破滅確定の悪役貴族、【絶対快眠】スキルで最強魔法使いになったので、学園スローライフを満喫する

1章

第26話 冒険者ギルド到着――オーク討伐の大盛り上がり

　数時間ほど馬車を走らせ、昼下がりに俺たちは目的の街へ到着した。

　そこそこ大きな城壁に囲まれた都市で、門番が警戒態勢を敷いている。
　
　ソフィとキアラがギルドの場所を案内してくれたおかげで、馬車を宿屋の馬小屋に預けてから、すぐにギルドに着いた。

「ここがこの街の冒険者ギルド“レンブラント支部”よ。意外と大きいでしょ？」
　
　ソフィが得意げに胸を張る。

　なるほど、立派な二階建ての建物だ。

　外から聞こえてくる喧騒は、まるで酒場のように賑やかだ。
　
　扉を開けると、中はまさに酒場のような雰囲気――テーブルやカウンターがあり、装備を身に着けた冒険者らしき人々が飲んだり笑ったりしている。

　壁にはクエストの張り紙がびっしり。
　
　受付カウンターには美人の受付嬢らしき女性が数名、忙しそうに書類処理をしているようだ。

「ちわーっす、オーク討伐の報告に来たよ！」
　
　ソフィが大声で言うと、受付嬢の一人が「あら、ソフィさん」と顔を上げる。
　
　俺はその後ろに控えめに並んで、様子を伺う。

　キアラが隣に立ち、にこやかに微笑んでいる。

「で、オーク討伐なんだけどね……実際に倒したのは私たちじゃなく、この子なのよ」
　
　ソフィが後ろを振り返って俺を紹介した。

　俺は少し気まずいが、魔石入りの袋を受付に差し出す。
　
「ど、どうも。レオン・ラーザル・グランフィードと言います。オークに襲われて、仕方なく倒しただけなんですが……これ、魔石……です」

　受付嬢の目が驚きに見開かれる。
　
「グランフィード……って、貴族のお名前ですよね？　あの名門の……」
　
「まあ、色々あって……」

　さらに、オークが依頼対象になっていた個体と特徴が一致するらしく、周囲の冒険者たちが「おいオークを一人でやったのか！？」と声を上げて興味津々に集まってくる。
　
　酒場風のギルド内は、一気にざわついた。

「お兄さん、いきなり大物だな！」
　
「すげぇ、一人でそんな危険なことして大丈夫か？」
　
「いや、すごいわね。見た目はやわそうに見えるけど、なかなかやるじゃん」

　俺は浮足立ったムードに困惑しつつ、受付嬢に魔石を確認してもらう。
　
「確かにオークの魔石ですね。手配書の内容と大きさもぴったり。……お見事です。では、このクエスト報酬をお渡しいたしますわ」

　受付嬢が差し出した袋の中には、そこそこの金額が入っているようだ。

　ソフィいわく、オーク討伐依頼としてはかなりいい報酬らしい。

　おそらく、最近ここらで被害が大きかったため高めに設定されていたのだろう。

「お、おお……結構な金額だな。俺、こんな形でお金を稼ぐのは初めてだ」
　
　前世ではずっと病院だったのもあり、自力で稼いだ金はなんだか格別に感じる。
　
　周囲の冒険者から「おめでとう！」と冷やかし半分に祝福され、俺は若干照れながら報酬袋を受け取った。

　ここで済めばまだよかったのだが、ソフィは更なる提案をしてくる。
　
「ね、せっかくだからこの機会に冒険者登録もしちゃいなよ。貴族だろうが、自由に登録できるんだし」
　
「え……」
　
「手数料は安いし、何かと便利よ。学園に入ってからも、時々クエストを引き受けられるかもしれないし……」

　キアラも「そのほうが私たちもお仕事を依頼しやすいですしね」と目を輝かせる。
　
　完全に彼女たちのペースだ。

　俺は断ろうとしたが、「そんなに難しいもんじゃないから、一回試してみてよ」と懇願され、受付嬢に「ぜひ登録を！」と笑顔で押されてしまう。

「わかったよ、じゃあ登録だけな。俺、あんまり本格的に冒険する気はないけど……」
　
「よっしゃー！」
　
　ソフィはガッツポーズ、キアラはにこにこしている。

　なんなんだこの妙なテンションは。