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序章
第23話 明日への誓いと家族の試練
私は父に向き直り、必死に声を張り上げる。
「その子は、クロと言います。森で戦熊に食べられそうになっていたのを、私が助けたんです!」
「食べられそうに……?」
「はい。私はそれを見て、どうしても助けたくて……魔法で戦熊を追い払ったんです!」
私が必死に説明すると、父の殺気が少しだけ揺らいだ。
「お前が……助けた? その、魔力の塊のような存在を?」
「はい。この子は恩を感じて、私についてきてくれたんです。私に危害を加えるつもりはありません!」
私の言葉を裏付けるように、クロは「ミャッ」と短く鳴き、父に向かってお腹を見せるようにゴロンと転がった。
敵意ゼロのアピールだ。
そして、フワフワと浮き上がり、泣いているデイルの元へと飛んでいった。
「あ……」
「ミャ~オン」
クロはデイルの頬に、スリスリと体を擦り付ける。
デイルは涙を止め、パァっと顔を輝かせた。
「わぁ! ねこちゃん! くろいねこちゃん、ふわふわだー!」
「……っ、デイル様!」
アミナが止めようとするが、デイルは嬉しそうにクロを抱きしめた。
クロもゴロゴロと喉を鳴らしている。
その光景に、張り詰めていた空気が強制的に霧散した。
「……はぁ」
父はガクリと肩を落とし、ナイフをテーブルに置いた。
「分かった。……少なくとも、デイルを襲うつもりはないようだな」
「はい。とっても賢い子なんです」
「だがな、エルシア。いくら助けたとはいえ、魔物を屋敷に入れるなど……それに、お前が戦熊を追い払ったというのも信じ難い」
父は椅子に座り直し、厳しい目で私を見た。
当然だ。
六歳の子供が戦熊を撃退したなど、お伽話にもならない。
「お父様。その戦熊……ベアロスと言っていましたが、死ぬ前に気になることを言っていました」
私は話題を切り替えた。
今、最も重要なのはクロのことよりも、この情報だ。
「ベアロス?」
「はい。言葉を喋る魔物でした。あいつはクロを食べようとした時、こう言ったんです。もうすぐ村を攻める、魔力を蓄えて、人間どもを皆殺しにすると」
父の目が鋭く細められた。
「村を攻める……? 人語を解する魔物が、明確な意思を持ってか?」
「はい。具体的な場所までは言っていませんでしたが、計画的でした。……恐らく、後ろに指揮官がいるはずです」
父は腕を組み、沈黙した。
室内の空気が重くなる。
辺境伯領内で頻発する魔物の被害。
そして、今回の上位種の出現と、襲撃計画のリーク。
すべての点が線で繋がろうとしている。
「……エルシアの話がただの空想なら良いのだが。その猫の異常な魔力、そしてお前が生きて帰ってきた事実を考えれば、無視はできん」
父はブツブツと呟きながら、領主の顔になった。
「私は、信じられないわ……」
母が震える声で言った。
「あんな小さかったエルシアが……魔物と戦うなんて」
「そうだな。今のエルシアの魔力量で、戦熊を倒せる道理がない。嘘をついているとは思わんが、何か勘違いをしているのではないか?」
父が私を見た。
疑っているのではない。
常識的に考えて不可能だから、納得ができないのだ。
証明が必要だ。
私がただ守られるだけの子供ではなく、この領地を守るための「戦力」になり得るという証明が。
「お父様、お母様」
私は一歩前に出た。
「明日、私が練習してきた魔法を、お見せします」
「魔法を?」
「はい。私がどうやって魔物を倒したのか。そして、私がこれから何ができるのか。……すべてを証明します」
私の瞳には、もはや迷いはなかった。
父はしばらく私の目をじっと見つめ返し、やがて深く息を吐いて頷いた。
「……分かった。明日の朝、その力を見せてもらう。だが、もしそれが危険なものだと判断したら、二度と魔法は使わせん。そして、その猫も森へ帰す。いいな?」
「はい。約束します」
交渉成立だ。
私は小さく拳を握りしめた。
明日、すべてが決まる。
私の魔法を家族に認めさせ、クロを家族として迎え入れ、そして来るべき脅威に備えるための第一歩。
「さあ、もう遅い。まずは風呂に入ってきなさい。泥だらけだぞ」
「はい……」
怒られ、心配され、そして少しだけ認められた夜。
冷めてしまったスープを飲み干し、私はアミナに手を引かれて浴室へと向かった。
