破滅確定の悪役貴族、【絶対快眠】スキルで最強魔法使いになったので、学園スローライフを満喫する

空月そらら

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1章

第20話 お互いの秘密と、すれ違う運命

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 結局、フローラはその夜、俺のキャンプ地で一緒に食事をとった。

 俺が魔法で野菜を炒め、簡単なシチューに仕立てたものを差し出すと、彼女は「こんな料理が作れるなんてね」と目を丸くしていた。
 
 そして星空の下、焚き火を囲みながら、ほんの少しだけ互いの身の上話をする。

「私の家はそこそこ名門なんだけど……父は私が剣士なんか目指すのをあまり快く思ってないの。どうしても結婚とか社交とか、そういうレールに乗せたいらしいわ」
 
「まあ、貴族の娘ならそういうプレッシャーもあるだろうね」
 
「でも、私は強くなりたい。いつか、王国の中枢で剣を振るうような騎士になりたいの。そのためにはどんな苦労も惜しまないつもり」

 彼女の瞳には揺るぎない決意がある。

 今はまだ荒削りだけど、きっと将来は大物になるだろう――原作の知識を思い出すまでもなく、それを確信させるオーラがある。

「レオン、あなたの目標は何? 私みたいに“王国最強の剣士になる”とか、そういう明確な野望はあるの?」
 
「……最初は学園でなんとかバカにされないようにするってのが目標だった。でも今は、できるだけ強くなって、自分の大切なものを守りたいって思う」
 
「ふうん……守りたいもの、か。大切な人とかいるの?」
 
「家族もいるし、メイドも……っていうと変だけど。あとは妹かな。妹は俺をすごく慕ってくれてるんだ」

 フィリアの顔が脳裏に浮かぶ。いつも心配してくれて、俺の味方でいてくれる。

 そんな妹が安全に暮らせるよう、この世界を少しでも良くしたい――そう思うようになったのは、前世の鬱屈した人生を経たからかもしれない。

 ふと、フローラが焚き火を見つめながら呟く。
 
「ねえ、レオン。グランフィード家って、確かに貴族だけど……家の評判はあまり良くないって噂も聞くわよ」
 
「はは……それは俺のせいだろうね。でも、最近変わったんだ。過去の自分とは違う道を歩もうって決めてる。だから、色々と努力してるし、こうやってひとり旅もしているんだ」
 
「そっか。……まあ、私が口を出すようなことじゃないわね」

 フローラはそれ以上は追及せず、黙ってスープをすする。
 
 俺は“悪役貴族”のレオンであることを、彼女に隠すつもりはない。

 もう名乗ったし。

 でも、原作通りならフローラは“勇者”と出会う運命で、その後一緒に強大な敵を倒したり、恋愛ルートになったりする。
 
 そう考えると、俺が彼女と仲良くするのはイレギュラーなのかもしれない。

 だが、今さらどうこう言っても仕方がない。

「今日はありがとう。助かったわ。明日はまた修行の続きをするから、私は早めにここを出るつもり」
 
「そっか。じゃあ、もう二度と会えないかもしれないな」
 
「そ、そんな言い方しないでよ。学園に通うなら、そのうちどこかで会うかもしれないし、私だって王都に行くことはあるわ」

 微笑むフローラ。

 炎の揺らめきに照らされたその横顔は、ピンクの髪が幻想的に映えていた。
 
「えっと、あれだ。……頑張れよ。王宮の騎士にでも何にでもなってさ、目標を叶えてくれ」
 
「当然。あなたもね、負けないでよ。貴族のしがらみなんかに潰されないように」

 夜は更け、星々が静かに瞬く。

 俺たちは言葉少なに焚き火を見つめ、そしてやがて眠りについた。

 ★
 
 翌朝、俺は早朝に目が覚めると、フローラは姿を消していた。

 残されていたのは、お礼のつもりか小さな花飾りと、「ありがとう」という走り書きのメモ。
 
 それを見て、俺は思わず微笑む。

 これが何かの伏線になるかどうかはわからない。

 でも、きっとまたどこかで会える気がする。

――――――――――――
 《大切なお知らせ!》

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