異世界での異生活

なにがし

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111.戦隊

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 一瞬の出来事にヤスオの顔面の上半分が青くなり、気づけば両手で股間を抑えていた。それはヤスオのみならず、その場の男達全員がそうなっていた。
 この行為は、相手の戦力の1人を減らしただけで、荒くれ共の戦意を奪うには足りない。むしろ怒りを買い、やる気にさせてしまった。

「やってくれたな。姉ちゃん達。おとなしくしていれば、その体1つで済んだものを。残念だが、無事には帰さねぇぜ。」
「ここにいる全員の相手をしてもらうぜ。へへへ、貴族の女を好きにできるなんて。いい日になりそうだ。」

 リーダーらしき男を先頭に、多くの男達がよだれを垂らしながら間合いを詰めてくる。中には、上半身裸になる気の早い奴までいる。このヤスオとは次元の違う気持ち悪さに、鳥肌がたち、身震いしてしまう。
 ヤスオはこの気持ちの悪い連中に魔法をぶっ放したかったが、それでは味方を巻き込んでしまう。補助に徹する事にして、とりあえず、主力の3人に身体と防具の強化魔法を唱えた。

──武器強化は必要ないだろう。…やらない方がいいよな。

 この者達に対しての貴族令嬢2人の殺気は尋常ではなく、変に武器を強化すると殺してしまいそうな気がしていた。

「野郎ども、やっちまえぇぇ。」

 その言葉に、男達は一斉に襲いかかってきた。チャーフィーとマチルダ、マークは男達に飲み込まれていく。3人は完全に囲まれ姿が見えなくなったが、なぜか男達の罵倒と悲鳴しか聞こえてこない。

「この厚化粧。げひっ。」「あばずれが。ごほっ。」「ブスゥゥ。うごっ。」「年増めぇ。げひっ、ごほっ、うごっ。」

 男達の群れの中から、次々と人が飛ばされていく。あっという間に大勢が決まり、3人の姿が見えてきた。マークは素手で男達を掴んでは投げ飛ばし床に叩きつけ、2人の令嬢は剣を鞘ごと手にして、男達を殴打していた。特に下品な言葉を発する者には、確実に股間を貫いていた。ヤスオは、どう援護しようかと考えているうちに終わってしまった。衛兵2人もこれと言ってやることもなく、たたずんでいた。
 多くの男達が仰向けになって倒れていた。そのうち3分の1は、うつ伏せでお尻を突き出し、股間を抑えて、倒れている。どうやら死人は出てないようだ。残った数人は戦意を消失し、床に腰を下ろして降伏した。中には、怖さのあまり失禁している者もいた。

「お前達は何なのだ?たった3人でどうしてこんなことができる?」
「ふふふ、わし達か?知りたければ、教えてやろう。」

 その言葉とは裏腹に、よくぞ聞いてくれました、と言わんばかりの笑顔をマークは浮かべていた。

「わしは、レスボンカワノ軍団の漆黒の旗を掲げし、衛士のおさ、マーク・ダ・ヴィッカース。」

 マークは腕組みをして、仁王立ちをした。

「わたしは、レスボンカワノ軍団の金色こんじきの旗を掲げし、衛兵団のおさ、チャーフィー・ダ・コメット。」

 チャーフィーは、右膝を床につけ左足を横に伸ばし、左腕を斜め上に伸ばし右手はハイタッチの姿勢にとる。

「わたしは、レスボンカワノ軍団の紅の旗を掲げし、騎士団のおさ、マチルダ・ダ・クロムウェル。」

 マチルダは、左膝を床につけ右足を横に伸ばし、右腕を斜め上に伸ばし、左手はチャーフィーの手にハイタッチした。

『3人そろって、レスボンカワノ軍団三銃士だぁぁぁぁ。』

 中央にマーク、右にチャーフィー、左にマチルダ、3人共、練習した事があるのか、決まったポーズを取った。衛兵2人は涙を流しながら、手を叩き感動していた。ヤスオは3人の背後にいたので、爆発に巻き込まれないか身構えた。当然、爆発などなく徒労に終わったが。

「ひぇぇぇぇ。レスボン最強戦士3人がなぜ、こんな酒場にそろうのだよぉ。」

 男達は慌てて、店の外へ逃げ出す。他の動ける者も手足を引きずりながら、店の外へ逃げ出した。

「店主、すまなかった。ここの修理代は我々が責任を持って、奴らから回収するから、安心してくれ。」

 カウンターから店主が首を出したのを、見つけるとマークが声をかけた。

「いえ、たいした被害でもありませんし、お気になさらず。」
 
 店主はならず者の、居場所になっていた事を見逃してもらう為に3人に恩を売ろうとしていた。たいした被害ではない。そう言ってはいたが、テーブルや椅子のほとんどが壊れ、壁に数か所、穴が開き、床も底が抜けている箇所があった。この修理代だけでも相当な罰になると判断して、チャーフィーはそれを受け入れ、見逃すことにした。

「なんなんだぁ。これはぁ?」

1階の騒がしい声に、何事かと2階の休憩室から上半身裸のパンツ男が廊下に出てきて見下ろしていた。男は、最強戦士3人を視認すると声を荒立てた。

「城のやつらが、ここに何の用がある?ここにいると、すぐに荒くれ者共の餌食に…えじきに?…なっている?」

「あれが、クランジャンです。」

 男は荒くれ者共が全滅している事を理解すると自身の危険を察知し、慌てて休憩室に戻った。マチルダは、一気に階段を駆け上り、男を追った。チャーフィーは、カウンターや食器棚に飛び移り、二階の廊下に手をかけ、ヒラリと2階の手摺りを飛び越し、男を追った。マークは「身軽さでは2人にはかなわん。」と独り言を言い、腕組みをして仁王立ちをしていた。マチルダとチャーフィーは同時に休憩室の扉に体当たりをした。扉は開き、部屋の奥には、同室していた女の首にナイフを突きつけたパンツ男がいた。

「動くな。この女を殺すぞ。」
「あんた、これはどう言うこと。わたしを盾にする気?」

 男はパンツ一丁で、女は素っ裸。突入してきたのが女性2人だったので、人質の女はとりあえず冷静でいられた。

「2人共、援護します。」

マークとヤスオが遅れて部屋にやって来た。女は男が部屋に来たので動揺したが、喉にナイフがあるので、どうにもできない。肌を晒すのも仕方ないと、あきらめかけた。だが、男の1人があのG級ヤスオだと気が付くと、身の危険を感じた。ヤスオは、女を見ると股間を抑え、何とも言えない、だらしのない顔をして凝視した。
女は経験したことがない羞恥心と恐怖で、おとなしくできなくなっていた。

「いっやぁぁぁぁぁ。身体がけがれるぅぅ。何か着させてぇぇぇぇ。」
「お、おい。落ち着け。本当に殺すぞ。」

 女は死の恐怖よりも、ヤスオの視線を恐れ、暴れ出した。この隙を2人は見逃さなかった。マチルダがすばやく男のナイフを手刀で叩き落とし、チャーフィーは、腕を抑え背後にまわり頭を床に押しつけた。解放された女は近くのベッドに飛び込み布団を纏った。

「クランジャン、そなたに話がある。衛兵団まで来てもらうぞ。」

「そこの女も、来てもらうぞ。さっさと服を着ろ。」


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