87 / 117
87話 パン好きの鳥人に玉子サンド
しおりを挟む
サーチェの嬉しい言葉に、では失礼して、と触りたがったが、今はアリアドネに監視されている状態だ。そんなことができるはずもなく、昨夜の空中戦に勝てなかった悪魔を呪った。
それとは別に、ハーピーとはいえ、女性にそんなことを言われ、心が躍った。嬉しくて将来的なことを少し考えてしまう。ヤスオの妄想は膨らみ、かなり飛躍した内容になっているようで、口元から大量のよだれがこぼれ落ち、とても幸せそうな顔になる。
「でも、わっちではヤスオっちの子孫は生めねぇさぁ。残念さぁよ」
(ヤスオ、ハーピーとヒューマンは無理だから)
二人はヤスオの妄想を察知し、考えを改めさせた。ヤスオの将来計画は、数秒で崩壊した。でも、振られる事には慣れている。ならば、友として長く付き合えばいいと、簡単に気持ちを切り替えた。
朝食に、調理パンをサーチェに振る舞った。前回のパンが好感触だったので、今回も用意していた。実は前回の朝食でパンが大好物になっていたサーチェは、手を止める事なく、この機会に食べ置きをしようと無理をした。ヤスオはそんなサーチェをなだめ、いくらでもあるからと、パンが入った紙袋を、3つ出して見せた。サーチェは歓喜し、ヤスオに抱きつき、顔の至る所に、尖らせた唇を押しつけた。
ヤスオの顔と胸には嬉しい感触が伝わり、当初は鼻の下の面積を拡張させた。だが、物凄い力で抱きしめられ、体中の骨がきしみ両足は完全に宙に浮いていた。
──こ、これはもしかして、ベアハッグ。
熊ではなく、ハーピーハッグを浴び、ヤスオの意識が遠のき、口から泡が出ていた。
「ヤスオッち。すまんさぁ。またやっちまったさぁ」
ヤスオは自身に治癒魔法を唱え、回復していた。
「サーチェ、大丈夫だ。こんな時の為に、治癒魔法を習得している」
「本当に大丈夫かさぁ。良かったさぁ」
サーチェは喜び、安堵してか、紙袋からパンを出すと頬張った。
(ヤスオ、あれ、たまごサンド)
──しまった。卵も鶏だ。
ヤスオはサーチェの反応をうかがった。サーチェは怒る事も、機嫌が悪くなる事もなく完食して見せた。罪悪感に見舞われたので、正直に話し謝罪する。
「サーチェすまない。俺の不注意で、鶏の卵を君に食べさせてしまった。なんとお詫びをしてよいのか」
「それが、どうしたさぁ。何を気にしているさぁ?」
「君に、同族食いをさせてしまったのでは?」
サーチェは呆気に取られ、ヤスオを見つめた。ヤスオの真剣な表情に、吹き出し笑い始めた。
「アハハハハハハ。何の冗談だ。面白過ぎるさぁ、ヤスオ」
「いや、冗談のつもりはないのだが」
「ヤスオは、何を言っているさぁ。確かに同じ鳥類に見えるかもだけど、鷹や鷲だって同じ鳥類の鳩や雉を食べるさぁ。そんなの関係ないさぁ」
──確かにぃぃ。
「ちょっとぉ、アリ姉様。どういう事ですか?」
(ごめん。でも昔、鶏肉を食べさせられ、怒ったハーピーがいたのよ)
「ああ、ヒューマンにも菜食主義者がいるように、ハーピーにも偏った主義者がいても不思議はないわさぁ」
(そっかぁ。私は間違った認識を持っていたのね。あれ?サーチェ、私の言葉に反応した?)
