101 / 117
101話 お金はすべて寄付します
しおりを挟む
「ほう。調薬師殿か。先日の魔物討伐では世話になった。それで、ヤスオとはどういう関係なのだ。ちなみに私は、ただの付き添いだ」
マチルダの殺気を纏った視線がセルジュを襲う。マルとカミルは完全に硬直し身動きが取れない。セルジュも、蒼白な顔をして動けなくなっていた。
「ソフィアさんは、俺の弟子です。俺が、調薬を教えたのですよ」
「なに?ヤスオは調薬もできるのか?」
「マチルダ、俺の事を忘れてないか?」
アリアドネが宿しているのだから、それもできて当然か。そもそもアリアドネは癒しの魔女なのだから、むしろ調薬の方が得意なのだろう。これまでも何度も世話になっているし。
そう考え理解したが、なぜソフィアを弟子にしたのか、その理由が気になった。ソフィアが、美女だから弟子にして手取り足取りと指導したかったのか。
──だとしたら、私も弟子にしろ。そして、私にも手取り足取り指導しろー。
意味不明だ。そもそもマチルダには、補助魔法どころか魔法適正もないので、一体何の弟子になるつもりなのか分からない。
一方ソフィアは、ヤスオと行動を共にしている、この女が気に入らない。財力にものをいわして綺麗にめかしこんでいる事が腹立たしい。つい先日まで、食べるのにすら困っていたので、化粧品や装飾品などの類は、持ち合わせていない。高い地位で貴族の美女、この女に勝てる要素が見つからず惨めになる。さらに、お互いを呼び捨てで、呼びあっている間柄が羨ましい。
そんなことを思っていながら、ソフィアはヤスオに対する自分の気持ちの整理ができていなかった。好きなのか、そうでないのか、自分でもよく分からなかった。ただ、今は目の前の女にイラつく。
「リリー。おばさんなんて言ってはダメよぉ。この方は、私よりはるかに若い方なのですからぁ」
──なに?私の方が歳下?
マチルダは焦った。どう見てもマチルダより若いこの女が、年上?そんな事ある訳ないと思っていると、ソフィアは自身の髪をめくって見せた。
──エ、エルフ。
ヤスオが弟子にした理由を知り、安堵した。エルフなら当然かと。でも、ソフィアがマウントを取ってきたのは、明らかに宣戦布告。まさか、ライバルにエルフがいるとは。だが、まだ“さん”付けで呼んでいる以上、こちらが優位であると考えた。しかし、エルフ族の魅了は侮れないと焦ってもいた。
そんな二人を気にする事なく、ヤスオはセルジュに用件を伝えていた。
「セルジュさん。これを、受け取って下さい」
ヤスオは巾着袋3個を受付カウンターに出した。セルジュはその中身を確認して驚き腰を抜かした。それもそのはず、白金貨が100枚もあったのだから。
「こ、これはヤスオ様、これを、どうなさいました?」
「臨時収入です。これを使って、孤児院で祭りでもしませんか?」
「これを、いただいてもよろしいのですか?ただでさえバナナで、楽になっているのに」
「はい」
これを見ていた美女2人の戦意は消失した。こんな事で、いがみ合っていたら嫌われてしまうと思えたからだ。そうなると、これまでの感情や行動が可笑しくて、バカバカしくなってきた。
「ヤスオさん、そのお祭りには呼んで下さいね」
「もちろんです。ソフィアさんは関係者ですから」
「私も、だぞ。ヤスオ」
「騎士団長様は、お忙しいのでは?」
「そんなぁ、何とかするから頼む」
和やかな雰囲気になり、アントの夢では笑い声が聞こえていた。用件を済ませたので、次の目的地に向かう事にする。
「調薬師殿、これからも世話にはなるが、譲る気はないので覚悟をした上で、よろしく頼む」
「はい、騎士団長様。こちらも身を引く気はありませんが、これからも御贔屓にお願いいたします」
──身を引く気はない?
