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5.転移者
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「俺は、たぶん…違う世界からきた。」
それを聞くと表情が変わり、立ち上がる。そのまま振り返り部屋の隅にある本棚まで急ぎ歩く。
そして、一冊の本を取り出し、机の上でめくり始めた。
「組合長、どうしたのです?」
組合長の突然の行動にシンシアは戸惑い、何事かと歩み寄った。
「この者が言っていること。嘘じゃないかもしれん。あった。」
めくっていた手を止め、人差し指で文字を追いながらすごい速さで読んだ。
「シンシア、これを見てくれ。」
指を止め、本の内容をシンシアに見せる。
「異世界人転移事象?? 何ですか?これ。」
シンシアの眉間にしわがより、片方の眉があがる。
「昔から、自分は別の世界からやってきたと主張する者がいる。その者達を研究した報告書がこれだ。なにか当てはまる点があるかもしれん。シンシア、紐を解いてやれ。」
「えぇぇ。…分かりました。」
シンシアは、露骨に嫌な顔をしながら、渋々ヤスオの紐を解いた。
「そこに座ってください。」
手でソファーを指す動作をして、ヤスオとシンシアにソファーに座るよう求める。
「ほげー。」
正座をしていたせいで、足が痺れて立ちあがれない。しかも、縛られていたせいで、手も痺れていた。
両手、両膝を床についた姿勢のまま動けなくなった。
組合長は気にせず、机から紙と羽ペンとインクをテーブルへ運んでいく。
(あの足を羽ペンで、つつきたい。)
シンシアは恐ろしい誘惑に駆られていたが、組合長の手前、行動を起こすことができない。
しかたなく、机から報告書を持ってソファーに座り、読むことにした。
ヤスオは何とか立って、ソファーまで歩く。足を出すたびに痺れがきた。
そのため、不格好な歩きになり、二人の笑いを誘う。
笑いをこらえる二人をしり目に、なんとか目的地に到着し座った。
「では、この紙に“私は異世界人です”と書いてくれ。」
組合長は、紙と羽ペンとインクをヤスオの前に置いた。
ヤスオは初めて使う羽ペンと少し残る手の痺れに苦労しながら書いていく。
いびつだが、なんとか書きあげた。
ヤスオは達成感に浸っていたが、シンシアは、その字を見て疑った視線を向ける。
「あなた、何を書いているの?」
組合長はシンシアから報告書を取りあげ、ページをめくった。
「見ろ、シンシア。」
紙を反転させ、本に書いてある何かとヤスオが書いた字を見比べていた。
「同じ?」
「ああ、同じだ。つまりこのかたは異世界の人だ。シンシア、俺達はとんでもない濡れ衣をこの人に着せたようだぞ。」
シンシアは茫然としていて、整理がつかない様子。
「すぐに職員用の制服と靴を用意して、この方に差しあげなさい。それと、測定水晶も頼む。」
シンシアは混乱したまま部屋を出ていった。
──コン、コン。
「失礼します。」
しばらくして、先ほど小瓶を持ってきた女性職員が制服と靴を持って入ってきた。
「これでよろしいでしょうか?」
報告書を読んでいた組合長が、手を止め確認をする。
「ああ。サイズも合うだろう。ヤスオさん、この者はアガサという。女性職員のリーダーだ。アガサ、こちら異世界人のヤスオさんだ。」
突然、友好的に自己紹介を始めたのでヤスオは戸惑った。
アガサは驚くことなく、持ってきた衣服をヤスオの前に置く。
「異世界の人。ああ、それで荷物がなかったのですね。‥アガサです。よろしくお願いいたします。」
アガサは姿勢よく、深々と頭を下げた。
「タナカ ヤスオです。よろしく・・あっ!」
立ち上がり頭を下げようとするが、腰の布が落ちてしまった。
自身のエクスカリバーを公開してしまい、慌てて布を拾い隠す。
アガサは聖剣を含むすべてを見ていたが、眉ひとつ動かさずまったく動じなかった。
「それでは、失礼します。」
顔を真っ赤にしたヤスオを横目に、何事もなかったかのようにアガサは部屋を出ていった。
その隙に、急いで衣服を着る。
服を着ていたら、シンシアが水晶を持って戻ってきた。
シンシアは組合長の隣に座り、水晶を持ってきたことを伝える。
ヤスオは二人の正面に座り、何が起こるのか事態を待った。
組合長が報告書を読みふけっているので、しばらく沈黙が続く。
「もう組合長。私には何が何だか分かりません。説明して下さい。」
沈黙に耐えきれず、シンシアが口を開いた。
「そう言うな。わたしも、まだ整理がついておらん。ヤスオさんの考えを聞かせて欲しい。」
報告書から目を離すことなく返事する。
「俺は、アリ姉さんと入れ代わったと考えています。」
その言葉に報告書を読むのをやめ、組合長は顔を上げた。
「つまり、ヤスオさんがこの世界にきた代わりに、アリアドネ様がヤスオさんの世界に行ったと。」
この時ヤスオは、アリ姉さんがアリアドネという名前なのだと知った。
「はい。」 「それは考えにくいですね。それだと衣服だけ残して肉体だけ移動したことになります。肉体が転移できて、衣服が転移できない理由がない。仮に肉体だけ転移したとしても裸のはずだ。相手の衣服を身につけているのはおかしい。」
「今までの転移者は服を着ていたのですか?」
「ああ。変わった服を着ていたそうだ。」
「ならばどういうことでしょう。俺はなぜ裸で転移し、アリアドネ様はどこに行ったのでしょう?」
ヤスオは報告書の内容が気になる。
そこで覗いてみたが、字が読めず何が書いてあるのか分からなかった。
「ヤスオさんは元の世界では、何をされている時に転移されたのですか?確か“びょう‥いん”と言う場所にいたのですよね。“びょう‥いん”とは何ですか?」
(なるほど。先程の液体の様に簡単にケガの治療ができるから。)
この世界に病院がないのだと思った。
「病院とはケガや病気になった人を治療する場所です。俺は事故に巻き込まれ病院のお世話になっていました。転移したのは、おそらく俺が死んだからだと思います。」
それを聞いた組合長の顔色が変わった。
「待って下さい。ヤスオさんは元の世界では、お亡くなりになったのですか?」
「おそらく。」
「だったらそれは、転移ではなく転生じゃないですか。転生は、あるかもとの予測だけで、組合での報告は1件もありません。他でも聞いたことがありません。どおりで報告書を読み返しても、分からないはずです。」
組合長はしばらく考え込んだ。だが、考えがまとまらず何も分からないようだ。
「話は変わりますが、ヤスオさんは元の世界で神に会ったことはありますか?」
──はぁ?そんなのあるわけない。
ビックリの質問である。
「いえ。会ったことはありません。元の世界では神は実在しません。‥たぶん。」
「やはりそうでしたか。この世界では神が存在します。アリアドネ様がまさにそれです。」
──えぇぇぇ!
ヤスオは神が実在する事に驚いた。
それを聞くと表情が変わり、立ち上がる。そのまま振り返り部屋の隅にある本棚まで急ぎ歩く。
そして、一冊の本を取り出し、机の上でめくり始めた。
「組合長、どうしたのです?」
組合長の突然の行動にシンシアは戸惑い、何事かと歩み寄った。
「この者が言っていること。嘘じゃないかもしれん。あった。」
めくっていた手を止め、人差し指で文字を追いながらすごい速さで読んだ。
「シンシア、これを見てくれ。」
指を止め、本の内容をシンシアに見せる。
「異世界人転移事象?? 何ですか?これ。」
シンシアの眉間にしわがより、片方の眉があがる。
「昔から、自分は別の世界からやってきたと主張する者がいる。その者達を研究した報告書がこれだ。なにか当てはまる点があるかもしれん。シンシア、紐を解いてやれ。」
「えぇぇ。…分かりました。」
シンシアは、露骨に嫌な顔をしながら、渋々ヤスオの紐を解いた。
「そこに座ってください。」
手でソファーを指す動作をして、ヤスオとシンシアにソファーに座るよう求める。
「ほげー。」
正座をしていたせいで、足が痺れて立ちあがれない。しかも、縛られていたせいで、手も痺れていた。
両手、両膝を床についた姿勢のまま動けなくなった。
組合長は気にせず、机から紙と羽ペンとインクをテーブルへ運んでいく。
(あの足を羽ペンで、つつきたい。)
シンシアは恐ろしい誘惑に駆られていたが、組合長の手前、行動を起こすことができない。
しかたなく、机から報告書を持ってソファーに座り、読むことにした。
ヤスオは何とか立って、ソファーまで歩く。足を出すたびに痺れがきた。
そのため、不格好な歩きになり、二人の笑いを誘う。
笑いをこらえる二人をしり目に、なんとか目的地に到着し座った。
「では、この紙に“私は異世界人です”と書いてくれ。」
組合長は、紙と羽ペンとインクをヤスオの前に置いた。
ヤスオは初めて使う羽ペンと少し残る手の痺れに苦労しながら書いていく。
いびつだが、なんとか書きあげた。
ヤスオは達成感に浸っていたが、シンシアは、その字を見て疑った視線を向ける。
「あなた、何を書いているの?」
組合長はシンシアから報告書を取りあげ、ページをめくった。
「見ろ、シンシア。」
紙を反転させ、本に書いてある何かとヤスオが書いた字を見比べていた。
「同じ?」
「ああ、同じだ。つまりこのかたは異世界の人だ。シンシア、俺達はとんでもない濡れ衣をこの人に着せたようだぞ。」
シンシアは茫然としていて、整理がつかない様子。
「すぐに職員用の制服と靴を用意して、この方に差しあげなさい。それと、測定水晶も頼む。」
シンシアは混乱したまま部屋を出ていった。
──コン、コン。
「失礼します。」
しばらくして、先ほど小瓶を持ってきた女性職員が制服と靴を持って入ってきた。
「これでよろしいでしょうか?」
報告書を読んでいた組合長が、手を止め確認をする。
「ああ。サイズも合うだろう。ヤスオさん、この者はアガサという。女性職員のリーダーだ。アガサ、こちら異世界人のヤスオさんだ。」
突然、友好的に自己紹介を始めたのでヤスオは戸惑った。
アガサは驚くことなく、持ってきた衣服をヤスオの前に置く。
「異世界の人。ああ、それで荷物がなかったのですね。‥アガサです。よろしくお願いいたします。」
アガサは姿勢よく、深々と頭を下げた。
「タナカ ヤスオです。よろしく・・あっ!」
立ち上がり頭を下げようとするが、腰の布が落ちてしまった。
自身のエクスカリバーを公開してしまい、慌てて布を拾い隠す。
アガサは聖剣を含むすべてを見ていたが、眉ひとつ動かさずまったく動じなかった。
「それでは、失礼します。」
顔を真っ赤にしたヤスオを横目に、何事もなかったかのようにアガサは部屋を出ていった。
その隙に、急いで衣服を着る。
服を着ていたら、シンシアが水晶を持って戻ってきた。
シンシアは組合長の隣に座り、水晶を持ってきたことを伝える。
ヤスオは二人の正面に座り、何が起こるのか事態を待った。
組合長が報告書を読みふけっているので、しばらく沈黙が続く。
「もう組合長。私には何が何だか分かりません。説明して下さい。」
沈黙に耐えきれず、シンシアが口を開いた。
「そう言うな。わたしも、まだ整理がついておらん。ヤスオさんの考えを聞かせて欲しい。」
報告書から目を離すことなく返事する。
「俺は、アリ姉さんと入れ代わったと考えています。」
その言葉に報告書を読むのをやめ、組合長は顔を上げた。
「つまり、ヤスオさんがこの世界にきた代わりに、アリアドネ様がヤスオさんの世界に行ったと。」
この時ヤスオは、アリ姉さんがアリアドネという名前なのだと知った。
「はい。」 「それは考えにくいですね。それだと衣服だけ残して肉体だけ移動したことになります。肉体が転移できて、衣服が転移できない理由がない。仮に肉体だけ転移したとしても裸のはずだ。相手の衣服を身につけているのはおかしい。」
「今までの転移者は服を着ていたのですか?」
「ああ。変わった服を着ていたそうだ。」
「ならばどういうことでしょう。俺はなぜ裸で転移し、アリアドネ様はどこに行ったのでしょう?」
ヤスオは報告書の内容が気になる。
そこで覗いてみたが、字が読めず何が書いてあるのか分からなかった。
「ヤスオさんは元の世界では、何をされている時に転移されたのですか?確か“びょう‥いん”と言う場所にいたのですよね。“びょう‥いん”とは何ですか?」
(なるほど。先程の液体の様に簡単にケガの治療ができるから。)
この世界に病院がないのだと思った。
「病院とはケガや病気になった人を治療する場所です。俺は事故に巻き込まれ病院のお世話になっていました。転移したのは、おそらく俺が死んだからだと思います。」
それを聞いた組合長の顔色が変わった。
「待って下さい。ヤスオさんは元の世界では、お亡くなりになったのですか?」
「おそらく。」
「だったらそれは、転移ではなく転生じゃないですか。転生は、あるかもとの予測だけで、組合での報告は1件もありません。他でも聞いたことがありません。どおりで報告書を読み返しても、分からないはずです。」
組合長はしばらく考え込んだ。だが、考えがまとまらず何も分からないようだ。
「話は変わりますが、ヤスオさんは元の世界で神に会ったことはありますか?」
──はぁ?そんなのあるわけない。
ビックリの質問である。
「いえ。会ったことはありません。元の世界では神は実在しません。‥たぶん。」
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ヤスオは神が実在する事に驚いた。
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