破滅確定の悪役貴族、【絶対快眠】スキルで最強魔法使いになったので、学園スローライフを満喫する

空月そらら

文字の大きさ
62 / 73
1章

第62話 勝利の余韻――フローラとの会話

しおりを挟む
 リングから離れた所でフローラが駆け寄ってきた。

 うるんだ瞳で、少し言葉に詰まったようにしている。
 
「レオン……大丈夫? 怪我はない? すごく派手な魔法だったけど、あなたも無茶したんじゃ……」

「多少ダメージはあるけど、大したことない。むしろアークのスピードには冷や汗かいたよ。……でも、なんとかなった」

 俺が苦笑交じりに答えると、フローラはふうっと安堵の息を漏らす。
 
「よかった……。本当によかった。怖かったけど、あなたの魔法はすごく華麗だったし、アークの剣技も凌いで……。正直、息を呑んだわ」

 その言葉に、俺は微妙に照れくさい。

 とはいえ、実際にはギリギリの戦いだった。

 もう少しアークが冷静で、剣術を活かした戦術を取っていたら危なかったかもしれない。
 
 そして“絶対快眠”がなければ途中でバテていた可能性もある。

 俺にとってはまさに命綱だった。

「フローラのおかげでもあるよ。応援してくれたおかげで気力が出たし、何より普段一緒に剣術の練習をしてたから、近接でもそこまで遅れずに済んだ……」
 
「いえ、そんな……。でも、少しは役に立てたなら嬉しいわ」

 フローラがはにかむ。

 その笑顔を見ると、改めてこの学園に来て良かったと感じる。
 
 やがて観客が解散していき、教師から「お疲れ様。これで今回の模擬戦は終了だ。すぐに治療室へ行きなさい」と声をかけられる。
 
 俺は軽い負傷があるので、手当を受けるため保健施設に向かうことにする。

 フローラが付き添ってくれるそうだ。

「ねえレオン、アーク……これからどうなるのかな?」
 
「どうだろうな、もう絡んでこないでほしいけど……」

 俺がそう言うと、フローラは少し複雑な表情を浮かべる。
 
「そっか……うん、私もあの人の言動には疲れてたから、少し大人しくなってくれたらいいんだけど」

 ともあれ、俺はアークに勝利した。

 学院としても正式な模擬戦だったから、これでもう彼が文句を言う筋合いはないだろう。
 
 しかし、まだ油断はできない。

 原作でも悪役が一時的に敗れたあと、また別の陰謀を巡らせる展開があったような……。

 いや、考えすぎか?

「……まずは療養だな」

 そう言って、フローラと一緒に治療室へ向かう。

 今日は本当に疲れた。
 
 “絶対快眠”があるとはいえ、精神の消耗は大きい。

 学園行事もまともに受けられそうにないが、まあ一日くらい休んでもいいかもしれない。

 ★

 その日の夕方、簡単な治療を受けた俺は、いつも通り馬車で帰宅した。
 
 すでに父や母、兄姉にも決闘結果の情報が行き渡っていたらしく、玄関先で揃って出迎えてくれる。

「レオン、よく勝ったな!」
 
 父が珍しく笑みを浮かべている。

 父が機嫌よさそうなのは稀だ。

 どうやら家の評判を高めたことを喜んでいるようだ。

「そんなに大事だったんですか……?」
 
「当たり前だ。アークとかいう輩を打ち負かせば、グランフィード家の名にも箔が付く。……お前が強くなってくれて嬉しいぞ、レオン」

 素直に褒められると気恥ずかしい。
 
 母も「無事で何よりね。あまり怪我してない?」と心配してくれる。

 さほど深い傷はないと説明すると、ふうっと安堵の笑みを見せた。

 さらに兄ロイが肩をすくめながら笑う。
 
「お前、やるじゃねえか。俺も正直、アークってやつはもっと凄いかと思ってたけど……ふたを開けてみれば魔力普通の剣聖? 力任せの戦いしかできないんだな」
 
「いや、近接はかなり危なかったよ。あれがもう少し磨かれてたらどうなるかわからない」

「ま、勝ちは勝ちだ。……セレス、どう思う?」
 
 ロイが姉に振ると、セレスは「ふふ、まあ見直したわよ、レオン」と微笑する。

「昔はあんなに不貞腐れてたのに、今では勇者を打ち負かすなんて……成長したわね。あなたを見る目を改める必要があるわ」
 
「姉さん……ありがとう」

 こうして家族全員が俺の勝利を祝福してくれる。

 かつては想像もできなかった光景だ。
 
 その夜はささやかながら、祝杯代わりに美味しい食事が用意され、メイドや執事たちも温かく接してくれた。

 俺は心身ともに癒やされながら、一日を終える。

 ――あのアークがこのまま引き下がってくれたらいいのだけど。

 原作知識的には、勇者はしぶとい。しかし今は勝利の余韻に浸るとしよう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...