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1章
第10話 エリシアの評価と、周囲の変化
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翌朝、庭に降りると、エリシアがすでに待っていた。
今日はいつもより早い時間に来ていたらしい。
「おはよう、エリシア。今日は早いんだな」
「おはようございます、レオン様。ここに立てかけてある木剣が見えますか? 今日はそれを使います」
「木剣……? 魔法じゃなくて?」
「魔法と身体の動きは密接に関わります。詠唱だけが魔法ではありません。身体をどのように動かし、どのように敵に回避・防御・攻撃を行うか。それらの基礎体力と連動性は、魔法の威力や正確性にも影響します」
エリシアは素早く木剣を取り、自分の後ろ髪をなびかせながら実演してみせる。
フォームに無駄がなく、木剣の振りが空を切る音がシャープだ。
「すげえ……」
思わず見惚れてしまう。
女性だが筋力の限界を補うように魔力を織り交ぜているらしく、その動作には力強さとしなやかさが共存していた。
「さあ、どうぞ。レオン様も真似してみてください」
言われるがまま、俺も木剣を握り、エリシアの動きをなぞってみる。
……が、すぐに腕や腰が痛くなってくる。
普段から鍛えていないレオンの身体にはかなりキツい。
しかしここで諦めたら、また“使えない奴”扱いに逆戻りだ。
「ふっ……! はっ……!」
掛け声を出しながら、一振り一振りフォームを意識して繰り返す。
ふと休憩を挟むとき、エリシアが苦笑を浮かべながら言った。
「昨日よりは集中できていますね。もしかして、夜に自主練でもされたのですか?」
「うん。ちょっとだけな」
正直、かなりやったけど。
それを聞いたエリシアは意外そうな表情で、けれどどこか嬉しそうに微笑む。
「よい心がけです。短期間で習得しようとするなら、そうやって努力するしかありません。……ですが、無理は禁物ですよ。体を壊したら元も子もありませんし」
「大丈夫。疲れたら寝ればいいんだ。俺には最高のスキルがあるからな」
そう言うと、彼女はくすりと笑った。
きっと半分は冗談めかして言ったのだろうけど、“絶対快眠”がここまで便利なものだとは初めて知ったのだろう。
そこからまた数時間が経過し、俺は何度も木剣を振り、息が上がるほどに体を酷使する。
その度に数分の仮眠を挟む。
エリシアは興味深そうに俺を観察してくる。
「レオン様、そのスキルは本当に凄い回復力ですね。少なくとも、疲労からの復帰スピードが他者の何倍も速い。短期集中型のトレーニングには最適です」
「そうかもな。……本当、これがなかったら俺はすぐバテてたと思う」
自嘲気味に言うと、エリシアはさらに視線を鋭くする。
「いえ、レオン様が持っていらっしゃる根性や意欲こそが一番大切です。スキルがあっても、本人が投げ出してしまったら何も得られませんから」
「ありがとう。そう言われると、少しは報われる気がする」
青い瞳がまっすぐ俺を見る。
その眼差しに僅かながら温かみを感じた。
実際、周囲の反応も少しずつ変わり始めている。
これまで使用人たちは「レオン様はお家の厄介者」的な視線で見ていたが、朝早くから夜遅くまで訓練する姿を目の当たりにしているうちに、少しずつ親切心を見せるようになってきた。
「レオン様、お疲れのようでしたらタオルをどうぞ」
「水分補給にどうぞ」
メイドや執事が率先して世話を焼いてくれる。
俺がそれに礼を言うと、少しだけ驚いたような顔をされた。
どうやらレオンはこれまであまり礼を言わなかったらしい。
……そりゃ嫌われもする。
けれど、こうやって関係を築いていけば、未来は変えられるかもしれない。
――――――――――――
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よろしくお願いします!
今日はいつもより早い時間に来ていたらしい。
「おはよう、エリシア。今日は早いんだな」
「おはようございます、レオン様。ここに立てかけてある木剣が見えますか? 今日はそれを使います」
「木剣……? 魔法じゃなくて?」
「魔法と身体の動きは密接に関わります。詠唱だけが魔法ではありません。身体をどのように動かし、どのように敵に回避・防御・攻撃を行うか。それらの基礎体力と連動性は、魔法の威力や正確性にも影響します」
エリシアは素早く木剣を取り、自分の後ろ髪をなびかせながら実演してみせる。
フォームに無駄がなく、木剣の振りが空を切る音がシャープだ。
「すげえ……」
思わず見惚れてしまう。
女性だが筋力の限界を補うように魔力を織り交ぜているらしく、その動作には力強さとしなやかさが共存していた。
「さあ、どうぞ。レオン様も真似してみてください」
言われるがまま、俺も木剣を握り、エリシアの動きをなぞってみる。
……が、すぐに腕や腰が痛くなってくる。
普段から鍛えていないレオンの身体にはかなりキツい。
しかしここで諦めたら、また“使えない奴”扱いに逆戻りだ。
「ふっ……! はっ……!」
掛け声を出しながら、一振り一振りフォームを意識して繰り返す。
ふと休憩を挟むとき、エリシアが苦笑を浮かべながら言った。
「昨日よりは集中できていますね。もしかして、夜に自主練でもされたのですか?」
「うん。ちょっとだけな」
正直、かなりやったけど。
それを聞いたエリシアは意外そうな表情で、けれどどこか嬉しそうに微笑む。
「よい心がけです。短期間で習得しようとするなら、そうやって努力するしかありません。……ですが、無理は禁物ですよ。体を壊したら元も子もありませんし」
「大丈夫。疲れたら寝ればいいんだ。俺には最高のスキルがあるからな」
そう言うと、彼女はくすりと笑った。
きっと半分は冗談めかして言ったのだろうけど、“絶対快眠”がここまで便利なものだとは初めて知ったのだろう。
そこからまた数時間が経過し、俺は何度も木剣を振り、息が上がるほどに体を酷使する。
その度に数分の仮眠を挟む。
エリシアは興味深そうに俺を観察してくる。
「レオン様、そのスキルは本当に凄い回復力ですね。少なくとも、疲労からの復帰スピードが他者の何倍も速い。短期集中型のトレーニングには最適です」
「そうかもな。……本当、これがなかったら俺はすぐバテてたと思う」
自嘲気味に言うと、エリシアはさらに視線を鋭くする。
「いえ、レオン様が持っていらっしゃる根性や意欲こそが一番大切です。スキルがあっても、本人が投げ出してしまったら何も得られませんから」
「ありがとう。そう言われると、少しは報われる気がする」
青い瞳がまっすぐ俺を見る。
その眼差しに僅かながら温かみを感じた。
実際、周囲の反応も少しずつ変わり始めている。
これまで使用人たちは「レオン様はお家の厄介者」的な視線で見ていたが、朝早くから夜遅くまで訓練する姿を目の当たりにしているうちに、少しずつ親切心を見せるようになってきた。
「レオン様、お疲れのようでしたらタオルをどうぞ」
「水分補給にどうぞ」
メイドや執事が率先して世話を焼いてくれる。
俺がそれに礼を言うと、少しだけ驚いたような顔をされた。
どうやらレオンはこれまであまり礼を言わなかったらしい。
……そりゃ嫌われもする。
けれど、こうやって関係を築いていけば、未来は変えられるかもしれない。
――――――――――――
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