異世界での異生活

なにがし

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1話 それぞれの世界の女と男

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 無数に連なるパラレルワールド、その中の一つの世界の出来事。

 ある街付近の森の中、肉食の恐竜に似た生き物が狩りをしていた。それは、その世界ではアースドラゴンと呼ばれ最強種に含まれる。
 ドラゴンは食材を握りしめ、それを口の中に入れようとしていた。だが、口を開けるとその食材から大きな水の球が出現し口の中に入っていく。
 ドラゴンには、口に何かが入ると閉じて飲み込んでしまい、消化できないものは吐き出す習性がある。なので、水を飲み込んでしまう。
 水を飲み込み、再び大口を開け握りしめたものを口の中に誘引する。
 水の球が出現し、口の中に入っていく。
 本能で飲み込む。…その繰り返しを何度も続けていた。

「このー、トカゲー。いい加減、放しやがれ」

 食材は、人間の女性のようだ。下半身を強く握られ動けないようだが、手と口は自由にできる。
 そのため、悪態をついたり、魔法を使ったりして抵抗する。その女性は、魔法によって水の球を作っていた。
 水球攻撃は、単純にドラゴンに水を与えているようにしか見えない。しかし、続けていると意外にも効果があった。
  
「ゲェェェェ」

 ドラゴンお腹は水で満たされ、限界値を超える。逆流する水を抑えきれずに吐きだし始めた。
 
「ゲェェェェ。ゲェェェェ」

 一旦、吐きだし始めると、もう抑えきれない。次から次へと込み上げてくる水をドラゴンは止める事ができなくなっていた。

「汚ねーな」

 吐きだした水が、シャワーとなって食材を洗い流す。食材の衣服や髪の毛は大量の水分を含み、そこから異臭が漂い始める。
 ドラゴンは耐え切れず食材を地面に叩きつけ、立ち止まっては吐きながら、走って森の奥へ逃げていった。

「いてー」

 女性は地面に転がり落ちた。長時間握られて、下半身が痺れて動けない。さらに、びしょ濡れで悪臭がする。だが、その悪臭のおかげで近くに潜む魔物や動物が近づいてこない。

「ざまーみろ。トカゲめ」

 女性は、その場で横になり動けるようになるのを待った。動けるようになると起き上がり、身体の各関節を動かし異常がないか確認した。これといって、問題ないと思う。念の為、自身に治癒魔法をかけて街に帰る事にする。

──なにか、どこかがおかしい気がする。早く家に帰りたいけど、臭いな。水浴びするのが先だな。

 そう思いながら、ドラゴンとは反対方向の森の中へ消えていく。


 無数に連なるパラレルワールド、その中の一つの世界の出来事。

ある街のある地域のバス停に最終のバスが到着した。バスは一人の男を降ろしたら、走り去っていく。

「あぁ、くそ」

 バスから降りて目についた小石を男は蹴り飛ばそうとする。だが、綺麗に空振りして足を振り上げた勢いで、そのままに転びそうになる。

「いててて」

 男は転ばないよう踏ん張った。おかげで転ばなかったのだが、その時、変なところに力が入ってしまった。その結果、その変なところが痛くなったのだ。おそらく2日くらい後、その変なところが本格的に痛くなり、男は何故そこが痛いのか分からなく首を傾げる事になるだろう。

「よう、おっさん。いい夜だなぁ。ほんで、大丈夫かぁ?」

 知らない酔っ払いに見られていたのを知った男は、耳まで赤くなる。酔っぱらいに手を左右に振って見せ、大丈夫と知らせて足早にその場を去った。
 そして、男は恥ずかしさを忘れると、怒りが再燃する。

「なんで俺がこんな時間まで一人で残業しなきゃならないのだ。そもそも役定になったら前線から後退して、定時まで悠々と仕事するのが普通じゃないか」

 男は昨年、役職定年を迎え課長職を失い無役の社員つまり平社員になった。その場合その会社では、若手社員の指導やサポートなどをして残り数年の仕事を悠々として良い。だが、この男はまだまだやれると上層部に訴え、自らの意思で前線に残った。
 今は、元部下の部下になって働いている。

「そもそもあいつら、俺の仕事を一切手伝おうとしない。俺が高卒だからって見下しているのか?」

 男は卒業後、機械メーカーに就職し結婚することもなく仕事一筋で生きてきた。おかげで課長にまで昇進できたのだが、高卒が劣等感となり、ひねくれた性格なってしまう。性格そのままに、ひねくれた言いようしかできず、これを後輩達は面倒に思っていた。

「役定になっても仕事ができる俺に、嫉妬しているのだろう。まったく、先輩をたてろ。老人をいたわれだ」

最近この言葉を、事あるごとに言うようなっていた。


「おっ?まだ完成じゃねぇの?」

 急に機嫌が良くなったのは、建設中の市営体育館のおかげ。毎日、体育館が完成していく様子を見るのが楽しみになっていた。
 すでに完成しているように見えるのだが、建物周囲にはまだ足場が組まれたままだ。男は、いつも通り工事現場の工事用フェンスに沿った歩道を歩く。

──ビュウゥゥゥゥ。

 突然、強風が吹いた。男は立ち止まり、風が止むのを待った。
 風にあおられた足場がグラグラと揺れ始め、少しずつ傾き始める。パキンと何かが弾ける音がすると、足場の部品が一つまた一つと落ち始める。そして、耳障りで大きな音が周囲に響き渡る。
 崩れた足場の部品が次々とフェンスに落ちていき、フェンスは逆“L”の字に変形した。部品は男にも落下してきたのだが、フェンスの変形した部分が男の屋根になって直撃を防いだ。だが、次から次へと落ちてくる部品の重さにフェンスは耐えきれず、男を巻き込んで地面に横たわる。さらに部品や別のフェンスが横たわるフェンスの上に乗り、地面に押し付けられ、ますます変形していく。
 まだ工事現場の詰所に残っていた人達が飛びだしてきて、この光景に驚愕していた。

「大丈夫ですか?ケガをされた方はいませんか?」

 そう声をかけ、ケガ人を探す者。関係各所に連絡する者。懐中電灯で辺りを照らし現状を把握している者。それぞれが役割をこなしていた。
 その中の数人が長くて大きいバールを持ってきた。バールを地面とフェンスの間に入れて、テコの原理でフェンスを持ち上げようとする。

──せーの。

 そう声をかけると男達が全体重をバールに乗せた。フェンスが少しだけ浮くのを見ると、別の男が頬を地面にこすりつけながら、できた隙間から懐中電灯で中を照らし覗く。

「どうだ?人に限らず、靴とか鞄とか人が身につけているものも見逃すなよ」
「はい。…大丈夫、何もありません。瓦礫しか見えないです」
「よし。次だ」

──おう。

 これを繰り返し倒れたフェンスを一周した。

「よーし。みんなご苦労。人がいなくて良かった。みんな少し、休憩してくれ」

 捜索が終了し、作業員達は安堵し身体を休めた。
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