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第一章 グローリア大陸編
第12話 友情、友達、蜂蜜レモンの味─トゥナ視点─
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町から出て半刻程歩いたかな? ここまでこれば彼も捕まる心配は無いと思うけど……。
「カナデ君。そろそろ疲れたかしら? 人目に付かない所で、昼食を取りましょう」
私はそれだけ口にすると、周囲を確認しながら街道からわざと外れる。
街道に人が通ったとしても、岩影で死角になる位置を探し、そこまで移動するためだ。──ここなら、街道からも死角だし彼も一息つけるかしら?
「ここで休憩にしましょうか?」
岩影に背を預ける様にして地面へと座った。大荷物を持ったままの長時間の移動は、緊張感も相まって中々に体力を消耗している様だ……。
外套を頭からすっぽりかぶった、同年代ぐらいの青年も同じように私の向かいに座った。
「結構速足で歩いたな……後ろから追ってくる人影もいなかったし、とりあえずは一安心だな?」
「そうね。ティアさんの協力のおかげで、冒険者からの追撃を受けなかったのが大きいわね。稀だけど、中には探しものを得意とするスキル持ちもいるだろうし……」
だから手配書が冒険者達に出回る前に、これだけ距離が稼げたのは幸運としか言えないわね……。
それにしても急いでたとはいえ……目の前にいる彼は明らかに軽装すぎないかしら? 彼の装備で、この先大丈夫なのかな……次の目的地まで徒歩で数日程かかるのだけど…。
「カナデ君、荷物かなり少ないみたいだけど……」
同じパーティーである以上、お互いの装備、アイテムを知る事は重要だ。もし何かあった時、彼のバックから回復剤を取り出すなんてケースもあるかもしれない。
「あぁ~……言って無かったっけ?」
彼はそれだけ言うと「お椀3つとレモン、後蜂蜜と桶、それと水を出してくれ」と腰袋に収まっている、とても可愛らしい姿の精霊様に声を掛けた。
精霊様の「わかったカナ!」の声が聞こえ、腰袋のなかでゴソゴソと動いてる……一体何をしているのだろうか?
「カナデ、受け取るシ」と、次々と彼が指定した品が彼の大きめのウエストバックから出てきた。
お椀とレモン……水と蜂蜜が入っていると思われる水袋が出てくる……。──あれだけの荷物が入っているって事は……あのバックの中身はもうほとんど入っていなのではないかしら。
「──えっ! それ、どうなってるの?」
中身がほとんど入っていないと思われた彼のバックから、それと同等の大きさの桶が現れたのだ……。──あの桶一つで、あの入れ物が一杯になるぐらいの大きさなのに。
「いやね、ミコが住み着いたときに、物を入れると狭いからって勝手に改造したみたいで……」
彼の発言の意味が、一瞬理解できなかった……。──中が狭いから……精霊様が改造?
そう言えば……過去に数回だけ見たことがある。確か人工遺物と呼ばれるマジックアイテムの一つにそのようなものがあったはずだ。──そう! 思い出した!
「マジックバックなのね……?」
「いや……名称までは知らないけど? なんか荷物が際限なく入るんだよ」
「そ、それは……凄いわね?」
この人には本当に、脅かされっぱなしだ……。
彼の持っているマジックバックは、許容量にもよるだろうが……小さい物でも、売ってしまえば人生一度、二度は遊んで暮らせる様な代物だろう。──彼はその事を分かっているのだろうか?
