異世界での異生活

なにがし

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97.成人年齢

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 その孤児院跡地を、レスボン領主が引き継ぎ、そのまま子供達の学び場、いわゆる学校になった。

 だがそこは有料で、裕福な家の子達しか通えない。エマを除く3人とユキナは、そこの同じ歳の学友で、裕福な家の生まれだ。その学び場は希望すれば何歳でも何年でも通える。この国では、15歳で成人とみなされる。なので、一般的には15歳で学び場を卒業する。だが、ユキナを除く3人は18歳まで通い、いい加減働けと親に怒られ冒険者になったようだ。エマとは偶然同じ日に登録をした縁で、仲間になった。ユキナは15歳で卒業したが、就職先が見つからず、昨年やっと冒険者組合に就職できた。つまり、ユキナ達4人は19歳。エマに至ってはまだ16歳だ。

 ここでヤスオは自分の考えの間違いに気づいた。この世界の人はヤスオの世界の倍の寿命があるので、単純に成長速度が半分なのだと思っていた。だが、それは間違いで子供から成長が止まる大人になるまでは、ヤスオの世界とほとんど同じ。大人になってから老けるまでが長い時間を要するようだ。その為か、15歳で大人なのだが、結婚適齢期は40歳~60歳とされ、それより早く結婚を申し出ると、親に反対されるらしい。

「だって、20歳で結婚したら、相手と180年一緒にいる訳でしょう。無理、無理。」
「60歳でも140年だから、それでもきついよぉぉ。」

 などと、4人はヤスオのおごりで当たり前のように食事会を堪能していた。そんな事を言いながらも、あの男性はカッコいいとか、好みのタイプとか、付き合うならあの人がいいとかキャッキャッと話し続け、ヤスオの存在を消去し、女子会へと変貌してきた。

──俺、潜伏のスキル持っていたかな?

 そう思うぐらい、見事に存在を消され、遠慮のない会話が続いた。ヤスオは食べながら、女子達の話を聞いていた。何とも、わがままで勝手な事ばかり言っている。さらに理想の男性像に至っては、そんな奴おるかぁぁと突っ込みたくなる。100歩譲っていたとしても、お前らを好きになる訳ないだろう。まずは自分を磨け。と言いたかったが、いつの時代も説教を垂れる親父は嫌われるし、教えてやる必要もない。ヤスオはありもしない、潜伏のスキルを最大限に発揮した。

 前世でもこの世界でも、ヤスオには女の子が分からない。食事が終わった後も潜伏のスキルの効果か、話に夢中になり続け、片づけを手伝うことなく、同情したことを後悔させた。いつまでも話が途切れそうにないので、強引に割り込み話を終わらせ南門を目指す。

 南門の門番は女の子を連れているヤスオを冷やかした。その冷やかしに女の子達が反応し、マシンガンのように次々と言葉が飛び交い、門番はたじろいだ。また、おかしな勘違いをされるのではないかと心配したが、逆に肩に手を置かれ「引率ご苦労。」と声をかけられ同情された。この世間知らずで恥ずかしい4人を連れて、スペランザ教会へ案内する。

「あれぇ。ここ、わたしの実家だ。」

 スペランザ教会に到着し、そう言ったのは、エマだった。孤児院側の入口から入ると、ヤスオ達に気付いたマイヤが授業そっちのけで、出てきた。

「ヤスオさん。やっと来てくれましたね。」
「1週間くらいでしょうか。ご無沙汰しています。」
「やぁ、マイヤ姉ちゃん。久しぶり。」
「まぁ、エマ。随分ご無沙汰ねぇ。」

 ヤスオはマイヤに今後、毎日50房の甘蕉かんしょうを地下室に置かせる依頼を、この娘達にしたことを伝えた。そして、最初の1週間分は寄付するので、それ以降はこの子達に1回1万ドラクを払うようお願いした。それくらいならセメレも納得するとマイヤは快く承諾してくれた。

 報酬は1人2500ドラクになるが、これは節約すれば1日分の食費になる。それが、半日に満たない労働で賄えるのだから、相当助かるはずだ。

 女子達は予想より下回る金額に不満な顔をしたが、今より確実に楽になるのだからと渋々、了承した。ヤスオは前金として金貨7枚を、アメリアに渡した。久しぶりのまとまったお金にアメリアの目が輝く。と同時に口からよだれが垂れる。何か良からぬ事を考えているようだが、1週間分の報酬と分かっているのだろうか。すると、エマがアメリアから金貨を奪い取った。

「この3人、ホントにお金の使い方、分かってないから。わたしが預かります。」
『そんなぁ、エマァァ。』

 どうやら、お嬢様パーティーが今までやってこられたのは、最年少のエマのおかげらしい。

「ヤスオさん。次はお昼か夕方に来てください。ゆっくりお話がしたいです。」

 そう話すとマイヤは、授業中だからと子供達の元へ戻って行く。
 お嬢様方は、西の森に行ってリンゴかミカンの収穫をしながら魔物を探すらしい。そこで、お嬢様方とは別れ、屋台通りに向かう事にした。

 屋台通りに向かって歩いていると、馬の蹄の音がする。まさかと思い、振り返るとそこにはレオがいた。

「よぉ、ヤスオさん。女の子4人も連れて羽振りがいいね。」
「見ていましたか。困っているようだから仕事を依頼しました。」
「そうですか。で、これから屋台通りですか?」
「よく、分かりましたね。」
「この時間に、この方向ですから。夕飯の買い出しかなと思いまして。乗ってください。案内します。」
「また、いいのですか?」
「へい。今日一日、ヤスオさんの足になると決めていますから。」

──やばい、これ癖になるかも。

 馬車での移動は、楽で速い。今後も、馬車での移動を考えていた。ヤスオはレオに屋台通りまで普段はどのくらいで乗せているのか聞いてみた。決まった金額はなく、乗る前に交渉するらしい。

「おおよその相場でだいたい、3千ドラクですかね。」
「うお。結構するな。」

 どうやら今回で、乗り収めになりそうだ。

 今回は前日、買い物をしているので、昨夜と今日、消費した分を買い足すだけだ。特に昨夜、トンカツを食べ損ねているので、今日こそは、と買い足した。念のため、多めに。
 その後、雑貨屋に寄り、焚き火台と鍋を購入した。以前のような門前払いもなく、女性店員もヤスオに慣れたか避けることなく、むしろ積極的に接客してくれた。当たり前で、普通の事なのだが、それが困難で難しかった。ヤスオは普通がいかに、ありがたいか身に染みた。

 雑貨屋を出ると、そのまま帰路につく。すると、後ろから蹄の音が聞こえる。

「ヤスオさん。今度は家ですね。」
「はい。また乗せてくれるのですか?」

「もちろん、でさぁ。」
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