自分は何を言っているのだろう。と思いながらマチルダの売り言葉を、買ってしまっていた。
ソフィア親子とセルジュ達に別れを告げアントの夢を後にする。ここで、マチルダはアリアドネが支援し、それをヤスオが引き継いで支援している孤児院が気になってきた。
「ヤスオ、行ってみたい場所があるのだが、連れて行ってくれないか?」
「どこでしょう?」
「孤児院に行ってみたいのだが」
「丁度良かった。これから行くところです」
「孤児院は、どこにあるのだ?」
「スペランザ教会ですけど、ご存じなかったですか?」
「ああ、そうであった。父上が視察し、妹を見つけた所であったな」
道中、孤児院の子供達が、1日をどう過ごしているか、マチルダに事細かに伝えた。ヤスオが楽しそうに話すので、子供達と過ごすのがそれほど楽しいのかと、マチルダも気になってきていた。
「ではこの時間は、薬草採取に出かけていて子供達は、いないのだな」
「はい。おそらくセメレ院長とマイヤさんとで昼食の準備をしている頃だと思います」
二人は孤児院側の門を開け中に入る。
「こんにちは」
孤児院の入口の扉は開けっ放しになっており、中の調理室では、セメレが一人で調理していた。セメレは声のする方へ顔を向け、ヤスオが美女を連れている事に驚いていた。
「あら、ヤスオさん。いらっしゃい。そちらのキレイな方は、初めてのお客様ね。あら、…!あら、あら、あら、あら、そういう事ですのぉ」
──どういう事ですのぉ?
「あのぉ、セメレさん。何か勘違いを、なされているのでは?」
「そうですよ、セメレ殿。教会の方は何度も伺った事があるはずだが、覚えていないのか?」
「まぁ、その声はクロムウェル騎士団長。今日は随分、お綺麗なのですね」
──今日は?では、普段のわたしは、お綺麗ではないのか?
少し衝撃を受けたが普段、無頓着なのは事実なので、十万歩譲って認める事にする。
『ああ。ヤスオさんだぁ』
「げっ」
お嬢様パーティーが甘蕉の納品に来ていたようだ。マイヤが付き添っていたようで、5人は調理場に戻ってきていた。お嬢様達は、ヤスオを取り囲み馴れ馴れしく話しかけた。
「昨日はご馳走様でした」「美味しかったです」「昼も夜も最高でした」「また、お願いします」
「いや、もう来なくていいから。というか2度と来るな」
「またまた」「本当は嬉しいくせに」「心にもない事を言って」「照れ隠しですか?」
「なんだ、まだ子供達がいるじゃないか。ヤスオは、随分子供に人気があるのだな」
マチルダの殺気を纏った視線がセルジュを襲う。マルとカミルは完全に硬直し身動きが取れない。セルジュも、蒼白な顔をして動けなくなっていた。
「ソフィアさんは、俺の弟子です。俺が、調薬を教えたのですよ」
「なに?ヤスオは調薬もできるのか?」
「マチルダ、俺の事を忘れてないか?」
アリアドネが宿しているのだから、それもできて当然か。そもそもアリアドネは癒しの魔女なのだから、むしろ調薬の方が得意なのだろう。これまでも何度も世話になっているし。
そう考え理解したが、なぜソフィアを弟子にしたのか、その理由が気になった。ソフィアが、美女だから弟子にして手取り足取りと指導したかったのか。
──だとしたら、私も弟子にしろ。そして、私にも手取り足取り指導しろー。
意味不明だ。そもそもマチルダには、補助魔法どころか魔法適正もないので、一体何の弟子になるつもりなのか分からない。
一方ソフィアは、ヤスオと行動を共にしている、この女が気に入らない。財力にものをいわして綺麗にめかしこんでいる事が腹立たしい。つい先日まで、食べるのにすら困っていたので、化粧品や装飾品などの類は、持ち合わせていない。高い地位で貴族の美女、この女に勝てる要素が見つからず惨めになる。さらに、お互いを呼び捨てで、呼びあっている間柄が羨ましい。
そんなことを思っていながら、ソフィアはヤスオに対する自分の気持ちの整理ができていなかった。好きなのか、そうでないのか、自分でもよく分からなかった。ただ、今は目の前の女にイラつく。
「リリー。おばさんなんて言ってはダメよぉ。この方は、私よりはるかに若い方なのですからぁ」
──なに?私の方が歳下?
マチルダは焦った。どう見てもマチルダより若いこの女が、年上?そんな事ある訳ないと思っていると、ソフィアは自身の髪をめくって見せた。
──エ、エルフ。
ヤスオが弟子にした理由を知り、安堵した。エルフなら当然かと。でも、ソフィアがマウントを取ってきたのは、明らかに宣戦布告。まさか、ライバルにエルフがいるとは。だが、まだ“さん”付けで呼んでいる以上、こちらが優位であると考えた。しかし、エルフ族の魅了は侮れないと焦ってもいた。
そんな二人を気にする事なく、ヤスオはセルジュに用件を伝えていた。
「セルジュさん。これを、受け取って下さい」
ヤスオは巾着袋3個を受付カウンターに出した。セルジュはその中身を確認して驚き腰を抜かした。それもそのはず、白金貨が100枚もあったのだから。
「こ、これはヤスオ様、これを、どうなさいました?」
「臨時収入です。これを使って、孤児院で祭りでもしませんか?」
「これを、いただいてもよろしいのですか?ただでさえバナナで、楽になっているのに」
「はい」
これを見ていた美女2人の戦意は消失した。こんな事で、いがみ合っていたら嫌われてしまうと思えたからだ。そうなると、これまでの感情や行動が可笑しくて、バカバカしくなってきた。
「ヤスオさん、そのお祭りには呼んで下さいね」
「もちろんです。ソフィアさんは関係者ですから」
「私も、だぞ。ヤスオ」
「騎士団長様は、お忙しいのでは?」
「そんなぁ、何とかするから頼む」
和やかな雰囲気になり、アントの夢では笑い声が聞こえていた。用件を済ませたので、次の目的地に向かう事にする。
「調薬師殿、これからも世話にはなるが、譲る気はないので覚悟をした上で、よろしく頼む」
「はい、騎士団長様。こちらも身を引く気はありませんが、これからも御贔屓にお願いいたします」
──身を引く気はない?
自分は何を言っているのだろう。と思いながらマチルダの売り言葉を、買ってしまっていた。
ソフィア親子とセルジュ達に別れを告げアントの夢を後にする。ここで、マチルダはアリアドネが支援し、それをヤスオが引き継いで支援している孤児院が気になってきた。
「ヤスオ、行ってみたい場所があるのだが、連れて行ってくれないか?」
「どこでしょう?」
「孤児院に行ってみたいのだが」
「丁度良かった。これから行くところです」
「孤児院は、どこにあるのだ?」
「スペランザ教会ですけど、ご存じなかったですか?」
「ああ、そうであった。父上が視察し、妹を見つけた所であったな」
道中、孤児院の子供達が、1日をどう過ごしているか、マチルダに事細かに伝えた。ヤスオが楽しそうに話すので、子供達と過ごすのがそれほど楽しいのかと、マチルダも気になってきていた。
「ではこの時間は、薬草採取に出かけていて子供達は、いないのだな」
「はい。おそらくセメレ院長とマイヤさんとで昼食の準備をしている頃だと思います」
二人は孤児院側の門を開け中に入る。
「こんにちは」
孤児院の入口の扉は開けっ放しになっており、中の調理室では、セメレが一人で調理していた。セメレは声のする方へ顔を向け、ヤスオが美女を連れている事に驚いていた。
「あら、ヤスオさん。いらっしゃい。そちらのキレイな方は、初めてのお客様ね。あら、…!あら、あら、あら、あら、そういう事ですのぉ」
──どういう事ですのぉ?
「あのぉ、セメレさん。何か勘違いを、なされているのでは?」
「そうですよ、セメレ殿。教会の方は何度も伺った事があるはずだが、覚えていないのか?」
「まぁ、その声はクロムウェル騎士団長。今日は随分、お綺麗なのですね」
──今日は?では、普段のわたしは、お綺麗ではないのか?
少し衝撃を受けたが普段、無頓着なのは事実なので、十万歩譲って認める事にする。
『ああ。ヤスオさんだぁ』
「げっ」
お嬢様パーティーが甘蕉の納品に来ていたようだ。マイヤが付き添っていたようで、5人は調理場に戻ってきていた。お嬢様達は、ヤスオを取り囲み馴れ馴れしく話しかけた。
「昨日はご馳走様でした」「美味しかったです」「昼も夜も最高でした」「また、お願いします」
「いや、もう来なくていいから。というか2度と来るな」
「またまた」「本当は嬉しいくせに」「心にもない事を言って」「照れ隠しですか?」
「なんだ、まだ子供達がいるじゃないか。ヤスオは、随分子供に人気があるのだな」
13
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
エクセプション
黒蓮
ファンタジー
血筋と才能に縛られた世界で【速度】という、それ単体では役に立たないと言われている〈その他〉に分類される才能を授かったダリア。その才能を伯爵位の貴族である両親は恥ずべき事とし、ダリアの弟が才能を授かったと同時に彼を捨てた。それはダリアが11歳の事だった。
雨の中打ちひしがれて佇んでいたダリアはある師に拾われる。自分を拾った師の最初の言葉は『生きたいか、死にたいか選べ』という言葉だった。それまでの人生を振り返ったダリアの選択肢は生きて復讐したいということだった。彼の選択を受け入れた師は彼にあらゆることを教えていく。
やがて師の元を離れる際にダリアはある紙を受け取り、それと同時に再度の選択肢を投げ掛けられる。彼が選ぶ復讐とは・・・彼が世界に及ぼす影響とは・・・
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
とある中年男性の転生冒険記
うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる