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第三章 変化、成長?
第27話 帰り道
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「おい、誰も居ないやんけ……」
俺は、終わりの見えないランニングと言う、折檻一歩手前の罰を受けていた。
そして気づく。
暗くなったグランドに、ポツンと一人残されて居ることに……。
「あ、あの人──本気で止めていいって言わずに帰りやがった!」
分かっていた。
こうなる事は分かっていたけれども!
それとも何だ、明日の朝まで走ってろってか?
いや、あの人なら言いかねないけど。
…………もう知るか、帰ってやる!!
半ばヤケクソになり、足を震わせながら部室へと向かう。
入るやいなやドアに鍵をかけ、意気消沈した俺は、電気を付け小汚い床に突っ伏した。
「はぁ、なんでバカ正直に走り続けてんだろうな」
本当何でだ?
手を抜くことだって、その気を出せば逃げ出す事も出来るのに。
仰向けになり天井を見上げる。
そして、手で顔を隠すように、蛍光灯の明かりから逃げた。
「……プレゼント、相澤にはあげたのに、自分が貰って無いから怒ったのかな?」
そんな想いが、頭の中を駆け巡る。
手を抜けない事や、逃げ出さない理由。
その答えは、はっきりと自分の中で出ていた。
姫乃先輩が口にした『苛立ち』……。
それを考えていたから、俺は彼女の課した罰に、手抜きができなかった。
「それがもし、俺に対しての嫉妬だったなら──」
窓のない、鉄筋コンクリート構造の部室に、独り言が響く。
それを聞き、俺は妙に冷静になった。
自分が口走った内容が恥ずかしくなり、誤魔化すように勢いよく体を起こす。
「思い上がりも良いところだよな。聞かれたら『貴方はナルシストなのかしら?』なんて言われるに違いない。さて、外はもう暗いはずだ、いい加減帰るか」
俺は床に手をつき、立ち上がろうとする。
足が痛くてスッと立てない。
これはどう考えても、オーバーワークだな。
「いてて。早くしないと相澤が心配するな」
ロッカーを支えに立ち上がると、フォームをチェックするのに使う姿見鏡に、酷く疲れた自分が映し出されていた。
「メタモルフォーゼ」
周囲の光を飲み込むように、闇が鏡に映る俺を包み込む。
そしてそれは、徐々に小さくなると、一匹の黒猫の形を成した。
「猫の姿の方が比較的楽だ、これなら今すぐにでも帰れそうだけど」
でも、不安要素は残っている。
言うまでもなく、許可なく走るのを辞めてもいいのか? っと言う物なんだけど……。
「出来る限りは頑張ったんだ、きっと許して──」
今日の様子を見る限り、許してはくれはしないだろうな。
でも流石に限界だ、走ってぶっ倒れるか、悪魔に折檻されるかの二択だが。
「……帰ろ、後の事は明日の自分に任せて」
不幸を明日に持ち越して、帰る決意を固めた。
自分でも切り替えが上手になったと思う。
おかしなトラブルに慣れつつある証拠だ。
慣れたくないけど。
俺は部室の出口で立ち止まった。
「変身前にやっとけば良かった……」
ぴょんぴょん跳ねて部室の電気を切り、ぴょんぴょん跳ねて鍵とドワノブを開ける。
無駄な体力を使った俺は、グランドを横断して校門を出た。
そこで俺は気付く。
校門横の茂みに魔法の力、略して魔力の痕跡がくっきりと残っていることに。
「……はぁ、疲れに追い打ちかよ。おい、相澤」
すると彼女は「ひゃぃ!?」っと可愛らしく声を上げ立ち上がった。
「もう暗くなってきてるぞ、こんな遅い時間まで何やってんだよ」
「え、えっとね、日輪先輩を待ってて」
「それは待つとは言わない。待ち伏せているが正解だ。そもそも一緒に帰る約束でもしたか?」
してるはずはない。それは、俺が一番よく知ってる。
俺の質問を、てっきり誤魔化すのかよ思いきや、相澤は「約束はしてないよ」っと素直に答えた。
気のせいか、どこかしょんぼりしているようにも見えるけど。
「日輪なら、しばらく前に帰るところを見たぞ。残念だな、あてが外れて」
「そっか、そうだよね……」
どうしたんだ?
いつものような無邪気というか、能天気な笑顔が見えない。
「相澤、もしかして体調でも悪いのか?」
「ううん、大丈夫。少しノア君成分不足なだけだから」
「そんな成分、初めて聞いたな……」
なるほど。
今までとは違い、今日は人の目を引いていたからストーキングが出来なかったんだな?
俺にとっちゃ喜ばしいけど、
「昼間見てたけど、その髪飾りが原因だろ。外さないのか?」
「うん、これはノア君が私を心配して着けてくれた物だから」
「そっか……。じゃぁ、外せないな」
「えへー」
夕暮れも終わりを迎え、辺りは薄暗くなってきている。
町では所々、ポツポツと明かりが灯り始めていた。
そのせいなのか? 相澤の笑い顔が若干影って見える。
俺にはそれが、妙に寂しく感じた……。
「ほら、夜道は危険だぞ。俺も一緒に帰るから元気出せ」
「ふふっ、可愛いボディーガードだね」
軽口叩きながら、相澤は茂みから出てくる。
そして制服についた木の葉を、手で払い除けた。
「じゃぁノアちゃん、エスコートお願いね」
そして相澤は、普段家で俺を抱きかかえるときの様に、しゃがんで両手を広げる。
いつもなら嫌がる所だが、今日だけは恥を忍んで彼女の手にすり寄った……。
──しかしッ
「えっ、停電!?」
相澤の指先が、俺の体に触れたときだ。
突如帰り道に当たる方角の電気が、前触れもなく一斉に消えたのだった……。
俺は、終わりの見えないランニングと言う、折檻一歩手前の罰を受けていた。
そして気づく。
暗くなったグランドに、ポツンと一人残されて居ることに……。
「あ、あの人──本気で止めていいって言わずに帰りやがった!」
分かっていた。
こうなる事は分かっていたけれども!
