異世界での異生活

なにがし

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96話 女の子冒険者パーティーと知り合う

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「あのぉ、そこで何をしているのですか?」

 間の抜けた声にヤスオの警戒心は解けた。やはり敵対心はないようだ。振り返り、その者達を確かめた。その者達は四人の女の子、どこか見覚えのある女の子達だ。

「何か用?」
「それ甘蕉かんしょうですよね。なぜ収穫しているのですか?」
「それを聞いて、どうする」
「最近、バナナという甘蕉かんしょうがあると聞いていたのだけど、それと関係あるのですか?」

 見たところ、まだ若いが冒険者だ。何かの依頼でバナナについて調べているのか。だとしたら、素直に教えるわけにはいかない。幸い、相手は女の子だ。ヤスオは伝家の宝刀を出すことにした。

「君達はいったい誰なのかな?俺は、G級ヤスオという者だけど」

──さぁ、ビビッて、逃げろよ。

 自虐で情けないが、ヤスオが思う穏便に済ます最善の方法だ。ところが女の子達は逃げ出すどころか、笑い始めた。

「キャハハ、知っていますよ。むしろヤスオさんだから声をかけたのですけど」

──なに?俺を知っていて声をかけた、女の子が、ありえない。

 女の子の一人が両手を後ろに組んで歩み寄って来ると、ヤスオを覗き見た。ヤスオはこの女の子をどこかで見ている。記憶を辿り、思い出そうとした。

「先日は、どうも失礼しました。私の事、覚えていませんか?以前、ユキナに怒鳴られた剣士なのですけど」

──あぁぁ。あの時の落ち込み剣士。

 以前、ヤスオにジュースを差し出したユキナを守るため、剣を構え、逆にユキナに怒られた剣士。その後、落ち込み仲間に励まされていた冒険者だ。

「その、怒られ冒険者が、何の用だ?」
「私達、ユキナの友達のF級冒険者パーティーでぇぇす」
「……」
「知っての通り、F級冒険者わたしたちは収穫の依頼は受けられません。でも。魔物討伐だけでは、生活ができません」

 そのための救済措置で、低級でもミカンとリンゴは収穫しても買い取ってもらえることになっていた。その場合、収穫したものは直接、商業組合に持ち込まなければならない。換金時、商業登録証と冒険者証の提出者には格差があり、冒険者は交渉の余地なく、相手の言い値で取引される。当然、足元を見られ、あまりいい取引ではない。それでも、この娘達はそれで生計を立てていた。

 先日ユキナは、貴重食材バナナはヤスオの発案だと、シンシアがイーシアに話しているのを盗み聞きしていた。バナナはアントの夢しか販売されておらず、その近親者のシンシアの話だから、間違いないと確信した。そして、その話を密かにお金に困っている、友人パーティーに話していた。ついでに、ヤスオに対する街の噂は全部間違いで、名前すら間違われていることもその時、知った。

「それで、ヤスオさんが甘蕉かんしょうを収穫しているのを偶然見つけて」「バナナに関わる事ができれば少しは収入が上がるかなぁと思いまして」「っていうか、ここで張っていれば関係者が収穫にくると思って」「それが、ヤスオさんなので、これは絶好の機会ですよね」

──何が、絶好の機会だ。つまり、見張っていたのだよね。よく偶然だと言えたものだ。

「それで俺に何の利益がある?」
「かわいい女の子達に、」「恩が売れる」「という利点が」「あります」
「話にならない」

 ヤスオは振り返り収穫を続けようとした。どうもこの子達を、応援しようという気持ちが湧かない。なんていうか、甘ったれている。

『そこを、なんとかぁぁ』

 女の子たちは、ヤスオの装備を握りしめ、引っ張り引き止めた。ヤスオはそれを振り払い、怒りをあらわにした。

「普通に、魔物を倒して昇級すればいいだろう。なぜ、楽をして稼ごうとする」

「違います。私達だって魔物を倒して昇級したいです。でも、誰かさんが短期間で大量の魔物を討伐するから、森には魔物が出なくなったのです」「そうですよ。いつもなら西森湖の西側から、ゴブリンなんかが東側にやってくるのですけど、それも最近ではピタリと止まってしまい討伐の機会がないのです」「とはいえ、F級あたいたちが、西側に行くのは危険だし、準備も足りない」「あとは、アルミラージとスライムしかいませんけど、アルミラージはお金になりますから、先輩冒険者にみんな持って行かれます。スライムは、それほど数がいません」
「つまり私たちが、」「貧乏で、」「昇級できないのも、」「ヤスオさんのせいです」

『責任を取ってください』

──な、何だとぉ。

 こんな、無茶な要求があるか?確かに、このところ魔物の数が減ってきている。ついさっき、この森の平和を感じたばかりだ。女の子達が、魔物討伐ができないのは、ヤスオとサーチェが短期間で大量に討伐したのが原因なのは、事実のようだ。

(ヤスオ、助けてあげてよ。彼女達の中に、私の娘がいるようだし)

 アリアドネにそう言われては仕方ない。ヤスオは妥協案を考えた。

「分かった。ならば、まず甘蕉かんしょうを50房収穫してくれ。それを、君達で運ぶのだ。できるね」
『はい、お任せください』

 女の子達は、あっという間に50房を収穫した。そしてそれを、一人の女の子が収納した。

「君は、補助魔法使いなのか?」
「はい。私は、パーティーリーダーのアメリアと言います。収納魔法が使えます」
(この娘達。見込みがあるわよ。恩を売っておくのも悪くないかも)

 陽が真上に来る時間帯。昼食はあるのかと聞くと、収入が少ないので昼は現地で収穫した果物だけと言っていた。ヤスオは気の毒になり、女の子達を連れ河に移動する。東の森は小さくて拠点がないので、河の近くで焚き火を作り挨拶がてら昼食を振舞う事にした。ヤスオが、昼食用に用意していたパンは、5人で食べるには少なすぎる。鍋はマチルダとサーチェにすべて食べられたので、昨日補充した食材しかない。
 
 そこで、その場で調理することにした。鍋に水を入れ、沸かしたら味噌を溶かしみりんを入れる。あとは大根、ニンジン、白菜などの野菜を刻み鍋に入れ、他にシイタケ、エノキなどのキノコ類も入れる。あとは煮込んで、出来上がり。これらの作業を女の子達と一緒に行い、楽しい時間を過ごす。
 
 彼女達は、ユキナに怒られたのが剣士ミーヤ、そして同じく剣士マヤ、弓士のエマ、最後にリーダーで補助魔法使いのアメリアと名乗っていた。
 
 女の子達は、なかなかの不器用で皮をむかせば厚くむき、野菜を刻ませれば色んな塊に切ってくれた。ただ、エマだけは器用でヤスオを感心させていた。

 昔、アリアドネが多くの孤児院を作った。しかし、時間と共に孤児の数が減り、いくつかの孤児院は廃止になった。

 その孤児院跡地を、レスボン領主が引き継ぎ、そのまま子供達の学び場、いわゆる学校になった。
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