そんな事を考えながらマジックバックを見つめていると、勝手にバックの蓋が開いた……そして、幻想の世界に存在する様な妖精の装いをした、精霊の女の子が顔を出したのだ。
「ボクすごいカナ? もっと誉めてもいいシ!」
そう言いながら胸を張り、満面の笑みでとびっきり得意気な顔をしている。──精霊様可愛いな。
「精霊様はすごいですね……とても色々出来るみたいですし」
私は心から彼女に、感心の言葉をかけた。
事実、人の姿を消したり、普通のバックをマジックバックに変えるなんて、今まで見たことも聞いたことが無いのだ。
流石、勇者様が扱われていた、聖剣の精霊様だと素直に関心したのだ………。しかし。
「違うモン!」
素直な気持ちで誉めたのに、精霊様に怒られてしまった……嫌われたなら……どうしよう。
「ボクはミコって名前あるカナ! 精霊様とかムズガユイシ! ミコって呼ぶシ!」
精霊様の言葉を聞き理解した……。──あ、あぁそう言うことか。彼女は名前で呼んで欲しいのね? 精霊様に? 少し……おそれ多いけど……。
「ミコちゃん?」
私が彼女の名前を呼ぶと、こちらをジッと見つめる。──やっぱり……失礼だったのかな……?
そんな、心配をしている私を他所に「ウン!」と満面の笑顔で返事をしてくれた。その笑顔は、太陽の様にまぶしいく、まるで穢れを知らない無垢な子供の様だ。
「トゥナンはもう友達カナ。仲良くしてほしいモン!」
彼女の口から信じられない言葉が聞こえた。──精霊様と友達!どうしよう!本当に嬉しい!
幼い頃からずっと憧れていた伝説の勇者様と、共に世界を回った精霊様と友達……。気持ちが舞い上がってしまいそうだ。
「ガールズトーク中で悪いけど」
そう言いながらカナデ君が突然、私にさきほどマジックバックから出したお椀を手渡した。中にはうっすらと飴色がかった液体が入っている様だけど……。
カナデを見ると、ソレに口をつけ同じものを飲んでいる様だ。
彼の好意に「ありがとう」と一言お礼を述べ、私もソレに口をつけ一口飲んでみた。
「──っつ! 美味しい……」
驚いた……レモンも蜂蜜も知ってたけど、混ぜて薄めるとこんなに美味しくなるのね? 全然知らなかったわ……。
「疲労回復にもイイとか聞くけどね」
彼はその一言と同時に、外套のフードを取る。彼と出会い初めて見た、光を飲み込んでしまう様な黒い髪が風になびいている。
「僕も飲むカナ」とバックの中からミコちゃんが出てきて、私の膝の上に乗ってきた。──本当、可愛い……。
「私の分けてあげるわ」
「トゥナンありがとカナ!」
先程私が口をつけたお椀を傾け、ミコちゃんに蜂蜜レモン水を飲ませてあげると。彼女の細い首が何度も音を上げ跳ね上がる。
「美味しい?」
「ウン!甘くて酸っぱくて旨いカナ!」
こんな風に飲ませていると、ミコちゃんのお母さんになった気分ね……。
じゃぁ、お父さんは目の前の? と自分の考えに苦笑しながら視線をあげると、カナデ君がもう一つのお椀の液体を髪に塗っていた。
「カ、カナデ君……? それ何してるの?」
先程飲んでた物より、少し粘りけのあるものを塗ってる様に見えるのだけど……。
「ん? あぁ~レモンって、髪につけて日に浴びると髪の色が抜けるって本で読んでね。蜂蜜も良いらしくて試してるんだけど……これ、かなりベタベタするな……」
初めて聞いた……カナデ君は本当に変わっているのね……ビックリするぐらい強いのに、武器を生き物に向けて振るうと悲しそうな顔をするし……。
他にも知識の豊富さに、驚かされる事もある。買い出しの時に知ったんだけど、計算とかも早いし。
それこそ、住んでいた世界が違うかのようだ。
私もそれなりに色々な教育を受けてはいたが、彼はより多くの教育を受けてたかのように知識を有効活用している……。実は貴族や学者さんだったりするのかしら?
私の元から飛んでいったミコちゃんと、カナデ君が何やら言い争って居るのを携帯食を食べながらボーっと見ている。
考えすぎかな?
