悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう

空月そらら

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1章

第31話 伯爵からの依頼

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ここは冒険者ギルドの一角。

 今日の俺は冒険者であり、学園の貴族ではない。

 薄暗いギルドの一隅で、俺は心地よい椅子に身を沈めてくつろいでいると、ドアが開き、ユキ達が姿を現した。

 彼女の笑顔は、まるで朝日が差し込むように明るい。

「アレン! おはよー!」

 そう言って俺の元に来るのは、パーティーのリーダー、ユキだ。

 ユキの後ろには、まだ眠気を引きずっているルンとゴウがいる。

 2人とも目を擦りながら、なんとか前を向こうと必死だ。

 朝の光がギルドの中を優しく包む中、俺たちがここにいる理由は、依頼の関係上だ。

「アレン~眠くないの~?」

「もちろん眠いぞ、最近忙しいしな」

 俺は学園から任されたある事件について思いを巡らせる。

 それは魔法書が無くなっている事件だ。

 事件を解決するため、リザラがいなくなった後、アルカナクラスを駆使して転送場所を突き止めようとしたのだが、結局、王都周辺としか分からなかった。

 それもあって、考え込むうちに睡眠時間が削られて、やがて眠気に襲われていた。

「まあ、今回の依頼をこなせば、パーティーのランクが上がるのかもしれないんだろう?」

「ええ、しかもその依頼が伯爵家からの依頼だからね」

 俺たちのパーティーランクはB級だ。

 本来、伯爵家の依頼を受けるには高ランクが必須だが、この依頼を引き受けてくれる冒険者がいないとのこと。

 どうやら依頼の内容は早朝にしか出ない魔物の討伐らしく、かなり危険の為、引き受ける人が少ないとか。

 そこで依頼者は、B級の冒険者でも受けられるように条件を緩和したらしい。

 これは、ランクを上げたい者にとって、最高のチャンスだろう。

「でもかなり危ないんだよね~、霧が凄いらしいし、魔物がうじゃうじゃいるかも~」

「ああ、だがランクを上げるためには仕方ねえ!」

 ルンとゴウは依頼の話に夢中になっている。

 今回俺たちが向かうのは、魔法の森と呼ばれる場所で、早朝は濃い霧に包まれている。

 そんな危険な場所だが、俺たちの冒険心は高まる。

「早朝にしか出現しない魔物『ヤギン』を倒してドロップ品である角を入手するんだよな?」

「そうよ、ヤギンはA級の魔物だし、前回戦ったオークよりも強いけど、連携が上手くいけば勝てない相手ではないわ」

 ユキの言葉には自信が溢れている。

 確かにこのパーティーの組み合わせは悪くない。

 連携を駆使して戦えば、勝利を手にできると思う。

 だが、いざとなれば俺が魔法でサポートするつもりだ。

 このパーティーはまだまだ成長できると信じているから、俺が最初から魔法で倒してしまうわけにはいかない。

 だから、様子を見ながら戦うつもりでいる。

 そんなことを考えていると、ユキが受付嬢の元へ向かい、依頼書の受理をしに行く。

「そういえばルン、第六級魔法を覚える事は出来たか?」

「た、多少はね~、この前貰ったお金で魔法書を買って読んでみたけど、少し時間が掛かりそうかな~」

「そうか、ゴウは良い武器が買えたか?」

「おう! 新品の剣を買えたぜ! しかもかなり刃先が良くてな、どんな魔物でも切れそうだ」

 そう言ってゴウは、自慢の剣を俺に見せてくれる。

 耐久性もありそうで、刃の精度も抜群だ。

 ゴウの笑顔が、その良い買い物を物語っている。

 俺はルン、ゴウと軽く雑談をしていると、ユキが依頼書を受理したようで、駆け足で俺たちのところに戻ってくる。

「依頼書の受理が出来たし、馬車の手配をしてくれてるらしいから移動しよっか」

 そうして俺たちは冒険者ギルドから出て、手配された馬車に乗り込むのだった。
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