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エリシオン学園編
第135話 僕のお姉ちゃんを知ってる?
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「リウス!」
その声に、僕は思わず肩を跳ねさせた。
くるりと振り向けば、向こうから駆け寄ってくるのは、あの赤髪の少女――ルージュだった。
軽やかに揺れるポニーテールと、弾むような足取りが、まるで春風みたいに明るくて、つい僕の口元も緩む。
「久しぶり! ブルーヘイブン以来だね!」
「うん、元気そうでよかったよ、ルージュ」
思わず僕の声にも嬉しさがにじんでしまう。
あの港町での一件以来、無事に入学式で再会できたことが、どこか心を温かくしてくれる。
「ふふっ、リウスにまた会えると思ってなかったから、すっごく嬉しいよ。あ、それでね、ちょっとだけ火属性の魔法が使えるようになったの! まだ火花みたいな小さなやつだけど……!」
「すごいじゃん! 僕も水以外を少しずつ練習してるところ」
そうやって他愛もない話を交わしながら、僕たちは並んで廊下を歩く。
先ほどのざわついた教室から少し距離を取りながら、のんびりとした時間を楽しんでいた。
けれど、その空気がふと変わる。
「……ん?」
気配を感じて、僕は視線を前にやった。
すると、窓際の柱にもたれかかるようにして目を閉じていた少女が、ふいに瞼を開く。
……黒髪に、深い漆黒の瞳。
そして、澄ましたような表情で、こちらに歩いてくる少女。
レインだ。
僕の背筋に一筋の冷汗が流れる。
あの笑顔――教室で僕と目を合わせたときと、同じ微笑みを今も浮かべている。
だが、どこか目の奥が笑っていないような気がして、僕は喉を詰まらせそうになる。
「こんにちは、リウスくん。……それに、あなたも」
「ひ、ひゃいっ……!」
びくっとしたのは、隣のルージュだった。
どうやら、目の前の特待生にかなり緊張しているようだ。
対して僕は、背後に雷でも落ちたような気分で、何とか言葉を返す。
「ど、どうも……。その、レインさん、何で僕の名前を知っているの?」
「まあ、噂程度ね。そんなに畏まらなくていいのに。私たち、同じクラスだし」
そう言って、レインは一歩、僕の方へと近づいてくる。
やばい。
このままだと、話しかけられた流れで、原作イベントに突入してしまうかもしれない……!
(冷静になれ、僕……ここで『平民のくせに』とか『身分を弁えろ』なんて原作どおりに口走ったら、確実に詰む……)
……だがレインは、そんな僕の焦りをよそに、まるで探るように言葉を重ねた。
「あなたって、辺境伯のご子息なんでしょ?」
「うん、そうだよ」
「ふふ。いつか、貴方のお姉さんにも挨拶したいわ」
その声に、僕は思わず肩を跳ねさせた。
くるりと振り向けば、向こうから駆け寄ってくるのは、あの赤髪の少女――ルージュだった。
軽やかに揺れるポニーテールと、弾むような足取りが、まるで春風みたいに明るくて、つい僕の口元も緩む。
「久しぶり! ブルーヘイブン以来だね!」
「うん、元気そうでよかったよ、ルージュ」
思わず僕の声にも嬉しさがにじんでしまう。
あの港町での一件以来、無事に入学式で再会できたことが、どこか心を温かくしてくれる。
「ふふっ、リウスにまた会えると思ってなかったから、すっごく嬉しいよ。あ、それでね、ちょっとだけ火属性の魔法が使えるようになったの! まだ火花みたいな小さなやつだけど……!」
「すごいじゃん! 僕も水以外を少しずつ練習してるところ」
そうやって他愛もない話を交わしながら、僕たちは並んで廊下を歩く。
先ほどのざわついた教室から少し距離を取りながら、のんびりとした時間を楽しんでいた。
けれど、その空気がふと変わる。
「……ん?」
気配を感じて、僕は視線を前にやった。
すると、窓際の柱にもたれかかるようにして目を閉じていた少女が、ふいに瞼を開く。
……黒髪に、深い漆黒の瞳。
そして、澄ましたような表情で、こちらに歩いてくる少女。
レインだ。
僕の背筋に一筋の冷汗が流れる。
あの笑顔――教室で僕と目を合わせたときと、同じ微笑みを今も浮かべている。
だが、どこか目の奥が笑っていないような気がして、僕は喉を詰まらせそうになる。
「こんにちは、リウスくん。……それに、あなたも」
「ひ、ひゃいっ……!」
びくっとしたのは、隣のルージュだった。
どうやら、目の前の特待生にかなり緊張しているようだ。
対して僕は、背後に雷でも落ちたような気分で、何とか言葉を返す。
「ど、どうも……。その、レインさん、何で僕の名前を知っているの?」
「まあ、噂程度ね。そんなに畏まらなくていいのに。私たち、同じクラスだし」
そう言って、レインは一歩、僕の方へと近づいてくる。
やばい。
このままだと、話しかけられた流れで、原作イベントに突入してしまうかもしれない……!
(冷静になれ、僕……ここで『平民のくせに』とか『身分を弁えろ』なんて原作どおりに口走ったら、確実に詰む……)
……だがレインは、そんな僕の焦りをよそに、まるで探るように言葉を重ねた。
「あなたって、辺境伯のご子息なんでしょ?」
「うん、そうだよ」
「ふふ。いつか、貴方のお姉さんにも挨拶したいわ」
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