破滅確定の悪役貴族、【絶対快眠】スキルで最強魔法使いになったので、学園スローライフを満喫する

1章

第23話 オーク戦 第二撃の魔法詠唱と勝利

　魔力が回復したとはいえ、一瞬のうちに膨大な魔法を練り上げるのは難しい。

　だが、このままでは馬や馬車が危ないし、俺自身の命も危うい。
　
　ならばこそ、限界ギリギリまで魔力を集中して、ここで一気に決めるしかない！

　今度は少し長めの詠唱に挑戦。

　相手が猛進してくるわずかな時間を活用し、言葉に魔力を乗せる。

「《揺らめく紅蓮の大蛇よ！　我が魂の叫びに応え、いま灼熱の顎を開け！　フレイム・ヴァイパー！！》」

　火炎がうねるように形を成し、まるで炎の蛇がとぐろを巻きながらオークに襲いかかるかのようなイメージで放つ。
　
　ゴオォォッ……！
　
　炎の束縛がオークの体にまとわりつき、瞬く間にその醜い体躯を焼き尽くしていく。

　今度は完全にオークが防ぎきれないほどの威力だ。

「グガアアァァ……！」

　断末魔の叫びを上げながら、オークは地面に崩れ落ちる。

　身体からは黒煙が上がり、動かなくなった。
　
　……しばらく息を詰めたまま様子を見るが、もう立ち上がる気配はない。

　どうやら仕留めたらしい。

「はぁ、はぁ……やった……俺、勝ったんだ……」

　全身から力が抜け、尻餅をつく。

　危ないところだった。

　正直、あと一歩ミスれば返り討ちに遭っていたかもしれない。
　
　しかし、俺はこの世界で初めての“本格的な魔物との一騎打ち”に勝利した。

　ちょっと感慨深い。

　まさか早々に実戦が来るとは思わなかったが、エリシアの教えと、俺のユニークスキルがなければ絶対に無理だったはずだ。

　やがて呼吸を整え、俺は念のためオークの死体に近づき、脈動がないか確認する。

　完全に止まっているようだ。

「オークの魔石がどこかにあるはずだよな」

　オークの胸元や心臓付近を探ると、硬い結晶のようなものが手に当たった。

　魔物の体内に存在する“魔石”というやつだ。
　
　引っこ抜くと、ゴリゴリとした黒紫色の石が出てくる。

　これを冒険者ギルドに持ち込めば、お金になると聞いたことがある。

「まあ、一応初の大物撃破だし、家に持って帰ってみるか」

　正直、汚い。

　血と体液が混じったどろりとした液が垂れているし、オークの死体はそもそも臭い。
　
　そんな事を考えながら、俺は魔石を布に包み、鞄に入れる。

　そうして安堵の息をつき、馬車に戻ろうとしたその時――「おーい！　そこの人！」と遠くから声が聞こえた。