのだ。まさか、重要な情報がこうして手に入るとは……零弥は何とも言えない気分になった。
さらに、ユミとの会話のとき、事件に巡り会わせてしまった事も気になる。
零弥が通っていた中学校に、三年生の頃に転校してきたユミには、それ以来、抑制師のサポートを続けている。
零弥は、ユミに色々助けてもらっていることがあったのだ。
零弥は記憶喪失である。零弥の記憶は、三年前に目覚めた病室から始まっている。
病室に一番初めに訪れた人物がユミであったのだ。
怪我をし、倒れていた零弥を偶然発見し、病院へつれていくよう、色々手続きを行ったとか。
また、零弥の記憶喪失は少しばかりか特徴があった。
人間の脳に記憶される長期記憶には大きく分けて二種類ある。
一つは、言葉で説明できる「陳述記憶」。そのうち、出来事を記憶する「エピソード記憶」と言葉の意味を記憶する「意味記憶」に分けられる。
もう一つは、言葉で説明できない記憶である、「非陳述記憶」。そこから、物事の動作を記憶する「手続き記憶」や、先行した言葉に対して後続する単語や出来事などを覚える「プライミング」等に分けられる。
一般的に「 記憶喪失」という単語に対して、出来事はもちろん、今まで学習したことや、日常生活の動作を忘れているというイメージが強い。
しかし、零弥は全てのエピソード記憶と、意味記憶の一部が欠落していた。つまり出来事に関しては完全に覚えておらず、言葉の意味、つまり小学校の授業で習うような言葉や内容の一部を喪失していたというものだ。
逆に言えば、手続き記憶は全て覚えているので日常生活には支障は無かった。これが不幸中の幸いだろうか。
本題に戻るが、いくつかの意味記憶を喪失しているため、零弥は日常会話は支障は無いものの、学習した内容をまた覚えなければならない。普段のテスト勉強のように、苦手な部分だけ覚え直すような簡単な話ではなく、どこを忘れているのかもわからないため、一から全て覚え直さなければならない。それを手伝ったのはユミだ。
ユミは元々成績はよかった。だから、教科書やノートはきちんとまとめていた。
それらを零弥に貸したところ、記憶を取り戻そうとする執念からか、少し教えただけで零弥は全て覚えてしまったのだ。
進む中学校は違っていたものの、零弥はユミのことを忘れていなかった。そして、三年間の訓練を終えたユミは零弥と同じ中学校に転校することが決まり 、再会した。
それから、零弥はユミのサポートをするようになった。しかし、サポートとはいえ、零弥が主体となって戦闘を進めることが多いが。
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