「サーチェ。アリ姉様の声が聞こえるのか?」
「ヤスオの中に、別の人格があるのは、昨日、薬草を採りながらの独り言を聞いていたから、知っているさぁ。それから、聞こえるわけではねぇが、なんとなく分かるさぁね」
「ちょっと待て。昨日、薬草採取で時間を潰していたの、知っているのか?」
「もちろんさぁ。ヤスオの気配は森に入った時から気づいていたさぁ。ずぅぅと見ていたけど、洞窟にきてくれた時は、心臓が破裂するかと思ったくらい嬉しかったさぁ」
サーチェがヤスオに気がつきながらも、気安く声をかけてくれなかったのは寂しかった。だが、森に入ってからここまで、見ていてくれたのは嬉しかった。何とも言えない複雑な気持ちになったが、とりあえずサーチェが人でないことを、心の底から残念に思った。
楽しい時間が過ぎたが、そろそろ別れが近づいていた。まだ、ゆっくりしていてもいいのだが、ヤスオには気になる事があった。それは、昨夜のサーチェの予言に近い反応だ。それが気になって、どうしても確認したい事があった。サーチェには、また会いに来ると約束して、別れを惜しみながらその場を去った。
ヤスオは、強化魔法を自身にかけて先を急いだ。途中、野生動物や角ウサギに遭遇したが、すべてやりすごし、とにかく先を急いだ。
(ヤスオ、何を焦っているの?それに、森を出るには方向が反対よ)
「森は北から、抜けます。一昨日、チャーフィーさんが、討伐隊を見送ったって言っていましたよね」
(ええ、そんなことも言っていたわね)
「一昨日からサーチェが寝不足になったと考えれば、色々納得しませんか?」
(確かに。という事は、討伐隊がミノタウロスと接触し、サーチェが寝不足になったという事かしら)
「多分、そうなのだと思います」
(だとしたら、討伐隊はミノタウロスと交戦していると考えていいわね)
「で、昨夜のサーチェの反応。あの時間帯に討伐隊が、行動しているとは考えにくい」
(そっかぁ、討伐隊が寝込みを襲われた可能性の方が高いわね)
「マチルダさん。無事だといいのですが」
ヤスオは先を急いだが、森の木々が行く手を阻み思うように走れない。せっかく強化魔法をかけたのだが、意味がなかった。西森湖に出たので、障害物がなくなった。再び、強化魔法を唱えて湖畔を走る。そして、森に入り木々が邪魔をする。ヤスオは、はやる気持ちを抑えながら、先を急いだ。
何とか、陽が真上にくる前に森を抜けることができた。さらに先を急ぎ街道を目指す。街道に出ると、街とは反対方向に進む。しばらく進むと、街道から少し外れたところに、たくさんの残骸が転がっていて、それらには乾いた多くの血痕らしきものが、付着していた。
それとは別に、ハーピーとはいえ、女性にそんなことを言われ、心が躍った。嬉しくて将来的なことを少し考えてしまう。ヤスオの妄想は膨らみ、かなり飛躍した内容になっているようで、口元から大量のよだれがこぼれ落ち、とても幸せそうな顔になる。
「でも、わっちではヤスオっちの子孫は生めねぇさぁ。残念さぁよ」
(ヤスオ、ハーピーとヒューマンは無理だから)
二人はヤスオの妄想を察知し、考えを改めさせた。ヤスオの将来計画は、数秒で崩壊した。でも、振られる事には慣れている。ならば、友として長く付き合えばいいと、簡単に気持ちを切り替えた。
朝食に、調理パンをサーチェに振る舞った。前回のパンが好感触だったので、今回も用意していた。実は前回の朝食でパンが大好物になっていたサーチェは、手を止める事なく、この機会に食べ置きをしようと無理をした。ヤスオはそんなサーチェをなだめ、いくらでもあるからと、パンが入った紙袋を、3つ出して見せた。サーチェは歓喜し、ヤスオに抱きつき、顔の至る所に、尖らせた唇を押しつけた。
ヤスオの顔と胸には嬉しい感触が伝わり、当初は鼻の下の面積を拡張させた。だが、物凄い力で抱きしめられ、体中の骨がきしみ両足は完全に宙に浮いていた。
──こ、これはもしかして、ベアハッグ。
熊ではなく、ハーピーハッグを浴び、ヤスオの意識が遠のき、口から泡が出ていた。
「ヤスオッち。すまんさぁ。またやっちまったさぁ」
ヤスオは自身に治癒魔法を唱え、回復していた。
「サーチェ、大丈夫だ。こんな時の為に、治癒魔法を習得している」
「本当に大丈夫かさぁ。良かったさぁ」
サーチェは喜び、安堵してか、紙袋からパンを出すと頬張った。
(ヤスオ、あれ、たまごサンド)
──しまった。卵も鶏だ。
ヤスオはサーチェの反応をうかがった。サーチェは怒る事も、機嫌が悪くなる事もなく完食して見せた。罪悪感に見舞われたので、正直に話し謝罪する。
「サーチェすまない。俺の不注意で、鶏の卵を君に食べさせてしまった。なんとお詫びをしてよいのか」
「それが、どうしたさぁ。何を気にしているさぁ?」
「君に、同族食いをさせてしまったのでは?」
サーチェは呆気に取られ、ヤスオを見つめた。ヤスオの真剣な表情に、吹き出し笑い始めた。
「アハハハハハハ。何の冗談だ。面白過ぎるさぁ、ヤスオ」
「いや、冗談のつもりはないのだが」
「ヤスオは、何を言っているさぁ。確かに同じ鳥類に見えるかもだけど、鷹や鷲だって同じ鳥類の鳩や雉を食べるさぁ。そんなの関係ないさぁ」
──確かにぃぃ。
「ちょっとぉ、アリ姉様。どういう事ですか?」
(ごめん。でも昔、鶏肉を食べさせられ、怒ったハーピーがいたのよ)
「ああ、ヒューマンにも菜食主義者がいるように、ハーピーにも偏った主義者がいても不思議はないわさぁ」
(そっかぁ。私は間違った認識を持っていたのね。あれ?サーチェ、私の言葉に反応した?)