目の前の少々程度の低いやり取りを見ていると、不思議と彼達がスゴい人達だと思えなくなってしまう。でも……今まで一人で冒険者をやっていたからか、ふと思ってしまった。
「この感じ、結構居心地がいいかも」
トゥナは、誰にも聞こえない声で空に向かいポツリと呟いたのだった。
「カナデ君。そろそろ疲れたかしら? 人目に付かない所で、昼食を取りましょう」
私はそれだけ口にすると、周囲を確認しながら街道からわざと外れる。
街道に人が通ったとしても、岩影で死角になる位置を探し、そこまで移動するためだ。──ここなら、街道からも死角だし彼も一息つけるかしら?
「ここで休憩にしましょうか?」
岩影に背を預ける様にして地面へと座った。大荷物を持ったままの長時間の移動は、緊張感も相まって中々に体力を消耗している様だ……。
外套を頭からすっぽりかぶった、同年代ぐらいの青年も同じように私の向かいに座った。
「結構速足で歩いたな……後ろから追ってくる人影もいなかったし、とりあえずは一安心だな?」
「そうね。ティアさんの協力のおかげで、冒険者からの追撃を受けなかったのが大きいわね。稀だけど、中には探しものを得意とするスキル持ちもいるだろうし……」
だから手配書が冒険者達に出回る前に、これだけ距離が稼げたのは幸運としか言えないわね……。
それにしても急いでたとはいえ……目の前にいる彼は明らかに軽装すぎないかしら? 彼の装備で、この先大丈夫なのかな……次の目的地まで徒歩で数日程かかるのだけど…。
「カナデ君、荷物かなり少ないみたいだけど……」
同じパーティーである以上、お互いの装備、アイテムを知る事は重要だ。もし何かあった時、彼のバックから回復剤を取り出すなんてケースもあるかもしれない。
「あぁ~……言って無かったっけ?」
彼はそれだけ言うと「お椀3つとレモン、後蜂蜜と桶、それと水を出してくれ」と腰袋に収まっている、とても可愛らしい姿の精霊様に声を掛けた。
精霊様の「わかったカナ!」の声が聞こえ、腰袋のなかでゴソゴソと動いてる……一体何をしているのだろうか?
「カナデ、受け取るシ」と、次々と彼が指定した品が彼の大きめのウエストバックから出てきた。
お椀とレモン……水と蜂蜜が入っていると思われる水袋が出てくる……。──あれだけの荷物が入っているって事は……あのバックの中身はもうほとんど入っていなのではないかしら。
「──えっ! それ、どうなってるの?」
中身がほとんど入っていないと思われた彼のバックから、それと同等の大きさの桶が現れたのだ……。──あの桶一つで、あの入れ物が一杯になるぐらいの大きさなのに。
「いやね、ミコが住み着いたときに、物を入れると狭いからって勝手に改造したみたいで……」
彼の発言の意味が、一瞬理解できなかった……。──中が狭いから……精霊様が改造?
そう言えば……過去に数回だけ見たことがある。確か人工遺物と呼ばれるマジックアイテムの一つにそのようなものがあったはずだ。──そう! 思い出した!
「マジックバックなのね……?」
「いや……名称までは知らないけど? なんか荷物が際限なく入るんだよ」
「そ、それは……凄いわね?」
この人には本当に、脅かされっぱなしだ……。
彼の持っているマジックバックは、許容量にもよるだろうが……小さい物でも、売ってしまえば人生一度、二度は遊んで暮らせる様な代物だろう。──彼はその事を分かっているのだろうか?
そんな事を考えながらマジックバックを見つめていると、勝手にバックの蓋が開いた……そして、幻想の世界に存在する様な妖精の装いをした、精霊の女の子が顔を出したのだ。
「ボクすごいカナ? もっと誉めてもいいシ!」
そう言いながら胸を張り、満面の笑みでとびっきり得意気な顔をしている。──精霊様可愛いな。
「精霊様はすごいですね……とても色々出来るみたいですし」
私は心から彼女に、感心の言葉をかけた。
事実、人の姿を消したり、普通のバックをマジックバックに変えるなんて、今まで見たことも聞いたことが無いのだ。
流石、勇者様が扱われていた、聖剣の精霊様だと素直に関心したのだ………。しかし。
「違うモン!」
素直な気持ちで誉めたのに、精霊様に怒られてしまった……嫌われたなら……どうしよう。
「ボクはミコって名前あるカナ! 精霊様とかムズガユイシ! ミコって呼ぶシ!」
精霊様の言葉を聞き理解した……。──あ、あぁそう言うことか。彼女は名前で呼んで欲しいのね? 精霊様に? 少し……おそれ多いけど……。
「ミコちゃん?」
私が彼女の名前を呼ぶと、こちらをジッと見つめる。──やっぱり……失礼だったのかな……?
