異世界での異生活

なにがし

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100.特別報酬未遂

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 ──えっ?

 アガサが自身の権限で、もう一つの受付を開放していた。シンシアが何か企んでいるのを察知しての対応だった。ヤスオはアガサの前に立ち、各証明書と冒険者証を提出していた。

──そんなぁぁぁ。

「ダァ、ハハハハハハ、ヒィ、ヒィ。」

 シンシアのたくらみは未遂で終わり、背後からは、イーシアの笑い声が聞こえる。アガサは、ヤスオの各証明書と冒険者証を受け取ると、早々に事務室に戻ってしまった。ヤスオの後ろには並ぶ者はおらず、シンシアは茫然として暇な時間を過ごした。

 しばらくすると、アガサがイーシアを従えて戻ってきた。イーシアは巾着袋が4つ乗ったおぼんを持っており、歯を食いしばり、顔を引きつかせて、かなり重そうに運んでいた。どうやら、アガサでは運べないので、イーシアに運ばせているようだ。アガサは席に腰を下ろすと、イーシアを待った。イーシアはおぼんをカウンターの上に置くと、腰を押さえながら、速やかに事務室に戻る。

「それではまず、受取証明の記載通りで、6体全部で、71900ドラクに解体手数料12000ドラクを引いて、59900ドラクで、よろしいですか?」
「はい。結構です。」
「次に、魔石証明ですが、小鬼を428体、ミノタウロス1体で、135600ドラクになります。よろしいですか?」
「はい。」
「では、合計19万5千5百ドラク、白金貨3枚、金貨4枚、銀貨5枚、白銅貨1枚です。ご確認下さい。」

 アガサは、4つある巾着袋の小さい袋をヤスオに差し出した。ヤスオは中身を確認し問題ない事を伝える。

「それでは、冒険者等級ですが、今回で1356点加算され合計2029点、されにミノ討伐で枠外認定もクリアされましたので、C級上位に昇級です。おめでとうございます。」

 赤い冒険者証を渡され、感激した。だが今回の点数の7割は、マチルダとサーチェによるものなので、罪悪感に見舞われた。まぁ、マチルダは1割程度だから、今まで食べられた分で十分お返ししている。問題は6割近いサーチェだ。今までの食事では半分も満たない。どうお返ししようかと悩む。

「それで最後になりましたが、これはマーチャント氏より依頼達成報酬と感謝金になります。白金貨100枚です。ご確認下さい。」

 アガサは3つの巾着袋を両手で指して確認を求めた。ヤスオは袋の中から白金貨を出し、10枚の束を作り数えた。1つ目と2つ目には3つの束が、3つ目には4つの束が完成し間違えない事を伝え、収納した。

「以上ですが、他に何かありますか?」
「いえ、ありません。ありがとうございます。」

──ピュゥゥゥ。

 振り返ると、腕組みをして口笛を吹くマチルダと驚いて固まるメンガンダルがいた。

「組合長。どうしてここに?」
「騎士団長がお見えになったと聞いて、挨拶にきたのだが。いやぁ驚いた。冒険者になって2か月も満たない奴が、C級上位に上がるなんて聞いたことない。早くても5年は、かかるぞ。」
「いや、弟君おとうとぎみ。中に宿しておられる方を考えれば、当然の結果ですよ。」
「騎士団長はご存じでしたか。確かに、その通りですね。ヤスオ、組合の依頼に人探しが無くなったことは、私の記憶にはない。感謝する。」
「いえ、かたきを討っただけです。」
「どうやら、騎士団長はヤスオの付き添いだけらしいから、これ以上、邪魔するのは野暮のようだ。これで、失礼する。」
弟君おとうとぎみの気遣い、感謝する。」

 こうして冒険者組合での用事を済ませたヤスオ達は、組合を後にした。思わぬ伏兵にすべてを持って行かれたシンシアは、頬を膨らませ肩ひじを突いて、2人を見送っていた。

 ちなみにシンシアが考えたパフォーマンスは、前回イーシアがやったように、立ち上がり大声で進行する事で、多くの人の注目を集めること。そして、最後に「これはわたしからの、報酬と昇級祝いです。」と言って、ヤスオにカウンター越しの抱擁と頬への接吻を画策していた。
 もしこれが、実行されていたらマチルダはどうなっていたのか。2人の女性の間に入り事を収めようとするメンガンダルの行方は。不意を突かれ、だらしない顔になったヤスオの行方は。ヤスオは損をしたのか、命拾いしたのかよく分からないが、アガサのおかげで何事もなく丸く収まっていた。

「それで次は、どこに行くのだ?」
「アントの夢に行きます。」
「ああ、関係者だと言っておったな。」

──そう言えば、アントの夢はアリアドネ様が設立させた、確か孤児院組合。ヤスオが関係者なのは当然か。

 アントの夢に入るとやはり突然の美女に、受付にいたカミルの目を奪う。騎士団の制服を視認すると、カミルは慌て混乱した。

「セルジュ兄さん。一大事です。」

 その声で、奥にいたセルジュとマル、さらに納品に来ていたソフィアとリリーが顔を出した。
ソフィアはヤスオと並んで立っている女性が気になった。騎士団の制服を身に着けているので、仕事でヤスオと同行していると想像できるが、なぜこんなに、めかし込んで綺麗なのか。

「あー、ヤスオ。」

 リリーはヤスオの姿を見つけると駆け寄り抱きついた。ヤスオもしゃがんで両手を広げ、リリーを抱き締めると、そのまま抱き上げ、あやし始める。

「ホー。ヤスオ、知り合いか?」
「おばさん、だれ?」
「これリリー、失礼でしょ。」

 ソフィアは慌てて、ヤスオに詰め寄りリリーの口を塞いだ。
マチルダはこの生意気な子供の、母親らしき女を見て驚愕した。すっぴん、なのにこの美貌。今日、自分が最高の状態に仕上げてなかったら、見劣りするところだった。ヤスオの周りにこのような女がいるとは。しかも、その子供の懐きようを見るに、ただならぬ関係では。そう思うと確認しなければいられない。

「母親か。気にしなくていい。その子から見れば確かに、おばさんだからな。して、ヤスオ。この者達と親しいようだが紹介してくれぬか?」
「騎士団長様。この者は我が組合の調薬師のソフィアとその娘リリーと申します。して、この度のご訪問は、どのようなご用件でしょうか?」

 セルジュは一目でこの美女が騎士団長だと見抜き、割って入った。騎士団長と聞きマル、カミル、ソフィアが驚いていた。特にソフィアは騎士団長と言う高い地位の人が、これ程の美貌を持っているのかと焦っていた。ソフィアはマチルダを見つめ、マチルダもソフィアを見ていた。

 2人の、ただならぬ気配にセルジュが勇気を振り絞っていた。

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