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序章
第20話 黒猫クロと魔力の契約
黒い子猫は、信じられないものを見るような目で私を見つめていた。
泥と傷でボロボロだが、そのアメジスト色の瞳だけは神秘的な輝きを放っている。
「……怖がらせて、ごめんね」
私は息を切らせながら、黒い子猫の前にしゃがみ込んだ。
敵意がないことを示すように、ゆっくりと、泥で汚れた手を差し出す。
「もう大丈夫よ。あいつは、もう動かないわ」
子猫はビクリと身を竦めた。
人間への恐怖か、それとも警戒か。
少しの沈黙が流れる。
森の風が、ざわざわと木々を揺らす音だけが響く。
やがて、子猫は鼻をヒクつかせ、恐る恐る私の方へ首を伸ばした。
私の指先に残る、微かな魔力の残り香を確かめるように。
そして、冷たく濡れた鼻先を押し当てた。
ペロリ。
ザリッとした舌の感触。
子猫が、私の指を舐めた。
――ドクン。
その瞬間、信じられない感覚が私を襲った。
指先から、温かい奔流が流れ込んできたのだ。
まるで、干上がった大地に清らかな水が染み渡るように。
枯渇して悲鳴を上げていた私の魔力に、純度の高いマナが注ぎ込まれていく。
えっ……!? これ、魔力?
体が、軽い。
鉛のようだった疲労感が、嘘のように引いていく。
私は驚愕して子猫を見つめた。
子猫は舌をしまい、アメジストの瞳で私をじっと見つめ返した。
「君……私に魔力をくれたの?」
「ミャウ」
肯定するように短く鳴く。
魔力譲渡を行える魔物なんて、前世の記憶を探しても、聞いたことがない。
この子、ただの猫じゃない。
もしかして、とんでもない相棒を見つけてしまったのかもしれない。
「……ふふ。ありがとう、助かったわ」
私は自然と笑みがこぼれた。
デイルへのお土産のつもりだったが、どうやら私にとっても最高の出会いだったようだ。
「おいで。一緒に帰りましょう」
私が肩をポンと叩くと、子猫はすっと身体を軽くし、空中へと浮かび上がった。
「えっ……飛べるの!?」
驚く私をよそに、子猫はフワリと宙に浮くと、私の周りをクルリと一周。
そして私の右肩にストンと着地した。
フワフワの毛並みが頬に触れる。温かい。
「ミャー」
「……不思議な子ね。あなた、名前はあるの?」
私は立ち上がりながらそう聞くと、子猫は首を横に振る。
「そうね……じゃあ、クロって呼ぶことにするわ」
「ミャン!」
クロは嬉しそうに、私の頬を舐める。
肩には、頼もしい新たな相棒。
空を見上げると、木々の隙間から差し込む朝日が、黄金色に輝いていた。
「さて……帰ってからが、本当の戦いね」
アミナの説教と、父様の尋問。
ある意味でベアロスよりも恐ろしい強敵たちが待つ我が家へ、私は足取り軽く歩き出すのだった。
泥と傷でボロボロだが、そのアメジスト色の瞳だけは神秘的な輝きを放っている。
「……怖がらせて、ごめんね」
私は息を切らせながら、黒い子猫の前にしゃがみ込んだ。
敵意がないことを示すように、ゆっくりと、泥で汚れた手を差し出す。
「もう大丈夫よ。あいつは、もう動かないわ」
子猫はビクリと身を竦めた。
人間への恐怖か、それとも警戒か。
少しの沈黙が流れる。
森の風が、ざわざわと木々を揺らす音だけが響く。
やがて、子猫は鼻をヒクつかせ、恐る恐る私の方へ首を伸ばした。
私の指先に残る、微かな魔力の残り香を確かめるように。
そして、冷たく濡れた鼻先を押し当てた。
ペロリ。
ザリッとした舌の感触。
子猫が、私の指を舐めた。
――ドクン。
その瞬間、信じられない感覚が私を襲った。
指先から、温かい奔流が流れ込んできたのだ。
まるで、干上がった大地に清らかな水が染み渡るように。
枯渇して悲鳴を上げていた私の魔力に、純度の高いマナが注ぎ込まれていく。
えっ……!? これ、魔力?
体が、軽い。
鉛のようだった疲労感が、嘘のように引いていく。
私は驚愕して子猫を見つめた。
子猫は舌をしまい、アメジストの瞳で私をじっと見つめ返した。
「君……私に魔力をくれたの?」
「ミャウ」
肯定するように短く鳴く。
魔力譲渡を行える魔物なんて、前世の記憶を探しても、聞いたことがない。
この子、ただの猫じゃない。
もしかして、とんでもない相棒を見つけてしまったのかもしれない。
「……ふふ。ありがとう、助かったわ」
私は自然と笑みがこぼれた。
デイルへのお土産のつもりだったが、どうやら私にとっても最高の出会いだったようだ。
「おいで。一緒に帰りましょう」
私が肩をポンと叩くと、子猫はすっと身体を軽くし、空中へと浮かび上がった。
「えっ……飛べるの!?」
驚く私をよそに、子猫はフワリと宙に浮くと、私の周りをクルリと一周。
そして私の右肩にストンと着地した。
フワフワの毛並みが頬に触れる。温かい。
「ミャー」
「……不思議な子ね。あなた、名前はあるの?」
私は立ち上がりながらそう聞くと、子猫は首を横に振る。
「そうね……じゃあ、クロって呼ぶことにするわ」
「ミャン!」
クロは嬉しそうに、私の頬を舐める。
肩には、頼もしい新たな相棒。
空を見上げると、木々の隙間から差し込む朝日が、黄金色に輝いていた。
「さて……帰ってからが、本当の戦いね」
アミナの説教と、父様の尋問。
ある意味でベアロスよりも恐ろしい強敵たちが待つ我が家へ、私は足取り軽く歩き出すのだった。
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