そんな、心配をしている私を他所に「ウン!」と満面の笑顔で返事をしてくれた。その笑顔は、太陽の様にまぶしいく、まるで穢れを知らない無垢な子供の様だ。
「トゥナンはもう友達カナ。仲良くしてほしいモン!」
彼女の口から信じられない言葉が聞こえた。──精霊様と友達!どうしよう!本当に嬉しい!
幼い頃からずっと憧れていた伝説の勇者様と、共に世界を回った精霊様と友達……。気持ちが舞い上がってしまいそうだ。
「ガールズトーク中で悪いけど」
そう言いながらカナデ君が突然、私にさきほどマジックバックから出したお椀を手渡した。中にはうっすらと飴色がかった液体が入っている様だけど……。
カナデを見ると、ソレに口をつけ同じものを飲んでいる様だ。
彼の好意に「ありがとう」と一言お礼を述べ、私もソレに口をつけ一口飲んでみた。
「──っつ! 美味しい……」
驚いた……レモンも蜂蜜も知ってたけど、混ぜて薄めるとこんなに美味しくなるのね? 全然知らなかったわ……。
「疲労回復にもイイとか聞くけどね」
彼はその一言と同時に、外套のフードを取る。彼と出会い初めて見た、光を飲み込んでしまう様な黒い髪が風になびいている。
「僕も飲むカナ」とバックの中からミコちゃんが出てきて、私の膝の上に乗ってきた。──本当、可愛い……。
「私の分けてあげるわ」
「トゥナンありがとカナ!」
先程私が口をつけたお椀を傾け、ミコちゃんに蜂蜜レモン水を飲ませてあげると。彼女の細い首が何度も音を上げ跳ね上がる。
「美味しい?」
「ウン!甘くて酸っぱくて旨いカナ!」
こんな風に飲ませていると、ミコちゃんのお母さんになった気分ね……。
じゃぁ、お父さんは目の前の? と自分の考えに苦笑しながら視線をあげると、カナデ君がもう一つのお椀の液体を髪に塗っていた。
「カ、カナデ君……? それ何してるの?」
先程飲んでた物より、少し粘りけのあるものを塗ってる様に見えるのだけど……。
「ん? あぁ~レモンって、髪につけて日に浴びると髪の色が抜けるって本で読んでね。蜂蜜も良いらしくて試してるんだけど……これ、かなりベタベタするな……」
初めて聞いた……カナデ君は本当に変わっているのね……ビックリするぐらい強いのに、武器を生き物に向けて振るうと悲しそうな顔をするし……。
他にも知識の豊富さに、驚かされる事もある。買い出しの時に知ったんだけど、計算とかも早いし。
それこそ、住んでいた世界が違うかのようだ。
私もそれなりに色々な教育を受けてはいたが、彼はより多くの教育を受けてたかのように知識を有効活用している……。実は貴族や学者さんだったりするのかしら?
私の元から飛んでいったミコちゃんと、カナデ君が何やら言い争って居るのを携帯食を食べながらボーっと見ている。
考えすぎかな?
目の前の少々程度の低いやり取りを見ていると、不思議と彼達がスゴい人達だと思えなくなってしまう。でも……今まで一人で冒険者をやっていたからか、ふと思ってしまった。
「この感じ、結構居心地がいいかも」
トゥナは、誰にも聞こえない声で空に向かいポツリと呟いたのだった。
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