「サーチェ。アリ姉様の声が聞こえるのか?」
「ヤスオの中に、別の人格があるのは、昨日、薬草を採りながらの独り言を聞いていたから、知っているさぁ。それから、聞こえるわけではねぇが、なんとなく分かるさぁね」
「ちょっと待て。昨日、薬草採取で時間を潰していたの、知っているのか?」
「もちろんさぁ。ヤスオの気配は森に入った時から気づいていたさぁ。ずぅぅと見ていたけど、洞窟にきてくれた時は、心臓が破裂するかと思ったくらい嬉しかったさぁ」
サーチェがヤスオに気がつきながらも、気安く声をかけてくれなかったのは寂しかった。だが、森に入ってからここまで、見ていてくれたのは嬉しかった。何とも言えない複雑な気持ちになったが、とりあえずサーチェが人でないことを、心の底から残念に思った。
楽しい時間が過ぎたが、そろそろ別れが近づいていた。まだ、ゆっくりしていてもいいのだが、ヤスオには気になる事があった。それは、昨夜のサーチェの予言に近い反応だ。それが気になって、どうしても確認したい事があった。サーチェには、また会いに来ると約束して、別れを惜しみながらその場を去った。
ヤスオは、強化魔法を自身にかけて先を急いだ。途中、野生動物や角ウサギに遭遇したが、すべてやりすごし、とにかく先を急いだ。
(ヤスオ、何を焦っているの?それに、森を出るには方向が反対よ)
「森は北から、抜けます。一昨日、チャーフィーさんが、討伐隊を見送ったって言っていましたよね」
(ええ、そんなことも言っていたわね)
「一昨日からサーチェが寝不足になったと考えれば、色々納得しませんか?」
(確かに。という事は、討伐隊がミノタウロスと接触し、サーチェが寝不足になったという事かしら)
「多分、そうなのだと思います」
(だとしたら、討伐隊はミノタウロスと交戦していると考えていいわね)
「で、昨夜のサーチェの反応。あの時間帯に討伐隊が、行動しているとは考えにくい」
(そっかぁ、討伐隊が寝込みを襲われた可能性の方が高いわね)
「マチルダさん。無事だといいのですが」
ヤスオは先を急いだが、森の木々が行く手を阻み思うように走れない。せっかく強化魔法をかけたのだが、意味がなかった。西森湖に出たので、障害物がなくなった。再び、強化魔法を唱えて湖畔を走る。そして、森に入り木々が邪魔をする。ヤスオは、はやる気持ちを抑えながら、先を急いだ。
何とか、陽が真上にくる前に森を抜けることができた。さらに先を急ぎ街道を目指す。街道に出ると、街とは反対方向に進む。しばらく進むと、街道から少し外れたところに、たくさんの残骸が転がっていて、それらには乾いた多くの血痕らしきものが、付着していた。
13
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
エクセプション
黒蓮
ファンタジー
血筋と才能に縛られた世界で【速度】という、それ単体では役に立たないと言われている〈その他〉に分類される才能を授かったダリア。その才能を伯爵位の貴族である両親は恥ずべき事とし、ダリアの弟が才能を授かったと同時に彼を捨てた。それはダリアが11歳の事だった。
雨の中打ちひしがれて佇んでいたダリアはある師に拾われる。自分を拾った師の最初の言葉は『生きたいか、死にたいか選べ』という言葉だった。それまでの人生を振り返ったダリアの選択肢は生きて復讐したいということだった。彼の選択を受け入れた師は彼にあらゆることを教えていく。
やがて師の元を離れる際にダリアはある紙を受け取り、それと同時に再度の選択肢を投げ掛けられる。彼が選ぶ復讐とは・・・彼が世界に及ぼす影響とは・・・
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
とある中年男性の転生冒険記
うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる