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88.対決
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「これの、元の姿は馬車ですかね?」
(おそらく、そうね。マリナが乗っていた物じゃないかしら。)
「では、この血痕は馬と人さらい達ですか。」
(たぶん。)
「ここから、あの森まで逃げたのか。結構あるな。よく子供の足で逃げられたな。」
(見逃したのよ。馬と大人2人食べれば、さすがに満腹になるでしょう。)
残骸から、車輪のような物や、3つに別れた車軸のような物があり、かろうじて元の形が想像できた。人と馬に関しては残骸が見当たらず、血痕が残っていなければ被害がなかったのではと思ってしまう。
「何も、残っていませんね。骨や髪の毛くらいあってもいいと思うのですが。」
(強靭な顎で、骨ごと砕き丸のみするの。)
「気の毒に。」
ヤスオはその場で手を合わせ、馬と人さらいの冥福を祈った。そよ風が吹き、周りの草木は揺れる音と鳥のさえずりが聞こえる。目を閉じていると、とても悲劇があった場所とは思えない。
街道から、さらに外れた先にある西の森を眺めていた。森の手前の草原にきらりと光る何かが見える。ヤスオはそれが何なのか気になり近づいてみる。ある程度近づくと、それが鎧だと分かる。ヤスオは、慌ててその鎧に近づく。
「おい、大丈夫か?何があった?」
「あんた、冒険者か?見ての通り俺は、もうダメだ。最後の頼みを聞いてくれ。」
倒れていたのは、騎士団の騎士で、鎧の腹部に大きな穴が開いており、そこから大量の血液が流出していた。
その騎士は、ミノタウロス討伐に派遣された騎士団の副団長だと言う。ヤスオの予想通り昨夜、寝込みを襲われ、騎士の十数名がケガを負ったらしい。その騎士達を連れ、騎士団は撤退したのだが、ミノタウロスの追撃を受け、団長と2人で殿を務めた。激しい戦いが、2刻ほど続き、騎士団は何とか逃げおおせた。だが、自分達が撤退できず、ついに自身が致命傷を受けてしまう。覚悟を決めて、団長に自分が餌になるので、その間に逃げて欲しいと進言した。だが、団長が囮になりミノタウロスの注意を惹き寄せてくれて、自分をかばってくれたらしい。その後も、逃げた部下達の心配や団長への感謝の言葉など尽きることなく話し続けた。
──しかしこの男。ダメだと言いながら、よく喋る。
確かにケガは致命傷に見えるけど、案外ほっておいても大丈夫な気がした。ヤスオは、尽きることのない話を遮り、本題に入る。
「それで、最後の頼みとはなんだ?」
「おお、そうだった。間もなく援軍が到着すると思う。頼みとは、その援軍をこの先で戦っている隊長のもとに誘導してほしいのだ。」
「くだらん。最後の頼みと言うから聞いてやれば、そんな事か。そんなのお前がやれ。これでも飲んで、そこでおとなしくしていろ。」
ヤスオは、そう言い放つと昨日、調合した薬が入った小瓶を渡して、先を急いだ。
「待て、俺の負った傷は、治癒小薬程度の物では治らん。」
そう言いながら、渡された小瓶をみる。赤色の液体が入っていた。
──こ、これは治癒大薬か。
こんな高価で希少な薬品を何故、普通の冒険者が持っていたのか?だが、この幸運に感謝した。
「ありがたい。これで助かる。」
ヤスオは探知魔法で付近を捜索した。2つの影を見つけ、そこに向かって走ってゆく。
──グオォォォォォ。
ミノタウロスは、マチルダ目指し突進してくる。マチルダは、持っている剣で角を弾き、身をかわす。そして、すれ違いざまにミノタウロスの太ももを斬りつける。だが、その剣は、ミノタウロスの硬い皮膚を何度も斬りつけており、すでに刃こぼれを起こしていた。それゆえ、ミノタウロスの太ももを叩いたに過ぎず何のダメージにも、つながらなかった。
すでに、戦いは3つの刻を過ぎており、マチルダの体力は限界を超えていて、あの鋭いスピードも見る影がない。しかも、何度か攻撃を受けたようで、鎧の一部がはぎ取られ、擦り傷だらけになっていた。さらに、右太もも外側に深い傷を負っていて、応急処置もできず流血していた。それでも戦意は消失しておらず、殺意に満ちた視線をミノタウロスに送っていた。
──何度でも突っ込んでこい。すべてかわしてやる。
ミノタウロスは、自慢の角をマチルダに向け突進する構えをみせた。
