無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~

空月そらら

文字の大きさ
29 / 72
1章

第29話 アリスと手を組む アデル視点

しおりを挟む
「くそ、どうしてだよ」
 
 僕は第二王子、アデル・レット・ハーキムだ。
 
 今僕はクラスの隅っこで一人、考え事をしている。
 
 僕は昨日、ロランに魔法対戦で負けた。
 
 多くの貴族が見ている中でだ。

 昨日の敗北により、貴族からの評価がかなり下がってしまった。
 
「このままじゃ、まずいな……」
 
 僕はそう呟く。
 
 このままでは王位を継ぐどころか、他の貴族にすら見下されてしまう。

 それは絶対に嫌だ。
 
 だが……僕は昨日の事を思い出すと、恐怖で体が震えてくる。

 ロランの《火槍》が脳裏に焼き付いて離れない。
 
 あの《火槍》の当たり所が悪かったら、きっと僕は死んでいただろう。
 
「なんであいつが上級魔法を使えるんだ?」

 上級魔法をロランが使えるなんて、原作には無かったはずだ。
 
「だが、僕はまだ負けた訳じゃない」
 
 そう、まだ勝負が決まったわけじゃない。

 実は先ほど教師がダンジョンの話を持ち出した。
 
 この学園の近くにダンジョンが発見されたらしい。
 
 そのダンジョンはかなり難易度が高いと噂されている場所であり、多くの魔物が生息しているとのこと。
 
「はははは! 僕はなんて運がいいんだ。 前世で僕はこのダンジョンを何回も攻略したことがあるからな!」
 
 原作で何回も攻略している僕からしたら、ダンジョンなど朝飯前だ。

 それに、このダンジョンはお目当ての物がある場所でもある。

 ダンジョンに眠っているお宝には魔王と戦う為の素材がある。
 
(素材を入手できれば、僕の評価はうなぎのぼりだろう)
 
 最強の装備を身に纏い、貴族からの評価をうなぎのぼりにさせる。
 
「なんて最高の計画だ!」
 
 僕は思わずそう叫んでしまった。

 そして僕はすぐに行動を開始する。

 ダンジョンを攻略するにはメンバーを集めなきゃいけない。
 
 ダンジョンは危険な為、最低でも数人は手練れが必要だ。

 いくら実力者の僕でもやられかねないからな。
 
「何の用かしら、アデル」
 
 僕が声を掛けたのは、第二王女、アリス・レット・ハーキム。

 アリスは美しい金髪に、整った顔立ちをしている。

 そして何より、その気高い態度が素晴らしい。

 アリスの高貴さには誰も敵わないだろう。

 「僕とダンジョン攻略をしないか?」
 
 僕はアリスにそう提案する。
 
「私が、あなたと一緒にダンジョン攻略をしろと?」
 
 アリスは呆れた表情で僕にそう言ってくる。

 おそらく昨日の魔法対決で僕が負けたからだろう。

 アリスからの評価が下がっているとまずいな。

 僕はそう考え、すぐにアリスに返答する。
 
「僕は今回のダンジョンのマップを理解している。それに魔物の種類や行動もだ。どうだ、役立つだろう?」
 
 僕はそうアリスに返す。

 だがアリスは怪しんだ表情をしているので、僕は追い討ちを掛けるかのように、アリスに話を続ける。
 
「昨日の戦いを見てロランがどれだけ脅威なのかはわかっただろう?」

 「確かに、ロランの実力は計り知れなかったわ。当たり前のように上級魔法を使えるし」
 
 アリスはやっと僕に理解を示し始めた。

 今がチャンスだ。
 
 僕はそう考え、アリスに話を続ける。
 
「怪しまれるのも分かる。だけど、ここでロランの勢いを削いでおくのは悪くない考えだと思わないかい?」
 
 僕はあえてこんな言い回しでアリスに問う。
 
 そう、これは今後王位を争うアリスに取っては、ロランをどうにかしなければいけない。
 
 ここで僕と共にダンジョン攻略をすれば、2人の評価も上がる。

 ロランを蹴落とし、評価を上げるのはアリスにとっては悪くないはずだ。
 
 するとアリスは少し考え込んだ後に、口を開く。
 
「いいわ。その誘い、乗ってあげる。その代わり、もしマップが違ったりしたら容赦はしないわよ?」
 
「分かってるさ」
 
 アリスはそう言って僕と共にダンジョン攻略をすることを了承してくれた。

 アリスは今のロラン以上に魔力数を持っており、この学園でトップクラスの実力者だろう。

 アリスさえいればこの攻略も余裕だ。

 僕はそう思いながら、ダンジョンを攻略する為の準備に取り掛かるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

処理中です...