悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう

空月そらら

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序章

第5話 盗人と対峙

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「この建物か……」

 数時間前、俺は第三級魔法《アルカナクラス》を使い、レッドストーンがある場所を特定した。そして奴らがいる根城に辿り着いたわけだが。

 この辺りは人通りも少なく、静寂が支配する不気味な場所だ。

 こういう場所では何かの取引に使われていることが多い。

「さて、どうやって入ろうか」

 目の前の扉は、頑丈に鍵がかけられている。

 俺には鍵を開けるスキルは持ち合わせていないし、物理的に突破するしかないな。

「第四級魔法《ファイア》!」

 俺は片手を高く挙げ、炎の魔法を発動させる。

 燃え盛る炎は扉を一瞬で焼き尽くし、音を立てて道を開けた。

 その瞬間、俺の魔法に気づいたのか、数人が慌てて飛び出してくる。

「な、なんだ!? 一体何が起きた!?」

 フードを被った男が、驚愕の表情で叫ぶ。

 それも無理はない。

 突如として扉が燃え上がり、見知らぬ男が姿を現したのだから。

「突然お邪魔して悪いが、ここに赤い宝石の「レッドストーン」があるはずだ。そいつを俺にくれないだろうか?」

「それはちと無理な話だな。この宝石を取引することで、かなりの金額が貰えるんだよ。だから、お前はここで死んでもらう」

 俺にそう言い放ちながら、奴らは腰に付けた鞘から剣を抜き、こちらに刃先を向けてくる。

 全く愚かな行動だ。

 静かに渡してくれれば、見逃してやったのに。

「そうか……なら死んでくれ。」

 俺がそう言うと、奴らは身を前に傾け、剣を構えて突進してくる。

「おらぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「第三級魔法《エンシェント・ブリザード》!」

 冷気が俺の指先から放たれ、奴らは一瞬にして凍りつく。

 やれやれ、なんとも愚かだ。

「それじゃあ、部屋の中を見させてもらうぞ」
 
 俺は赤い宝石を探し求め、部屋の中を漁っていると、黒い箱が目に留まる。

 恐る恐るその箱を開けると、光り輝く宝石が姿を現した。

「よし、こいつを回収して早くここから離れなくては、「黒神」の奴らに見つかった面倒くさいしな」

 あいつらに見つかれば、間違いなく組織内で要注意人物として挙げられてしまう。

 そうなれば、これから始まる学園生活にも支障が出るかもしれない。

 早めにとんずらしないと。

 そんな不安を胸に抱きながら、俺は急いでこの場から離れるのだった。

 ★

 「あらら? 「レッドストーン」の取引先で来たのに、なんでこんなことになってるのよ~」

 私の目の前には、何者かによって凍らされた数人の人間がいる。

 まるで抵抗する間もなく、冷たい運命に飲み込まれたかのようだわ。

「様子を見る限り、突進した状態で凍らされたみたいね~。でも、こんな高度な魔法を誰が使ったのかしら?」

 冷気を操る魔法は、第三級魔法レベルからしか扱えない。

 つまり、ここを襲撃したのは第3級魔術師がいたということ。

「全く、面白い人間がいるのね~。まあ、私には敵わないだろうけど」

 私は「黒神」組織の一員、レード・ロイド。一応、戦闘員として名を馳せているが、元は暗殺者。

 暗殺者をやめた理由は簡単。

 「黒神」の方が報酬金が高いからよ。

「まあ、一応組織には報告しておいた方がいいわね。貴重なレッドストーンが奪われちゃったんだから。」

 私にとってはレッドストーンなんてどうでもいいんだけど、組織はあの宝石を欲しがっている。

 報告を怠れば、面倒なことになりかねないからね~。

「氷を使う魔術師、覚えておくわよ~。」

 そうして私は周囲を見渡し、暗闇にと身を潜めていくのだった。
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