無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~

空月そらら

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1章

第30話 リアの治癒魔法

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「ロランお兄様、お話があります」
 
 ここは執務室。

 俺はダンジョンの攻略に向けての計画を考えていると、リアが扉をノックし執務室の中に入ってくる。
 
「どうした、リア」
 
 俺はそう聞き返してしまう。

 いきなりどうしたんだろうか?

 俺がそう思っていると、リアは口を開く。
 
「私、治癒魔法を覚えたいのですが……どうやっても習得することができなくて」
 
 リアは俺に対してそんな相談をしてくる。

 確か原作だとリアは治癒魔法を使いこなし、回復役として活躍している。

 リアは元々治癒魔法の適正がかなり高く、他の生徒を圧倒する位の成長を見せていた。
 
「俺もあまり治癒魔法は得意じゃないけど、それでもいいか?」
 
 治癒魔法はかなり高度な魔法で、コツを知らないと習得は難しい。

 俺もそこまで得意という訳じゃないが、コツぐらいなら教えてやれない事もない。
 
「はい! ロランお兄様が教えてくれるなら、頑張ります!」
 
 リアは嬉しそうにそう答える。
 
「それじゃあ、庭に行くとするか」
 
 俺がそうリアに提案すると、リアは頷いてくれる。
 
 そして俺は治癒魔法をリアに教えるために、執務室を出るのだった。



「リアはどこまで治癒魔法を勉強した?」
 
 俺はリアにそう質問する。
 
「一応《ヒール》という存在は知っています。でも、それ以上は……」
 
 リアは申し訳なさそうにそう答える。

 本来、治癒魔法は魔法学校の2年生あたりで習う魔法だ。

 独学だと学ぶのに限界があるだろう。

 俺でさえもトン爺から教わったのだ。
 
「まずヒーリングローズっていう花があるんだが、それに魔力を注ぎながら、治癒魔法をイメージするんだ」
 
 俺はリアにそう説明しながら、ヒーリングローズを鞄から取り出す。
 
 ヒーリングローズはその名の通り、傷を癒す効果のある花だ。

 その花に治癒魔法を使っていければ、自然と治癒魔法を取得できるだろう。
 
「は、初めてなので上手くできるか分かりませんが……」
 
 リアはそう言ってヒーリングローズに向かって手をかざす。

 すると、リアの手から優しい光が放たれる。
 
「す、すごい!」
 
 リアは興奮するように、ヒーリングローズの魔力を注ぎ込んでいく。

 やはりリアは治癒魔法と相性が良さそうだ。

 おそらく魔力を注ぎ込むイメージを持っていなかったのだろう。

 ヒーリングローズ以外だと魔力は注ぎ込みづらいからな。

 そう思っているとヒーリングローズは徐々に芽が出て、茎が伸びていく。
 
 その茎の先には可愛らしい桃色の花が咲き、それに感動したのかリアはその花に見惚れている。

 「ロランお兄様! 花が咲きました!」
 
 そう言ってリアは俺の元に駆け寄ってくる。

 リアの微笑みはとても可愛らしく、まるで天使のようだ。
 
「流石はリアだな。この調子でどんどん練習していこう」
 
 俺はそう言ってリアに微笑む。
 
「はい! ダンジョン攻略までに治癒魔法を使えるようになります!」
 
 リアはそう言って、再びヒーリングローズに向かって手を向ける。

 俺はそんなリアを微笑ましく思いながら、リアの治癒魔法を見続けるのだった。
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