異世界での異生活

なにがし

文字の大きさ
110 / 117

110.禁句

しおりを挟む
『当然、クランジャンと言う事になるだろう。』

 ここからが問題だった。クランジャンの目的はお金ではなく、3姉弟の子と自身の子を売り払うこと自体が目的と思える。みんな問題なく暮らしていて、お金に困っている様子もなかったのになぜ、そんな非道な事をする必要があったのだろうか?それが、分からない。

(欲張って売り払おうとしているけど、ようは、子供達に消えて欲しいのよねぇ。特に自分の子が消えて欲しい。それって、自分に子供がいる事が知られたくない人がいるからよね。)

──そうか、自分の過去を清算しようとしているのか。

「ひょっとして、ですけど。最近、貴族様の中で結婚される、又はされた女性はいませんか?」
「いや、騎士団には、おらんが。」
衛士えじ隊に女はおらん。」
「それなら、衛兵団うちの侍女兼衛兵見習いが来月結婚する予定だが。」
「やはり、いましたか。その方と相手の方の身元を教えて頂いてもいいですか。」
「侍女は先ほど、ヤスオ殿に無礼を働いた、ソミュア・ダ・ルノーだ。衛兵団うちの副団長の娘で、相手は確かジャハット・ダ・オランと言う貴族の息子らしい。」

──はぁ?

 ヤスオは憤りを感じた。自分は来月結婚するのに、チャーフィーとの関係に焼きもちを焼き、わさび紅茶を飲ませていたのか。

──何という自分勝手で、わがままな奴だ。

 そのわがまま娘の親である、副団長の顔が見たくなっていた。そういえば最近、自分勝手でわがままな奴を別に見た気がする。そう、あのお嬢様冒険者パーティーだ。この世界の若い娘はみんなあんな感じなのだろうかと心配になる。アイルやマリナは、しっかりした女の子なのに、どう成長すれば、こうなるのか研究したくなった。まぁ、それよりまずはジャハットだ。

「そのジャハットと、会ったことはありますか?」
「いや、ないが。…まさか、ジャハットとクランジャンが同一人物と言いたいのではないだろうな?」
「そう考えれば辻褄が合います。クランジャンは、自身の淫らな過去を清算しようとしていたのでは?」
「よし、では行くか。」

 マークはお茶を一気に飲み干すと、立ち上がり剣を握ると腰に装備した。

衛士えじ長、どこにいくのだ?」
「クランジャンの奴を捕まえに行くに決まっておる。詳しい事は本人に聞けばいいだろう。」
「そうだな。行くかぁ。ヤスオも行くだろ?」

 マチルダはお茶菓子を口いっぱいに頬張ると、紅茶で流し込む。立ち上がり剣を握るとヤスオにも立ち上がるよう催促した。

「ちょっと二人共、それは衛兵団わたしたちの仕事でしょ。」
「今から、身柄拘束隊を編成していたら、遅くなってしまうだろう。この4人だったら、衛兵数名を連れて行くだけで済む。」
「そうだ、さっさと終わらせて我々の午後からの仕事に集中させてくれ。」
「あぁぁ、分かった。行こう。」

 チャーフィーも立ち上がり、お茶菓子を口に詰めると紅茶で流し込み剣を持った。チャーフィーを先頭に部屋から出ると、通りすがりの衛兵2名について来るよう指示した。6人は城を出ると、クランジャンがいつもたむろしている、サプサン通りの酒場を目指した。

 貧民街はサプサン通りとペルミ通りで構成された地域で、目指す酒場は治安が悪い。クランジャンの家は貧民街から離れた場所にあるが、いつもそこに通いゴロツキ達とつるんで悪巧みや賭け事をしたり、2階に数部屋ある休憩室を利用したりしていた。

 酒場に着くとチャーフィーは躊躇することなく、店内に入って行く。そして店内を見渡しクランジャンを探した。突然の衛兵団の登場に店内のゴロツキ達は殺気だった。

「そこの、衛兵の姉ちゃんよ。ここは、あんたらが来て無事に済む場所じゃねえ。とっとと帰りな。」
「用が済んだら帰る。邪魔をするな。」

 中にはゴロツキが20人以上いる。ヤスオ達は6人なので、ゴロツキ達は完全に舐めてかかってきた。さらに、女性チャーフィーがいる事で、眼に血管を浮かび上がらせ、鼻息を荒くした。ちなみにゴロツキ共は、衛士や騎士の制服をよくわかっていない。衛兵3人と調査員3人が来ていると思っていた。

「用だってぇ。それは休憩室にかいで俺達を気持ちよくしてくれることかぁ?」
「いいねーそれ。歓迎するよ。力づくでもそうしてもらうぜ。」
「おい、もう1人いるぞ。2人を置いて後は帰りな。でなきゃ、生きて帰れねぇぜ。」

 ゴロツキ達全員が立ち上がり、襲いかかろうと近寄ってくる。1人が酒瓶を割って、割った先をチャーフィーの喉付近に突き付けた。
 衛兵2人は覚悟を決め、チャーフィーの前に出ようとするが、ヤスオが両手を横に遮り、首を左右に振る。衛兵はお互いの顔を見合い、何かあると判断して、とりあえずヤスオの指示に従った。

「さあ、姉ちゃん。2階まで、一緒に来てもらうぜ。」

 男は舌なめずりをしながら、チャーフィーの胸元に、いやらしい視線を送る。チャーフィーは、そんな視線を気にする事なく、クランジャンを探した。

「それで、クランジャンはどいつだ。」
「この中には、いないようだ。」

 マークとチャーフィーは男を無視して普通に会話をしていた。
その会話を聞いた男は、イラついた。

「またクランジャンかよ。奴は今、2階でお楽しみ中だ。今日は俺達で満足してもらうぜ。」
「そうか。情報提供に感謝する。」
「感謝?つまり観念したのか?まぁいい。2人共、“年増”だから、その辺はわざでカバーしてもらうぞ。」

『あぁ?』

──ぐぉぉぉぉぉぉ。

 チャーフィーの右足が男の股間を蹴り上げていた。男は蹴り上げられ宙に浮くと、持っていた酒瓶を放り投げ、その場で股間を抑えながら、ピョンピョンと飛び跳ねていた。さらにチャーフィーは拳を握りしめ、男の顔面を狙った。男は慌てて両腕で顔を覆い殴打に備えた。

──ぐがぁぁぁぁぁ。

マチルダが横に1回転し、無防備になった股間を蹴り飛ばした。男は後方へうつ伏せ状態で飛ばされ顔面で着地させられた。シャクトリムシのような態勢で、白い眼と白い泡を出しピクピクと小刻みに体を震わせ、意識を失っていた。

 一瞬の出来事にヤスオの顔面の上半分が青くなり、気づけば両手で股間を抑えていた。それはヤスオのみならず、その場の男達全員がそうなっていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

処理中です...