異世界での異生活

なにがし

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 二人の、ただならぬ気配にセルジュが勇気を振り絞っていた。

「ほう。調薬師殿か。先日の魔物討伐には、世話になった。それで、ヤスオとはどういう関係なのだ。ちなみにわたしは、ただの付き添いだ。」

 マチルダの殺気が纏った視線がセルジュを襲う。マルとカミルは完全に硬直し身動きが取れない。セルジュも、蒼白な顔をして動けなくなっていた。

「ソフィアさんは、俺の弟子です。俺が、調薬を教えたのですよ。」
「なに?ヤスオは調薬もできるのか?」
「マチルダ、俺の事、忘れてないか?」

 アリアドネが宿しているのだから、それもできて当然。そもそもアリアドネは癒しの魔女なのだから、むしろ調薬の方が得意なのだろう。そう考え理解したが、なぜソフィアを弟子にしたのか、その理由が気になった。ソフィアが、美女だから弟子にして、手取り足取りと指導したかったのか。

──だとしたら、わたしも弟子にしろ。そして、わたしにも手取り足取り指導しろー。

 意味不明だ。そもそもマチルダには、補助魔法どころか魔法適正もないので、一体何の弟子になるつもりなのか分からない。

 一方ソフィアは、ヤスオと行動を共にしている、この女が気に入らない。財力に物を言わして綺麗に、めかしこんでいる事が腹ただしい。つい先日まで、食べるのにすら困っていたので、化粧品や装飾品などのたぐいは、持ち合われていない。高い地位で貴族の美女、この女に勝てる要素が見つからず惨めになる。さらに、お互いを呼び捨てで、呼びあっている間柄が羨ましい。
 そんなことを思っていながら、ソフィアはヤスオに対する自分の気持ちの整理ができていない。好きなのか、そうでないのか、自分でもよく分からなかった。ただ、今は目の前の女がイラつく。

「リリーィ。おばさんなんて言ってはダメよぉ。この方は、わたしよりはるかに若い方なのですからぁ。」

──なに?わたしの方が歳下?

 マチルダは焦った。どう見てもマチルダより若いこの女が、年上?ある訳ないと思っていると、ソフィアは自身の髪をめくって見せた。

──エ、エルフ。

 ヤスオが弟子にした理由を知り、安堵した。エルフなら当然かと。でも、ソフィアがマウントを取ってきたのは、明らかに宣戦布告。まさか、ライバルにエルフがいるとは。だが、まだ“さん”付けで呼んでいる以上、こちらの優位であると考えたが、エルフ族の魅了は侮れないと焦ってもいた。
 そんな二人を尻目に、ヤスオはセルジュに用件を伝えていた。

「セルジュさん。これを、受け取って下さい。」

 ヤスオは巾着袋3個を受付カウンターに出した。セルジュはその中身を確認して驚いて腰を抜かした。それもそのはず白金貨100枚、有ったのだから。

「こ、これはヤスオ様、これを、どうなさいました?」
「臨時収入です。これを使って、孤児院で祭りでもしませんか?」
「これを、いただいてもよろしいのですか?ただでさえバナナで、楽になっているのに。」
「はい。」

 これを見ていた美女2人の戦意は消失した。こんな事で、いがみ合っていたら嫌われてしまうと思えたからだ。そうなると、これまでの感情や行動が可笑しくて、バカバカしく、なってきた。

「ヤスオさん、そのお祭りには呼んで下さいね。」
「もちろんです。ソフィアさんは関係者ですから。」
「わたしも、だぞ。ヤスオ。」
「騎士団長様は、お忙しいのでは?」
「そんなぁ、何とかするから頼む。」

 和やかな雰囲気になり、アントの夢では笑い声が聞こえていた。用件を済ませたので、次の目的地に向かう事にする。

「調薬師殿、これからも世話にはなるが、譲る気はないので覚悟をした上で、よろしく頼む。」
「はい、騎士団長様。こちらも身を引く気はありませんが、これからも御贔屓にお願い、いたします。」

──身を引く気はない?

 自分は何を言っているのだろう。と思いながらマチルダの売り言葉を、買ってしまっていた。
 ソフィア親子とセルジュ達に別れを告げアントの夢を後にする。ここで、マチルダはアリアドネが支援し、それをヤスオが引き継いで支援している孤児院が気になってきた。

「ヤスオ、行ってみたい場所があるのだが、連れて行ってくれないか?」
「どこでしょう?」
「孤児院に行ってみたいのだが。」
「丁度良かった。これから行くところです。」
「孤児院は、どこにあるのだ?」
「スペランザ教会ですけど、ご存じなかったですか?」
「ああ、そうであった。父上が視察し、アイルを見つけた所であったな。」
 
 道中、孤児院の子供達が、1日をどう過ごしているか、マチルダに事細やかに伝えた。ヤスオが楽しそうに話すので、子供達と過ごすのがそれほど楽しいのかと、マチルダも気になってきていた。

「ではこの時間は、薬草採取に出かけて子供達は、いないのだな。」
「はい。おそらくセメレ院長とマイヤさんとで昼食の準備をしている頃だと思います。」

 二人は孤児院側の門を開け中に入る。

「こんにちは。」

 孤児院の入口の扉は開けっ放しになっており、中の調理室では、セメレが一人で調理していた。セメレは声のする方へ顔を向け、ヤスオが美女を連れている事に驚いていた。

「あら、ヤスオさん。いらっしゃい。そちらのキレイな方は、初めてのお客様ね。あら、…!あら、あら、あら、あら、そう言う事ですのぉ。」

──どう言う事ですのぉ?

「あのぉ、セメレさん。何か勘違いを、なされているのでは?」
「そうですよ、セメレ殿。教会の方は何度も伺った事が、あるはずだが覚えておらぬ、のか?」
「まぁ、その声はクロムウェル騎士団長。今日は随分、お綺麗なのですね。」

──今日は?では、普段のわたしは、お綺麗ではないのか?

 少し衝撃を受けたが普段、無頓着なのは事実なので、十万歩、譲って認める事にする。

『ああ。ヤスオさんだぁ。』
「げっ。」

 お嬢様パーティーが甘蕉かんしょうの納品に来ていたようだ。マイヤが付き添っていたようで、5人は調理場に戻ってきていた。お嬢様達は、ヤスオを取り囲み馴れ馴れしく話しかけた。

「昨日はご馳走様でした。」「美味しかったです。」「昼も夜も最高でした。」「また、お願いします。」
「いや、もう来なくていいから。と言うか2度と来るな。」
「またまた。」「本当は嬉しいくせに。」「心にもない事を言って。」「照れ隠しですか?」

「なんだ、まだ子供達がいるじゃないか。ヤスオ、随分子供に人気があるのだな。」
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