その背中には、心地よい疲労感と、明日への決意が宿っていた。
「その子は、クロと言います。森で戦熊に食べられそうになっていたのを、私が助けたんです!」
「食べられそうに……?」
「はい。私はそれを見て、どうしても助けたくて……魔法で戦熊を追い払ったんです!」
私が必死に説明すると、父の殺気が少しだけ揺らいだ。
「お前が……助けた? その、魔力の塊のような存在を?」
「はい。この子は恩を感じて、私についてきてくれたんです。私に危害を加えるつもりはありません!」
私の言葉を裏付けるように、クロは「ミャッ」と短く鳴き、父に向かってお腹を見せるようにゴロンと転がった。
敵意ゼロのアピールだ。
そして、フワフワと浮き上がり、泣いているデイルの元へと飛んでいった。
「あ……」
「ミャ~オン」
クロはデイルの頬に、スリスリと体を擦り付ける。
デイルは涙を止め、パァっと顔を輝かせた。
「わぁ! ねこちゃん! くろいねこちゃん、ふわふわだー!」
「……っ、デイル様!」
アミナが止めようとするが、デイルは嬉しそうにクロを抱きしめた。
クロもゴロゴロと喉を鳴らしている。
その光景に、張り詰めていた空気が強制的に霧散した。
「……はぁ」
父はガクリと肩を落とし、ナイフをテーブルに置いた。
「分かった。……少なくとも、デイルを襲うつもりはないようだな」
「はい。とっても賢い子なんです」
「だがな、エルシア。いくら助けたとはいえ、魔物を屋敷に入れるなど……それに、お前が戦熊を追い払ったというのも信じ難い」
父は椅子に座り直し、厳しい目で私を見た。
当然だ。
六歳の子供が戦熊を撃退したなど、お伽話にもならない。
「お父様。その戦熊……ベアロスと言っていましたが、死ぬ前に気になることを言っていました」
私は話題を切り替えた。
今、最も重要なのはクロのことよりも、この情報だ。
「ベアロス?」
「はい。言葉を喋る魔物でした。あいつはクロを食べようとした時、こう言ったんです。もうすぐ村を攻める、魔力を蓄えて、人間どもを皆殺しにすると」
父の目が鋭く細められた。
「村を攻める……? 人語を解する魔物が、明確な意思を持ってか?」
「はい。具体的な場所までは言っていませんでしたが、計画的でした。……恐らく、後ろに指揮官がいるはずです」
父は腕を組み、沈黙した。
室内の空気が重くなる。
辺境伯領内で頻発する魔物の被害。
そして、今回の上位種の出現と、襲撃計画のリーク。
すべての点が線で繋がろうとしている。
「……エルシアの話がただの空想なら良いのだが。その猫の異常な魔力、そしてお前が生きて帰ってきた事実を考えれば、無視はできん」
父はブツブツと呟きながら、領主の顔になった。
「私は、信じられないわ……」
母が震える声で言った。
「あんな小さかったエルシアが……魔物と戦うなんて」
「そうだな。今のエルシアの魔力量で、戦熊を倒せる道理がない。嘘をついているとは思わんが、何か勘違いをしているのではないか?」
父が私を見た。
疑っているのではない。
常識的に考えて不可能だから、納得ができないのだ。
証明が必要だ。
私がただ守られるだけの子供ではなく、この領地を守るための「戦力」になり得るという証明が。
「お父様、お母様」
私は一歩前に出た。
「明日、私が練習してきた魔法を、お見せします」
「魔法を?」
「はい。私がどうやって魔物を倒したのか。そして、私がこれから何ができるのか。……すべてを証明します」
私の瞳には、もはや迷いはなかった。
父はしばらく私の目をじっと見つめ返し、やがて深く息を吐いて頷いた。
「……分かった。明日の朝、その力を見せてもらう。だが、もしそれが危険なものだと判断したら、二度と魔法は使わせん。そして、その猫も森へ帰す。いいな?」
「はい。約束します」
交渉成立だ。
私は小さく拳を握りしめた。
明日、すべてが決まる。
私の魔法を家族に認めさせ、クロを家族として迎え入れ、そして来るべき脅威に備えるための第一歩。
「さあ、もう遅い。まずは風呂に入ってきなさい。泥だらけだぞ」
「はい……」
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その背中には、心地よい疲労感と、明日への決意が宿っていた。
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