ちびっ子には見せられないよ!魔法少女と、その使い魔。

リゥル

文字の大きさ
29 / 38
第三章 変化、成長?

第27話 帰り道

しおりを挟む
「おい、誰も居ないやんけ……」

 俺は、終わりの見えないランニングと言う、折檻一歩手前の罰を受けていた。
 そして気づく。
 暗くなったグランドに、ポツンと一人残されて居ることに……。

「あ、あの人──本気で止めていいって言わずに帰りやがった!」

 分かっていた。
 こうなる事は分かっていたけれども!
 それとも何だ、明日の朝まで走ってろってか?
 いや、あの人なら言いかねないけど。

 …………もう知るか、帰ってやる!!

 半ばヤケクソになり、足を震わせながら部室へと向かう。
 入るやいなやドアに鍵をかけ、意気消沈した俺は、電気を付け小汚い床に突っ伏した。
 
「はぁ、なんでバカ正直に走り続けてんだろうな」

 本当何でだ?
 手を抜くことだって、その気を出せば逃げ出す事も出来るのに。

 仰向けになり天井を見上げる。
 そして、手で顔を隠すように、蛍光灯の明かりから逃げた。

「……プレゼント、相澤にはあげたのに、自分が貰って無いから怒ったのかな?」

 そんな想いが、頭の中を駆け巡る。
 手を抜けない事や、逃げ出さない理由。
 その答えは、はっきりと自分の中で出ていた。
 姫乃先輩が口にした『苛立ち』……。
 それを考えていたから、俺は彼女の課した罰に、手抜きができなかった。

「それがもし、俺に対しての嫉妬だったなら──」

 窓のない、鉄筋コンクリート構造の部室に、独り言が響く。
 それを聞き、俺は妙に冷静になった。
 自分が口走った内容が恥ずかしくなり、誤魔化すように勢いよく体を起こす。

「思い上がりも良いところだよな。聞かれたら『貴方はナルシストなのかしら?』なんて言われるに違いない。さて、外はもう暗いはずだ、いい加減帰るか」

 俺は床に手をつき、立ち上がろうとする。
 足が痛くてスッと立てない。
 これはどう考えても、オーバーワークだな。

「いてて。早くしないと相澤が心配するな」

 ロッカーを支えに立ち上がると、フォームをチェックするのに使う姿見鏡に、酷く疲れた自分が映し出されていた。

「メタモルフォーゼ」

 周囲の光を飲み込むように、闇が鏡に映る俺を包み込む。
 そしてそれは、徐々に小さくなると、一匹の黒猫の形を成した。

「猫の姿の方が比較的楽だ、これなら今すぐにでも帰れそうだけど」

 でも、不安要素は残っている。
 言うまでもなく、許可なく走るのを辞めてもいいのか? っと言う物なんだけど……。
 
「出来る限りは頑張ったんだ、きっと許して──」

 今日の様子を見る限り、許してはくれはしないだろうな。
 でも流石に限界だ、走ってぶっ倒れるか、悪魔に折檻されるかの二択だが。

「……帰ろ、後の事は明日の自分に任せて」

 不幸を明日に持ち越して、帰る決意を固めた。
 自分でも切り替えが上手になったと思う。
 おかしなトラブルに慣れつつある証拠だ。
 慣れたくないけど。

 俺は部室の出口で立ち止まった。

「変身前にやっとけば良かった……」

 ぴょんぴょん跳ねて部室の電気を切り、ぴょんぴょん跳ねて鍵とドワノブを開ける。
 無駄な体力を使った俺は、グランドを横断して校門を出た。
 そこで俺は気付く。
 校門横の茂みに魔法の力、略して魔力の痕跡がくっきりと残っていることに。

「……はぁ、疲れに追い打ちかよ。おい、相澤」

 すると彼女は「ひゃぃ!?」っと可愛らしく声を上げ立ち上がった。

「もう暗くなってきてるぞ、こんな遅い時間まで何やってんだよ」
「え、えっとね、日輪先輩を待ってて」
「それは待つとは言わない。待ち伏せているが正解だ。そもそも一緒に帰る約束でもしたか?」

 してるはずはない。それは、俺が一番よく知ってる。

 俺の質問を、てっきり誤魔化すのかよ思いきや、相澤は「約束はしてないよ」っと素直に答えた。
 気のせいか、どこかしょんぼりしているようにも見えるけど。

「日輪なら、しばらく前に帰るところを見たぞ。残念だな、あてが外れて」
「そっか、そうだよね……」

 どうしたんだ?
 いつものような無邪気というか、能天気な笑顔が見えない。

「相澤、もしかして体調でも悪いのか?」
「ううん、大丈夫。少しノア君成分不足なだけだから」
「そんな成分、初めて聞いたな……」

 なるほど。
 今までとは違い、今日は人の目を引いていたからストーキングが出来なかったんだな?
 俺にとっちゃ喜ばしいけど、

「昼間見てたけど、その髪飾りが原因だろ。外さないのか?」
「うん、これはノア君が私を心配して着けてくれた物だから」
「そっか……。じゃぁ、外せないな」
「えへー」

 夕暮れも終わりを迎え、辺りは薄暗くなってきている。
 町では所々、ポツポツと明かりが灯り始めていた。
 そのせいなのか? 相澤の笑い顔が若干影って見える。
 俺にはそれが、妙に寂しく感じた……。
 
「ほら、夜道は危険だぞ。俺も一緒に帰るから元気出せ」
「ふふっ、可愛いボディーガードだね」

 軽口叩きながら、相澤は茂みから出てくる。
 そして制服についた木の葉を、手で払い除けた。

「じゃぁノアちゃん、エスコートお願いね」

 そして相澤は、普段家で俺を抱きかかえるときの様に、しゃがんで両手を広げる。
 いつもなら嫌がる所だが、今日だけは恥を忍んで彼女の手にすり寄った……。

 ──しかしッ

「えっ、停電!?」

 相澤の指先が、俺の体に触れたときだ。
 突如帰り道に当たる方角の電気が、前触れもなく一斉に消えたのだった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件

楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。 ※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...