──グォォォォォ。
突然、奇声を上げ苦痛の表情を浮かべ地面に肩膝をついた。何らかのダメージを受けたようで懸命に荒くなった呼吸を整えていた。
「なんだ?」
「加勢します。ハイルン。」
「ヤスオ殿。なぜここに?」
ヤスオが息を切らしながら、マチルダのそばに立ち、治癒魔法をかけた。そして、マチルダの獲物を見ると、ブロードソードを出して渡す。
「これでも、無いより、マシでしょう。」
「すまん。助かる。それで、これはそなたの仕業か?」
「感電魔法を使いました。」
マチルダは、剣を受け取ると、鞘から出して構える。
「ルックウィヌン、ワッフンサステーコン、ラッスンサステーコン、スタークンガカーパス。」
マチルダに回復魔法、武器強化魔法、防具強化魔法、身体強化魔法をかけた。
「準備は整いました。マチルダさん、2人で殺りますよ。」
ミノタウロスは立ち上がり、すでに突進する構えになっていた。マチルダには治癒、回復魔法をかけたが、完全復活にはもう少し時間がかかりそうだ。ヤスオはマチルダの前に立ち、ミノタウロスの攻撃を受ける態勢をとった。
「よせヤスオ殿。そなたの革の装備では、奴の攻撃は防げない。」
──グオォォォォォ。
ミノタウロスが突進してきた。
(今よ。)「アッビム。」
ヤスオの前に土の壁が完成した。ミノタウロスは壁に怯む事なく、突っ込んでくる。
──バッコォォン。
大きな音がすると、壁にひびが入りバラバラに砕け散った。勢いそのままにさらに突っ込んでくる。
──ゴン。
さすがのミノタウロスも2つ目は無理だった。壁に、はじき返され後ろに下がると、よろめきながら地面に腰を据えた。そして、頭を左右に振り、態勢を整えようとしている。
「見事だ、ヤスオ殿。」
この隙をマチルダは逃がさない。素早く間合いを詰めると、ミノタウロスの頭部を狙って斬りつけた。ミノタウロスは右手で剣を防ごうとする。
──グォォォォォ。
ミノタウロスの右手の肘から斬り落とした。新しい武器に、武器強化に身体強化の2重がけが、効果を出していた。さらにマチルダは、首を狙って斬りかかる。だがそれは、功を焦り過ぎていた。剣より先に、角がマチルダを襲う。マチルダは吹き飛ばされ、大木に叩きつけられる。
「マチルダさん。」
(おそらく、そうね。マリナが乗っていた物じゃないかしら。)
「では、この血痕は馬と人さらい達ですか。」
(たぶん。)
「ここから、あの森まで逃げたのか。結構あるな。よく子供の足で逃げられたな。」
(見逃したのよ。馬と大人2人食べれば、さすがに満腹になるでしょう。)
残骸から、車輪のような物や、3つに別れた車軸のような物があり、かろうじて元の形が想像できた。人と馬に関しては残骸が見当たらず、血痕が残っていなければ被害がなかったのではと思ってしまう。
「何も、残っていませんね。骨や髪の毛くらいあってもいいと思うのですが。」
(強靭な顎で、骨ごと砕き丸のみするの。)
「気の毒に。」
ヤスオはその場で手を合わせ、馬と人さらいの冥福を祈った。そよ風が吹き、周りの草木は揺れる音と鳥のさえずりが聞こえる。目を閉じていると、とても悲劇があった場所とは思えない。
街道から、さらに外れた先にある西の森を眺めていた。森の手前の草原にきらりと光る何かが見える。ヤスオはそれが何なのか気になり近づいてみる。ある程度近づくと、それが鎧だと分かる。ヤスオは、慌ててその鎧に近づく。
「おい、大丈夫か?何があった?」
「あんた、冒険者か?見ての通り俺は、もうダメだ。最後の頼みを聞いてくれ。」
倒れていたのは、騎士団の騎士で、鎧の腹部に大きな穴が開いており、そこから大量の血液が流出していた。
その騎士は、ミノタウロス討伐に派遣された騎士団の副団長だと言う。ヤスオの予想通り昨夜、寝込みを襲われ、騎士の十数名がケガを負ったらしい。その騎士達を連れ、騎士団は撤退したのだが、ミノタウロスの追撃を受け、団長と2人で殿を務めた。激しい戦いが、2刻ほど続き、騎士団は何とか逃げおおせた。だが、自分達が撤退できず、ついに自身が致命傷を受けてしまう。覚悟を決めて、団長に自分が餌になるので、その間に逃げて欲しいと進言した。だが、団長が囮になりミノタウロスの注意を惹き寄せてくれて、自分をかばってくれたらしい。その後も、逃げた部下達の心配や団長への感謝の言葉など尽きることなく話し続けた。
──しかしこの男。ダメだと言いながら、よく喋る。
確かにケガは致命傷に見えるけど、案外ほっておいても大丈夫な気がした。ヤスオは、尽きることのない話を遮り、本題に入る。
「それで、最後の頼みとはなんだ?」
「おお、そうだった。間もなく援軍が到着すると思う。頼みとは、その援軍をこの先で戦っている隊長のもとに誘導してほしいのだ。」
「くだらん。最後の頼みと言うから聞いてやれば、そんな事か。そんなのお前がやれ。これでも飲んで、そこでおとなしくしていろ。」
ヤスオは、そう言い放つと昨日、調合した薬が入った小瓶を渡して、先を急いだ。
「待て、俺の負った傷は、治癒小薬程度の物では治らん。」
そう言いながら、渡された小瓶をみる。赤色の液体が入っていた。
──こ、これは治癒大薬か。
こんな高価で希少な薬品を何故、普通の冒険者が持っていたのか?だが、この幸運に感謝した。
「ありがたい。これで助かる。」
ヤスオは探知魔法で付近を捜索した。2つの影を見つけ、そこに向かって走ってゆく。
──グオォォォォォ。
ミノタウロスは、マチルダ目指し突進してくる。マチルダは、持っている剣で角を弾き、身をかわす。そして、すれ違いざまにミノタウロスの太ももを斬りつける。だが、その剣は、ミノタウロスの硬い皮膚を何度も斬りつけており、すでに刃こぼれを起こしていた。それゆえ、ミノタウロスの太ももを叩いたに過ぎず何のダメージにも、つながらなかった。
すでに、戦いは3つの刻を過ぎており、マチルダの体力は限界を超えていて、あの鋭いスピードも見る影がない。しかも、何度か攻撃を受けたようで、鎧の一部がはぎ取られ、擦り傷だらけになっていた。さらに、右太もも外側に深い傷を負っていて、応急処置もできず流血していた。それでも戦意は消失しておらず、殺意に満ちた視線をミノタウロスに送っていた。
──何度でも突っ込んでこい。すべてかわしてやる。
ミノタウロスは、自慢の角をマチルダに向け突進する構えをみせた。
──グォォォォォ。
突然、奇声を上げ苦痛の表情を浮かべ地面に肩膝をついた。何らかのダメージを受けたようで懸命に荒くなった呼吸を整えていた。
「なんだ?」
「加勢します。ハイルン。」
「ヤスオ殿。なぜここに?」
ヤスオが息を切らしながら、マチルダのそばに立ち、治癒魔法をかけた。そして、マチルダの獲物を見ると、ブロードソードを出して渡す。
「これでも、無いより、マシでしょう。」
「すまん。助かる。それで、これはそなたの仕業か?」
「感電魔法を使いました。」
マチルダは、剣を受け取ると、鞘から出して構える。
「ルックウィヌン、ワッフンサステーコン、ラッスンサステーコン、スタークンガカーパス。」
マチルダに回復魔法、武器強化魔法、防具強化魔法、身体強化魔法をかけた。
「準備は整いました。マチルダさん、2人で殺りますよ。」
ミノタウロスは立ち上がり、すでに突進する構えになっていた。マチルダには治癒、回復魔法をかけたが、完全復活にはもう少し時間がかかりそうだ。ヤスオはマチルダの前に立ち、ミノタウロスの攻撃を受ける態勢をとった。
「よせヤスオ殿。そなたの革の装備では、奴の攻撃は防げない。」
──グオォォォォォ。
ミノタウロスが突進してきた。
(今よ。)「アッビム。」
ヤスオの前に土の壁が完成した。ミノタウロスは壁に怯む事なく、突っ込んでくる。
──バッコォォン。
大きな音がすると、壁にひびが入りバラバラに砕け散った。勢いそのままにさらに突っ込んでくる。
──ゴン。
さすがのミノタウロスも2つ目は無理だった。壁に、はじき返され後ろに下がると、よろめきながら地面に腰を据えた。そして、頭を左右に振り、態勢を整えようとしている。
「見事だ、ヤスオ殿。」
この隙をマチルダは逃がさない。素早く間合いを詰めると、ミノタウロスの頭部を狙って斬りつけた。ミノタウロスは右手で剣を防ごうとする。
──グォォォォォ。
ミノタウロスの右手の肘から斬り落とした。新しい武器に、武器強化に身体強化の2重がけが、効果を出していた。さらにマチルダは、首を狙って斬りかかる。だがそれは、功を焦り過ぎていた。剣より先に、角がマチルダを襲う。マチルダは吹き飛ばされ、大木に叩きつけられる。
「マチルダさん。」
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