それとも何だ、明日の朝まで走ってろってか?
いや、あの人なら言いかねないけど。
…………もう知るか、帰ってやる!!
半ばヤケクソになり、足を震わせながら部室へと向かう。
入るやいなやドアに鍵をかけ、意気消沈した俺は、電気を付け小汚い床に突っ伏した。
「はぁ、なんでバカ正直に走り続けてんだろうな」
本当何でだ?
手を抜くことだって、その気を出せば逃げ出す事も出来るのに。
仰向けになり天井を見上げる。
そして、手で顔を隠すように、蛍光灯の明かりから逃げた。
「……プレゼント、相澤にはあげたのに、自分が貰って無いから怒ったのかな?」
そんな想いが、頭の中を駆け巡る。
手を抜けない事や、逃げ出さない理由。
その答えは、はっきりと自分の中で出ていた。
姫乃先輩が口にした『苛立ち』……。
それを考えていたから、俺は彼女の課した罰に、手抜きができなかった。
「それがもし、俺に対しての嫉妬だったなら──」
窓のない、鉄筋コンクリート構造の部室に、独り言が響く。
それを聞き、俺は妙に冷静になった。
自分が口走った内容が恥ずかしくなり、誤魔化すように勢いよく体を起こす。
「思い上がりも良いところだよな。聞かれたら『貴方はナルシストなのかしら?』なんて言われるに違いない。さて、外はもう暗いはずだ、いい加減帰るか」
俺は床に手をつき、立ち上がろうとする。
足が痛くてスッと立てない。
これはどう考えても、オーバーワークだな。
「いてて。早くしないと相澤が心配するな」
ロッカーを支えに立ち上がると、フォームをチェックするのに使う姿見鏡に、酷く疲れた自分が映し出されていた。
「メタモルフォーゼ」
周囲の光を飲み込むように、闇が鏡に映る俺を包み込む。
そしてそれは、徐々に小さくなると、一匹の黒猫の形を成した。
「猫の姿の方が比較的楽だ、これなら今すぐにでも帰れそうだけど」
でも、不安要素は残っている。
言うまでもなく、許可なく走るのを辞めてもいいのか? っと言う物なんだけど……。
「出来る限りは頑張ったんだ、きっと許して──」
今日の様子を見る限り、許してはくれはしないだろうな。
でも流石に限界だ、走ってぶっ倒れるか、悪魔に折檻されるかの二択だが。
「……帰ろ、後の事は明日の自分に任せて」
不幸を明日に持ち越して、帰る決意を固めた。
自分でも切り替えが上手になったと思う。
おかしなトラブルに慣れつつある証拠だ。
慣れたくないけど。
俺は部室の出口で立ち止まった。
「変身前にやっとけば良かった……」
ぴょんぴょん跳ねて部室の電気を切り、ぴょんぴょん跳ねて鍵とドワノブを開ける。
無駄な体力を使った俺は、グランドを横断して校門を出た。
そこで俺は気付く。
校門横の茂みに魔法の力、略して魔力の痕跡がくっきりと残っていることに。
「……はぁ、疲れに追い打ちかよ。おい、相澤」
すると彼女は「ひゃぃ!?」っと可愛らしく声を上げ立ち上がった。
「もう暗くなってきてるぞ、こんな遅い時間まで何やってんだよ」
「え、えっとね、日輪先輩を待ってて」
「それは待つとは言わない。待ち伏せているが正解だ。そもそも一緒に帰る約束でもしたか?」
してるはずはない。それは、俺が一番よく知ってる。
俺の質問を、てっきり誤魔化すのかよ思いきや、相澤は「約束はしてないよ」っと素直に答えた。
気のせいか、どこかしょんぼりしているようにも見えるけど。
「日輪なら、しばらく前に帰るところを見たぞ。残念だな、あてが外れて」
「そっか、そうだよね……」
どうしたんだ?
いつものような無邪気というか、能天気な笑顔が見えない。
「相澤、もしかして体調でも悪いのか?」
「ううん、大丈夫。少しノア君成分不足なだけだから」
「そんな成分、初めて聞いたな……」
なるほど。
今までとは違い、今日は人の目を引いていたからストーキングが出来なかったんだな?
俺にとっちゃ喜ばしいけど、
「昼間見てたけど、その髪飾りが原因だろ。外さないのか?」
「うん、これはノア君が私を心配して着けてくれた物だから」
「そっか……。じゃぁ、外せないな」
「えへー」
夕暮れも終わりを迎え、辺りは薄暗くなってきている。
町では所々、ポツポツと明かりが灯り始めていた。
そのせいなのか? 相澤の笑い顔が若干影って見える。
俺にはそれが、妙に寂しく感じた……。
「ほら、夜道は危険だぞ。俺も一緒に帰るから元気出せ」
「ふふっ、可愛いボディーガードだね」
軽口叩きながら、相澤は茂みから出てくる。
そして制服についた木の葉を、手で払い除けた。
「じゃぁノアちゃん、エスコートお願いね」
そして相澤は、普段家で俺を抱きかかえるときの様に、しゃがんで両手を広げる。
いつもなら嫌がる所だが、今日だけは恥を忍んで彼女の手にすり寄った……。
──しかしッ
「えっ、停電!?」
相澤の指先が、俺の体に触れたときだ。
突如帰り道に当たる方角の電気が、前触れもなく一斉に消えたのだった……。
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